著者
青木 実枝 坂本 祐子 神谷 直由
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.39-46, 2003-03-01

昼夜逆転の生活パターンとなり午前中の講義を欠席しがちな男子学生に対して、睡眠に焦点を当てた行動療法的アプローチを試みた。現状の生活パターンの原因を探索する面接による支持的介入を行った。次に対象者自身が設定した生活改善目標と方法に対して、1週間のセルフモニタリングを行った。さらに、セルフモニタリング前後の睡眠の質をOSA(小栗・白河・阿住)睡眠調査票を用いて評価した。その結果、対象者が目標としていた、二度寝の習慣が消失し昼夜逆転の生活パターンが改善した。対象者の意思を尊重した支持的介入による原因探索と自身で設定した目標に対するセルフモニタリング法は、役割意識を自覚し自律性を生み出したと考えられる。また、セルフモニタリング後のOSA睡眠調査票のスコアが向上しており、睡眠の質も向上していることが明らかとなった。
著者
青木 実枝 三澤 寿美 鎌田 美千子 新野 美紀 川村 良子
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-10, 2006-03-31
被引用文献数
1

本研究は,地域で活動する保健師の災害時ヘルスケアニーズに対する役割意識を明らかにすることを目的に行った.調査対象者はA県の市町村および保健所に勤務する保健師358人である.回答者282人(回答率77.5%)現施設の平均従事年数14.4プラスマイナス9.5年である.調査内容は、全災害サイクルにおけるヘルスケアニーズと災害時救護・救援活動に関する研修・訓練・シミュレーションの参加状況,および役割を遂行するに当たって気になることである.全災害サイクルにおけるヘルスケアニーズは先行研究を参考にして52の質問項目を設定した.その結果,50%以上の対象者が自分の役割であると回答したものが22項目あり,保健師は全災害サイクルにおけるヘルスケアニーズに対して役割意識が高いことが明らかになった.中でも,保健師が自分の役割であると強く意識する傾向にあったのは,発災時期から亜急性期のヘルスケアニーズである,1被災地の衛生状況や被災住民の健康状態および災害弱者の把握,2健康障害を予防するための巡回活動や広報活動および環境の工夫,3心理的影響への対応,4感染予防に関する項目であった.保健師が自分の役割ではないと意識する傾向にあったのは,災害休止期や復興期のヘルスケアニーズである,1被災者の生活の立て直しに関する項目,2組織作りや資源マップ作り等であった.しかし,保健師の災害看護や災害時救護・救援活動に関する研修等の受講経験者は18.4%のみであった.さらに、保健師が自分の役割意識に基づいて役割行動を起こすことに対して,自信がないと回答したのは84.4%であった.以上の結果から,地域で活動している保健師は,大規模災害が発生した場合,発災時期から亜急性期のヘルスケアニーズへの役割意識の方が,災害休止期や復興期のヘルスケアニーズへの役割意識よりも高いことが明らかになった.しかし,実際には,地域で看護活動を展開する保健師であるがゆえに,復興期における地域住民の生活の立て直しや,生活の立て直しに関連した健康問題への対処などのヘルスケアニーズに対する役割に期待が高いと考えられる.このことから地域住民のヘルスケアニーズによって期待される役割と実際の保健師の看護活動との乖離が予想される.また,保健師のヘルスケアニーズに対する役割意識は広範囲で高いが,意識している役割に基づいて行動するために必要な知識・技術が不十分であることが明らかになった.
著者
遠藤 恵子 佐藤 幸子 三澤 寿美 小松 良子 片桐 千鶴
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.17-24, 2003-03-01
被引用文献数
3

山形県に住む母親360人を対象に、母親役割に対する意識と性役割や女性問題に関する意識の実態と、就業状況の関連を明らかにし、母親の実母・義母と比較した。幼稚園や保育所を通じて、調査用紙を配布し、郵送または幼稚園・保育所を通じて回収し、統計学的に分析した。研究依頼書には、研究目的と回答拒否可能なことを明記し、調査は無記名とした。360人の母親に依頼し、回答のあった314人を分析対象とした。 母親は、母親であることに対して肯定的・否定的両方の面をもっていた。無職の母親は、有職の母親より母親であることを消極的・否定的にとらえていた。「『男は仕事、女は家庭』という考え方」に対して、「同感」は無職者に多く、「同感しない」は有職者に多かった。「女性が職業をもつこと」に対し、有職者は無職者に比べ「結婚や出産後も仕事を続ける方がよい」の割合が多く、就業の有無で母親役割に対する意識や性役割に関する意識が異なっていた。また母親と実母・義母でも母親役割に対する意識や性役割に関する意識が異なっていた。母親の就業状況や性役割に対する意識を尊重した育児支援の検討が示唆された。
著者
齋藤 亮子 沼澤 さとみ 二口 尚美 太田 優子 長岡 美紀子
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.47-54, 2003-03-01

この研究の目的は、THA(人工股関節全置換術)の予定者が入院以前にクリニカル・パス(診療情報)を入手してから入院までにどのような過程を経て医療に自発的に参画するようになるのか、その過程とそのパターンの種類を明らかにして考察を加えることである。それは情報の提供の仕方と、その後の援助について検討する資料となると考える。対象は本研究に参加の承諾が得られた患者10名である。研究デザインは質的記述的方法を採用した。データ收集は半構成式質問を用いた面接を行い、許可を得て録音し、面接後文字再生してデータとした。分析は継続的比較検討法を用いた。その結果患者はパスを受け取ると1.パスを見る・読む、2.驚き戸惑う、3.情報の確認、4.医療者を信頼、5.自己像の再構築、6.意思固め、7.取組の表明の7ステップをへて自発的参画にいたっていたが、これらのステップの組み合わせのちがいによって、パターンが3つあった。1)自発性のパターン、2)乗り気パターン、3)気乗りしないパターンがあった。それぞれのパターンに応じた援助が必要であると考えられた。
著者
三澤 寿美 小松 良子 片桐 千鶴 大江 誠子 藤澤 洋子
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.23-31, 2004-03-01
被引用文献数
2

