著者
大西 道一
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.147-152, 2004

日没時太陽は上下にひしゃげた疑似楕円形になる。太陽からの光線は水平線に近づくほど上方に大きく曲がる。これを大気差というが、その数値はラドー、ベッセルなどにより研究されている。本論文ではラドーの大気差の実験式を使用して水平線近くの太陽の形状を作図する大気差曲線線図を開発し、この線図を使用して太陽が水平線に没するまでの形状の変化を追跡した。<BR>また日没時、大気の異常によりダルマ型、Ω型などの変形太陽が出現する。このときの大気差曲線がどうなっているかを、変形太陽から大気差曲線を逆に求める方法を開発した。これにより変形太陽の経時変化を追跡でき、よく出現する形状をシミュレートすることができた。<BR>古来北欧の伝説にもなっているグリーン・フラッシュの現象もこの大気差曲線線図で解明することができた。1992年、バード隊が南極観測基地リトル・アメリカでグリーン・フラッシュを35分間観測したという記録があるがこれを図学的に解明した。<BR>この研究のために日没時の連続写真を撮影した。狭い瀬戸内海で対岸の山脈に邪魔されなく太陽が完全に水平線に水没するという写真が得られた。常識で考えられないこの理由を天文航法で用いる視地平距離と視達距離の考え方を瀬戸内海周辺の地形図に適用して図学的に解明した。
著者
林 桃子 張 冠文 茂登山 清文
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.13-21, 2015

イメージを言語を通して理解するのではなく,イメージを直接見ることによって受け止め,解釈すること(イメージリテラシー)が重要だと考えている.本稿では,イメージを理解するためのより効果的な方法への手がかりとして,人が写真を見る際の注視行動の特性を分析することを目的とする.写真の被写界深度と注視行動の関係についての実験と,注視率,注視範囲などから注視行動の特性を測るための実験を実施した.分析では,注視点のクラスタ間の距離,クラスタの範囲,タイムスパン,クラスタ数を特徴ベクトルとし,k-means++法を用いてクラスタ分けを行った.結果として,注視行動の特性に共通性を見いだすことができた.
著者
森田 克己
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.157-162, 2004

本研究は拙稿「螺旋の分岐パターンについて」 (1) の続報である。前稿では空間曲線を対象とした分岐パターンについて考察したが、本稿では平面曲線を対象とした分岐パターンの生成をし、造形的に検討した。<BR>螺旋の分岐パターンを生成するための条件を1.螺旋の種類2.分岐区分3.分岐段階4.分岐数5.分岐角度6.旋回分岐角度7.旋回数8.旋回方向9.旋回の種類10.旋回方向による分岐区分11.主螺旋の分岐区分の通り設定した。螺旋の分岐パターンを生成するためのアルゴリズムは1.主螺旋の設定2.分岐点の設定3.分岐段階の設定4.分岐数の設定5.旋回数の設定である。<BR>以上の設定に基づき螺旋の分岐パターンのバリエーションを生成した。その結果、次のことが確認できた。1.求心型分岐の場合は、分岐段階の増加に伴い細部にその形状の特徴を認めることができる。2.遠心型分岐の場合は、分岐段階の増加に伴い中心の密度が高まる傾向がある。
著者
森田 克己
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement1, pp.113-118, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
2

われわれの日常に密接に関わりのある紐は, 古くから実用的あるいは装飾的な目的で, 世界中の国々において様々な状況で使用されてきている。造形的な視点から見れば, 大変魅力的な存在であるといえる.紐はその制作方法の選択肢によって, 制作された紐の構造の相違を示すが、本稿では、紐の制作方法における「織る」という操作に注目した。そして, 織ることによってできるパターンを織パターンと定義し、CGを用い、造形的に魅力のある織パターンのバリエーションを生成し、紐の構造に基づいた織パターンの造形性について検討した。
著者
前田 修治
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.9-12, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
7

本論文は, 角丸のうち, 平面図上で4等分した円と正方形がすべて同形で, 立面図の上下が平行な角丸の展開法について研究したものである.この形体の展開図の曲線部分を等分し, その一部を円弧とみなせば, 展開図の中心点を求めることにより, 従来の三角形法に比較すると, 容易に作図することができる.本論分では, 円弧の描き方と中心点の求め方について述べているが, 簡単な数式により, 作図の線上に三つの点を求めるだけで展開図を描くことができる.
著者
吉田 勝行 吉田 将行
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.35, no.Supplement, pp.127-132, 2001 (Released:2010-08-25)
参考文献数
4
被引用文献数
1

パーソナル・コンピューター, カラー・プリンター, ディジタル・カメラ等のハードウェアと画像処理ソフトウェアの普及により, 3次元立体や空間に関する図や写真の加工が容易となり, その結果が説明図として, 一般にも利用されるようになってきている。しかし, 図法に対する理解が無いまま3次元立体や空間に関する図に加工がなされると, 思いもよらない誤りが図中に生じ得る。しかも, 平成10年12月14日に告示の小学校及び中学校学習指導要領, および平成11年3月29日に告示の高等学校学習指導要領によれば, 高校卒業までにこうした事柄について学ぶ機会は設けられていない。身の回りの空間や立体を図として正確に美しく表現し, 誤り無く他に伝えるための素養は, 加工された図が一般に流布する時代には, 文字による正確で美しい文章の作り方等と同様に, 初中等教育の中で修得させておく必要がある重要な項目の一つである。図的表現についての許容限界を吟味して, 初等および中等教育に盛り込むべき内容を検討する。
著者
ニアーイェシュ H.
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.35-37, 1991 (Released:2010-08-25)

