著者
和田 充紀 堀 ひろみ 廣島 幸子 根塚 明子
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.57-64, 2017-03-15

高等学校における,特別支援教育の支援体制や連携の現状を把握するため,特別支援教育コーディネーターを対象として質問紙調査をした。その結果,校内における支援体制の整備はすすめられているが,特別支援教育に関する研修や制度化が進む「通級による指導」などの情報は不足していること,また,在学中の発達障害等の生徒の指導や支援に直結する連携や情報交換と比較して,進学・就職先との連携は少ない現状が明らかになった。発達障害等の生徒の連続性のある支援のためには,高等学校における学校全体での特別支援教育への理解と支援体制の整備,関係機関との円滑な連携が求められる。
著者
Pastor Matamoros Sofia Sumi Atsushi
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.107-120, 2014-10-30

Through the history of art education in Spain, the current Spanish Educational System,the legislative framework in the field of art education, the social reality surrounding Spanish children and the experience of teachers who form them in Art as a compulsory subject: we will approach the reality of the current art education in the country. Taking the assessment as a key theme of our consideration, we will present a study of cases by teachers located in a specific area, in a specific socio-economic, cultural context of high-medium level, describing how they apply in practice, the different methods, of evaluation of Arts Education given by the Spanish government and what are the main tools for evaluating teachers in this field, which in turn is subdivided, in Plastic and Visual Education and Music Education.
著者
酒井 卓 福島 洋樹 山田 顕 堀田 朋基
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.57-65, 2014-03-20

本研究の目的は,立ち五段跳の動作特徴を明らかにし,指導場面への知見を得ることであった。通常の立ち五段跳と上肢を固定した条件下での立ち五段跳を実施させた。立ち五段跳の跳躍距離を規定する要因として,鉛直速度,接地時間,腰回旋角度,振込み速度が挙げられた。また熟練者は,より離地直前で肩と腰の回旋の切り返しを行っていた。接地期の肩と腰の回旋動作範囲は,熟練者が最も小さく,未熟練者ほど大きくなる傾向を示した。上肢を固定した試技は,跳躍距離,身体重心速度,脚スイング速度,振込み速度を低下させ,接地時間,体幹の前屈角度を増加させた。指導場面への知見として,短い接地時間で実施できる運動様式であることを優先させながら,遊脚の振込み動作を強調すること,接地期の腕の振りはコンパクトに実施することが挙げられた。
著者
志賀 文哉
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.99-103, 2016-10-25

2011年3月の東日本大震災から既に5年以上が過ぎ,復興のプロセスとしては「集中復興期」から「復興・創生期間」へと移行している。「創生」の言葉には,高台移転や災害公営住宅建設を着実に進めることや福島県における帰還困難区域以外での避難指示解除を進めることなど,次の段階すなわち復興後の自立した地域を形作ることが含まれている。しかし,2015年3月現在においても高台移転が予定の半分も進んでおらず災害公営住宅も6割程度の見込みである状況から大きく前進することは難しいと考えられる(復興庁,2016)。移転や建設が可能なところはすでに着手するか完了しており,復興にかかる助成も大きく減らされるためである。また地域の自立が求められるなかで,被災地にとどまった若年層も仕事や新しい生活を求め,これを機に域外に流出することが懸念されるため,応急仮設住宅から出た後に地域にとどまる人は高齢者が中心になることも考えられる。震災前とは大きく異なる地域に居続ける人たちの健康状態や今後の希望とそれに対応する国や行政の支援のあり方に関心が寄せられている。本調査では,応急仮設住宅から災害公営住宅他の住居への転居が本格化する,震災後4年目~5年目に応急仮設住宅で生活している人を対象に,ストレス対処力および現在の暮らしぶりを調べ,その現状を明らかにするとともに,結果内容を行政と共有し今後の効果的な対応に活用してもらうものとした。
著者
赤川 果奈 下田 芳幸 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.1-10, 2016-03-30

