著者
西 基
出版者
北海道医療大学看護福祉学部学会
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and social Services, Health Sciences University of Hokkaido (ISSN:13498967)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.3-7, 2014-03-31

看護学を学ぶ男子学生は,しばしば学生生活上の困難を経験することから,「政府統計の窓口」に公表されている資料を元に,最近数年間の大学・短期大学3年課程・看護師3年課程それぞれにおいて,入学者がストレートで卒業する割合などを,男女別に推定した.いずれにおいても,卒業者およびストレートで卒業した者における男子学生の割合は有意に少なく,卒業延期者や前年度卒業延期者においては,男子学生の割合は有意に多かった.男子学生のストレート卒業率は,大学で87.1%,短期大学3年課程では79.3%,看護師3年課程では77.7%で,いずれも女子学生より有意に低かった.男子学生に対しては,教員や職員の様々な支援が必要であると考えられた.
著者
笹木 弘美
出版者
北海道医療大学看護福祉学部学会
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and social Services, Health Sciences University of Hokkaido (ISSN:13498967)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.55-63, 2013-03-31

本研究は統合失調症を体験する人の思い描く生活とその広がりついて明らかにすることを目的として,デイケア通所している3名の統合失調症者に対して質的帰納的研究を行なった.分析の結果,7個のカテゴリーが抽出された.彼らの生活は発病前【病気なる前の生活】を体験しており,あたり前のような生活は発病前後に【あたり前の生活からあたり前ではない生活へ】【変わりゆく生活に苦しむ】を体験し,病状の安定によって【健康であるという実感】【自分の存在を認めてくれる他者の存在】【活動の場がある】に変わり,さらに自らの主体性を取り戻すことにつながり【新たな生活の思い】を可能にしていたと考えられる.本結果は,地域で暮らす統合失調症患者の生活の広がりを支えるための支援の在り方に寄与できると思われる.
著者
佐々木 栄子 西村 歌織 唐津 ふさ 野川 道子 サカイ ヨシコ ニシムラ カオリ カラツ フサ ノガワ ミチコ Yoshiko SASAKI Kaori NISHIMURA Fusa KARATSU Michiko NOGAWA
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and Social Services, Health Sciences University of Hokkaido
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.35-41, 2008-03-31

本研究の目的はパーキンソン病患者の療養生活の受けとめと症状・日常生活動作との関連を明らかにすることである.パーキンソン病患者152名に自己記入式質問紙郵送調査を行った.調査内容は基本属性,重症度,症状,ADL,療養生活の受けとめで,療養生活の受けとめについては療養生活の受けとめ尺度を用いた.療養生活の受けとめ尺度の総得点は最小値24、最大値68,平均値49.0(SD=9.0)であった.ステップワイズ重回帰分析(p<0.05)を行った結果,療養生活の受けとめの要因として有意な関連がみられたのは「幻覚・妄想の程度」(β=.361)「排泄の自立度」(β=.289)であり,これらの2変数で分散の24.5%が説明された.また,下位尺度「主導権の喪失」の要因として有意な関連がみられたのは「不随意運動の出現時間」(β=.360)「入浴の自立度」(β=.266)であり,2変数で分散の26.2%が説明された.
著者
坂江 千寿子 佐藤 寧子 石崎 智子 田崎 博一
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and Social Services, Health Sciences University of Hokkaido
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.115-124, 2006-03-31

