著者
竹之内 和樹 福田 幸一
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.27, 2019 (Released:2019-12-01)
参考文献数
2

Mongeの図法幾何学の第2 章には,複面投影を用いた空間の問題の実用的図式解法の提示・解説に加えて,球への接平面と対応する平面幾何定理が紹介されている.空間問題から平面幾何定理の直観的な見通しが空間問題から得られることを示すとともに,この定理は,対応する3 次元問題が無い方向にも,拡張されている.Mongeは空間問題の図法幾何学の中で,幾何学との関係を意識し,幾何学の発展にも目を向けていたものと推測される.
著者
加藤 道夫
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.39, no.Supplement1, pp.157-162, 2005 (Released:2010-08-25)

日本語における透視図, あるいは, 遠近法 (パースペクティヴ (perspective) ) の語源は, ラテン語のペルスペクティーヴァ (perspectiva) に由来するが, その本来の意味は「正しい視方」である.その理論的基盤は古代ギリシアのユークリッドに遡ることができる.しかし, その像を具体的に表現する技法, いいかえるならその作画 (作図) 法については説明されていない.つまり, この時点では, 現象は説明可能という意味で「科学」であっても, 「画像」を生成できないという意味で「技術」ではないということができる, ルネサンス期に具体的に図を作成するという作図法技術が考案され, 以降, 普及・発展した.その技術は, 「固定化された視点」という決定的な前提を含んでいた.見方を変えるならば, 視点を固定化するという条件を設定することで, 作画法が考案可能となったといえる.以降, 遠近法は変質し, その本来の意味である「正しい見方」から「偽りの見方」を表示する技術としての変化をとげる.一方で, 「固定化した視点」を克服するさまざまな試みも見られる.また, 近年の計算機の発展と普及は, ルネサンス以来遠近法が抱えてきた諸問題をクリアしたかに見える.他方で, 計算機による一義的な表現とは異なる手の痕跡を残した手描き画像の価値も見直されつつある.本発表は, 科学技術の視点から遠近法の歴史的変遷を俯瞰するものである.
著者
福江 良純
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.11-20, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
17

彫刻の古典的模刻技法に「星取り法」と呼ばれる方法がある.古代ギリシャに原理的な起源を持ち, 複雑な人物像を, 大理石から精確に彫り出すために発達した, 機械的転写の技法である.だが, 彫刻とは単純に外形に還元できるものではなく, 転写の過程には形以外の質的なものが彫り込まれなくてはならない.彫刻家の創意はここに働き, この技法を用いながらも, 複製には尽くされない同形のオリジナル作品を作り出すことが出来る.したがって, この技法による造形的な現象の解明は, 芸術作品の複製とオリジナルという問題の構造を明らかにする手掛かりとなる.その際有効なのが, 一切の機械的手法に依らない「直彫り法」との対比であり, 感覚と形態の問に介在するラインの感覚の考察である.「星取り法」による形状の固定作用を図の固定的性格から説明し, 作品のオリジナル性については, 「直彫り法」に見られるラインの感覚のダイナミズムに根拠を求めてみた.また本論末尾では, 星取り法を用いた創造的な取組の実例として, ロダンに言及する.
著者
高橋 優輔 舘 知宏 横山 ゆりか
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.3-9, 2014 (Released:2015-12-01)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本論では,キヌガサタケの網目構造の特徴を抽出し,これを満たす形状のバリエーションを生成するシステムを提案する.キヌガサタケの網目は六角形による曲面メッシュ形状として捉えられるが,従来の六角形メッシュのモデルの多くは曲面形状を決めてから均質に分割して生成される.本論で扱うキヌガサタケの形状にはバリエーションがあり,セルの密度が均質でないため,既往のものとは異なる手法が必要である.キヌガサタケでは,網目の形状とセルの密度分布が菌網内の水分分布に従うという原理が推察される.そこで均質な網目構造の各線材がある分布(乾燥度のグラデーション)に従って局所的に収縮変形し,そのつり合い状態として均質でない網目構造が生成されると仮定した.これを,回転面に沿ったボロノイ図の各線分と頂点をそれぞれバネと質点とした力学モデルによって再現し,バネの縮みと全体の変形をシミュレーションした.
著者
畠山 絹江 飯田 尚紀 長江 貞彦 中谷 吉次 宮本 貴朗
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.7-16, 1988 (Released:2010-08-25)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

