著者
酒井 晴香 関 玲
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.21-29, 2020-09-30 (Released:2020-10-23)
参考文献数
15

本研究は、大学生のアカデミック・ライティングの運用能力について、レポートの文末モダリティ表現(「と考えられる」等)に焦点を当てて問題を明らかにするものである。文末に出現する推量、蓋然性、証拠性に当たるモダリティ表現を分析対象とし、学術論文と大学生のレポートを収集して作成したコーパスを用いて調査を行った。その結果、1)動詞の形態に関して、学術論文ではラレル形が多く使用される一方、レポートではル、タ、テイル形の使用が多いこと、2)レポートでは漢語動詞のバリエーションが少なく、また学術論文には出現しない「と考察される」が特異的に使用されていること、3)「のではないか+と考える」のようなモダリティ重複表現がレポートに多く出現していることが明らかとなった。さらに、この結果から、学術論文では文末モダリティ表現がより広範な用法で使用されていること、レポートではモダリティ重複表現が定型化している可能性を指摘した。
著者
堀江 祐爾
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.23-31, 2023-03-30 (Released:2023-04-21)
参考文献数
4

本資料の目的は、アメリカ合衆国における入門期(Beginning Reading)の読むことの学習指導、とりわけ「guided reading(教師が導く読みの指導)」について、記録と考察をおこなうことである。Albert J. Harrisの著書How to Increase Reading Ability: A Guide to Developmental and Remedial Methods(1975年発刊の第6版からはEdward R. Sipayとの共著)に記述された入門期の学習指導について取り上げる。本書によると、1950年代から1990年代にかけてguided readingは次第により多様な学習活動によって構成されるようになった。1996年には、「質問を定式化する」ことを実現した次の研究書が出版された。Fountas, I. C., & Pinnell, G. S., (1996) Guided Reading: Good First Teaching for All Children. NH: Heinemann.である。その「定式化された質問」についての考察を通して、guided readingの目標はあくまで「自己修正」しながら読み進める力を身につけさせることであることを明らかにした。さらに、論者自身が参観した2001年にウィスコンシン州において実践されたguided readingの授業を具体的に示し、考察をおこなった。
著者
浅井 哲司
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.85, pp.14-22, 2019-03-30 (Released:2019-05-27)
参考文献数
36
被引用文献数
1

先行研究では、学習者自身の音声を用いることによって、どの程度の効果があるのかこれまで十分に示されてはいない。そのため、本研究では話し合いの事後指導のため音声・文字提示型教材を開発し、学習者自身の音声を用いる影響を明らかにするために、4つの調査を3つの分析によって検討した。その結果、学習者自身の音声は、話し合いの質を変化させ、自らの話し合いそのものを振り返り話し合うことを可能にする。さらに、話し合いの内容と方法を振り返る機能が内在される可能性が学習者の姿から導出された。しかし、限られた一部の学習者対象の調査のため、学習者自身の音声の効果を測る手がかりが得られたにすぎない。今後の調査によって、音声・文字提示型教材に話し合いを振り返る機能がどの程度備えられているのか精緻に検討する。
著者
石田 喜美
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.15-22, 2013-03-31 (Released:2017-07-10)

Recently, the media environment has transformed considerably; instead of "mass media," formation of public opinion is now influenced by "social media." Thus, we must consider instituting new media literacy education to correspond with the new media environment. From our perspective, the most important feature of any media literacy education should be its ethical aspects. First, we considered how ethical aspects are positioned in the discussion of media literacy and found the term "practical moral knowledge" to be worth our attention. Next, to apply practical moral knowledge to new media literacy, we investigated Our Space, finding it necessary to focus on the ethical strategies we use in our everyday lives-both online and offline. From the results, we concluded that introducing new media literacy is important for shifting the existing paradigm within Japanese language education.
著者
正木 友則
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.33-41, 2017

<p>本稿では、多様化・高次化した説明的文章の学力や学習指導内容を学習者に獲得させる上で、授業者による「教授行為(指導)」の中でも「ゆさぶり発問」に着目し、説明的文章の学習指導の場における展開について検討した。</p><p>例えば、授業者は筆者の説明内容や論理、主張に対して学習者が「分かっているつもり(理解不足)」であることを、事前に予想できる時、もしくは、授業内で察知した時、「ゆさぶり発問」(主要発問/授業内における即時的応答)を用いて、学習者の理解不足を補うことになる。また、筆者の説明内容や論理・主張などに対する学習者の吟味・評価を促す時には、主要発問で、学習者による「限定・比較・否定」を通して、説明的文章の学力や学習指導内容の獲得につなげようとするのである。</p><p>以上のことから、説明的文章の批判的読みでは、教材(文章)を介した「学習者(読者)」と「筆者」との相互作用を機能させるために、授業者の教授行為(指導=「ゆさぶり発問」)が重要であるといえよう。</p>
著者
河上 裕太
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.3-11, 2021-03-30 (Released:2021-04-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本論文の目的は、学習者の主観的体験と解離性障害の診断を受けた患者のエピソードを比較し、文学の教室における「解離」を明らかにすることである。解離性障害の患者の個別的なエピソードには、自己の内部に複数のパースペクティブが統合されずに並列する様相が見られる。学習者Tの『山月記』論でも自身の読みとして授業の読みを提示しながら、初読の際の問題意識に触れるという形で、統合されない二つのパースペクティブが表現されていた。教室で文学を扱う場合、学習者は教師と作品に引き裂かれ「解離」する可能性がある。また『山月記』に特有の作品構造も学習者の「解離」を刺激する可能性がある。学習者が「解離」し、授業の読み(=自己)を自分の読み(=自己)として流通させる構造には解離の病理がある。一方で学習者が「解離」することは、文学がそれ自体で学習者に対話を仕掛けているという文学の教材としての可能性も示唆している。
著者
細 恵子
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.70-77, 2013-09-30 (Released:2017-07-10)

Along with the reading of classroom materials in elementary school language arts, skills pertaining to reading a variety of books is also important. However, considering Jisu teaching materials and the different language arts, fostering a variety of reading powers only in the language arts classes is difficult. Because of this, at the same time as the language arts classes, I emphasized reading instruction daily, and attention, "Recording the reading life" Omura (the junior high school students for). Then, it was developed and improved in elementary schools and was called a "reading diary," and then recommended practice to clarify the perspective of four. The goal of this study is to reveal the power that reading has to keep up with the body by performing to continue reading diary guidance in third grade is an object.
著者
奥泉 香
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.11-18, 2010-09-30 (Released:2017-07-10)

The purpose of this paper is to propagate the inclusion of visual texts such as pictures, photographs, and charts into the curriculum of the national language class and clarify and present the underlying theory behind such inclusion. The text environment surrounding learners is significantly changing. One of such changes is the incorporation of visual text learning into the character text learning that has long formed the core of the Japanese language class. To promote this incorporation properly, it is indispensable to develop a theory that especially supports the learning of visual texts as a meta learning approach of these texts. To that end, this paper focuses on the study by G. Kress et al., who employed M. Halliday's systemic functional grammar in their research. It also discusses specific practical possibilities, including the kind of new perspectives that can be gained toward learning and educational material analysis by the introduction of this theory.