著者
石崎 良 和田 充紀
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.77-87, 2017-10-25

本研究の目的は,肢体不自由(脳性まひ)のある児童生徒の生活の基盤となる「食事場面」において,一人で食べることができる能力の高まりに焦点をあてた取組について報告した。学校給食を媒介とした直接的な指導及び自立活動の時間の指導における間接的な指導を組み合わせ,「一人で食べる力」を身に付けるための具体的な支援の在り方について考察した。加えて,食事場面での指導支援をアクティブ・ラーニングの視点から考察することで,障害のある子供のアクティブ・ラーニング型の授業支援について考察した。また,個別の教育支援計画及び個別の指導計画に基づいた教師間,教師と作業療法士(OT)や言語聴覚士(ST)との連携,家庭への浸透や利用する福祉施設等での食事場面での自立を視野に入れた学校との連携の取組について,「チーム学校」の視点から報告した。
著者
孫 珠熙 元林 理佳
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.193-203, 2016-03-30

This study analyzed how school uniforms influence the behavior and lives of high school students by conducting a questionnaire survey involving 811 male and female high school students in Tokyo Metropolitan and Toyama Prefectures on the amount of their monthly allowance, present satisfaction levels, and school-uniform-wearing behavior.(1)"The average monthly allowance" is 4,587 yen for males in Toyama, 5,822 yen for males in Tokyo, 4,173 yen for females in Toyama, and 7,369 yen for females in Tokyo. The allowance of males in Tokyo is 47% of what it was 10 years ago, indicating that the students' financial condition is tight.(2)"Satisfaction levels" for school uniforms are generally low with females in Toyama (10.7%), females in Tokyo (17.7%), males in Toyama (18.6%); and males in Tokyo (17.4%). There is little difference in the satisfaction levels for school uniforms between male students in Toyama and their Tokyo counterparts. The satisfaction level of female students in Toyama is significantly lower than that of female students in Tokyo, indicating that some countermeasure is required.(3) Factor analysis of the questionnaire items on "high school students' school-uniform-wearing behavior" extracted 5 factors for males: "clothing in disarray," "desire for expressing individuality," "attachment to uniforms," "how they look when they wear a uniform," and "functionality of uniforms." For females, one factor, "management of uniforms," was added to the above, making the number of factors six in total.
著者
安本 史恵
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.133-141, 2022-03-15

教育によって脳はどのような機序で生命科学的に変化するのだろうか。個体差を超えて生じる生体反応を理解することは教育実践や教育政策の立案においても必要であると考えられる。本総説においては,①幅広い分野の教育系研究者に有用であると考えられ②神経科学の基礎により多くの接点を持つエビデンスであることを基準として話題を選別し,脳が環境を知るメカニズム,大人と子どもの脳の違い,主体的な学びの重要性の根拠,現代の新しい技術によって脳が変化する可能性,などについて概説する。神経科学においては,「学習」は「環境からの外部刺激によって神経回路が構築される過程」,「教育」は「外部刺激を制御・補完する過程」として捉えられる。このことは,どのような脳を創出したいかを考えながら教育の起点である環境を構築していく必要があることを示している。
著者
伊藤 美和 水内 豊和
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.83-90, 2022-03-15

パチンコ依存症者への社会資源を活用した支援の方法やその有効性を明らかにすることを目的とし,パチンコ依存の状態にあるA氏に対し,自己実現を支える継続的な心理支援を実施した。約10ヶ月にわたる心理支援の結果,社会資源を活用した余暇活動の広がりがみられ,それに比例してA氏のパチンコ店に行く頻度は減少した。また,他者とのやり取りや自己肯定感の高まりが,自身のパチンコ依存の問題解決に向けての意欲向上に繋がったと考えられる。
著者
水内 豊和
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.93-101, 2021-10-22

諸外国のASD者の運転に関する研究を概観した。免許取得率は定型発達(TD)者よりも低いがその割合は一様ではなかった。免許取得過程には指導者の障害理解や指導スキル,本人の障害の開示などの問題があった。運転への自信や不安についての研究結果は一意ではなかった。障害特性が運転に与える影響の検証は多数あり,社会的状況認知や視覚運動の協調など諸側面でASD者の運転行動がTD者よりも拙劣とする結果があるが一貫性はなかった。また路上運転ではなくドライビングシミュレーターによる検討がほとんどであった。運転改善の検討からは,構造化,明瞭化,実演して見せるなどの方略の有効性が示された。以上よりASD者がTD者と比べて運転リスクが高いといえる一貫した証左はなく,個々の事例性に大きく依拠することが示唆された。今後わが国でも実証的研究の蓄積とそれに基づくシステマティックレビューやガイドラインの作成が求められよう。
著者
粂 美海 神野 賢治 金田 華実 沖田 諒 佐々木 達也
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.43-54, 2021-10-22

