著者
濱西 隆男 Takao HAMANISHI 尚美学園大学総合政策学部 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
no.24, pp.83-104, 2017-06

公務員には法令遵守義務と職務命令服従義務が課せられている。現在の有力説は職務命令服従義務が優先すべき場合があるとするが、原則として法令遵守義務が優先すべきである。この問題は、最高裁平成24年2 月9 日判決でも決着していない。Officials shall,in the performance of their duties,comply with laws and regulations and faithfully observe the orders of their superiors in the course of their duties. The theory that latter observance shall precede the former compliance in certain cases is accepted more dominantly at present. But I think that the former compliance shall generally precede the latter observance. Although the Supreme Court judged on February 9 2012,this matter has not been settled yet.
著者
櫻井 準也
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.37-47, 2017-06-30

本稿では7 世紀に築造され、18世紀初頭(江戸時代)に石室が修復された埼玉県坂戸市の浅羽野1 号墳(土屋神社古墳)の事例を紹介する。この古墳では天井石に残された銘文によって1707年に信州高遠の石工によって石室が修復されたことが判明している。古墳が過去に修復された事例はわが国に存在するが、本事例は極めて珍しい事例である。その理由は修復の時期や石工名が判明していること、そして石材が転用されて石像が製作されたことである。また、修復の契機となったのが当時頻発していた地震災害による古墳の被害であることも重要な点である。このように、本事例は古墳と江戸時代の人々の関係、さらには遺跡と自然災害の関係を知ることができる興味深い事例である。
著者
北原 斗紀彦
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
no.13, pp.35-53, 2011-12

戦後日本における原子力発電を中心とする原子力「平和利用」に関する朝日新聞と読売新聞の社説を時期を区分して分析し、両紙の論調の推移の考察と比較を行った。6 つの時期に区分される戦後日本の原子力開発利用史のうち、原子力研究が禁止・休眠していた1945 ~ 53 年の時期(第期)において、両紙の関心はまだ低調であり、「平和利用」への漠然とした期待と夢を表明するにとどまっていた。日本の原子力利用推進体制が整備された1954~65 年の時期(第期)において、読売新聞は1954~57年の4年間にわたり「平和利用」促進の大キャンペーンを行い、原子力が将来のエネルギー源として重要であり、原子炉導入を急ピッチで図らなければならないと主張した。これに対し、朝日新聞は「平和利用」を肯定する立場に立ちつつ、原子力利用推進行政の拙速さを批判する論調を掲げた。
著者
上村 博昭 Hiroaki KAMMURA 尚美学園大学総合政策学部 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
no.24, pp.17-35, 2017-06

本稿では、地方圏の自治体が、大都市圏に設置する拠点的店舗であるアンテナショップのうち、都道府県の施設を対象として、立地の動態と規定要因を明らかにすることを、目的とする。日本では、大都市圏での人口集中が進んだ一方で、地方圏では、人口維持や産業振興が、課題となっている。それを受けて、一部の自治体は、産業振興政策の一環として、大都市圏で、生産物の販売促進、観光誘客の拡大などを図っている。その一環として、地方圏の自治体は、物販機能、飲食機能、観光案内の機能などを伴う、アンテナショップを設置して、千代田区、中央区、港区の都心3 区へ、集中的に立地させている。その要因は、主な顧客層である中高年の女性が、多く訪れる地点であるという商業的要因と、都道府県の象徴として、東京大都市圏に立地する施設であるために、中心性の高い地点を指向することや、マスメディアの取材を受けやすいこと、あるいは、他のアンテナショップが多く分布しており、立地選定での失敗リスクが小さいことなども、考慮されている。本稿は、立地分析にとどめているが、今後には、産業振興政策としての、地域のマーケティングや地域ブランド化について、地理学的観点から、研究を蓄積することが求められる。In this paper, the locational pattern and its determinants of antenna shops, which are operated in metropolitan areas by prefectures, are examined. In Japan, the non-metropolitan region faced decline of its population and industrial activity, while major cities has increased its population. As a challenge for these, some prefectures try to promote products and touristic sites in major cities, and set antenna shops. The antenna shops have some functions, such as shops and/or restaurants, cafes, tourist information center etc. The antenna shops mainly locate in Tokyo metropolitan area, especially Chiyoda, Chuo, and Minato wards (Central Tokyo). This locational pattern caused by some factors. The prefectures seek the exact place where many elder women come. They are the main customers of the antenna shops, and this factor is similar to the locational factor of other shops.However, others factors are not same. The antenna shops are situated as a symbolic institution of the prefectures, and they tend to select the location of Central Tokyo. Also, prefecture offices select the location, by anticipating the chance of broadcasted, reported in newspapers. And, they tried to lessen the risks of management, by choosing the spot where other prefectures have already set the antenna shops. In this paper, we examined the locational patterns, but in the future, more geographical studies analyzing marketing places or local brands, as a measure of industrial promotion policy, are needed.
著者
中橋 友子
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
no.23, pp.75-94, 2016-12

