著者
櫻井 準也
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.37-47, 2017-06-30

本稿では7 世紀に築造され、18世紀初頭(江戸時代)に石室が修復された埼玉県坂戸市の浅羽野1 号墳(土屋神社古墳)の事例を紹介する。この古墳では天井石に残された銘文によって1707年に信州高遠の石工によって石室が修復されたことが判明している。古墳が過去に修復された事例はわが国に存在するが、本事例は極めて珍しい事例である。その理由は修復の時期や石工名が判明していること、そして石材が転用されて石像が製作されたことである。また、修復の契機となったのが当時頻発していた地震災害による古墳の被害であることも重要な点である。このように、本事例は古墳と江戸時代の人々の関係、さらには遺跡と自然災害の関係を知ることができる興味深い事例である。
著者
川本 勝
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.15-34, 2015-12-25

日本の地熱資源は豊富で、日本の地熱発電メーカーは世界有数の技術力と実績を持っているが、日本国内の地熱発電の開発は全く遅れている。しかし、火力発電を地熱発電に置き換えることによって、エネルギー自給率やCO2排出量を大幅に改善でき、また、安定したベースロード電源を得ることもできる。地熱発電を促進するためには、「地熱源探索の国家プロジェクト」と「地熱源探索に関する新技術の開発」および「地熱源の共同利用の促進」が重要な政策である。火力発電を地熱発電に置き換えることによって、電気料金の抑制と「地熱税」の導入が可能である。地熱税は消費税に匹敵するほどの豊富な税収源で、「地熱発電促進事業」のための「特別会計」を新設することができる。
著者
宮脇 健
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.55-71, 2011-12-25

本稿は日本において生じるリスクに関して、マスメディアがどのような報道を行ってきたのか検証することを目的としている。2009 年世界中で蔓延した、H1N1イフルエンザは日本においても猛威を振るい、社会に多大な影響を与えた。しかしながら、良く考えると、インフルエンザという感染症は毎年流行し、多くの人が罹患し、場合によっては死に至る極めて重要なリスクであるにもかかわらず、その研究は医学、科学などもっぱら理系の科学的知見に関する研究が多数を占め、そこからの政策に関する問題や総括が指摘されてきたと言える。むろん、リスクに関するマスメディアの影響や、人間の心理などの社会学、社会心理学に関する研究はあるものの、インフルエンザに関するマスメディア報道の検証に関して、ほとんど散見されていない。そこで、本稿はリスク、特に2009 年に発生したH1N1インフルエンザに関するマスメディア報道に関して分析を試みることにする。
著者
櫻井 準也 Junya SAKURAI 尚美学園大学総合政策学部 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-17, 2018-06-30 (Released:2018-10-04)

本稿では神奈川県横須賀市で発掘された高度経済成長期のゴミ穴に廃棄された生活財について紹介する。廃棄された生活財には陶磁器、ガラス製品、金属製品、プラスチック製品など様々な素材が使用されており、その種類では薬品、日用品、調味料、化粧品が全体の10%を超え、当時の日常生活を反映するものである。調査の結果、これらの生活財は都市銀行の寮で消費されたものが廃棄されたものであり、廃棄年代は1960年代中頃であることが判明した。さらに、同時期の一般家庭の資料との比較によって、この資料の性格が行員寮における消費生活を反映していることもわかった。この資料はわが国の高度経済成長期の日常生活の実態を知る手掛かりとなるものである。 In this paper, I introduce the life goods discarded into the garbage pit of the rapid economic growth period in Yokosuka-city, Kanagawa prefecture. Various materials, such as pottery, glassware, metal goods, and plastic article, are used for the discarded life goods. and if it totals for every kind, medicine, daily necessaries, seasonings, and cosmetics are over 10% of the whole rate, and it reflects everyday life of those days. As a result of investigation, it became clear that these life goods were consumed in the dormitory of the city bank, and the discarded age was middle of the 1960s.Furthermore, the feature of these materials also understood reflecting the consumption habits of dormitory by comparison with the materials of ordinary home of the period. These materials serve as a key which knows the actual condition of the everyday life of the high economic growth period of Japan.
著者
角 能 高橋 幸裕 Yoku KADO Yukihiro TAKAHASHI 東京大学大学院人文社会系研究科 尚美学園大学総合政策学部 The University of Tokyo Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-16, 2017-06-30

