著者
下田 芳幸
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.23-37, 2014-02

2006 年に福岡県筑前町で生じた中学生のいじめによる自殺は社会的に大きな注目を集め,この年度分から文部科学省は,“児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査”におけるいじめの定義を大きく変更した。また,2011年に発生した滋賀県大津市における中学生のいじめ自殺も一種の社会現象を引き起こし,既述のいじめの定義に,犯罪行為として取り扱われるべきものに関する既述が追加されたほか,いじめ防止対策推進法が2013 年に公布されるきっかけとなった。そこで本研究では,スクールカウンセリングを始めとしたいじめに対する心理学的支援に役立つ知見を整理して提供することを目的に,スクールカウンセラー事業が活用調査研究委託事業から活用事業補助に切り替わった2001年より2013年7月末時点までの,学校における主に心理学的な知見を中心に研究を概観した。
著者
下田 芳幸
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.223-229, 2010-03

本研究は,中学生における対人ストレスコーピングが心理的ストレス反応に及ぼす影響を検討したものである。また,本研究は,中学生における対人ストレスコーピングの特徴を明らかにすること,具体的には,成人を対象に作成された対人ストレスコーピングの中学生における因子的妥当性を確認するととともに,対人ストレスコーピングが心理的ストレス反応に及ぼす影響を検討することを目的とした。
著者
下田 芳幸 寺坂 明子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.347-356, 2012 (Released:2013-01-01)
参考文献数
43
被引用文献数
8 4

This study developed the Japanese version of the Multidimensional School Anger Inventory (MSAI; Smith & Furlong, 1998). The MSAI was devised to assess anger in the school context from a multidimensional perspective, which includes Anger Experience (affective component), Cynical Attitude (cognitive component), Destructive Expression and Positive Coping (behavioral component). The responses of 3 443 students from elementary to high school, age 10 to 17 on the Japanese version of the MSAI were used in the analyses. Exploratory and confirmatory factor analysis identified that the four-factor structure of the J-MSAI was the same as for the original MSAI. The reliability of the scale was supported by internal consistency and test-retest stability for the subscales. The construct validity of the scale was supported by cross-instrument correlations. Furthermore, the results showed that junior high and high school students had higher scores for Cynical Attitude than elementary school students, whereas developmental level had little effect on Anger Experience and Destructive Expression.
著者
小川 徳重 石津 憲一郎 下田 芳幸
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.9, pp.97-111, 2014-12

本研究では通信制に通う生徒を支えていくための外部連携の在り方について焦点を当てる。具体的には,通信制高校の教職員を対象に,他機関との連携について自由記述のアンケートを行った。また,通信制高校にとって連携が重要であると考えられる機関の担当者にインタビュー調査を行うことで,生徒やその家族をどのように支えることができるのかを明らかにすることを試みることとする。通信制高校で学ぶ生徒の中には,様々な経歴や事情を持ちながら,高校で学習し,将来の可能性を広げるべく努力しようとしているものも多い。彼らにとって,通信制高校は教育の機会が保障された最後の学校とも言える。そこでの学習が円滑に行われるためにも,通信制高校の教育相談は外部機関との連携も含めて効果的に機能しなくてはならない。このような通信制高校の教育相談の体制づくりを推進していく上で,どのような点を留意しなくてはならないかを検討することを,本研究では目的とする。
著者
下田 芳幸 黒山 竜太 吉村 隆之
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.171-180, 2011-10

本研究は,共感性が対人ストレスコーピングおよびストレス反応に及ぼす影響について検討するものである。本研究は,多次元的な視点で捉えられた共感性が,対人ストレスコーピングおよびストレス反応に及ぼす影響について探索的に検討することを目的とした。なお共感性,対人ストレスコーピングおよびストレス反応とも,得点に男女差が報告されていることから(共感性については BaronCohen&Wheelwright,2004;植村ら,2008など,対人ストレスコーピングについては加藤,2000,ストレス反応については鈴木ら,1997),関連性に男女差が示される可能性を考慮しつつ検討を行った。
著者
黒山 竜太 下田 芳幸 Ryuta KUROYAMA Yoshiyuki SHIMODA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.13-20, 2010

本研究では、大学生の感じるストレスに対してストレスコーピングのあり方がどのように関連しているか、特に先延ばし傾向が及ぼす影響について男女別に検討した。対象者は大学生315名であった。質問紙は、ストレスコーピングに関連のあるとされる共感尺度、先延ばし傾向尺度、対人ストレスコーピング尺度、ストレス反応尺度で構成された。「抑うつ不安」「不機嫌怒り」「無気力」からなるストレス反応について重回帰分析を行った結果、男子では全てのストレス反応に対して先延ばし傾向の影響が大きいことが明らかとなった。また、女子では先延ばし傾向よりも被影響性の影響が大きいことがわかった。以上よりストレス反応に影響を与える傾向やコーピング手段が男女で異なり、ストレス反応の低減のために男子は問題を後回しにしないことや独りよがりにならないこと、女子は男子の傾向に加えて周囲に影響を受けすぎないことが重要であることが示唆された。
著者
赤川 果奈 下田 芳幸 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.1-10, 2016-03-30