精神科病棟で隔離された患者へ対応する看護師には,回復過程を見極め,退室時期の決定にかかわる情報を提供できる観察と判断能力が必要である.本研究の目的は看護師が保護室内の統合失調症患者の要求に対する判断内容を明らかにすることである.開放型精神科病院で,参加観察とインタビューを実施し,看護師の対応内容,その理由等を整理し,コード化した.コーディング終了後,再検査法を用いて信頼性を高めた.倫理的配慮として,参加観察の対象看護師には,研究目的,協力に関する利益,不利益,任意性,研究者の守秘義務等を文書で説明し同意を得た.対応する患者には,自己紹介,観察の目的,任意性,退席要求の自由を保障し同意が得られた場面に随行した.その結果,看護師15名の49場面から152のコードが抽出され,何を判断しているかという判断内容を示す18サブカテゴリー,7カテゴリー(1.状態や回復レベル,2.患者の感情の理解,3.ケアを選択する根拠,4.安全を守る,5.エンパワーメントの意識化,6.相互作用における関係性の重視,7.看護師の抱く思い)に分類された.これらは,最終的に,『患者の変化と多様性の理解』と,『ケア提供の根拠と対応内容』という判断の目的で大別され,さらに両者に関係する看護師の感情や人間関係などの『判断へ影響する要因』という3つの『大カテゴリー』に集約された.看護師は,初回入院患者の言動に戸惑いながらも,まず耳を傾け言動の背後にある感情の理解に努め,衝動行動の減少,セルフコントロール能力等を回復の指標とし,入室時,前回担当時,過去の患者のベストの状態,他患者の同症状との比較という基準で判断していた.さらに要求に対して,危険を回避し悪化を防ぐ,あるいは回復の兆候に注目し患者の希望や要望にそうという両方向を念頭におきながら,その時その場で判断していることが示唆された.
著者
山本 美佐子 水島 禮子 堀込 和代 木浪 智佳子 萬 美奈子 三国 久美 ヤマモト ミサコ ミズシマ レイコ ホリゴメ カズヨ キナミ チカコ ヨロズ ミナコ ミクニ クミ Misako Yamamoto Reiko Mizushima Kazuyo Horigome Tikako Kinami Minako Yorozu Kumi Mikuni
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and Social Services, Health Sciences University of Hokkaido
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.7-14, 2007-03-31

本研究の目的は,NICUに入院した子ども(以下NICU児)の母親の対児感情と母性意識の入院中から退院後1年間の経時的変化と,満期産児の母親との比較による特徴を明らかにすることである.接近と回避の下位尺度から成る対児感情評定尺度と育児肯定,育児否定,葛藤,成長志向から成る母性意識尺度を用い,入院中・退院後3ヶ月前後・退院後1年前後の調査を行った結果,以下のことが明らかになった.1)子どもへの接近は,入院中は満期産の母親よりも有意に低く,在胎過数と正の相関が見られたが,退院後は増加し1年後には在胎過数による相関も,満期産との差も見られなくなった.2)成長志向得点は入院中満期産と比較し有意に低く,退院後は職業との相関が見られた.育児肯定得点は入院中のみ初産のNICU児の母親が有意に低かった.NICUに入院する子どもの母親には,特に入院初期,初産で在胎過数が少ないほど母親のこころの回復過程を見守りながら,母子の相互交流を手助けする看護の重要性が確認された.The aim of this study was to determine changes in maternal consciousness and feelings toward babies admitted to Neonatal Intensive Care Unit (NICU) , and to compare their characteristics with mothers who had given birth to full-term infants. Two scales were used in this study : (1) a rating scale of feelings toward babies based on a measurement of approach and avoidance, and (2) a maternal consciousness scale that measured infant care, childcare rejection, complications, and growth. Data was collected three times : during hospitalization, three months after discharge, and one year after discharge. 1) Mothers of NICU infants were significantly less likely to approach their infants during hospitalization than mothers of full-term infant births with a positive correlation with the number of weeks of pregnancy lacking for a full-term birth. However, after hospital discharge, the degree to which mothers of NICU infants approached their infants increased. After one year, there was no correlation with weeks of pregnancy, and the previous difference with full-term infant births became indistinguishable. 2) Growth scores for NICU infants of mothers who had been discharged were significantly lower when compared with those during hospitalization. Furthermore, a correlation between infant growth and employment was found among mothers after hospital discharge. Infant care scores of mothers of NICU infants were significantly lower for mothers who were having their first child. For mothers of infants admitted to NICU, especially for mothers giving birth for the first time or being hospitalized for the first time, it is important for nurses to encourage a mutual exchange between mother and infant while also ensuring that the mother recovers psychologically.
著者
萬 美奈子 木浪 智佳子 三国 久美 ヨロズ ミナコ キナミ チカコ ミクニ クミ Minako Yorozu Chikako Kinami Kumi Mikuni
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and Social Services, Health Sciences University of Hokkaido
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.37-44, 2011-03-31