暴言王トランプの当選に世界は驚いた。しかしアメリカの有権者の多くが置かれている状況を考えれば、それは驚くに値しない。ここではアメリカがどのような文化・社会的問題を抱え、人々が何を彼に期待して投票したのかを論じる。
著者
櫻井 準也 Junya SAKURAI 尚美学園大学総合政策学部 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-17, 2018-06-30 (Released:2018-10-04)

本稿では神奈川県横須賀市で発掘された高度経済成長期のゴミ穴に廃棄された生活財について紹介する。廃棄された生活財には陶磁器、ガラス製品、金属製品、プラスチック製品など様々な素材が使用されており、その種類では薬品、日用品、調味料、化粧品が全体の10%を超え、当時の日常生活を反映するものである。調査の結果、これらの生活財は都市銀行の寮で消費されたものが廃棄されたものであり、廃棄年代は1960年代中頃であることが判明した。さらに、同時期の一般家庭の資料との比較によって、この資料の性格が行員寮における消費生活を反映していることもわかった。この資料はわが国の高度経済成長期の日常生活の実態を知る手掛かりとなるものである。 In this paper, I introduce the life goods discarded into the garbage pit of the rapid economic growth period in Yokosuka-city, Kanagawa prefecture. Various materials, such as pottery, glassware, metal goods, and plastic article, are used for the discarded life goods. and if it totals for every kind, medicine, daily necessaries, seasonings, and cosmetics are over 10% of the whole rate, and it reflects everyday life of those days. As a result of investigation, it became clear that these life goods were consumed in the dormitory of the city bank, and the discarded age was middle of the 1960s.Furthermore, the feature of these materials also understood reflecting the consumption habits of dormitory by comparison with the materials of ordinary home of the period. These materials serve as a key which knows the actual condition of the everyday life of the high economic growth period of Japan.
著者
角 能 高橋 幸裕 Yoku KADO Yukihiro TAKAHASHI 東京大学大学院人文社会系研究科 尚美学園大学総合政策学部 The University of Tokyo Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-16, 2017-06-30

本稿は認可保育所運営への株式会社の参入という保育の準市場化が、公立保育所と私立保育所との間の対自治体関係の違いに与える影響を、自治体の保育担当職員と私立(民営)保育所の園長に対する聞き取り調査の結果に基づいて分析した。株式会社が認可保育所運営に参入している自治体では、株式会社運営の保育所は、公立保育所や社会福祉法人運営保育所に比べて保育行政への参加において劣位に置かれている一方、障害児や処遇困難ケースは公立保育所と私立保育所とで等しく引き受けていることを明らかにした。対照的に、株式会社が認可保育所運営に参入していない自治体では、私立保育所の圧力団体の力が強く、障害児や処遇困難ケースの引き受け等の自治体からの負担の重い要請は公立保育所が優先的に引き受けていた。This paper analyzes how quasi-market, for-profit companies running authorized nursery schools, influences structural relations between public nursery schools and private ones against local authorities, based on interview for nursery staff at private schools and local government workers.At local authority, for-profit companies run nursery schools, they have more disadvantageous position than public ones and those run by shakai-fukushi-houjin on participating in government as nursery care. On one hand, they accept offer from local authorities about nursery care of child with disabilities or difficult cases at the same extent as public ones.In contrast, as local authority, with no nursery school run by for-profit company, as strong lobby group between private nursery schools against local authority, public nursery school mainly accept nursery care of child with disabilities or difficult cases.
著者
北原 斗紀彦 Tokihiko KITAHARA 日本マス・コミュニケーション学会
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.43-65, 2012-06-30

