著者
島田 裕之 古名 丈人 大渕 修一 杉浦 美穂 吉田 英世 金 憲経 吉田 祐子 西澤 哲 鈴木 隆雄
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.105-111, 2006-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
25
被引用文献数
50

本研究では,地域在住の高齢者を対象としてTimed Up & Go Testを実施し,性差と加齢変化を調べた。また,転倒,活動性,健康感との関係を調べ,高齢者の地域保健活動におけるTimed Up & Go Testの有用性を検討した。対象は地域在住高齢者959名であり,平均年齢74.8歳(65-95歳),男性396名,女性563名であった。検査および調査項目は,身体機能検査としてTimed Up & Go Test,歩行速度,握力,膝伸展筋力,Functional Reach Testを実施した。質問紙調査は過去1年間の転倒状況,外出頻度,運動習慣,趣味,社会活動,主観的な健康感を聴取した。Timed Up & Go Testを5歳の年齢階級別に男女差を調べた結果,すべての年代において男性が有意に速い値を示した。加齢変化をみると男女とも70歳末満と以上の各年代に有意差を認めた。男性においては他の年齢階級間に有意差は認められなかった。一方,女性では70-74歳と80-84歳,85歳以上,および75-79歳と80-84歳の間,80-84歳と85歳以上の年代間において有意差を認めた。転倒,活動性,健康感との関係では,転倒状況,外出頻度,運動習慣とTimed Up & Go Testの有意な関係が認められた。以上の結果から,高齢者におけるTimed up & Go Testは性差と加齢による低下が明らかとなった。また,転倒,外出頻度,運動習慣と密接な関係が示され,地域保健活動の評価指標としての有用性が確認された。
著者
鈴木 隆雄 岩佐 一 吉田 英世 金 憲経 新名 正弥 胡 秀英 新開 省二 熊谷 修 藤原 佳典 吉田 祐子 古名 丈人 杉浦 美穂 西澤 哲 渡辺 修一郎 湯川 晴美
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.39-48, 2003 (Released:2014-12-10)
参考文献数
25
被引用文献数
4

目的 70歳以上の地域在宅高齢者を対象として,容易に要介護状態をもたらすとされる老年症候群,特に転倒(骨折),失禁,低栄養,生活機能低下,ウツ状態,認知機能低下(痴呆)を予防し,要介護予防のための包括的健診(「お達者健診」)を実施した。本研究では,その受診者と非受診者の特性(特に健康度自己評価,生活機能,ウツ傾向,主観的幸福感,転倒経験,慢性疾患有病率および身体機能としての握力における差異)を明らかにすることを目的とした。方法 調査対象者は東京都板橋区内在宅の70歳以上の高齢者863人である。「お達者健診」には,このうち438人(50.8%)が受診した。健診内容は老年症候群のさまざまな項目についてハイリスク者のスクリーニングが主体となっている。本研究では前年に実施された事前調査データを基に,「お達者健診」の受診者と非受診者の性および年齢分布の他,健康度自己評価,老研式活動能力指標による生活機能,GHQ ウツ尺度,PGC モーラルスケールによる主観的幸福感,転倒の既往,慢性疾患有病率,および身体能力としての握力などについて比較した。成績 1) 健診受診者における性別の受診者割合は男性49.0%,女性51.0%で有意差はなかった。受診者と非受診者の平均年齢は各々75.3歳と76.4歳であり有意差が認められ,年齢分布からみても非受診者に高齢化が認められた。 2) 健康度自己評価について受診群と非受診群に有意な差が認められ,非受診群で自己健康度の悪化している者の割合が高かった。 3) 身体機能(握力)についてみると非受診者と受診者で有意差はなかった。 4) 生活機能,ウツ傾向,主観的幸福感についての各々の得点で両群の比較を行ったが,いずれの項目についても非受診者では有意に生活機能の低下,ウツ傾向の増加そして主観的幸福感の低下が認められた。 5) 過去 1 年間での転倒経験者の割合には有意差は認められなかった。 6) 有病率の比較的高い 2 種類の慢性疾患(高血圧症および糖尿病)についてはいずれも受診者と非受診者の間に有病率の差は認められなかった。結論 今後進行する高齢社会において,地域で自立した生活を営む高齢者に対する要介護予防のための包括的健診はきわめて重要と考えられるが,その受診者の健康度は比較的高い。一方非受診者はより高齢であり,すでに要介護状態へのハイリスクグループである可能性が高く,いわば self-selection bias が存在すると推定された。しかし,非受診の大きな要因は実際の身体機能の老化や,老年症候群(転倒)の経験,あるいは慢性疾患の存在などではなく,むしろ健康度自己評価や主観的幸福感などの主観的なそして精神的な虚弱化の影響が大きいと推測された。受診者については今後も包括的な健診を中心とした要介護予防の対策が当然必要であるが,非受診者に対しては訪問看護などによる精神的な支援も含め要介護予防に対するよりきめ細かい対応が必要と考えられた。
著者
史 常徳 西澤 哲 足立 和隆 遠藤 萬里
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science : journal of the Anthropological Society of Nippon (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.467-484, 1995-12-01
参考文献数
16
被引用文献数
1 4

直立二足姿勢をとるヒトの脊柱は, 他の動物とは異なった形態を持つことが考えられる。本研究はヒトの脊椎骨の形態と姿勢との機能的な関係を明らかにする前段階として, 椎体の形態的特徴を抽出することを目的として行った。資料はヒト, チンパンジー, ニホンザル, ニホンカモシカである。計測項目は椎体に関する腹背側垂直径, 頭尾側矢状径, 頭尾側横径の6項目である。この結果ヒトにおける椎体の形態的特徴が他の哺乳類と異なる点は, 1) L4とL5の背側垂直径が腹側垂直径より著しく小さい, 2) 椎体横径がC3~C7, T8~最終腰椎まで著しく増加する, 3) 頸椎と腰椎椎体のプロポーションが太く短いということであった。これらの特徴とヒトの直立二足姿勢との関係についての考察を行った。
著者
鈴木 隆雄 杉浦 美穂 古名 丈人 西澤 哲 吉田 英世 石崎 達郎 金 憲経 湯川 晴美 柴田 博
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.472-478, 1999-07-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
27
被引用文献数
54 44

