著者
勝又 美智雄
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.54-63, 2005-12-31 (Released:2017-11-16)

2004年春に開学した国際教養大学は,図書館の「24時間オーブン,年中無休」を実施している。全国でも類例のない制度を導入したのは,理想の大学づくりの象徴とするためであった。幸い,学生からは圧倒的な支持を得て,常に深夜,未明まで学生が勉学にいそしんでいる。新制度導入に至る背景から,2005年夏までの実績,職員の勤務体制や管理運営上の配慮などについて,その実態を館長としての体験を基にできるだけ詳細に報告し,全国の大学図書館の参考にしていただきたいと願っている。
著者
村上 遥
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.53-60, 2014-12-26 (Released:2017-10-31)

北米で新しい目録規則RDAが導入された。本稿では2013年8月に行った米国議会図書館,シカゴ大学図書館,コロンビア大学図書館での調査をもとに,RDA導入後の実態について報告する。調査から,RDAはスムーズに導入されたことが分かった。この理由としては(1)研修の成果,(2)RDAテストによる段階的な知識の普及に加え,(3)メタデータフォーマットが変更されなかったことが挙げられる。したがってMARC21の次のメタデータフォーマット,BIBFRAMEの動向は今後もその動きに注意が必要だ。
著者
奥田 正義 小堀 淳子 星屋 真 末次 美知夫 山口 英
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.23-34, 2002-08-31 (Released:2017-12-15)

奈良先端科学技術大学院大学電子図書館は,平成8年4月に我が国最初の実用型電子図書館としてサービスを開始した。その数年前から,出版社等との著作権許諾交渉に積極的に取り組み,大学の教育研究を支える最新の学術情報の電子化を進めてきた。しかし,近年,電子ジャーナルの急激な普及等学術情報を取り巻く環境の大きな変化が,電子図書館のあり方に大きな影響を与え始めている。本稿では,本学電子図書館の特徴,資料電子化・著作権処理の状況,電子ジャーナルとの関係,対外貢献,京阪奈ライブラリーコンソーシアム等について現状を紹介するとともに,電子図書館のあり方を再考する。
著者
松本 紳 逸村 裕 歳森 敦
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.9-14, 2011-03-31 (Released:2017-11-01)

2007年度より改組され新たなスタートを切った筑波大学情報学群知識情報・図書館学類について記した。知識科学,情報経営・図書館,知識情報システムの三主専攻からなる学類の使命,教育理念,輩出すべき人材,そして1年次からのカリキュラム構成とその特色,就職先/進路について述べた。また学類と附属図書館とが協同で設置したラーニングコモンズとそこから派生した「図書館情報学若手の会(ALIS:Around Library and Information Science)」の活動について記述した。学類は発足して4年目であり,今後,評価活動を通じてカリキュラムの見直し,改定すべき所を検証していくところである。
著者
大木 彰
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.113, 2019

大谷探検隊将来資料は,浄土真宗本願寺派第22代宗主大谷光瑞が組織した大谷探検隊が中央アジアやインドなどから将来した資料を中心としたコレクションである。資料の形態は,仏教経典をはじめとする文書及びその断片などの資料,錦資料,古銭資料,仏像類などさまざまである。非図書資料として,形態や内容がさまざまである大谷探検隊将来資料について,資料所蔵の経緯,整理と管理,利用状況に触れながら,保存の現状について紹介する。
著者
角張 亮子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.2116, 2021-08-31 (Released:2021-09-15)

2015年から2018年まで約4年間にわたり実施した大東文化大学60周年記念図書館収蔵資料のカビ除去作業について,図書資料のカビ対策とともに報告する。2015年8月に地下2階書庫の製本雑誌に広範囲にわたりカビの発生が認められ,同年12月に約5千冊の拭き取り作業を専門業者により実施したが,5ヵ月後の翌年5月に再発した。カビの胞子が空気中に漂っていたこと,書庫内の環境が整っていなかったことが原因と考えられる。更に経年劣化による壁面からの水漏れが大雨の度に発生し湿度が上昇したことにより,同年夏に書庫内の製本雑誌と一般図書すべてにカビが爆発的に増殖した。カビ除去作業と環境の改善により,図書資料のカビ被害対策の方法が明らかになった。
著者
長谷川 順子
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.58-68, 2003

<p>国立大学図書館協議会の海外派遣事業で,スウェーデンの図書館を訪問した。スウェーデンは高度福祉社会であり,生涯学習の盛んな国である。また,インターネットの普及率も世界のトップクラスである。スウェーデンの大学図書館において中心的役割をもつ王立図書館の一組織であるBIBSAMをはじめ,いくつかの図書館を訪問し,情報の流通と図書館サービスについて調査した。その結果,図書館は市民に支持を受けた社会的,文化的公共機関であることを確認した。発達したIT社会において図書館は学術情報,生涯学習を支える情報基盤としての役割を果たしている。</p>
著者
匂坂 佳代子 蓮見 ちひろ 三輪 忠義
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.2119, 2021-08-31 (Released:2021-09-16)

