- 著者
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小栗 幸夫
- 出版者
- 千葉商科大学
- 雑誌
- 千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.1, pp.11-50, 2006-06-30
- 被引用文献数
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ソフトカーのコンセプトは,車の最高速度を制御し,そのことを外部に伝えるることで,安全な交通環境を生み出し,道路整備を中心とした都市開発からの転換を進めることを目標として,1980年代に生まれた。2000年に政府の公募ミレニアム・プロジェクトに採択され,様々な広報活動とともに装置開発と社会実験をおこない,2005年には愛・地球博に登場し,この期間にソフトカーで全国の自治体,小学校,大学などをめぐるキャラバンをおこなった。本稿(上)では,まず,自動車速度の危険性,20世紀の都市開発の問題性,これまでの都市計画手法やITS(Intelligent Transport System : 高度道路交通システム)の限界などを論じ,最高速度制御導入の必要性を議論する(第2章)。そして,ソフトカー・プロジェクトのこれまでの経緯と成果(第3章),わが国の関連プロジェクトなど(第4章)を説明する。本稿(下)で,ソフトカーの社会的受容性と今後の課題(第5章)を論じる。ソフトカーを知り,体験した各層の人々(ソフトカー走行実験地区の人々,ソフトカー・モニター,市民一般,小学生,大学生,交通計画・ITS・都市計画など専門家,交通安全組織,企業,政府・自治体の行政・立法担当者など)とのコミュニケーション,アンケート,レポートなどから,(1)ソフトカーの概念は新しく,社会的認知と受容を一挙に広げることはできなかったが,コンセプトや実物に触れた人の多くがその意義を評価し,積極的に協力する個人や企業が多くあらわれ,(2)電気自動車への装置の搭載や万博参加などから注目度は増し,(3)国際ネットワークの形成もはじまり,(4)自動車産業や政治の壁は厚く高いが,その中にも速度表示・制御への関心,協力,具体化の萌芽が見られた。また,(5)交通専門家などから出された実現の困難性に関する疑問も対応が可能である。そして,今後,コミュニティをベースとしたプロジェクトを継続し,大学キャンパスの自動車規制やスクールゾーンなどの施策と連動してソフトカーを実用する"ソフトカーゾーン"を生み出し,関係者へのフィードバックをおこないながら社会的認知と受容を段階的に向上させ,このようなゾーンの連鎖によってソフトカーを普遍的なものにしていくことが課題であることを論じる。