比較的健康な地域在宅高齢者527名を対象として, 面接聞き取り調査, 身体属性の測定, 腰椎骨密度および歩行能力などの運動能力を1992年の初回調査時に測定し, その後5年間追跡調査を行ない, その間での2回以上の複数回転倒者について, その関連要因の分析を行なった.その結果, 2回以上の複数回転倒者では非転倒者あるいは1回だけの転倒者に比較して初回調査時において, 自由歩行速度, 最大歩行速度, 握力などの運動能力や, 皮下脂肪厚, および老研式活動能力指標総得点などで有意な差が認められた. さらに, 5年間での追跡期間中の複数回転倒の有 (1), 無 (0) を目的変数とする多重ロジスティック回帰モデルによる分析を行なった結果,「過去1年間の転倒経験」が最も強い正の, そして自由歩行速度および皮下厚が負の有な関連として抽出された.このような地域高齢者を対象とする縦断的追跡研究の結果から, 転倒や転倒に基因する多くの骨折に対して,「過去の転倒経験」を問診で詳細に聞き取ることや, 簡便な「自由歩行速度」を測定することにより, 転倒ハイリスク者をスクリーニングすることが可能であり, ひいては転倒・骨折予防に極めて有効な指標となることが考えられた.
著者
島田 裕之 古名 丈人 大渕 修一 杉浦 美穂 吉田 英世 金 憲経 吉田 祐子 西澤 哲 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.105-111, 2006-06-20
被引用文献数
27

本研究では,地域在住の高齢者を対象としてTimed Up & Go Testを実施し,性差と加齢変化を調べた。また,転倒,活動性,健康感との関係を調べ,高齢者の地域保健活動におけるTimed Up & Go Testの有用性を検討した。対象は地域在住高齢者959名であり,平均年齢74.8歳(65-95歳),男性396名,女性563名であった。検査および調査項目は,身体機能検査としてTimed Up & Go Test,歩行速度,握力,膝伸展筋力,Functional Reach Testを実施した。質問紙調査は過去1年間の転倒状況,外出頻度,運動習慣,趣味,社会活動,主観的な健康感を聴取した。Timed Up & Go Testを5歳の年齢階級別に男女差を調べた結果,すべての年代において男性が有意に速い値を示した。加齢変化をみると男女とも70歳末満と以上の各年代に有意差を認めた。男性においては他の年齢階級間に有意差は認められなかった。一方,女性では70-74歳と80-84歳,85歳以上,および75-79歳と80-84歳の間,80-84歳と85歳以上の年代問において有意差を認めた。転倒,活動性,健康感との関係では,転倒状況,外出頻度,運動習慣とTimed Up & Go Testの有意な関係が認められた。以上の結果から,高齢者におけるTimed up & Go Testは性差と加齢による低下が明らかとなった。また,転倒,外出頻度,運動習慣と密接な関係が示され,地域保健活動の評価指標としての有用性が確認された。
著者
西澤 哲 古名 丈人 杉浦 美穂 奥住 秀之 長崎 浩 伊東 元 藤田 祐樹 荻上 真理 上田 裕
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム
巻号頁・発行日
vol.15, pp.131-140, 2000
被引用文献数
6 4

Introduction: The gait of older adults is characterized by such gait parameters as slow walking velocity and small range of change in joint angle. The effect of aging on these parameters has been analyzed independently, but the strength of the aging effect on each parameter has not been determined in detail. In the present study, using principal component analysis and analysis of variance, we clarified the strength of the aging effect on gait parameters. Method: The participants were 616 older adults (65 to 91 years old) living in Nangai Village located in northern Japan and 45 young adults (20 to 39 years old). The participants were classified by gender and into five age groups (aged 20 to 39 years, 65 to 69 years, 70 to 74 years, 75 to 79 years, and 80 years or above). They walked on an 11-meter straight walkway at their preferred speeds. The coordinates of markers attached to participants' iliac spines, knees, ankles, toes, and heels were measured using a Vicon-370 system (Oxford Metrics, Oxford, England) during 5 meters near the middle of the walkway. The sampling frequency was 60 Hz. From this three-dimensional data, we calculated 34 representative gait parameters. For these parameters, through principal component analysis and two-way analysis of variance by gender and age groups, we determined aging-related principal components and parameters belonging to each component. Results and Discussion: Through principal component analysis, we detected ten components with over one point of eigen value. After two-way analysis of variance for component score, we classified components according to whether they were age-related or not. The age-related components were the first principal component, with 26.0% of contribution rate. In the first component, stride length, toe height on heel contact, peak extension angle around the hip joint, and magnitude of vertical sway had a high component score; we labeled this component the "stride length" component. The parameters of cadence, single stance time, and magnitude of lateral sway had a high score in the second component (11.0% of contribution rate), which we labeled the "stride duration" component. In the second component, we detected significant gender difference. Components with less than 5% explanation of variance were mainly related to parameters on relative time in one walking cycle, such as timing of maximum knee extension. These results suggest that parameters related to stride length may strongly characterize the gait of older adults. In other words, the gait of older adults may be recognized mainly from their short stride length. The low explanation of variance for timing parameters may suggest that the pattern of kinematic change in one gait cycle is determined strictly, whereas kinematic magnitude is strongly affected by aging.