著者
竹鼻 ゆかり 佐藤 千史
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.225-235, 2013 (Released:2014-09-05)
参考文献数
20

目的:本研究の目的は,研究者らが以前に作成した病気の子どもを理解し支援できるようになるための指導法を改訂し,その評価を行うことである.方法:改訂の主たる点は,指導法の内容の精選,指導者の統一,対象の一般化,評価方法の簡素化,介入群・対照群における1カ月後の追跡調査の実施である.準実験研究デザインにより,公立中学校の2年生222名を対象とし,介入群には,授業の1週間前に調査を行った後,授業前日に1型糖尿病を簡単に説明したパンフレットを配布した.翌日に病気の理解を促す授業を行い,その直後と1ヵ月後に事前と同様の調査を行った.対照群には,授業を行わず介入群と同日に調査とパンフレットの配布を行い,すべての調査終了後に倫理的配慮として授業を行った.結果:男子では「病気の理解」(p=0.001),「病気の支援」(p<0.001)において,女子では「病気の理解」(p=0.003)と「病気の支援」(p=0.016)「共感性」(p<0.001)において,事前より事後に有意に得点が上がっていた.また,一ヶ月後は男子の「病気の理解」(p=0.041),女子の「病気の支援」(p=0.047)において,事前より一カ月後に有意に得点が上がっていた.結論:慢性疾患の子どもを支援するための指導法の改訂版は,公立の中学生に対して効果があり,1型糖尿病などに罹患している子どもを支援するための指導法として活用できる可能性が示唆された.
著者
脇本 景子 西岡 伸紀
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.3-13, 2010 (Released:2011-11-12)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

目的:本研究は,児童期の子どもの給食時間における健康行動として,給食を残さず食べる行動(以下給食完食)と,食後のブラッシングをとりあげ,自己効力感に関する質問紙を作成し,その信頼性と妥当性を検討すること,および行動変容段階との関係を知ることを目的とした.方法:2008年7月兵庫県内6市の公立小学校7校の5,6年生児童880名を対象に質問紙調査を行った.因子分析による項目選定の後,内的整合性,再検査による尺度得点の相関,検証的因子分析における適合度の確認により,尺度の信頼性と構成概念妥当性を検討した.また,尺度得点に関する一元配置の分散分析により,再カテゴリー化した行動変容段階との関係を調べた.結果:因子分析により給食完食6項目,ブラッシング4項目の自己効力感尺度が得られ,クロンバックのα係数は,給食完食が0.81,ブラッシングが0.81であった.再検査による尺度得点の相関係数(Pearsonのr)は,給食完食がr=0.84,ブラッシングがr=0.67(ともにp<0.01)であった.また,検証的因子分析後の適合度指標は,給食完食GFI=0.974,AGFI=0.961,CFI=0.966,RMSEA=0.055,ブラッシングGFI=0.981,AGFI=0.961,CFI=0.976,RMSEA=0.062であった.尺度得点に関する分散分析では,再カテゴリー化した行動変容段階の主効果が認められ(給食完食F(2/846)=155.16,ブラッシングF(2/791)=50.98,p<0.001),段階が後期に移行するにしたがって自己効力感が高くなる傾向が得られた.結論:作成した給食の完食とブラッシング行動に関する自己効力感尺度について,その信頼性と妥当性が確認され,本尺度の使用可能性が示された.また,行動変容段階との関係については,理論に合致した結果が得られた.
著者
中西 明美 衛藤 久美 武見 ゆかり
出版者
JAPANESE SOCIETY OF HEALTH EDUCATION AND PROMOTION
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.207-220, 2012
被引用文献数
1

