著者
今村 修 イマムラ オサム Osamu IMAMURA
雑誌
千葉商大論叢
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.1-8, 2007-09

本稿では,贈与又は寄付金の課税のタイミングについて検討する。「贈与」又は「寄付金」と用語は,同じではないが意味するところは同じである。「贈与は,当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える」(民法549条)といっても,「……寄附金の額は,寄附金,拠出金,見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず,内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費,接待費及び福利厚生費とされるものを除く。次項において同じ。)をした……」(法人税法37条7項)といっても同じことであり,要するに対価性のない給付を意味している。(以下「贈与」という用語を使う。)贈与の課税関係は,贈与を行うサイド(贈与者)と贈与を受けるサイド(受贈者)に分けて整理される。ここで,検討するのは課税のタイミングであるが,これは「贈与債務」の存否の問題と繋がっている。そこで,まず贈与をめぐる課税関係について概観し,ついで課税のタイミング即ち受贈者サイドであれば課税時期,贈与者サイドであれば損金算入(控除)時期について論じ,最後に課税上「贈与債務」は存在するか(「贈与債務」の存否)について論じる。
著者
譲原 晶子
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.215-224, 2013-09
著者
穐山 守夫
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-29, 2007-06

まず,英米と日本における新自由主義政策の展開の中に日本の新自由主義的労働政策を位置づけ,その大まかな展開を概観する。次にその政策の理論的基優等を述べ,その意義と問題点を検討する。第三にこれを踏まえて,雇用の流動化政策・賃金・労働時間の弾力化政策・女性の保護法制の規制緩和・外国人労働者の受け人れの規制緩和の意義と問題点を吟味した。結びとして,新自由主義的労働政策の必要性を認めつつ,労働者の自己決定権や勤労権保護の観点から,新自由主義的労働政策の行き過ぎを抑制する必要性を指摘した。
著者
中村 壽雄
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.317-326, 2014-09
著者
石山 嘉美
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.61-71, 2008-03

株式リターン(キャピタルゲインと配当の和を株価で割ったもの)の研究の歴史は長い。その中でメインテーマとなってきたのは,それが予測可能かという問題である。予測は不可能とする研究者が使ってきたモデルはランダムウォークのモデルであり,これは明日,来月のリターンをサイコロを振ったときに出る目の数と同じようにランダムな変数と考える。データによってこのモデルを検証すると棄却されることが多いので,ランダムウォーク説は否定されていると見ていい。これに対立するものとして,株式リターンの時系列データの中に系列相関があるという見方があり,その検証も行われてきた。大多数の研究は,期間のとり方に応じ,正または負の系列相関があることを示している。これは一定の予測可能性の存在を示すものである。
著者
平井 友行
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.23-30, 2007-12

本稿では,最近期,個人の資産運用においても,少しずつ取り上げられるようになったオルタナティブ投資について論じてみたい。「絶対リターンを追及する」等々オルタナティ投資ついては様々なフレーズで表現される。こういった環境の中,オルタナティブ投資を我が国において先行的に開始した確定給付型企業年金運用の運用手法の在り方を参考にしつつ,今後,個人がオルタナティブ投資に取り組むにあたって冷静に留意すべき点を抽出しようとした。オルタナティブ投資において,最近期,我が国で喧伝されているフレーズにはその資産特性を十分に検討すること無く,過去のヒストリカルトラックレコードなどをベースに投資が行われることが多い。確定給付型企業年金のような機関投資家ですら,例えば,ヘッジファンドの特つリターン・リスク特性については,非常に詳細な検討を施し,投資を実施しようとしている。個人投資家にとっては,ヘッジファンドにおいてもファンドオブファンズの投資が限界だとした場合,個別のシングルファンドの運用機関選択は専門的なゲートキーパーに依存せざるをえない。ただ,しかし,自身のポートフォリオを構成する場合には,現資産であるシングルファンドが総体としてどのような特性を有する投資対象群であるかを十分に検討する必要がある。最近期,生じているサブプライム問題も,証券化という手法を通じて,原資産の特性を変化させた,恰も,原資産の特性を離れた,リスク・リターン商品が出来上がるような誤解の中で問題が深くなりはじめている。更に,過剰流動性を背景にレバレッジを生じることで,表面上のリスク・リターンは大きく生じているように見えるというものである。伝統的資産の分散投資においても,最適化計算によって「魔法の」資産配分が導かれるわけではないこと,やはり,内外株式,内外債券といった伝統的資産の特つリターン・リスク特性を十分に把握するといった投資対象の検討が重要である。オルタナティブ投資といっても,何か特別な資産がある日突然生じたわけではないこと,何といっても,資産の特つ特性についてじっくりとした検討を経て初めて投資対象となることを我々は肝に銘じて置くべきである。
著者
鎌田 光宣
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.31-40, 2007-12

This paper is a part of my study on drawing methods for computer graphics to make Japanese cartoon. I suggest a technique to illustrate hair by using toon rendering method. Firstly, I outline the relation between the toon rendering and animation. Secondly, I explain a technique to write hair on a three-dimensional computer graphics (3DCG), and consider about problems we face when applying it to animation. Finally, I suggest a method to make a contour model for hair automatically to solve the problems.
著者
本間 靖夫
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.1-30, 2006-09-30