本稿は認可保育所運営への株式会社の参入という保育の準市場化が、公立保育所と私立保育所との間の対自治体関係の違いに与える影響を、自治体の保育担当職員と私立(民営)保育所の園長に対する聞き取り調査の結果に基づいて分析した。株式会社が認可保育所運営に参入している自治体では、株式会社運営の保育所は、公立保育所や社会福祉法人運営保育所に比べて保育行政への参加において劣位に置かれている一方、障害児や処遇困難ケースは公立保育所と私立保育所とで等しく引き受けていることを明らかにした。対照的に、株式会社が認可保育所運営に参入していない自治体では、私立保育所の圧力団体の力が強く、障害児や処遇困難ケースの引き受け等の自治体からの負担の重い要請は公立保育所が優先的に引き受けていた。This paper analyzes how quasi-market, for-profit companies running authorized nursery schools, influences structural relations between public nursery schools and private ones against local authorities, based on interview for nursery staff at private schools and local government workers.At local authority, for-profit companies run nursery schools, they have more disadvantageous position than public ones and those run by shakai-fukushi-houjin on participating in government as nursery care. On one hand, they accept offer from local authorities about nursery care of child with disabilities or difficult cases at the same extent as public ones.In contrast, as local authority, with no nursery school run by for-profit company, as strong lobby group between private nursery schools against local authority, public nursery school mainly accept nursery care of child with disabilities or difficult cases.
著者
北原 斗紀彦 Tokihiko KITAHARA 日本マス・コミュニケーション学会
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.43-65, 2012-06-30

日本の稼動可能な原発50基は全国13道県に立地しており、そこでは県紙とブロック紙計17紙が発行されている。これら原発立地県の地方紙は、東日本大震災によって東京電力福島第一原子力発電所で起きた事故や、地元の原発についてどのように報道してきたか、3.11後の1年余にわたる社説を分析した。その結果、(1)脱原発の明確な主張を掲げる新聞は少数派であり、半面、原発維持の積極的主張を掲げる新聞はない、(2)各紙が一致して最も強調しているのは地元の原発の徹底的な安全確保であり、事故後、政府が打ち出した安全対策に厳しい批判の眼を向けている、(3)地元に原発が存在することへの強い不安とともに、原発が地元自治体にもたらしてきた各種交付金や雇用なしに地域住民の生活が成り立つのか不安を表明している-ことが分かった。これは原発が「よそごと」「他人ごと」でなく、足元に原発が存在することによっていやおうなく「当事者」の立場に立たされる地方紙の特性の表れであり、それが原発是非論への新たなアプローチの視点を提供する可能性を指摘した。Japan has 50 nuclear power plants workable in 13 prefectures, where 17 regionalnewspapers publish. The purpose of this essay is learning how the unique experience oflocal residents living in proximity to nuclear power plants is reflected in the viewpointsof these regional newspapers. By analyzing editorials which refer to Fukushima nuclearaccident and their local nuclear power plants, published after 3.11 for more than oneyear, those points as follows come to appear. (1)The number of newspaper that advocatesreducing reliance on nuclear power is a few. On the other hand, opinions that promotenuclear power, are hard to be found out in those newspapers. (2)All of those newspapersput maximum stress on the necessity to keep safety of their local nuclear power plants,and are very critical to the governmental measures taken after 3.11 to ensure safety. (3)Those papers express strong anxiety to the existence of nuclear power plants, and at thesame time are skeptical of the possibility for residents to earn a livelihood without plants,they depend on economically.
著者
江頭 満正
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-14, 2015-12-25

プロスポーツイベントに於ける、集客要因については幾つもの議論が存在している。本研究ではアメリカマイナーリーグに於けるスタジアム築年齢と、新築スタジアムによる集客効果を議論した。2005年から2015年シーズンの年間観客数データ6641を使用した。既存研究によって提唱されている集客要因、人口、所得、チーム成績との関係性は希薄であり、スタジアム築年齢との相関が認められた。研究対象期間に新築された49スタジアムにおける観客数動向を分析した結果、1年目から20年目まで平均106%の増加が認められ、22年目から改築前観客数を下回ることが明らかになった。
著者
濱西 隆男
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.83-104, 2017-06-30

公務員には法令遵守義務と職務命令服従義務が課せられている。現在の有力説は職務命令服従義務が優先すべき場合があるとするが、原則として法令遵守義務が優先すべきである。この問題は、最高裁平成24年2 月9 日判決でも決着していない。
著者
櫻井 準也
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.1-36, 2019-06

