著者
稲葉 直也
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.2040, 2019-08-31 (Released:2019-09-05)

本稿は,ラーニング・コモンズ設置等に代表される,館内利用方針の変換を伴う施設改修の効果を検証するために,大学図書館の館内利用量(利用時間)を推定することで,館内利用の変化を量的に評価する手法を提案する。2018年8月から9月に行われた早稲田大学中央図書館2階のラーニング・コモンズ改修工事を対象に実証調査を行い,改修に期待する効果を事前に館内利用量を測定することで予測し,改修後に館内利用の変化の有無を確認することで,想定通りの改修の効果が表れているか検証と評価が可能であることを明らかにした。
著者
植田 英範 渡辺 美好
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.15-26, 2003-12

国士舘大学附属図書館は、「kiss」というマルチメディア対応フルテキストサーチ型データベースシステムを独自に構築し、平成14年秋稼動させた。それは、利用者と管理者双方の作業負担を軽減する操作性と全文検索の高速性が両立する極めて柔軟性に富んだシステムとなっている。その特徴は、原情報からのテキスト自動抽出によって半自動的に作成するサーチエンジンの検索対象であるメタデータを、システム内で関連付ける原情報と共に蓄積するという独特の技法にある。「kiss」によって、システム相互間横断検索という方法での知識共有や、これまでのネットワーク情報源からは得にくい電子文書や教育教材という身近な一次情報の流通などが促進され、より強力で直接的な情報研究支援サービスが可能になる。
著者
藤原 秀之
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.1-9, 2010-08-31 (Released:2017-11-07)

図書館,資料館等が所蔵するさまざまな文化資源(図書,博物資料)のデジタルアーカイブ化は,多くの機関で進展を見せている。今後はデータの蓄積から各機関による積極的な情報発信の手段として活用されなくてはならない。アーカイブが原本代替資料として高度な情報を提供することが,あらたな研究の進展をうむと同時に,原本の利用を抑えることによる資料保存の効果も高い。デジタルアーカイブの現状と今後の課題,展望について早稲田大学図書館が企画・運営する「古典籍総合データベース」の事例をもとに考察を加える。
著者
飯野 勝則
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.111, pp.2031, 2019-03-31 (Released:2019-03-30)

電子リソースデータ共有作業部会において扱う「共有」には (A) 各機関から外部に対して行う共有,および (B) 外部から各機関に対して行う共有,の二つの意味がある。 (A) の事例としては本作業部会で運営するERDB-JPがある。 (B) についてはコンソーシアムが扱うタイトルリストやライセンス情報などの共有が仮定されるが,未だ十分なシステム環境は用意されていない。しかし今後,日本国内において,図書館サービスプラットフォーム (LSP) などのシステムを,複数の機関で選択的に共同調達・運用できる環境を構築することができれば,その状況は大きく改善するだろう。
著者
佐々木 奈三江 亀岡 由佳
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.2023, 2018-11-30 (Released:2019-01-10)

本稿では,ラーニング・コモンズにおける人的支援の一形態として,徳島大学附属図書館が実践している学生協働による学習支援について報告する。学生が運営する学習相談や学習関連イベントは教員の協力が得られやすく,また,学生同士の繋がりにより,図書館単独で実施するよりも活用されやすいメリットをもつ。一方で,図書館職員の関わり方や評価方法等,実施にあたっての課題も多い。大学教育の変革の中で,大学図書館が学習支援の一部を担う組織としてどのような役割を果たすべきなのか,大学図書館と関連組織が連携の上検討していく必要がある。
著者
後藤 史彦 西薗 由依
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.54-62, 2017-05-31 (Released:2017-09-22)

2015年9月16日から19日にかけて,欧州における日本分野資料の専門家によるグループ「日本資料専門家欧州協会(EAJRS)」の第26回年次大会がオランダのライデンにて開催された。今大会では「Breaking Barriers - Unlocking Japanese Resources to the World」をテーマに掲げ,従来あまり知られてこなかった一次資料を普及させるための取り組みに焦点があてられた。筆者らは,今大会において,所属する長崎大学と鹿児島大学がそれぞれ所有する貴重資料について,保存および公開の取り組みを紹介した。その発表内容を含め,今大会の概要を報告する。
著者
藤江 雄太郎 小島 由香 長屋 俊
出版者
学術文献普及会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.34-43, 2015

<p>今日世界中で数多くのデジタル化資料が無料公開されている。本稿では,これらの資料の発見性を高める方策を検討するため,NACSIS-ILLのログに注目し,分析を行った。ILLログのうち,無料で公開されているデジタル化資料が利用できるという理由で謝絶に至ったログを抽出,案内されている資料を調査した。その結果,無料デジタル化資料はWeb上の広い範囲に散在し,特に国内では60%程度がNDLSearch・CiNii Articles・J-GLOBAL・J-STAGEの各サイトに加えて検索エンジンで検索すれば発見可能な資料であることがわかった。また,これらのサイトはメタデータ連携が部分的で,収録状況の詳細が明示されていないことがわかり,発見性低下の一つの要因になっていることが示唆された。</p>
著者
藤江 雄太郎 小島 由香 長屋 俊 フジエ ユウタロウ コジマ ユカ ナガヤ シュン Fujie Yutaro Kojima Yuka Nagaya Shun
出版者
学術文献普及会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.34-43, 2015-08