本研究は, Bリーグクラブの観戦者数の増加に視座を置き,富山グラウジーズを事例にBリーグクラブにおけるサービスプロダクトが勧誘行動に与える影響を明らかにすることを目的とした。ホームゲームの観戦者を対象とした集合調査を実施し,二つの仮説モデルを設定・解析した。結果,1)富山グラウジーズ(Bリーグクラブ)のサービスプロダクトは,観戦者の勧誘行動を誘発していること,特に『ゲームの魅力』因子が強い規定力を有していることが明らかとなった。 また,2)勧誘行動によって,富山グラウジーズに対するチーム・ロイヤルティが高まり,さらに勧誘者自身の観戦回数も増加することが示唆された。 先行研究において,サービスプロダクトが勧誘行動に正の影響を与えること,勧誘行動によって勧誘者自身の観戦回数が増加するという知見は確認されておらず,総合満足や観戦継続意図を媒介変数とする勧誘行動モデルは支持されなかったが,チーム・ロイヤルティを媒介変数とする勧誘行動モデルは支持された。
著者
中村 公輔 片岡 弘
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.149-155, 2020-10-23

ギ酸によるフェーリング液の還元を演示するために適切な実験条件を検討した。ギ酸とフェーリング液の混合溶液中でのギ酸と水酸化物イオンの初期濃度を変数として,赤色沈殿(Cu₂O)が析出する濃度領域を調べた結果,ギ酸とフェーリング液を混合した後のpHがおよそ8–10となる場合に,ギ酸がフェーリング液を明確に還元することがわかった。また,一定量のギ酸とフェーリング液を混合する方法が演示実験として簡便であることも再確認できた。Appropriate experimental conditions were studied to demonstrate the reduction of Fehling's solution by formic acid. The initial concentrations of formic acid and hydroxide ion in the mixed solution of formic acid and Fehling's solution were used as variables to investigate the concentration range where red precipitate (Cu₂O) formed. It was found that the reduction reaction occurred when the pH after mixing formic acid and Fehling's solution was about 8–10. In addition, it was reconfirmed that the method of mixing Fehling's solution and a certain amount of formic acid was convenient as a demonstration experiment.
著者
孫 珠煕 馬場 弘朗
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.157-174, 2016-10-25

This study used printed questionnaires to survey university students(n=348)to understand the impact of young people's values on their fashion behavior. Its findings showed that when self-reporting their jacket size, about 60% of males reported wearing size L or larger, while about 30% of females reported wearing size L or larger. There were few statistically significant differences by gender on assessed average scores for value items, and the three factors of I. Assertiveness/Self-esteem, II. Need for Approval, and III. Negativity/Fatigue were identified. Statistically significant differences by gender were apparent for many fashion behavior items. Structural equation models having strong fit were identified for both values and fashion behavior. Young persons who were more assertive and had more need for approval in analysis by value type(four clusters)tended to be more assertive in their self-expression through fashion behavior. On the other hand, many of the young people were passive in their values and uninterested in fashion behavior. These findings suggest that young people can develop assertive values by being given opportunities to take an interest in how they dress.
著者
姜 信善 南 朱里
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.1-10, 2015-03-15

本研究では友人関係に影響を及ぼす要因として,個人志向性・社会志向性が推察され,取り上げていくこととする。本研究の全体的目的は,個人志向性・社会志向性が友人関係満足への影響を,男女別に調べた上で,検討していくことである。
著者
山田 斗志希 上山 輝
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.89-101, 2017-03-15

本稿では,主として文献等による問題の抽出と分析を試みる。具体的には主として物語を有するコンテンツを取りあげるだけでなく,個人の考えが表明されている文献,インタビューやテレビ番組での発言なども対象とする。本稿では以下の3点について考察することを目的とする。1)「孤独」の意味における「状態」と「感覚」の関係2)メディア表現における「孤独」とネガティブなイメージの連想について3)「孤独」と「社会におけるコミュニケーション能力不足」の同一視について
著者
高井 一雄 岡崎 浩幸
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.63-71, 2019-10-25

本研究の目的は,ルーブリックを活用した学習活動とパフォーマンス評価を通して,学習者の英語スピーキング能力と英語で話すことへの意欲にどのような変化が見られるかを明らかにすることである。研究協力者は高校2年生120名である。また,英語科教員3名に協力いただき,学科の取り組みとしてパフォーマンス評価を実践することで,教師の協働にどのような変化が見られるかについても調査した。結果は,評価の観点として設定した技能については向上が見られ,ルーブリックを活用した学習は効果的であったと考えられる。意欲については期待した効果が得られなかった。教師の協働については,評価基準や情報共有を行う上で指導の共通目標となる「育成を目指す生徒」の具体化に向けて意見交換や共通理解ができた。
著者
石井 哲夫
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.147-149, 2015-03-15