日本の稼動可能な原発50基は全国13道県に立地しており、そこでは県紙とブロック紙計17紙が発行されている。これら原発立地県の地方紙は、東日本大震災によって東京電力福島第一原子力発電所で起きた事故や、地元の原発についてどのように報道してきたか、3.11後の1年余にわたる社説を分析した。その結果、(1)脱原発の明確な主張を掲げる新聞は少数派であり、半面、原発維持の積極的主張を掲げる新聞はない、(2)各紙が一致して最も強調しているのは地元の原発の徹底的な安全確保であり、事故後、政府が打ち出した安全対策に厳しい批判の眼を向けている、(3)地元に原発が存在することへの強い不安とともに、原発が地元自治体にもたらしてきた各種交付金や雇用なしに地域住民の生活が成り立つのか不安を表明している-ことが分かった。これは原発が「よそごと」「他人ごと」でなく、足元に原発が存在することによっていやおうなく「当事者」の立場に立たされる地方紙の特性の表れであり、それが原発是非論への新たなアプローチの視点を提供する可能性を指摘した。Japan has 50 nuclear power plants workable in 13 prefectures, where 17 regionalnewspapers publish. The purpose of this essay is learning how the unique experience oflocal residents living in proximity to nuclear power plants is reflected in the viewpointsof these regional newspapers. By analyzing editorials which refer to Fukushima nuclearaccident and their local nuclear power plants, published after 3.11 for more than oneyear, those points as follows come to appear. (1)The number of newspaper that advocatesreducing reliance on nuclear power is a few. On the other hand, opinions that promotenuclear power, are hard to be found out in those newspapers. (2)All of those newspapersput maximum stress on the necessity to keep safety of their local nuclear power plants,and are very critical to the governmental measures taken after 3.11 to ensure safety. (3)Those papers express strong anxiety to the existence of nuclear power plants, and at thesame time are skeptical of the possibility for residents to earn a livelihood without plants,they depend on economically.
著者
濱西 隆男
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.83-104, 2017-06-30

公務員には法令遵守義務と職務命令服従義務が課せられている。現在の有力説は職務命令服従義務が優先すべき場合があるとするが、原則として法令遵守義務が優先すべきである。この問題は、最高裁平成24年2 月9 日判決でも決着していない。
著者
荘 発盛
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
no.27, pp.95-103, 2018-12

蔡英文の政権樹立直後、「新南向政策」が打ち出され、東南アジアまたはアセアンとの経済連携及び貿易関係の強化を推進している。その結果として、対中国貿易の依存度は低下することは容易に想像される。しかし、これは直ちに「脱対中国貿易依存」とみるべきかどうか。蔡英文政権では、中国の「一帯一路」などとは代替的なものではなくて、むしろ「補完的な役割」を果たすことになると主張している。一方、20数年前の李登輝時代において「南向政策」が推進されていたが、当時の台湾を取り巻く国際環境はすでに大きく変わり、その点も注目しつつ、「新南向政策」の成功の道について考察するのが本論文の目的である。
著者
櫻井 準也
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
no.24, pp.37-47, 2017-06

本稿では7 世紀に築造され、18世紀初頭(江戸時代)に石室が修復された埼玉県坂戸市の浅羽野1 号墳(土屋神社古墳)の事例を紹介する。この古墳では天井石に残された銘文によって1707年に信州高遠の石工によって石室が修復されたことが判明している。古墳が過去に修復された事例はわが国に存在するが、本事例は極めて珍しい事例である。その理由は修復の時期や石工名が判明していること、そして石材が転用されて石像が製作されたことである。また、修復の契機となったのが当時頻発していた地震災害による古墳の被害であることも重要な点である。このように、本事例は古墳と江戸時代の人々の関係、さらには遺跡と自然災害の関係を知ることができる興味深い事例である。
著者
櫻井 準也
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.1-36, 2019-06