今日世界中で数多くのデジタル化資料が無料公開されている。本稿では,これらの資料の発見性を高める方策を検討するため,NACSIS-ILL のログに注目し,分析を行った。ILL ログのうち,無料で公開されているデジタル化資料が利用できるという理由で謝絶に至ったログを抽出,案内されている資料を調査した。その結果,無料デジタル化資料はWeb 上の広い範囲に散在し,特に国内では60%程度がNDLSearch・CiNii Articles・J-GLOBAL・J-STAGE の各サイトに加えて検索エンジンで検索すれば発見可能な資料であることがわかった。また,これらのサイトはメタデータ連携が部分的で,収録状況の詳細が明示されていないことがわかり,発見性低下の一つの要因になっていることが示唆された。 / There is now a multitude of digitizedmaterials that have beenmade available for free around the world. In order to consider measures to improve the discoverability of these free resources, the authors have analyzed the transaction logs from NACSIS-ILL logs. The authors surveyed the interlibrary loan transactions where the request was cancelled because an item was freely available to see what types of materials were requested. As a result, the authors found that the digitized materials are widely-scattered on the web and of particular significance approximately 60% of the domestic digitized materials are discoverable using the search engines and following services: NDL Search, CiNii Articles, J-GLOBAL, and JSTAGE. While there is a partial linkage between the metadata existing in each of these sites, it is not possible to see detailed information about the contents and that fact contributes to the decreased discoverability.
著者
マルラ 俊江
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.34-44, 2005-03

北米日本研究資料調整協議会(North American Coordinating Council on Japanese Library Resources (NCC))の設立・組織,および現在進行中の活動について紹介する。その活動は,日本語資料蔵書共同構築,アクセス改善,日本研究司書教育に大きく分けられ,主なプロジェクトに,多巻セット(Multi-Volume Sets Project),日本美術カタログ収集,ジャパン・プロジェクト,AskEASL,T-3プロジェクトがある。他に,電子資料委員会及び国際交流基金図書館支援プログラム諮問委員会の活動に言及する。
著者
栃谷 泰文
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.1-10, 2003-03

国立大学図書館協議会が提唱する世界的な学術文献流通に向けたグローバルILL/DDフレームワーク(GIF)構想とNII-OCLC ILLシステム間リンクの現在の概況をのべ、GIFが構想されるに至った背景2点、(1)1995年のカルコンにおける日米情報流通拡大の決定と(2)日本の大学図書館の国際ILLの状況を説明し、日米大学図書館関係者による国際ILLの改善に向けた取り組みについて報告する。
著者
松本 紳 逸村 裕 歳森 敦
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.9-14, 2011-03

2007年度より改組され新たなスタートを切った筑波大学情報学群知識情報・図書館学類について記した。知識科学,情報経営・図書館,知識情報システムの三主専攻からなる学類の使命,教育理念,輩出すべき人材,そして1年次からのカリキュラム構成とその特色,就職先/進路について述べた。また学類と附属図書館とが協同で設置したラーニングコモンズとそこから派生した「図書館情報学若手の会(ALIS:Around Library and Information Science)の活動について記述した。学類は発足して 年目であり,今後,評価活動を通じてカリキュラムの見直し,改定すべき所を検証していくところである。
著者
前田 勇樹 川畑 宗太
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.125, pp.2161, 2024-03-31 (Released:2024-03-01)

琉球大学附属図書館では,2021年度からYouTubeによる情報発信を行っている。所蔵する貴重資料やデジタルアーカイブに関するコンテンツを中心にこれまでに100本以上の動画を公開した。本稿では,琉球大学附属図書館のYouTubeを活用した広報事業について,その経緯やコンセプトおよび実施中の事業を詳述し,現段階での外部からの評価をもとに課題を提示した。
著者
秋元 優太 西野 哲朗
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.122, pp.2142, 2022-11-30 (Released:2022-12-15)

司書の労働負担軽減や図書館の遠隔サポートの拡大を目的に,図書推薦をチャット形式で行うことができるシステムを提案する。本システムは,利用者に対しおすすめの図書と書架の位置を提示することができる。また,システムの実現手法を提案する上で,司書が図書案内する際にNDCに落とし込む手法に着目し,その手法を機械学習により実現することを試みた。提案システムと既存システムであるOPACとのそれぞれで,ある条件を満たす図書を探すという被験者実験を行い,提案システムが有効であることを示した。
著者
金子 康樹
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.123, pp.2151, 2023-03-31 (Released:2023-06-01)

研究DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として,わが国の大学,研究機関において,研究データ管理に対する取り組みが急速に進んでいる。研究データ管理がどのような背景で重要視されるようになったかを概観し,それを踏まえて,慶應義塾における研究データ管理の実施に向けて,研究データポリシーの策定,データ管理計画の項目策定,GakuninRDMの利用などのこれまでの取り組みを紹介し,今後に向けて機関を超えた協力の有効性を述べた。