目的:中学生を対象に「食に関するメディアリテラシー尺度」を作成し,その信頼性と妥当性を検討することを目的とした.<br>方法:2011年6~7月に,東京都及び埼玉県の公立中学校の生徒2,064名を対象に質問紙を用いた横断研究を実施した.項目案は,一般的なメディアリテラシーや食行動の要因に関する先行研究を参考に,「批判的思考」と「自律的判断」の2側面で構成されると仮定し,29項目作成した.尺度の信頼性は,内的整合性のクロンバックαと再検査法により確認した.妥当性は,「間食選択動機」調査票,一般的なメディアリテラシー尺度,メディア利用状況との関連性によって検討した.<br>結果:有効回答数は1,456名(70.5%)であった.探索的因子分析の結果,「食品表示活用」,「食品広告・販売促進からの影響」,「食に関するメディアからの情報の批判的認識」,「栄養バランスの判断」の4因子16項目が得られた.さらに,確証的因子分析の結果,高い適合度(GFI=0.96,AGFI=0.95,CFI=0.96,RMSEA=0.05)が得られた.各因子の信頼性では,クロンバックα係数(α=0.76~0.83)と再検査法による信頼性(r=0.48~0.67,いずれも,p<0.01)を確認し,良好な結果が得られた.妥当性では,重回帰分析の結果,「食品広告・販売促進からの影響」は,平日のテレビ視聴時間,テレビに対する保護者の肯定的意見と負の関連が見られた.一方,他の3つの因子は,テレビに対する保護者の批判的意見と正の関連が見られた.<br>結論:中学生の「食に関するメディアリテラシー尺度」の信頼性と妥当性が確認された.
著者
守山 正樹
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.71-76, 2011 (Released:2012-11-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

IUHPEはWHOと共に発展してきたNPOである.IUHPEの動向を見極めるために,WHO戦略の理解は必須であり,その出発点がWHO憲章前文の健康の定義である.わが国ではこの定義を1951年に和訳した際,英単語Completeが本来持つ二つの意味(完全な,完結した)のうち前者を採用し,半世紀以上,その定義を使い続けて来た.本稿前半では,その翻訳によって,英語とニュアンスとは異なった理解がなされ,その結果,日本における健康やヘルスプロモーションの理解と実践が,英語圏とは異なる独自の方向に展開された可能性を論じた.また後半では,日本に住む私たちが,また健康教育学会が,今後も世界に先駆けて,健康教育やヘルスプロモーションの分野で,情報を発信し続けるための方策について論じた.国際交流無しに,わが国の健康科学は存在し得ない.私たちと健康教育学会にとって,IUHPE,中でも身近なアジア諸国のダイナミックなヘルスプロモーションの動きを肌で感じられるNPWPは,将来への発展ための必須の場,舞台装置である.
著者
谷口 貴穂 赤松 利恵
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.24-33, 2009 (Released:2010-06-04)
参考文献数
25
被引用文献数
3

目的:「もったいない」と思う気持ち(食べ物を捨てるときに感じる気持ち)を食事摂取に関わる要因として加え,食べ残しの行動の予測要因を検討すること.方法:都内の公立小学校の5・6年生の児童2,070人を対象に,自記式の質問紙に基づく横断調査を実施した.食べ残しの行動の予測要因として,「もったいない」と思う気持ちと,食べ残しの多い野菜摂取に関わる要因(嗜好,結果期待,学校菜園活動,家庭のしつけ)や,野菜を食べる頻度と食べ残しの行動との関連を調べた.性別で野菜摂取に関わる要因が異なることから,男女別で食べ残しの行動の予測要因を検討した.結果:1,994人から回答を得た.女子よりも男子の方が食べ残しの行動をしないと回答した.食べ残しの行動の予測要因は男女で異なったが,食べ残しの行動に最も影響を与えていたのは,男女とも野菜の嗜好で,次が「もったいない」と思う気持ちであった.結論:「もったいない」と思う気持ちは,食べ残しの予測要因となり,2番目に強く食べ残しの行動に影響を与えていた.食べ残しの行動に最も影響を与えていたのは,野菜の嗜好であった,これらのことから,「もったいない」と思う気持ちを育てること,野菜の嗜好を変えることにより,食べ残しが減ると考えられた.