本研究は,中学生を対象とし,友人関係における評価懸念や友人関係満足度,そして内的適応感の指標である自尊感情として自己価値の随伴性と本来感を取り上げ,学校適応感(学校生活享受感情)との相互の関連性について,短期縦断調査によって検討したものである。中学1-3年生169名から得られた3ヶ月間隔の2回のデータについて,交差遅延効果モデルを用いて分析したところ,男子については,評価懸念から自己価値の随伴性に正の,自己価値の随伴性から本来感と学校適応感に負の,そして本来感から評価懸念,自己価値の随伴性,および学校適応感に負の影響が確認された。一方女子については,友人関係満足度から学校適応感に負の,本来感から評価懸念と自己価値の随伴性に負のパスが得られた。これらの結果を元に,中学生の友人関係,内的適応感,学校適応感の相互の関連性について考察した。
著者
高信 智加子 下田 芳幸 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.7, pp.21-26, 2013-01

文部科学省の調査(2012)によると,平成22年度の中学生の不登校生徒数は97,428人であり,4年ぶりに10万人を下回ってはいたものの,依然として高い数値であると言わざるを得ない状況である。出現率は2.73%であり,37人に1人の割合である。これは,通常学級1つにつき1人存在するという計算になり,学校における不登校問題は現在でも大きな課題であるといえる。このような中,学校現場においては,1995年からスクールカウンセラーの配置がなれ,現在では全校配置となっている。さらに2008年からスクールソーシャルワーカーが設置されるようになり,それぞれについて様々な支援に関する報告がなされている(レビューとして有賀・鈴木・多賀谷,2010;井上,2008;井上・窪島,2008;若本・山下・下舞,2009)。しかし,このような現状の中で,中学校の教師自身が不登校状態の生徒や保護者に対してどのような支援を行っているのか,という点については,少数の事例を考察するタイプの研究は散見されるものの,実態を幅広く調査し分析したものは多くない。このような現状の中で教師の支援の実態を調査したものとして,例えば山本(2007)は小中高の教員を対象とした調査において,不登校状態を捉える尺度を作成して支援方法との組み合わせを検討し,自己主張ができない場合は学習指導・生活指導とともに家族支援が有効である,といった対応関係について考察している。また岸田(2012a)は小中学校の教員を対象に調査を行い,教師がうまくいったと認識している支援方法として,家庭との連携や心理面への支援が上位に来ることを報告している。ただしこれらの調査は,小中高といった様々な学校段階が含まれている。しかし,不登校は学校段階で出現率が異なっており(文部科学省,2012),また教科担任制といった制度の違いや発達段階の視点から考えても,各学校段階における不登校の状態像や教師に求められる支援方法は異なることが考えられる。以上のことから本研究では,不登校の出現が最も多い中学校の教師を対象とし,不登校生徒に対する教師の支援がどのように行われているかを調査し,効果のある支援のあり方について検討することを目的とする。
著者
下田 芳幸 石津 憲一郎 樫村 正美
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.576-584, 2014
被引用文献数
1

The effect of self-evaluation of emotions on subjective adaption to school was investigated among junior high school students (<i>n</i> = 217: 112 boys, 105 girls) who participated in a questionnaire survey. Hierarchical multiple regression analysis indicated that for boys "Infringement and maladjustment" differed based on their self-evaluation of anger and anxiety. For girls, on the other hand, the self-evaluation of anger alleviated psychological stress, worsened the "Relationship with the teacher" and the "Relationship with the class", whereas self-evaluation of anxiety played a role in increasing psychological stress and deteriorating the "Relationship with the class." Furthermore, negatively evaluating either anger or anxiety heightened the "Motivation for learning" in girls. These results suggest that the evaluation of emotions is different in boys and girls and for different emotions.
著者
下田 芳幸 寺坂 明子
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.347-356, 2012
被引用文献数
4

This study developed the Japanese version of the Multidimensional School Anger Inventory (MSAI; Smith & Furlong, 1998). The MSAI was devised to assess anger in the school context from a multidimensional perspective, which includes Anger Experience (affective component), Cynical Attitude (cognitive component), Destructive Expression and Positive Coping (behavioral component). The responses of 3 443 students from elementary to high school, age 10 to 17 on the Japanese version of the MSAI were used in the analyses. Exploratory and confirmatory factor analysis identified that the four-factor structure of the J-MSAI was the same as for the original MSAI. The reliability of the scale was supported by internal consistency and test-retest stability for the subscales. The construct validity of the scale was supported by cross-instrument correlations. Furthermore, the results showed that junior high and high school students had higher scores for Cynical Attitude than elementary school students, whereas developmental level had little effect on Anger Experience and Destructive Expression.