Recently, computers have been getting avalable for making patterns on women's wares. Generally speaking, it is quite difficult to measure lady's body, because it has more complicated surfaces than man's; such as which observed at shoulder part, breast part, waist part and so on than men's. This paper reports the construction of new measuring system; measuring human body without touching and destroying the object, analizing the data and making patterns on ladies' wares automatically with an image processing unit and a micro cmputer. Furthermore, SUPER ELLIPSE method is applied to get the data on human body's circumference length which has weight with making patterns where the error and accuracy are considered. Nontouch measuring is performed by the automatic measuring system consisted of two CCD cameras and image processing unit. Four pictures aretaken; they are upper front view, upper right side view, lower front view and lower right side view. All these pictures are proccessed by a personal computer connected with the system, calculating the necessary length automatically for making patterns. The error is to be within the allowance of JIS size table. SUPER ELLIPSE method is found to be useful for measuring ladies' body.
著者
川崎 寧史
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement1, pp.175-178, 2006 (Released:2010-08-25)
参考文献数
4

本研究では複雑系および画像処理の技術を利用して、景観画像の複雑さを計量的に計測し、景観評価に有用な情報としてこれを提示することを目的とする。具体的には、様々な都市や自然景観、夜景および風景絵画の画像を対象に、2次元フーリエ変換を利用してパワースペクトル曲線を導き出し、その傾き変化から被写体となる景観の性質とゆらぎ特徴の関係について考察する。その結果として、白色ノイズや1/f、1/f2ゆらぎを示す景観の類型や、夜景におけるゆらぎ特徴の傾向等の整理を行った。ただし本研究は実施途中であり、最終的な分析結果や一定の結論を得ているわけではない。そこで本稿では上述した研究の経緯や内容について報告する。
著者
森田 克己
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Supplement1, pp.73-78, 2003 (Released:2010-08-25)
参考文献数
3

自然界には様々な分岐パターンがある。河川と樹木の分岐パターンはその代表的な例として挙げることができる。分岐パターンは自然界の複雑な条件の関与により様々な形状を示すが、ある規則に従って形成されることが知られている。本稿では、種々の分岐パターンのうち、植物の生長における葉序の螺旋パターンに注目した。例えば、樹木の軸に対する柄あるいは茎の配列あるいは、サヤエンドウの軸に対する蔓の関係等に螺旋の分岐パターンが確認できる。本稿では植物の形態イメージをベースにして、独自の造形イメージにより、CGを用い数理造形的に分岐パターンを生成した。螺旋の分岐パターンを生成するアルゴリズムは1.平面曲線の生成2.旋回条件の設定3.チューブ状螺旋の生成である。螺旋の分岐パターンを生成する条件を次の通り設定した。第1に、平面曲線を生成するために、螺旋の種類・分岐段階・分岐数・分岐間隔・分岐位置をパラメータとして設定した。第2に、旋回条件の設定をするために、旋回形状・旋回数・旋回方向をパラメータとした。本稿では、旋回数に対する分岐数の関係に着眼し、旋回分岐比を定義して、分岐パターン生成の基準とした。以上の設定より螺旋の分岐パターンのバリエーションを生成し、検討を加えた。
著者
村上 晋一
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.31-39, 1971 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9
著者
安福 健祐 榎本 拓朗 阿部 浩和
出版者
Japan Society for Graphic Science
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.19, 2019 (Released:2019-12-01)
参考文献数
9

本研究は,建築空間の色彩と肌理をパラメータとして制御可能な没入型の仮想環境において,二つの住宅モデル(ル・コルビュジエ設計のラ・ロッシュ邸およびルイス・バラガン設計のヒラルディ邸)を再現し,被験者による空間スケールと印象評価実験から,色彩と肌理が空間認識に及ぼす影響を明らかにした.スケール評価テストおよび描画テストでは,被験者がVRヘッドセットを装着して,各住宅の実際のスケールの選択と平面図の描画を行った.その結果,ヒラルディ邸は実際のスケールと同じもしくはわずかに大きく認識されるのに対し,ラ・ロッシュ邸は小さく認識される傾向がみられた.さらに,VRヘッドセットを装着して各住宅の空間印象をSD法により評価した結果,色彩と肌理の違いによる印象の差に特徴がみられた.
著者
安藤 直見
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.11, 2016 (Released:2017-09-01)
参考文献数
10

映画には,作品としての表現の一部として,あるいは背景として,建築が描かれる.本論は,映画から建築のイメージを読み取るための方法について論じ,映画を通して歴史的な建築の特徴を学ぶための教育資料を提示することを目的としている.その端緒として,本稿は,古代エジプト建築を描いた映画を取り上げ,そこに表れた古代エジプト建築のイメージの特質を検証する.古代エジプトの建築は,大ピラミッドの他,アブシンベル神殿の巨像,ルクソール神殿の大列柱など,石造の量塊的な巨大さを特徴とする.
著者
櫻井 良昭 大野 義夫
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement1, pp.129-132, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
3