本稿では、考古学の立場からわが国の日本史学習漫画の歴史とその特徴について検討した。その結果、子ども向けの日本史学習漫画シリーズは1960年代後半に登場し1980年代になってわが国に普及したこと、それらは1980年代頃までは説明・解説型が中心であったが1990年代頃からストーリー重視の作品が増え、1990年代中頃からは人気の漫画キャラクターを起用したシリーズが現れたことがわかった。その後、1980年代末頃から考古学者が原案を作成したり考古学者が監修するシリーズが増加し、新発見の遺跡や考古学の研究成果が学習漫画に取り入れられるようになった。しかし、その結果「旧石器捏造事件」の遺跡や遺物が紹介されるという弊害を生むことになった。
著者
宮脇 健
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
no.13, pp.55-71, 2011-12

本稿は日本において生じるリスクに関して、マスメディアがどのような報道を行ってきたのか検証することを目的としている。2009 年世界中で蔓延した、H1N1イフルエンザは日本においても猛威を振るい、社会に多大な影響を与えた。しかしながら、良く考えると、インフルエンザという感染症は毎年流行し、多くの人が罹患し、場合によっては死に至る極めて重要なリスクであるにもかかわらず、その研究は医学、科学などもっぱら理系の科学的知見に関する研究が多数を占め、そこからの政策に関する問題や総括が指摘されてきたと言える。むろん、リスクに関するマスメディアの影響や、人間の心理などの社会学、社会心理学に関する研究はあるものの、インフルエンザに関するマスメディア報道の検証に関して、ほとんど散見されていない。そこで、本稿はリスク、特に2009 年に発生したH1N1インフルエンザに関するマスメディア報道に関して分析を試みることにする。
著者
伊藤 雅之 上村 博昭 Masayuki ITO Hiroaki KAMMURA 尚美学園大学総合政策学部 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
no.27, pp.1-26, 2018-12

本研究の目的は、組織農業経営体(集落営農団体や農業法人)を対象として、経営先進性に焦点を絞った経営実態と販売先に関する地方別特性を明らかにすることである。分析データを収集するため、組織農業経営体を対象として、2018年6 月に郵送配布郵送回収による記名式アンケートを実施した。配布数は1,072件、回収数は286件であった。このうち、無記入で返送されたのが3 件、回答団体が記入されていなのが9 件あり、地方別の分析対象件数は274件である。経営先進性の全体傾向をみたところ、常勤雇用者の確保は喫緊の課題である。特に、中部地方では緊急性が高く、要因の究明と解決方法の検討を要すると思われた。次に経営先進性を比較したところ、「関東地方と近畿地方」において、「生産・栽培技術や加工技術のレベルアップ」と「販路が着実に拡大」で有意な差が観察された。いずれの指標でも、関東地方のほうが近畿地方よりもあてはまり度合いが高かった(先進性が高かった)。このことから、関東地方の組織農業経営体では大都市圏に位置していることを活かした直営の直売所での、ならびに実需者への売上が順調に拡大している一方で、近畿地方の組織経営体では大都市圏に位置しているメリットを活かしきれていない組織経営体が相対的に多いのではないかと推測された。
著者
上村 博昭 Hiroaki KAMMURA 尚美学園大学総合政策学部 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi Journal Of Policy Studies,Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.33-53, 2017-12-25

