著者
二森 優希 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.21-27, 2016-12

本研究では,反抗期の経験が,青年期の心理的発達にどのような影響をもたらすのかを明らかにするため,反抗期の出現時期として多く想定されている思春期を終えており,さらに当時の記憶が鮮明に残っていると考えられる大学生を対象に,親子関係,同調性,心理的自立,見捨てられ不安得点が第二反抗期の有無とどのように異なるのかを検討することを目的とする。また,その際,反抗期の有無と過剰適応の高低を組み合わせることによって,よい子ゆえに過度に自己を抑制せざるを得なかったと思われる者にも焦点を当てていく。なお,反抗期に関しては多くの定義があるが,本研究では反抗心あったが行動には移さなかった場合も「反抗期経験なし」として扱い,「思春期段階のもので,親に対して反抗的な態度をとる時期(石川,2013)」と定義し,質問紙にも記載した。
著者
石津 憲一郎 安保 英勇
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.442-453, 2009-12-30
被引用文献数
7 8

過剰適応はいわゆる「よい子」に特徴的な自己抑制的な性格特性からなる「内的側面」と,他者志向的で適応方略とみなせる「外的側面」から構成されている。これまでこの2つの高次因子は並列的に捉えられてきたが,内的側面は具体的な行動を生起させる要因として想定することができる。そこで本研究では,幼少時の気質と養育者の態度を含め,因子間の関連性を再検討することを第1の目的とし,過剰適応の観点を含めた包括的な学校適応のモデルの構築を第2の目的とした。1,025組の中学生とその母親を対象にした調査の結果,養育態度や気質から影響を受けた「内的側面」によって「外的側面」が生起するモデルの適合度が相対的に高いことが示された。また,過剰適応の内的側面である「自己不全感」や「自己抑制」が「友人適応」や「勉強適応」に負の影響を与える一方で,「自己不全感」や「自己抑制」が過剰適応の外的側面に繋がった場合には,外的側面はそれらの適応を支えるべく作用していたが,抑うつ傾向には影響を与えていなかった。個人が過剰適応することで社会文化的には適応していく可能性があるが,心理身体レベルでの適応とは乖離がなされていくことが想定される。
著者
安中 幸恵 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.11, pp.29-36, 2016-12

本研究ではTwitter を利用している大学生を調査対象とし,自己愛傾向がTwitter 利用におけるストレス反応に及ぼす影響について検討する。ここでは先行研究を参照にして,素因ストレスモデルの視点を取り入れることとする。自己愛傾向の高い大学生は,自己愛傾向の低い大学生よりもTwitter 利用におけるストレッサーに対して脆弱であり,その結果,ストレッサーにさらされると自己愛傾向の低い大学生よりも強いストレス反応が現れると予想される。それゆえ仮説として「自己愛傾向が高い大学生は,自己愛傾向が低い大学生よりもTwitter 利用におけるストレッサーに対して脆弱であり,その結果,ストレッサーにさらされると高いストレス反応を示す」を提示し検証することを目的とする。
著者
小川 徳重 石津 憲一郎 下田 芳幸
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.9, pp.97-111, 2014-12

本研究では通信制に通う生徒を支えていくための外部連携の在り方について焦点を当てる。具体的には,通信制高校の教職員を対象に,他機関との連携について自由記述のアンケートを行った。また,通信制高校にとって連携が重要であると考えられる機関の担当者にインタビュー調査を行うことで,生徒やその家族をどのように支えることができるのかを明らかにすることを試みることとする。通信制高校で学ぶ生徒の中には,様々な経歴や事情を持ちながら,高校で学習し,将来の可能性を広げるべく努力しようとしているものも多い。彼らにとって,通信制高校は教育の機会が保障された最後の学校とも言える。そこでの学習が円滑に行われるためにも,通信制高校の教育相談は外部機関との連携も含めて効果的に機能しなくてはならない。このような通信制高校の教育相談の体制づくりを推進していく上で,どのような点を留意しなくてはならないかを検討することを,本研究では目的とする。
著者
石津 憲一郎 安保 英勇
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.23-31, 2008-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
29
被引用文献数
27 14

臨床場面では過剰適応は非適応的とされているが, 実証的な過剰適応研究は数が少ない。本研究では過剰適応の概念を理論的に整理し, その構造を検討することを第1の目的とした。続いて, 従来言われてきたように過剰適応が個人にとって非適応的に作用するのかを実証的に検討することを第2の目的とした。中学生を対象にした調査の結果, 過剰適応は個人の性格特性からなる内的側面と, 他者志向的で適応方略とみなせる外的側面から構成されることが示された。また, 過剰適応と学校適応感, ストレス反応との関連を検討した結果, 過剰適応の内的側面は学校適応感およびストレス反応にネガティブな影響を与えていたが, 適応方略として捉えられる外的側面は学校適応感を支える一方で, ストレス反応にも正の影響を与えることが示された。本研究の結果, 従来言われてきたこととは異なり, 必ずしも過剰適応的であることが非適応的とはみなすことができないことが示された。しかし, 他者志向的な適応方略で支えられる適応感の影にはストレスの存在が想定され, そのストレスが将来の不適応を予測する可能性について考察を行った。
著者
大島 すみか 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-10, 2015-12

本研究では,自我同一性,時間的展望,心理的非柔軟性,スチューデント・アパシーがそれぞれどのように関連するのかについて探索的に検討することを目的とする。
著者
安中 幸恵 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.29-36, 2016-12