本研究は,中学生を対象とし,友人関係における評価懸念や友人関係満足度,そして内的適応感の指標である自尊感情として自己価値の随伴性と本来感を取り上げ,学校適応感(学校生活享受感情)との相互の関連性について,短期縦断調査によって検討したものである。中学1-3年生169名から得られた3ヶ月間隔の2回のデータについて,交差遅延効果モデルを用いて分析したところ,男子については,評価懸念から自己価値の随伴性に正の,自己価値の随伴性から本来感と学校適応感に負の,そして本来感から評価懸念,自己価値の随伴性,および学校適応感に負の影響が確認された。一方女子については,友人関係満足度から学校適応感に負の,本来感から評価懸念と自己価値の随伴性に負のパスが得られた。これらの結果を元に,中学生の友人関係,内的適応感,学校適応感の相互の関連性について考察した。
著者
田上 善夫
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.101-114, 2014-03-20

In this study, the relation between climate environment variation and religious service was investigated.First, the shrines for the god who presides over climate were studied. Next, the present religious services concerned with climate were extracted, and their distribution maps over the whole country were drawn.Furthermore, the meaning of the religious service distribution for each climate element was analyzed. As a result, the followings were found: 1) The God concerned with climate, especially the one praying for rain, has been enshrined until the present around the mountain-foot areas of Nara and Kyoto. They are worshiped as rain god, water god or dragon god by the waterfalls and the mountain streams. 2) The traditional place for the rain gods is not the source of a river in that area. In addition, the places have changed with the times. The religious service, for a rain-praying god has its complex characteristics. They were also influenced by the central governor. 3) In religious service names, many characters concerned with climate are seen. They are for fine, rain, hot, cold, wind, water and so on. 4) Names of the religious services concerned with climate do not always show the climate phenomenon itself. In addition, it is not often the case that the god concerned with climate changes into a personified god. Except for the god of water, god of dragon, god of wind and god of thunder, the nature of the climate is indirectly indicated. 5) The number of religious services concerned with climate is different for each of the climate elements. Religious services for rain or river are few, but those for water are many. It is thought that deciding where to enshrine the god is easy in the case of water (god). 6) Distribution densities of religious services concerned with climate differ with areas. It is high in Kinki District, but low in Tokai and Nankai District. The distribution of religious services concerned with climate is not equal to the distribution of the climate phenomena itself. The former one is considered to have been influenced by the ancient religious services, such as praying for rain. 7) Among the religious services concerned with climate, the ones for water, fire or wind are especially common.The theory of Godai of the Mikkyo Buddhism, in which water, fire and wind are the three of the five elements of the universe, may have influenced it.本論では気候環境の変動と祭祀のかかわりについて,調査・分析を行った。まず天候や気候にかかわる神を祀り,その祭祀の伝えてきた神社について,調査した。次に現在も行われている気候にかかわる祭祀を抽出し,その全国的な分布を調査した。さらに気候の要素ごとに祭祀の分布を明らかにし,その分布の傾向のもつ意味について分析した。その結果,およそ以下のことが明らかになった。1) 気候にかかわる神で主要な祈雨神は,現在も奈良や京都周辺の山麓などに祀られている。いずれも滝や渓流の地であり,雨神,水神,また龍神として祀られている。2) 古代より伝わる祈雨神の地は,地域的な水源の地ではない。また時代によりその位置も変化している。祈雨神祭には複合的な性格があり,国家の影響も受けている。3) 現在行われている祭祀にも,気候にかかわる文字が含まれるものが多数ある。晴雨や寒暖に関するものがあり,さらに風や水に関するものはとくに多い。4) 祭祀の名称は,気候現象そのものではない。また人格神化される場合は限られる。水神,龍神,風神,雷神を除くと,抽象的・間接的に気候の神性が示されている。5) 気候祭祀は,要素により多少がある。雨や川は少ないのに対し,水は多い。前者に比べ後者は,神の鎮座地を直接的に比定することが容易なためと考えられる。6) 気候祭祀の分布には粗密があり,およそ関東や近畿に多く,東海や南海に少ない。気候現象の分布そのものでなく,古代の祈雨祭祀などの影響と考えられる。7) 気候祭祀の中でも,とくに水,火,風の祭祀が多い。これには陰陽の五行の影響や,とくに水,火,風を含む,密教の五大の影響が考えられる。