著者
中川 道夫 海老原 祐輔 江尻 全機 福田 真実 平田 憲司 門倉 昭 籠谷 正則 松坂 幸彦 村上 浩之 中村 智一 中村 康範 並木 道義 小野 孝 斎藤 芳隆 佐藤 夏雄 鈴木 裕武 友淵 義人 綱脇 恵章 内田 正美 山上 隆正 山岸 久雄 山本 幹生 山内 誠
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.75-90, 2009-02

オーロラX線イベントの2 次元イメージを得ることと,30keV から778keV の領域でエネルギースペクトルを得ることを目的として,大気球を編隊飛行させ観測を行うバルーンクラスター計画の下に,2003 年1 月13 日にPPB8 号機とPPB10 号機の2機が南極の昭和基地より放球された.両機は大気深さ9-12 g / cm^2を保ち,磁気緯度55°.5-66°.4 の範囲を飛翔し南極大陸を半周した.両機はフライト中に多くのオーロラX線イベントを観測した.特に,1月22 日から1 月25 日には,数例のイベントが両機で同じ時間帯に観測されている.2003 年1 月23 日には,始めに10 号機,218sec. の間隔をあけて8 号機でイベントが観測された.このとき8 号機は10 号機の西650km に位置していた.このことはオーロラX線源が速さ約3.0km / sec.で西に向かって移動していたことを示唆している.本論文では同じ時間帯に観測された,オーロラX線イベントについてその描像を述べる.
著者
山本 明 安部 航 泉 康介 板崎 輝 大宮 英紀 折戸 玲子 熊沢 輝之 坂井 賢一 志風 義明 篠田 遼子 鈴木 純一 高杉 佳幸 竹内 一真 谷崎 圭裕 田中 賢一 谷口 敬 西村 純 野崎 光昭 灰野 禎一 長谷川 雅也 福家 英之 堀越 篤 槙田 康博 松川 陽介 松田 晋弥 松本 賢治 山上 隆正 大和 一洋 吉田 哲也 吉村 浩司 Mitchell John W. Hams Thomas Kim Ki-Chun Lee Moohyung Moiseev Alexander A. Myers Zachary D. Ormes Jonathan F. Sasaki Makoto Seo Eun-Suk Streitmatter Robert E. Thakur Neeharika
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.81-96, 2008-02

本研究は,南極周回超伝導スペクトロメータによる宇宙線観測(BESS-Polar 実験)を通して,『宇宙起源反粒子,反物質の精密探査』を目的としている.地球磁極領域に降り注ぐ低エネルギー宇宙線に注目し,反陽子スペクトルを精密に測定して,衝突(二次)起源反陽子流束の理解を深めるとともに,『原始ブラックホール(PBH)の蒸発』,『超対称性粒子・ニュートラリーノの対消滅』等,初期宇宙における素粒子現象の痕跡となる『宇宙(一次)起源反粒子』を精密探査する.反ヘリウムの直接探査を通して,宇宙における物質・反物質の存在の非対称性を検証する.同時に陽子,ヘリウム流束を精密に観測し,これまでのカナダでの観測(BESS実験,1993-2002)の結果と合わせて,太陽活動変調とその電荷依存性について系統的に観測し,宇宙線の伝播,相互作用に関する基礎データを提供する.本研究では,これまでのBESS 実験で培われた超伝導スペクトロメータによる宇宙線観測の経験をもとに,低エネルギー領域での観測感度を高め,南極周回長時間飛翔を可能とする超伝導スペクトロメータを新たに開発した.2004年12月13日,南極(米国,マクマード基地)での観測気球打ち上げ,高度37km での9日間に及ぶ南極周回飛翔に成功し,9億イベントの宇宙線観測データを収集した.運動エネルギー0.1〜1.3GeV の範囲に於いて,これまでの約4倍の統計量でエネルギースペクトルを決定した.結果は,衝突(二次)起源モデルとよく整合し,一次起源反陽子の兆候は観測されていない.太陽活動が極小期にむけた過渡期にあたる2004年の観測として予想に沿った結果を得た.反ヘリウム探索は,これまでのヘリウム観測の総統計量を2倍以上に高め,反ヘリウム/ヘリウム比の上限値を2.7×10^<-7>にまで押し下げた.本報告では,BESS-Polar(2004年)の成果を纏め,次期太陽活動極小期(2007年)における第二回南極周回気球実験計画を述べる.
著者
上田 裕子 小堀 壮彦
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-8, 2006-04

We examined a distributed computing middleware conformable to IEEE Standard 1516, High-Level Architecture/Run-Time Infrastructure(HLA/RTI). That is applied for parallel developments of H-IIA Transfer Vehicle(HTV) simulator by JAXA and International Space Station(ISS) simulator by NASA. A network emulation tool is used for distributed experiments to actualize reproducible network environments on various conditions. The dependencies on bandwidth and delay of the network as well as the other factors which affect the performance of applications are shown.
著者
稲富 裕光 王 躍 菊池 正則 中村 龍太 内田 祐樹 神保 至
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-18, 2005-03