本稿では、考古学の立場からわが国の日本史学習漫画の歴史とその特徴について検討した。その結果、子ども向けの日本史学習漫画シリーズは1960年代後半に登場し1980年代になってわが国に普及したこと、それらは1980年代頃までは説明・解説型が中心であったが1990年代頃からストーリー重視の作品が増え、1990年代中頃からは人気の漫画キャラクターを起用したシリーズが現れたことがわかった。その後、1980年代末頃から考古学者が原案を作成したり考古学者が監修するシリーズが増加し、新発見の遺跡や考古学の研究成果が学習漫画に取り入れられるようになった。しかし、その結果「旧石器捏造事件」の遺跡や遺物が紹介されるという弊害を生むことになった。
著者
原子 純
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.77-89, 2014-12-25

遊びによって、一人ひとりの子どもに期待される健康な心と身体、豊かな感情や社会性、積極的にものごとに取り組む意欲や態度などの発達は、日々の生活の中で、身近で具体的・直接的な遊びを通して、総合的に助長されていくものである。このように遊びは、子どもに開放感や楽しさや満足感を与えると同時に、子どもの心身の能力や態度を発達させ、子どもの人間形成(人格形成)にとって重要な役割を担っている。今日では、遊びを知らない子どもや遊べない子どもが増加しているといわれている。みんなと遊びたいという欲求は持っているけれども遊びの中に入っていけない子ども、年長児になっても基本的生活習慣の出来上がっていない子ども、自然に触れあう経験の乏しい子ども等、こうした子どもたちは社会の変化の中で生まれた子ども達の姿である。そういった中で、幼稚園教育要領や保育所保育指針にも述べられているが、幼稚園や保育所では、子どもたちを遊びの中で主体的に活動に取り組むよう、子どもを育てなければならないのである。本研究は、子どもの成長における遊びの意義について文献調査により整理する。そこから子どもの遊び環境の構成と創造について考察する。
著者
高田 順三
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.59-84, 2015-12-25

会計参与は、取締役と共同して、計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)及びその附属明細書を作成する。この場合において、会計参与は、法務省令で定めるところにより、会計参与報告書を作成しなければならない。会計参与はその職務の権限として、いつでも、会計帳簿又はこれに関する資料が、書面をもって作成されているときは(又は電磁的によって記録されているときは)、当該書面(又は電磁的記録)の閲覧及び謄写をし、又は取締役及び支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求めることができる。会計参与の資格は、公認会計士若しくは監査法人又は税理士若しくは税理士法人でなければならないとされる。会社の計算書類の正確性を図ることを主たる目的として創設された会計参与の趣旨及びこの制度が普及しない原因を考察する。
著者
梅澤 昇平
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-13, 2011-06-30

日本の社会主義者が皇室とどう向きあったかを考えるうえで、北一輝らのいわゆる国家社会主義者を埒外に置くことはできない。そこで北をはじめとする有力な国家社会主義者の思想と皇室観を概観し、その共通性と異質性を探る。
著者
高田 順三 Junzou TAKADA 尚美学園大学大学院総合政策研究科
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-22, 2016-06-30

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した新情報の一部を公開した。今回のパナマ文書の最初の報道は2016年4月3日になされた。この文書はオフショア金融取引文書の機密文書で、アイスランドのグンロイグソン首相を含む多数の政治家周辺・著名人・企業幹部・スポーツ選手などが、タックスヘイブン(租税回避地)を利用していることがわかった。彼らは、アンフェアだか、法を犯しているわけではない。彼らにしてみれば、それを行使することは自由で、何のやましいことがあろうかと思っている。事実それを利用することは法律違反ではないのだか、税の源泉国である彼らの母国に納税すべきところを回避したモラルは問われるのではなかろうか。そして、いまも現実に多くの企業や富裕者がタックスヘイブンの有利さを享受している。これは世界的レベルで悪用されており、今回のパナマ文書はほんの氷山の一角と言えよう。問題は、世界の税秩序を規律するシステムが壊れており、現行の一国一法主義の税制では対応できなくなっていることだ。そこで、この投げかけられたパナマ文書の問題について考えることにする。
著者
中橋 友子 Tomoko NAKAHASHI 尚美学園大学総合政策学部非常勤 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.75-94, 2016-12-25

暴言王トランプの当選に世界は驚いた。しかしアメリカの有権者の多くが置かれている状況を考えれば、それは驚くに値しない。ここではアメリカがどのような文化・社会的問題を抱え、人々が何を彼に期待して投票したのかを論じる。