古くからよく知られているアポロニウスの問題はこれまでいろいろな方法で解かれているが, その中でもっとも巧妙な解法の一つは, 17, 8世紀のフランスの数学者Joseph Diez Gergonneによるものである。ここでは, 三つの円を直円錐の底面とする画法幾何学的な新しい解法を報告する。これは, 三つの直円錐が共有する一点が, 求める円の中心とその半径を与えるというものである。
著者
神山 明
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.15-20, 2006-09-01
参考文献数
6

歌川広重の「東都名所」と題される揃い物は, 佳作が多い名品として知られている.その中でも「吉原仲之町夜桜」は傑作として評価が高い。美術作品としての総合的な評価とは別に, この作品に描かれた空間には, 同シリーズの他の作品とは異質な印象が強く感じられる.それは, 同時代の絵画の空間表現とは異なる, より近代の視覚, あるいは近代の絵画に近い, 現実の視覚体験に近い空間感である.その印象はどこから生まれているのかを考察することが, 本論の主題である。そのため, 透視図としての画面の分析, 投影法の観点からの他の作品との比較, 画面の色彩等についての考察を行った.その結果, 本作品は広重の作品の中では数少ない2点透視図の形式を持ち, 消失点の設定に独特のものがあることがわかった.また画面の構図や色彩の使い方の分析を行い, 表現された空間に, 近代から現代の写真や絵画に通じる現実感があることの背景を考察した.

1 0 0 0 OA 清家正の思想

著者
森 貞彦
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.13-24, 1996 (Released:2010-08-25)
参考文献数
31

Tadasi Seike (1891-1974), engineer-educator of mechanical engineering, wrote several books on engineering drafting which were favorably accepted by many engineers, successively played various important roles in engineering education and industrial standardization and was decorated with an order; however, there is certain question whether he had satisfaction with his own results of endeavoring on the advancement of Japanese machine industry, because almost every entrepreneur, who would be the largest beneficiary of Seike's theory of drafting aiming at the improvement in efficiency of labor at minor factories covering the major part of the industry in the first half of the present century in Japan, showed little interest in his arguments. This paper has the purpose to solve this problem through the explanation that Seike's arguments based on the scientific thought which was very rare among Japanese were not understood by the majority thinking mythically. The difference in types of thought between Seike and others was an invisible and very hard obstacle to the attainment of his promising plan.
著者
宮崎 文成
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.39-44, 1998 (Released:2010-08-25)
参考文献数
8
著者
渕上 季代絵
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.30, no.Supplement, pp.12-17, 1996 (Released:2010-08-25)
参考文献数
6
著者
森田 克己
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.53-60, 1998 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

In order to make the synesthesia phenomenonan of colors and image clear, we performed a test using W. wolff s color-word matching method and from the first to the firth factor were exctracted from the factor analytical method.The order from the first to fifth factor are“the pleasantness-unpleasantness-factor”, “the activity-factor”, “the strong-week-factor”, “the evaluation-factor”, “the potency-factor”.In each factor, the first factor corresponds to light clear colors and dark clear colors. The second one is to high chroma and low chroma. The third one is to light clear colors and dark clear colors of warm color. The fourth one is to yellow of“low lightness or high chroma”and“middle lightness and from middle chroma to yellow of low chroma”. The fifth one is to“low lightness and low chroma”and“from middle lightness to warm color of high chroma”.The test was based on matching one handred colors with fifty-five sense adjectives.The results of the test tells us that synesthesia image of colors was defined by mainly tone, depending on chroma and lightness.As for intermodality in colors and sense image, the correlation of the emotional meaning dimension and the meaning dimension of sense was confirmed.
著者
平野 重雄
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.Supplement, pp.31-36, 1998 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10

機械設計製図教育は, 設計-ものづくりという工学の本質を, 最も直接的に教える教科であり, 工学教育全体にとっても極めて重要である.ここで, 特に大切なのは, 機械設計製図教育の全体を通して, 学生に総合化のための解析能力の育成, ものを思考し創造する能力の育成, もう一つは設計思考を伝達する手段のひとつである製図においては, 製品 (装置) を構成する各機構の要点を正確に捉える能力とものの形状を認識して的確に表現する能力の向上を図る教育をしなければならない.この研究においては, いわゆる座学 (講義) ではなく体験教育である設計製図として, 図形認識能力の向上を意図した教育システムについて検討した.その内容は, 部品図を基に組立図を効率よく設計製図するために, 立体図と分解立体図を用いて設計思考を行う.そして, 分解立体図により構成部品の要素の内容や機能を把握するという教育である.提出された図面の評価と理解度の調査結果を分析したところ, 組立図を設計製図する際に, 対象製品の立体図と分解立体図を描き種々の検討を行うことの学習成果が顕著であることが分かり, その有用性が確かめられた.
著者
三谷 純 鈴木 宏正
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.3-8, 2004 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

我々は3次元コンピュータグラフィックスの技術を用いることで, PC上でポップアップカードの設計を対話的に行えるソフトウェアの研究開発を行ってきた.このソフトウェアを用いることで, PCの画面に表示されるポップアップカードの立体図をマウスとキーボードのカーソルキーで編集し, その展開図をプリンタから出力することができる.この展開図を元にカッターなどを用いて紙工作することで, PCの画面で設計したポップアップカードを実際に手に触れて確認できるようになる.本稿では, このソフトウェアを初等および中等教育における図工や技術・家庭科を対象とした新しい教材として活用することを提案する.中学校の技術・家庭の授業で試行的に利用してもらうために幾つかの機能拡張を行い, そして実際に授業で試行することによって教材としての評価を行った.