未就学児の保護者を対象に,肥満予防のための保健教育に対するニーズを明らかにすることを目的に,自記式質問紙による調査を行い,347名より回答を得た.88.7%の保護者が子どもの肥満や生活習慣病予防について知りたいと回答した.保健教育の運営に関しては,集団形式で幼稚園や保育園を活用し,食事・肥満が子どもへ与える影響などの保護者の関心のある内容について,参加しやすい時間に栄養士などの専門職が実施するという方法が望まれていた.さらに,自分の子どもが将来肥満になるのではという不安を持つ保護者や,実際の肥満度が高い子どもを持つ者は,プライバシーに配慮した個別形式の保健教育を求めていた.An anonymous survey was conducted for the purpose of understanding what parents of preschool children expect from health education for preventing obesity. Questionnaires were collected from 347 respondents. To the question "Do you want to know how to prevent obesity and lifestyle-related diseases in children?", 88.7% of respondents answered "Yes." Regarding the methods for providing health education on this subject, many of the respondents reported hoping that nutritionists or other specialists would talk to groups of parents about the effects of daily diet and obesity on children. They also hoped that health education would be provided at nursery schools and kindergartens at the most convenient time of day for the parents. Respondents who have overweight children or are afraid that their children may become obese in the future tended to want more privacy-conscious, individualized instruction.
著者
木浪 智佳子 キナミ チカコ Chikako KINAMI
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and Social Services, Health Sciences University of Hokkaido
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.15-20, 2007-03-31

本研究の目的は,外来通院で緩和的化学療法を受けるがん患者の社会的側面に生じる影響を明らかにすることである.外来通院中の消化器がん患者9名に対し半構成的面接を行い,データの内容から外来通院で治療を継続することによって生じる社会的側面への影響について分析した結果,「従来の役割が維持できる」「治療中の気晴らしの選択肢がある」「気楽で気兼ねがない」「周囲の人の支援や助言を取り入れやすい」「家族や友人とつながりを持つ安堵と喜び」という外来通院での治療を肯定的にとらえる項目と,「リザーバー管理の負担」「就業の制限」「経済的な負担」といった治療継続に困難を来たす項目が抽出された.限られた時間で大勢の患者と関わる外来施設において,緩和的化学療法を安楽で効果的に継続していくための看護援助への示唆が得られた.Purpose : The purpose of this qualitative research is to identify the impact on the daily life of people receiving chemotherapy in the outpatient setting. Method : The participants were 9 outpatients who are receiving chemotherapy at a metropolitan general hospital. Data was collected by interviewing the participants using a semi-structured questionnaire and analyzed qualitatively. Results : The participants identified several advantages and disadvantages in receiving chemotherapy in the outpatient setting that allows them to live at home. The advantages included being able to continue their role within the family, having more options for diversion, being more comfortable and less feeling constraint, and more accessible to the help and advice from their own families and friends. The disadvantages were the possible burden for the family such as the management of infusion and the increase of medical expenses, the restriction of the daily life activities and work.
著者
西 基 松下 悠里子 松久 佑美
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and Social Services, Health Sciences University of Hokkaido
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.41-43, 2007-03-31

2002年に厚生労働省が行った労働者健康状況調査の資料を基に,週休1日制と完全週休2日制の労働者の健康状態を比較した.資料にはそれぞれの集団の特徴の記述はなかったが,週休1日制の労働者の疲労部位の特徴はサービス関係の職種に似ていたものの,ストレスはサービス関係の職種より明らかに低く,特定の職種に偏った集団とは考えにくかった.週休1日制の労働者の平均年齢は,高血圧を有する者の割合から考えて,若くはなく,また,痛風や肝臓病が比較的多かったことから,比較的男性の多い集団と思われた.このような特徴は必ずしも良好な健康状態を担保しないにも拘わらず,週休1日制の労働者の,特に精神的な健康状態は,完全週休2日制の労働者より良好であった.連続した休日は精神的疲労の回復には必ずしも効率が良いとは限らない可能性が考えられた.
著者
澤田 あずさ 明野 聖子 吉森 友香 工藤 禎子 サワダ アズサ アケノ セイコ ヨシモリ ユウカ クドウ ヨシコ Azusa SAWADA Seiko AKENO Yuuka YOSHIMORI Yoshiko KUDO
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and Social Services, Health Sciences University of Hokkaido
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.13-21, 2009-03-31