セルアニメーションや漫画制作の分野では, 線画を描く段階にノンフォトリアリスティックレンダリング (NPR) を利用した3DCGの導入が進んでいない.視聴者が手描きの絵と3DCGによる線画の組み合わせに違和感を覚えるからである.この違和感を解消するために, 本研究では漫画家や原画家が用いている線画に関するテクニックをNPRのシステムに組み込むことを提案する.まず漫画家や原画家の描いた絵の分析を行い, 線画に関するテクニックを分析, 整理した.そしてそれらを画法として定義し, 線画を生成するNPRに導入したシステムを作成した.そのシステムを用いて線画の作成を行ったところ, 一部の画法は違和感の原因である線画の無機質さを解消する上で有効であることが分かった.また複数の画法をシステム上で組み合わせると, 条件によってはその効果が打ち消しあってしまうといった, 画法の運用面での課題も浮き彫りとなった.
著者
三谷 純
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.19-22, 2012 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9
著者
牧 博司 加川 穂積
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.34, no.Supplement, pp.119-122, 2000 (Released:2010-08-25)
参考文献数
11

表題の答えは簡単である。教師 (複数) が必要と考えるか不必要と考えるかである。我が国の社会体制は一応民主主義なので、カリキュラム編成の単位である学科内の大勢が不必要と判断すれば図学という科目は消えていくのである。不必要と考える教師の教育理念を聞く場もない。図と図面の違いも分からない、図の種類も知らない、図だからCADだと思い込んでいる教師に機械設計が分かるはずがない。故に図学の必要性が分かるはずがない。大学という教育機関の構成集団である教師と学生の水準に多大な差がある現状において、図学教育が必要と考える学科のみで教育すればよいのではないか。この考え方にたって表題の題目について議論したものである。
著者
長 聖 佐藤 尚
出版者
JAPAN SOCIETY FOR GRAPHIC SCIENCE
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.57-62, 2005

本研究では、カメラから取り込んだ実写映像を元に非写実的な効果を生成することを目的とし、その手法を提案した。12世紀に描かれた鳥獣人物戯画などの絵巻物からわかるように、日本では昔から「アニメ的マンガ的」な絵が作られてきた。そして、現在ではセルアニメーションという非写実的な表現にスピード感などを与える手法としてカトゥーンブラーが頻繁に用いられている。そこでカトゥーンブラーによる強調表現に着目し、現実の映像に強調表現を付加することで視覚的な補助や、新たな映像表現としての効果を期待し、自動的に写実的な映像へ非写実的な強調効果を生成することにした。非写実的な強調表現の代表として「線」と「残像」の2種類の規則を定め、実装した。本研究における最大の特徴は3段階処理における残像輪郭線の生成である。残像輪郭線を生成するために時間的に連続した画像を3コマ用意し「フレーム差分二値化処理」、「共通部分抽出処理」そして「膨張・共通部抽出処理」の処理を施すことによって輪郭線を抽出、生成し残像輪郭線とした。残像輪郭線を利用することによって「残像」の描画を可能とし、残像輪郭線の時間経過による移動関係を求め、その移動位置を利用することによって「線」の描画を可能とした。しかしながら、実験により新たに「色変化が複雑な背景では正しく残像輪郭線が検出できない」、「映像として効果が不自然に連続的」そして「速い動きに対応できない」などといった問題が発生した。
著者
加藤 千佳 太田 昇一
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Supplement1, pp.103-108, 2007 (Released:2010-08-25)
参考文献数
7

葛飾北斎は, 国際的にも有名な日本を代表する絵師の1人である.彼は狩野派・土佐派・洋風画・漢画など様々な画風を学んだとされ, それらを吸収しながら彼独自の作風を作り上げた.北斎の構図は独創的であり, いくつかの著作の中でその構図の基礎を著している.「三ツワリ法」や「コンパスと定規を用いての作図法」を絵手本で紹介し, また遠近法と陰影を強調する手法を用いて「洋風木版画シリーズ」を描いている.本研究では, 彼の代表作である「冨嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」を対象に, 「神奈川沖浪裏」の芸術性を高めている重要な要因の1つが北斎独特の構図に因ることを, 「おしおくりはとうつうせんのづ」との関連性から検証した.さらに幾何学的観点から構図に潜む比の果たしている役割について考察を行い, 特に構図の要となる不変な黄金矩形が存在することを幾何学的に立証する.
著者
小山 清男
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.33-38, 2001 (Released:2010-08-25)
参考文献数
5