本稿では、食品加工事業者の育成における政策の役割を検討している。本稿の対象は、比較的小規模で、国内の生産地と結びつきの強い事業者である。近年、食品産業の内部、あるいは農林漁業との関係について、フードシステム論で多く検討されているほか、ショートフードサプライチェーンなど、いくつかの論点で採りあげられてきた。他方で、こうした事業者は、地域の産業振興における担い手として期待され、事業規模の拡大に向けて、いかにマーケティング活動を展開するのか、という点が論じられている。本稿で、竹田市の事例を検討したところ、生産・加工・流通に至るまで、幅広く政策的に支援したにもかかわらず、マーケティングの課題は残った。この背景には、経営者が副業と位置づけて、事業規模の拡大に消極的なことがある。確かに、本稿の対象とする食品加工事業者は、産業振興へ明瞭な効果をもたらさないが、食品の多様性や食文化の醸成に寄与することから、こうした事業者への政策的支援も求められる。その際に、直売所の整備、商談会の開催、テスト販売などの機会を提供して、食品加工事業者の経営方針と整合的な支援を図ることも、政策の在り方として求められよう。This paper discusses the role of policies for developing the food processing businesses in the peripheral area. Although there are many type of businesses in the food industry,such as manufacturers, wholesalers, retailers, and restaurants, we focus on the small type of food processing businesses. These businesses often link directly to local agricultural producers, and this type is analyzed in a discussion of Short Food Supply Chain, Alternative Food System, or Regional Specialty Food Products. These businesses are also discussed from the view of promoting the regional economies in peripheral areas. But, these businesses are relatively small, and they face some challenges of marketing. To clarify how this occurs, we analyze a case of Taketa-shi, and discuss how the policies support them. In Taketa-shi, about 30 food processing businesses join the policies, and develop new food products or businesses. However, they manage the food processing businesses as a side business or hobbies, and some of them evaluate the size is proper, because the small size fits their management (craft) policies. To this situation, the role of policies is to provide the chance of sales, by setting direct sales stores or business meetings, or conduct some test marketing activities.
著者
小林 正英 Masahide KOBAYASHI 尚美学園大学総合政策学部 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi Journal Of Policy Studies,Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.19-32, 2017-12-25

EU-NATO関係は「死に体」と化していると言われる。そうであるとするならば、いつ、どのようにしてそうなったのだろうか。冷戦後、EUが安全保障政策分野に乗り出したことで、NATOとの競合の種は蒔かれていた。しかしながら、ベルリン・プラス合意策定によって競合は回避され、分業と協調の欧州・大西洋安全保障ガバナンスの枠組みが構築されるかに見えた。本論は、ソマリア沖海賊対策作戦に焦点を当てながら2008-2012年のEU-NATO関係の転機について分析するものである。
著者
中橋 友子 Tomoko NAKAHASHI 尚美学園大学総合政策学部非常勤 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.75-94, 2016-12-25

暴言王トランプの当選に世界は驚いた。しかしアメリカの有権者の多くが置かれている状況を考えれば、それは驚くに値しない。ここではアメリカがどのような文化・社会的問題を抱え、人々が何を彼に期待して投票したのかを論じる。
著者
真下 英二 Eiji MASHITA 尚美学園大学総合政策学部 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-23, 2016-12

地方分権の進展とともに普及が広がった自治基本条例であるが、その制定要因について詳細な分析が行われてきたわけではない。自治基本条例の制定要因について、地方分権に伴う制度的変化から考察したところ、市町村合併に伴う面積の広域化が自治基本条例の制定要因として考えられうることが明らかとなった。さらに、自治基本条例を制定した自治体は、特に非合併の自治体では非自民・非公明の傾向が強いことが明らかとなった。つまり、合併した自治体においては面積の広域化と政治的影響が、非合併の自治体においては政治的影響が大きな意味を持つことになる。これらのことは、合併による面積の広域化により、住民自治を強化する必要性が生じたこと、その一方で自治基本条例を制定するためには、政治的背景が備わっていなければならないことを示唆するものとなっている。The basic ordinance of local governance has been established in many municipalities in Japan along with decentralization. But the factor of establishment has not been analyzed in detail. Through a consideration from the change of the institution of local system, it was found that broadening of municipality's area along with municipals mergers caused establishment of the ordinances.And the electorate living in local governments that established basic ordinance of local governance tends not to vote LDP or New Komeito. So, in the merged municipalities, broadening effect and political factors cause establishment of the basic ordinance of local governance, and in the non- merged municipalities, political factors have meaningful effect for it.These suggest that, broadening of municipalities area caused the necessity to strengthen resident's self-governance, and establishment of basic ordinances of local government needs political factors.