母親の肯定的な感情を支持する支援のための基礎資料を得ることをねらいに,1歳6ヵ月児の父親の労働時間・育児参加時間からみた母親の育児幸福感を明らかにすることを目的とした.対象は1歳6ヵ月児健診を受診した母親である.健診時に,説明と同意のうえ,母親の育児幸福感(清水ら,2006)と父親の労働時間・育児参加時間に関するアンケートを配布し,郵送法で回収した.全122人に配布し,59件の有効回答を得た.分析は単純集計の後,両親・子ども・父親の労働時間などの各変数ごとに母親の育児幸福感尺度の平均点を算出した.その結果,父親の帰宅時間は20~21時が42.4%であった.父親の過の労働時間は平均59.2±15.0時間であり,50時間以下が33.9%であった.父親の育児参加時間は,平日は1~2時間が40.7%と多く,ほとんどなしが全体の4分の1を占め,休日は半日ぐらいが55.9%と多かった.父親に子どもを任せて母親が外出できる時間は,ほとんどなしが54.2%であった.両親・子ども・家族の特性別及び父親の労働時間・帰宅時間・育児参加時間別にみた母親の育児幸福感得点に有意な差はみられなかった.父親に任せて母親が1人で外出できる時間において,「ほとんどなし」または「半日以上」の場合に母親の育児幸福感は高く,「1~2時間」の場合に育児幸福感は低く,有意な差がみられた.The present study was conducted in order to clarify correlations between child care happiness of mothers whose children was 1 year and 6 months old and fathers' working and child care hours. Questionnaires were handed to 122 mothers who came to health check at the health center of A city. Analysis was performed on valid responses obtained from 59 individuals. From the analysis of correlations between child care happiness of mothers and fathers' working and child care hours, the following results were obtained. Forty two percent of fathers return to home at 20 ~ 21 o'clock. Mean of working hours of fathers were 59.2±15.0. Forty percent of fathers spend on 1~2 hours for child care on weekday, and 55.9% spend with children on half of day on weekend. There were no correlations between characteristic of parents, working and child care hours of fathers and child care happiness of mothers. Child care happiness of Mothers who could not go out and who could go out among half of day were higher than who could go out about 1~2 hours.
著者
今西 良輔
出版者
北海道医療大学看護福祉学部学会
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and social Services, Health Sciences University of Hokkaido (ISSN:13498967)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.27-34, 2013-03-31

本研究は,発達障害児を家庭の中で育児する父親が,子どもに向き合う中でどのような経験を積み上げているのかを明らかにすることを目的とした.研究結果より『子どもへ関わりたいが上手くいかない良くわからない』『育児は母親頼りから,父親なりに協力していく』『障害はよくわからないが,ありのまま受ける』『仕事重視の生活に葛藤し,調整を図る』『父親自身の模索と変化』『仲間や信頼できる人との出会い」『子どもを社会に出したい』『子どもの将来が不安になる』の8つの体験が導かれた.父親は,育児姿勢の変化だけでなく,父親自身を柔軟的に変化させ成長していた.父親は,自ら子どもに関わろうと努力もしているが上手くいかない.家庭に関わる時間が乏しいため子どもに違和感を感じたとしても具体的かつ深刻な状態を直接目にすることが難しい.父親自身が発達障害について理解しやすい体験やきっかけを求めているのではないかと考えられた.
著者
峯岸(竹内) 夕紀子 蒲原 龍 志渡 晃一
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and Social Services, Health Sciences University of Hokkaido
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.105-113, 2008-03-31

栄養士119名を対象に,抑うつ感(CES-D)とその関連要因を調査した.CES-Dの合計得点で「高得点群」と「低得点群」に分け,身体症状や職業性ストレス等との関連を検討した.結果,以下のように,抑うつ感は多様な要因と関連していることが示唆された.1)身体症状(11項目)では,「眠れない」,「めまい」などの7項目で,「低得点群」に比べて「高得点群」で有訴率が高かった.2)職業性ストレス(38項目)では,「出口が見えない」,「働きがいがない」などの6項目で「高得点群」の該当率が高く,「自分の意見を反映できる」,「職場の雰囲気は友好的」などの9項目で「低得点群」の該当率が高かった.3)上司に関する項目(13項目)では,「よい仕事をしても認めてくれない」などの2項目で「高得点群」の該当率が高かった.