東京大学駒場キャンパスにおける学部学生との学生協働の一つとして継続されてきた「選書ジュニア・スタッフ」制度の主たる目的は,学生選書によって,学生の視点を蔵書構成に反映させることである。令和元年度には,その成果の広報活動として,学生が作成するPOPの展示をした。その活動が困難となり,e-bookの重要性が増したコロナ禍下の令和2年度には,本学が契約するe-bookの中から学生が任意に選んだ本のレビューを発信する活動を試行的に実施した。本稿では,これらの活動において経験した諸事例の報告と分析を行い,今後の課題と展望を述べる。
著者
山中 康行
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.37-44, 2003-08-31 (Released:2017-12-12)

群馬大学附属図書館は,昭和41年新田岩松家の後裔である故新田義美(よしとみ)氏から旧新田男爵家に伝来された文献資料群の寄贈を受けた。寄贈時にもたらされた資料群の中に膨大な屑状の紙片があった。それらの紙片は屑としか見えない状態であったためにかえりみられることがなかった。平成13年春,この紙片の塊が廃棄寸前になって,日本画の下絵(粉本)であることが判明した。約1年半をかけて膨大な屑状の紙片の悉皆調査を行い,総点数1,265点の反故を画帳形式に復元整備した。寄贈者の遺族も知らなかった粉本の発見であった。平成15年3月には整理が終わるとともに群馬大学附属図書館所蔵「新田岩松家旧蔵粉本図録」が完成した。
著者
谷 奈穂 竹内 茉莉子 池尻 亮子 丸茂 里江 庄司 三千子 國本 千裕 白川 優治
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.55-66, 2016-11-28 (Released:2017-09-15)

千葉大学附属図書館は,2012年,図書館付設型ラーニング・コモンズを含む建物を増築し,新しい学習環境を整備した。本稿は,この環境における学生の行動と,行動に関係する環境の要素を,フォーカス・グループ・インタビューによる調査で明らかにしたものである。調査で得られた発言をもとに,学生の行動を12通りに分類し,環境の要素を3種類導き出した。行動と環境との関連を分析したところ,学生の行動の幅を制限しない空間設計や設備を備えた環境が,行動を促すことが明らかになった。更に,学生の行動は,他の学生の様子や学生自身が環境に抱くイメージによって影響されることも見えてきた。
著者
外崎 みゆき
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.24-34, 2010

<p>私立大学では機関リポジトリに登録できる学術コンテンツの量は左程多くない。一方で私立大学には創設時の資料や独自のコレクション,教材などがあるが,これらの電子資料を学術資料と区別して別のデータベースに収録するのは非効率である。経済効果を高めるため,公開・非公開に加えて,学内のみの公開・学部学科限定公開など,より多くの電子資料を収録可能な環境が望ましい。未公開資料を含めて,登録が可能な資料を増やすためには環境の整備が不可欠である。登録管理が可能なデータ範囲を広げることで,より多くのコンテンツ登録が可能となり,基盤を広げることが公開可能なコンテンツの増加につながる。今回,「大容量コンテンツへの対応」「所属情報による閲覧の制限」「多様なコンテンツへの対応」という3つの機能を強化し,システムの開発,環境設定の見直しなどを行った。</p>
著者
杉田 茂樹
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.29-37, 2014-09-05 (Released:2017-10-31)

最近ほぼ10年の間に,国立情報学研究所CSI委託事業等を背景として,国内の数多くの大学で機関リポジトリが設置された。各大学の担当者は,経験のない機関リポジトリ構築という業務に,海外先行事例などを参考に積極的に取り組み,学内の認知度向上とコンテンツ増進のためのさまざまな手法を開発してきた。今日では,電子ジャーナルの発展をはじめとしたインターネット利用の普及によってやや希薄となった研究者との重要な接点のひとつとなっている。
著者
藤倉 恵一
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.21-31, 2006

<p>文教大学越谷図書館は1981年10月の新図書館開館を機に,学外者に図書館を開放している。当時は画期的・先進的なことであったが,20年以上が経過して大学図書館の学外開放が一般的になったいま,あらためてサービス展開の経緯と現状,意義と課題についてまとめる。また,同図書館内で運営されている小学校中学年以下の子どもを対象にした児童文庫「あいのみ文庫」も開設以来盛況を保っているが,これについてもあわせて紹介する。</p>
著者
岡田 孝子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.42-53, 2008-08-31 (Released:2017-11-09)

近年,わが国でも市民に対する法教育の重要性が広く認識されるようになり,初等中等教育段階での法教育が学校教育の中で実践され始めた。しかし,法教育を受けた学生が実際に社会でその知識や能力を活用するためには,法情報に関する教育を受けることが必要である。本稿では法教育を受けた学生のための法情報教育を本格的に行う場としては大学教養課程が適切であるとの立場に基づき,市民のための法情報を理解して扱うための能力を「法情報リテラシー」と呼ぶ。そして,大学教養課程で学ぶべき法情報リテラシーの内容とその教授法について考察する。
著者
生貝 直人
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.11-18, 2016

<p>本稿では、デジタルアーカイブに関わる近年の法政策動向と、それが図書館をはじめとする文化施設の活動に与える影響を理解することを目的として、まず国内外におけるデジタルアーカイブの法政策の状況、特に統合ポータルの構築に向けた各国の施策を紹介し、次に2015年度に文化庁で行われたデジタルアーカイブ促進のための著作権制度の見直し(図書館複製、孤児作品問題対策、紹介・解説のための利用等)を検討し、最後に今後の課題としての書籍等資料の全文検索サービスのあり方について論じる。</p>