本研究ではTwitter を利用している大学生を調査対象とし,自己愛傾向がTwitter 利用におけるストレス反応に及ぼす影響について検討する。ここでは先行研究を参照にして,素因ストレスモデルの視点を取り入れることとする。自己愛傾向の高い大学生は,自己愛傾向の低い大学生よりもTwitter 利用におけるストレッサーに対して脆弱であり,その結果,ストレッサーにさらされると自己愛傾向の低い大学生よりも強いストレス反応が現れると予想される。それゆえ仮説として「自己愛傾向が高い大学生は,自己愛傾向が低い大学生よりもTwitter 利用におけるストレッサーに対して脆弱であり,その結果,ストレッサーにさらされると高いストレス反応を示す」を提示し検証することを目的とする。
著者
赤川 果奈 下田 芳幸 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.1-10, 2016-03-30

本研究は,中学生を対象とし,友人関係における評価懸念や友人関係満足度,そして内的適応感の指標である自尊感情として自己価値の随伴性と本来感を取り上げ,学校適応感(学校生活享受感情)との相互の関連性について,短期縦断調査によって検討したものである。中学1-3年生169名から得られた3ヶ月間隔の2回のデータについて,交差遅延効果モデルを用いて分析したところ,男子については,評価懸念から自己価値の随伴性に正の,自己価値の随伴性から本来感と学校適応感に負の,そして本来感から評価懸念,自己価値の随伴性,および学校適応感に負の影響が確認された。一方女子については,友人関係満足度から学校適応感に負の,本来感から評価懸念と自己価値の随伴性に負のパスが得られた。これらの結果を元に,中学生の友人関係,内的適応感,学校適応感の相互の関連性について考察した。
著者
羽賀 祥太 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.8, pp.7-12, 2014-02

近年,世界各地で多くの自然災害が起こっている。それは我が国においても同様であり,とりわけ2011年の東日本大震災などは記憶にあたらしい。このような災害で多くの人々が被害・犠牲となり,重大なストレスやトラウマにもなりうる状況においても,多くの人が心理的に立ち直り,現実に適応しようとしている。レジリエンスという概念は,この違いを説明し得る現象の一つである。 本研究の仮説とて,以下の3つをあげる。(1)レジリエンシーは精神的健康の変化にプラスに影響しているだろう。(2)ソーシャル・サポートは精神的健康の変化にプラスに影響しているだろう。(3)レジリエンシーとソーシャル・サポートは相互作用しているだろう。そしてその相互作用は精神的健康の変化にプラスに影響しているだろう。これらの仮説について検証していくこととする。
著者
高信 智加子 下田 芳幸 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.7, pp.21-26, 2013-01

文部科学省の調査(2012)によると,平成22年度の中学生の不登校生徒数は97,428人であり,4年ぶりに10万人を下回ってはいたものの,依然として高い数値であると言わざるを得ない状況である。出現率は2.73%であり,37人に1人の割合である。これは,通常学級1つにつき1人存在するという計算になり,学校における不登校問題は現在でも大きな課題であるといえる。このような中,学校現場においては,1995年からスクールカウンセラーの配置がなれ,現在では全校配置となっている。さらに2008年からスクールソーシャルワーカーが設置されるようになり,それぞれについて様々な支援に関する報告がなされている(レビューとして有賀・鈴木・多賀谷,2010;井上,2008;井上・窪島,2008;若本・山下・下舞,2009)。しかし,このような現状の中で,中学校の教師自身が不登校状態の生徒や保護者に対してどのような支援を行っているのか,という点については,少数の事例を考察するタイプの研究は散見されるものの,実態を幅広く調査し分析したものは多くない。このような現状の中で教師の支援の実態を調査したものとして,例えば山本(2007)は小中高の教員を対象とした調査において,不登校状態を捉える尺度を作成して支援方法との組み合わせを検討し,自己主張ができない場合は学習指導・生活指導とともに家族支援が有効である,といった対応関係について考察している。また岸田(2012a)は小中学校の教員を対象に調査を行い,教師がうまくいったと認識している支援方法として,家庭との連携や心理面への支援が上位に来ることを報告している。ただしこれらの調査は,小中高といった様々な学校段階が含まれている。しかし,不登校は学校段階で出現率が異なっており(文部科学省,2012),また教科担任制といった制度の違いや発達段階の視点から考えても,各学校段階における不登校の状態像や教師に求められる支援方法は異なることが考えられる。以上のことから本研究では,不登校の出現が最も多い中学校の教師を対象とし,不登校生徒に対する教師の支援がどのように行われているかを調査し,効果のある支援のあり方について検討することを目的とする。
著者
下田 芳幸 石津 憲一郎 樫村 正美
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.576-584, 2014
被引用文献数
1

The effect of self-evaluation of emotions on subjective adaption to school was investigated among junior high school students (<i>n</i> = 217: 112 boys, 105 girls) who participated in a questionnaire survey. Hierarchical multiple regression analysis indicated that for boys "Infringement and maladjustment" differed based on their self-evaluation of anger and anxiety. For girls, on the other hand, the self-evaluation of anger alleviated psychological stress, worsened the "Relationship with the teacher" and the "Relationship with the class", whereas self-evaluation of anxiety played a role in increasing psychological stress and deteriorating the "Relationship with the class." Furthermore, negatively evaluating either anger or anxiety heightened the "Motivation for learning" in girls. These results suggest that the evaluation of emotions is different in boys and girls and for different emotions.