本稿は1956年(昭和31年),当時の日本火災海上保険株式会社がひきおこした架空契約事件,いわゆるテーブル・ファイア事件(机上火災事件)の顛末とそれがもたらしたものについての事例分析を通して,損害保険会社の公共的性格と社会的責任を検討したものである。ここでは事件をできるだけ事実に則して具体的に多面的に示すこと,また本来の補償機能とともに金融仲介機能や貯蓄機能を併せもつようになった金融機関としての損害保険会社と銀行の公共的性格と社会的責任を,業務と経営,ならびに法的側面から比較検討することを心がけた。ここでいうテーブル・ファイア(机上火災)とは,損害保険会社の代理店に対する規定を超える手数料支払いの財源を確保するため,帳簿上で架空の火災保険契約が罹災したことにして資金を捻出する方法をいう。この事件を契機に損害保険業界は戦後の混乱期を脱して,高度成長期の損害保険事業の正常化と健全な発展に資する1つの革新をなしとげ,秩序ある市場構造が確立したと評価することができる。本稿の事例分析は,経済環境の変化に伴い現在,金融機関のみならず一般の企業の公共性と社会的責任のあり方を検討する広範な課題のための素材を提供するものともなる。本稿の構成は以下のとおりである。はじめに 1.損害保険の仕組みと損害保険事業の法制 2.戦後損害保険事業の発展と正常化 3.「日本火災事件」の経過 4.事件の結果と争点 5.事件をもたらしたものと事件の意味 むすびに代えて一銀行の公共的性格との比較
著者
谷川 喜美江
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.193-221, 2002-12-31

給与所得の持つ独特の性質のため当該所得を得るために必要とした経費の客観的な測定は困難とされており,現在我が国所得税法に認められている給与所得控除は,「手厚い保護」であるとか「過大な控除」であると悪評を高めるほどの控除が認められるに至る。そこで,所得税全体における必要経費の意義と給与所得控除のあり方,給与所得控除の沿革と性格,過去の給与所得に関する主な判例,諸外国における給与所得に関する控除の現状,評価の問題を検証することにより,給与所得控除の実額控除制度化の可能性について検証した。上記検証から,理論上は給与所得の必要経費実額控除の制度化は達成されるべきであることが理解できるが,実際は必要経費について家計費との厳密な区分や客観的な数値による測定の困難性が存在し,さらに給与所得に対する必要経費の実定法上の規定がないことから困難を要する。よって,給与所得控除の「把握控除」としての側面を考慮し「給与所得実額特別控除」として一定額の控除と,現行において給与所得の必要経費として客観的な数値の測定が可能であるとされている「特定支出控除」の5項目とを組み合わせたものを給与所得控除として認めるべきである。そして現行の給与所得控除の額を「手厚い保護」であるとか「過大な控除」とならない程度への引き下げを行い,上記控除との選択適用を認めることも同時に認めるべきである。このような制度を設けることで給与所得者と事業所得者等の公平もある程度是正され,給与所得者の確定申告を行う機会を増大させることにより政治への参加意欲を向上させることも可能となろう。
著者
久保田 茂隆 中村 昭一
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.47-63, 2004-03-31

ITの急速な進展により,私たちの身の回りには,気が付かない所でコンピュータが活躍している。ユビキタス社会の到来がいわれるようになったが,予想以上に早く進み始めている。ユビキタス社会の特徴は, (1)いつでもどこでも必要な情報を入手できること (2)あらゆる「モノ」が情報の受発信を行う点にある。ユビキタス社会の実現のためには,統一された定義,概念のもとで基盤を整備し,システムを作っていかなければならない。ユビキタスは,Mark Weiser氏が提唱した概念であるが,東京大学の坂村健氏が提唱した「どこでもコンピュータ」と同じ概念である。ユビキタス社会では,私たちの生活も便利になるであろうが,インフラの整備に多額の投資が必要となり,また,多くの個人情報が集約される結果,プライバシー保護が大きな課題となる。0.3〜0.4mm角のICチップが,社会を変えていくことになる。ICチップ(ICタグ)は部品であり,これを実ビジネスでどう活用するかということが重要であり,システムとして価値が生まれる。旅行業界では,60社以上が参加する「手ぶら旅行」の実証実験や,貨物輸送,量販店での店員の効率的接客,その他多くの活用・実証実験が行われている。本稿では,現在のユビキタス・コンピューティングの概念をデバイス側やサーバー側からの考え方を紹介し,現状の研究機関・企業・政府の取り組みを明らかにして,技術的課題・問題点を抽出し,ユビキタス・コンピューティングを実現する為の環境・条件を明らかにすることを試みている。
著者
藏田 幸三
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.135-164, 2002-12-31

本稿の目的は,米国情報通信産業に対する成長戦略を明らかにすることにある。 1991年高性能コンピュータ法の議会記録を中心に,政策形成の過程を詳しく分析する。1990年代に日本と対照的な成長をつづけた米国のIT戦略について,産業政策の視点から考察することで,これまであまり注目されてこなかった産業や外部関係者との接点を明らかにしたい。そのために,アメリカの政策決定の中枢をなす議会,特に委員会の公聴会に着目してその速記録を詳しく分析する。その方法として政策情報データベースをつくって,分析と検証を精密に行いたい。このような考察の結果,米国のIT戦略が産業界からの影響と軍事・学界からの支援によってつくられたものであり,それが大統領のリーダーシップによって推進されたところに成功の要因があったと考えられる。またそれを可能にしたのは,IT政策についてオープンに議論できる議会・公聴会というシステムの存在であった。そこで,外部から情報や批判などの多様なリソースをとりいれ,政策に活用することができたのである。これらの考察を通じて,日本のIT産業政策に対するインプリケーションを提示してみたい。