本報告では,半導体結晶の溶液成長過程における以下の研究成果を述べる.(1)半導体結晶の溶液成長過程における固液界面の形態変化に及ぼす基板結晶の面方位の影響を調べるために近赤外顕微鏡を使ったその場観察実験が実施された.その結果,対流を抑制することでGaP/GaP成長界面のステップカイネティクス係数の面方位依存性が得られ,結晶成長時におけるマクロステップの挙動が評価された.また,GaAs_xP_<1-x>/GaPヘテロLPE 成長初期の固液界面の表面形態変化が基板表面の面方位依存性の視点から議論された.(2)静磁場THM 法によりTe 溶液から育成したCdZnTe 結晶の成長界面が急冷法によって調べられた.その結果,浮力対流を抑制することで速い引き下げ速度でも良質なCdZnTe 成長結晶を得られることを示した.
著者
齋藤 実穂 齋藤 義文 向井 利典 浅村 和史
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-33, 2005-11

本研究の目的は,磁気圏in-situ 高温プラズマ観測において,電子ダイナミクスを解明する高い時間分解能を得ることができる,新しい方式による検出部の開発である.MCP(microchannelplates)と位置検出マルチアノードからなり,ASIC(Application specific integrated circuit)技術を取り入れるところが新しい.ASICとマルチアノードの組み合わせは,最も高速な信号処理を可能にするだけでなく,同時に小型,軽量,低消費電力な検出部になると期待が持てる.これを可能にする基盤技術は,ASICをアノード基板(セラミック)の裏面へ直接搭載することである.アノード表面は,多数の個別アノードを構成する導体パターンが,プリントしてある.このアノード基板をはさんだ,表と裏の導体パターンによる静電容量を,信号検出に用いる.これは,アノード表面の高電圧と信号処理系を絶縁する,高電圧絶縁コンデンサーの代用である.アノード基板は,厚さ1mmのアルミナであり,導体パターンでつくる.基板利用コンデンサーの静電容量は3pFである.これは通常,信号検出に用いられる,高電圧絶縁コンデンサーの静電容量より2桁小さい.高電圧絶縁コンデンサーを,この極めて小さい静電容量で代用できるかというのは,小型化を目的としてた電子検出部として,ASICを採用できるかどうかの決定要素であった.しかしながら,われわれの実験結果は,低静電容量による信号の減衰はあっても約50%であることを示した.厚さ1mmというのは,構造強度の要求を満たすので,この基板利用コンデンサーは,衛星搭載機器に利用できる設計概念である.次に個別アノード間の静電カップリングを測定した.多くの個別アノードが有効面積を大きくとれるように互いに隣接した構造をとる.マルチアノードシステムでは,重要な検討項目である.その結果,基板利用コンデンサーを使用するアノードは,隣接する個別アノード間に10%のクロストークがあった.一方で,アノードと処理系を直結させる場合では,電気的クロストークは無視できるレベルである.よって,電気的クロストークも,基板利用コンデンサーの低い静電容量の影響である.10%のクロストークは,アノード運用時,信号レベルの適切な設定により十分回避できる大きさであるが,将来的には,静電容量を大きくとるほうが望ましく,今後の課題である.今回,ASICはローレンスバークレー研究所が開発してきたSSD用の荷電アンプ,ディスクリミネータ,カウンターまでを含むチップを用い,マルチアノードを試作した.このチップのサイズは,およそ1.2mm×1.2mmである.実際に,イオンビームを照射し,試験した結果,われわれの新しいタイプのマルチアノードは,さらに研究を進める必要があるものの将来の磁気圏ミッションで,高時間分解能な高温プラズマ観測へ適用可能できると結論する.
著者
飯嶋 一征 井筒 直樹 福家 英之
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.117-128, 2006-01

平成11年から数回にわたり東京薬科大学による航空機を用いた成層圏,対流圏での大気中粉塵のサンプリングが行われ微生物の採取が行われた.その結果,大気圏上空では地上で採取した菌よりもより強い紫外線耐性の菌が多く存在していることが明らかとなった.しかし,航空機を用いた実験では飛行高度の限界が12km であった.それ以上の上空にはより紫外線に強い菌の存在が予想される.そこで,より高高度での観測と長時間の大気採集が可能にするため大気球を用いた成層圏における微生物採集実験が計画された.宇宙科学研究本部では微生物採集装置の開発,製作を行い気球に搭載して微生物採集実験を行った.本論では新採集装置の開発,製作,本装置を使用した計2回の微生物採集実験の飛翔結果について報告する.