わが国の初産婦がRubinの示す母親役割獲得過程における5つの操作に関する母親役割行動を行っているのかどうか、および5つの操作に関する母親役割行動が妊婦週数と、子どもを持つ母親が近所にいるかどうかと模倣およびロールプレイに関する行動とに関係があるのかを明らかにすることを目的に、自己記入式質問紙を用いて255人の初産婦に調査を行った。調査対象の平均年齢は28.2歳であった。得られた結果から以下のことが明らかになった。1)わが国の初産婦は、模倣・ロールプレイ・空想や想像・取り込みー投影ー拒絶・悲嘆作業に関する母親役割行動を行っていた。2)妊娠週数と「出産の準備」、「赤ちゃん用品の準備」、「胎児の性別の想像」、「子どもの成長の想像」には関係があった。3)子どもを持つ母親が近所にいるかどうかと「小さい子どものいる友人と会いたい」、「小さい子どもを抱っこする」、「おなかの子どもに話しかける」には関係があった。
著者
三澤 寿美 片桐 千鶴 小松 良子 藤沢 洋子
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.PAGE9-21, 2004-03-01
被引用文献数
2

第1報では、日本人女性の妊娠期の母親役割獲得過程、特に妊娠期にあるはじめて子どもを持つ女性の気持ちと行動の変化に焦点をあて報告した。そこで、本稿では、気持ちの変化に影響を及ぼす要因が、どの時期に、どのように妊婦の気持ちに影響を及ぼしているのかについて明らかにすることを目的とした。データは質的に収集し、8人の妊婦に継続して、妊娠初期、中期、後期、末期に半構造化面接法を用いてインタビューを行った。分析は質的帰納的に行った。その結果、妊娠期にあるはじめて子どもをもつ女性の気持ちの変化に影響を及ぼす要因のうち、『妊娠反応がプラスになる』『妊娠が確定する』は妊娠初期に、『胎動を初覚する』は妊娠中期に、『胎動を自覚する』『妊娠経過に伴う体型の変化』は妊娠中期、後期、末期に、『妊婦検診時に超音波画像を見る』『超音波画像の写真やビデオを見る』『育児の場面を見る』『夫の言動』『実母の言動』『義母の言動』『家族以外の人の言動』『マイナートラブル』はすべての時期で、妊婦の気持ちの変化に影響を及ぼしていた。また、同じ要因であっても、作用する時期や要因の作用する気持ちの変化のパターンが違う場合があった。妊娠期にあるはじめて子どもをもつ女性に対して、妊婦の気持ちの変化に影響を及ぼす要因がどの時期に、どのように影響しているのかを考慮しながら、個別的にアプローチする必要性が示された。
著者
青木 実枝 久米 和興
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.25-32, 2003-03-01
被引用文献数
2

看護職員が入院患者から攻撃的言動を受けることは、看護職員と患者の人間関係に様々な影響をおよぼすと考えられる。この人間関係の影響を明らかにするために、看護師が患者から受けた攻撃的言動の実態を明らかにする目的で行った。 調査は先行研究を参考にして作成した質問紙を用いて行った。質問の内容は言葉による攻撃と身体に対する攻撃に分けて質問項目を作成した。調査結果から以下の知見を得た。 言葉による攻撃と身体に対する攻撃ともに対象者の82.6%が経験を有していた。看護師の性別では男性が経験する頻度が高く、日常業務における性別役割分担について検討する必要性が示唆された。また、一人で患者に対応している時に攻撃を受ける頻度が高く、複数で対応することの重要性が明らかになった。 最も多く攻撃的言動を受けた場所は、言葉による攻撃、身体に対する攻撃ともに隔離室であった。また言葉による攻撃を最も多く受けた時間は0時から3時の間であった。これは隔離室使用患者に対する巡視や観察が上記の時間帯に多くなされているためと考えられた。
著者
遠藤 芳子 後藤 順子
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.33-40, 2004-03-01
被引用文献数
2

社会構造の変化から高齢者や子どもとの接触が少ないと思われる看護学生はその対応に戸惑うことが予想される。山形県立保健医療大学の小児看護学の臨地実習では、病院実習の前に幼稚園実習を実施している。今回この実習をする看護学生46人のきょうだい数や子どもとの接触経験などと実習前後の子どもの好き嫌い、子ども観、実習のとらえ方の変化を調査し、実習の有効性も検討した。その結果、1.過半数の学生が二人きょうだいであった。2.子どもとの接触経験は「現在ある」が半数であった。3.子どもの好き嫌いの程度では、実習前に比べ「大好き」が約2倍になっていた。4.こども観の変化では、実習後「かわいい」「生意気と思わない」「元気だ」「面白い」の割合が有意に増加していた。5.実習のとらえ方では、「楽しかった」「自信がついた」「もっと世話したかった」「不安に思わない」「苦痛と思わない」という結果で肯定的な割合が増加していた。6.健康な子どもの実態を理解し、健康な子どもを肯定的にとらえることができるようになったという点から、幼稚園実習の目的、目標が達せられ、実習は有効であったと考えられた。