These examples are music classes of Elementary School of Zoonmod and Voranol in Mongolia. The elements of national music are adopted in these classes. Instruments what are used in these class are made from useless articles in some case. We ought to learn from them in Musical education in Japan.
著者
広瀬 信
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.121-145, 2014-10-30

本研究では,イギリスのアカデミック技術者がどのように形成されていったのかを明らかにするための基礎的研究として,どのような経歴(教育・訓練を含む)の者がアカデミック技術者に採用されたのか,またどのような教育・訓練を通じてアカデミック技術者として養成されたのかについての経歴研究を行う。本稿では研究(1)として,スコットランドの2大学,グラスゴー大学とエディンバラ大学の工学教員(土木系と機械系)を対象とする。スコットランドの大学が採用していたサンドイッチ制による技術者養成は,大学卒業後に3年程度の実地訓練を受ける場合のように,大学の指導教授と長期に離れることがなく,指導関係を連続させることができ,アカデミック技術者の再生産にプラスに働いたのではないかという仮説についても検討する。
著者
坂本 麻実子
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.139-145, 2014-03-20

1975年に至る井上の創作状況を跡づけ,さらに『それからのブンとフン』および『たいこどんどん』とそれぞれの原作を音楽面から検証する作業を通して井上の作家人生における1975年の意味を考察し,彼の音楽劇への一つの見方を提示したい。
著者
石井 哲夫
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.119-128, 2017-10-25

ベートーヴェンのロンドハ長調op.51-1は,1797年,ベートーヴェンがウィーンに来た頃の作品である。この頃のベートーヴェンは即興演奏を得意とする独創的なピアニストとしての評価が高く,また当時のヨーロッパ社会情勢から音楽家を取り巻く経済的状況がかなり厳しくなってきたことから,ベートーヴェンも貴族のサロン等で行なわれる音楽活動で高評価を維持してゆく必要があり,自身で演奏することを前提としたピアノ曲を書いてゆく必要に迫られた。この作品はそのような状況の中で生まれた。曲中にはピアニストとしてのベートーヴェンが得意とした演奏テクニック,この後のベートーヴェンの作品に顕れてくる様々な作曲技法上の特徴が出てくる。この作品は(わが国では)ピアノ初級者のための教材として扱われる向きが強いが,そこだけで終わりにするのではなく,中~上級レベルのベートーヴェンの他の作品に取り組むようになった後も,それらの作品解釈を行なう際に立ち返ってみるべき作品である。
著者
栗林 睦美 野﨑 美保 和田 充紀
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.135-149, 2018-03-16

本研究では,知的障害者の学校卒業後が豊かで充実したものとなるためには,卒業前にどのような取組が求められているのかについて検討することを目的として,就労・生活・余暇の視点で卒業生の保護者を対象とした実態調査を行った。就労では人間関係・コミュニケーションなどで困難はあるが,職場の人が相談相手となることで,就労の安心充実につながっている現状がうかがえた。生活や余暇については家族と一緒にすごし,困難には家族が対応している割合が高かった。「親亡き後の将来の生活への不安」や「家族とだけではなく友達や支援者と余暇を過ごすこと」「余暇のレパートリーを増やすこと」等の生活や余暇に対する課題も見出された。卒業後の長い生活を見据え「相談できる機関等の情報」「余暇に関する学習の機会」など,学校教育に求められることや取り入れていくべき内容についての示唆が得られた。
著者
和田 充紀 水内 豊和
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.45-53, 2018-03-16

本研究では,特別支援学校における主権者教育の現状を明らかにし,知的障害のある生徒に必要な教育内容,卒業後も社会を構成する一員である自覚をもち安心して意欲的に選挙権を行使できるようにするために必要な内容や方法を検討するための基礎資料を得ることを目的として,全国の知的障害特別支援学校を対象として主権者教育の現状と課題について調査を実施した。その結果,知的障害特別支援学校において,9割以上の学校において主権者教育に取り組んでいる現状が示された。自治体による出前授業を利用し,選挙管理委員会から選挙用具を借用する取り組みは生徒の理解と関心を高めていることがうかがえた。課題としては,知的障害者用の授業用資料の充実や,学校全体での教育の充実,そして卒業後も社会につなげていくためには,家庭や選挙管理委員会との連携と実際の投票時の配慮などが示された。