著者
宮城 政也 喜屋武 享
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.372-381, 2018

<p>目的:本研究の目的は,中学校におけるストレスマネジメントおよびアサーティブネス・トレーニングを取り入れたアンガーマネジメント教育の効果を評価することである.</p><p>事業/活動内容:授業は特別活動の時間(50分×5回)を用い「アンガーマネジメント教育をストレスマネジメントおよびアサーティブネス・トレーニングを組み合わせて」実施した.調査対象は沖縄県公立中学校1校の3年生,2クラス(アンガーマネジメント授業実施クラス:男子16名,女子19名/授業非実施クラス:男子15名,女子18名)の計68名であり,心理評価尺度における授業前後の評価,ならびに教師の授業の振り返りと生徒の自己評価を実施した.</p><p>事業/活動評価:「授業実施クラス」「授業非実施クラス」の授業前後の各心理評価尺度による変化量として,「ストレス反応」「ストレスマネジメント自己効力感」「怒り制御」については,両クラスともに差はなかった.一方,「憂うつ」については「授業実施クラス」の変化量が有意に大きく,介入クラスの「憂うつ」の低下が認められた.また,教師の授業の振り返りならびに生徒の自己評価より,生徒たちのアンガーマネジメントに関する知識・技術に関する理解が認められた.</p><p>結論:アンガーマネジメント教育の実践には,課題が認められた.しかし,ストレスマネジメントやアサーティブネス・トレーニングを組み合わせることにより,中学生の「憂うつ」の軽減が期待できた.またアンガーマネジメントスキル向上の基礎となる高次の知的能力の育成に寄与する可能性も示唆された.</p>
著者
宮城 政也 喜屋武 享
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.372-381, 2018-11-30 (Released:2018-11-30)
参考文献数
24

目的:本研究の目的は,中学校におけるストレスマネジメントおよびアサーティブネス・トレーニングを取り入れたアンガーマネジメント教育の効果を評価することである.事業/活動内容:授業は特別活動の時間(50分×5回)を用い「アンガーマネジメント教育をストレスマネジメントおよびアサーティブネス・トレーニングを組み合わせて」実施した.調査対象は沖縄県公立中学校1校の3年生,2クラス(アンガーマネジメント授業実施クラス:男子16名,女子19名/授業非実施クラス:男子15名,女子18名)の計68名であり,心理評価尺度における授業前後の評価,ならびに教師の授業の振り返りと生徒の自己評価を実施した.事業/活動評価:「授業実施クラス」「授業非実施クラス」の授業前後の各心理評価尺度による変化量として,「ストレス反応」「ストレスマネジメント自己効力感」「怒り制御」については,両クラスともに差はなかった.一方,「憂うつ」については「授業実施クラス」の変化量が有意に大きく,介入クラスの「憂うつ」の低下が認められた.また,教師の授業の振り返りならびに生徒の自己評価より,生徒たちのアンガーマネジメントに関する知識・技術に関する理解が認められた.結論:アンガーマネジメント教育の実践には,課題が認められた.しかし,ストレスマネジメントやアサーティブネス・トレーニングを組み合わせることにより,中学生の「憂うつ」の軽減が期待できた.またアンガーマネジメントスキル向上の基礎となる高次の知的能力の育成に寄与する可能性も示唆された.
著者
金森 悟 甲斐 裕子 石山 和可子 荒尾 孝
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.125-134, 2013

目的:中年期地域住民を対象に,社会参加と首尾一貫感覚との関連を検討することを目的とした.<br>方法:東京都あきる野市の旧秋川市地区に居住する40~64歳の男女2,000名を無作為抽出し,郵送法による質問紙調査を用いた横断研究を行った.有効回答者は男性200名,女性300名であった.調査項目は首尾一貫感覚,社会参加,基本属性とした.社会参加には,ボランティアや趣味,スポーツなどの12種類の地域組織や団体について,月に1回以上参加している組織の数を扱い,3分位にあたる0種類,1種類,2種類以上の3群に分類した.参加組織数と首尾一貫感覚との関連に対しては共分散分析を行った.<br>結果:参加組織数別の割合は,男性で0種類が122名(61.0%),1種類が56名(28.0%),2種類以上が22名(11.0%),女性ではそれぞれ174名(58.0%),83名(27.7%),43名(14.3%)であった.月1回以上参加している組織別では,男女ともにスポーツ関係のグループが最も多かった.参加組織数と首尾一貫感覚との関連では,男性においては有意な関連はみられなかったものの(F=0.56,p=0.57),女性においては有意な関連がみられた(F=5.54,p<0.01).さらに,女性の首尾一貫感覚の推定平均値は参加組織数が0種類で14.7点,1種類で15.3点,2種類以上で16.3点と,多いほど首尾一貫感覚も高い傾向が示された.<br>結論:中年期地域住民における参加組織数別の首尾一貫感覚は,女性のみ関連が示唆され,参加組織数が多いほど首尾一貫感覚が高い傾向が認められた.
著者
村山 伸子 米山 けい子
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.21-38, 2017

目的:「フードバンクこども支援プロジェクト」の目的は,子どもがいる生活困窮世帯に対して夏休みに集中した食料支援を行うことにより,夏休み期間の欠食の防止や食費,光熱水費の増加による家計への負担を軽減することである.また,食料支援をとおして,生活困窮者の生活上のニーズを把握することである.<br>事業/活動内容:このプロジェクトは,2015年8月にフードバンク山梨が食のセーフティネット事業として実施した.自治体や学校からの紹介を含め食料支援を希望した127世帯に,米や菓子等を約 11 kg箱詰めにして,毎週1回計5回配送した.プロジェクトの評価は,新しく支援をすることになった104世帯を対象に,質問票を配布した.<br>事業/活動評価:61世帯から回答を得た.プロジェクト前後で,子どもの摂取頻度が増加した項目は,3食食べる,ご飯,めん,肉や魚(生鮮・加工品),卵,野菜,牛乳・乳製品で,減少したのは外食であった.食費は,米・パン・めんの支出が有意に減少した.生活上のニーズとして,食事・栄養,経済,健康・医療等があげられ,就学援助金(給食費・医療費)等の公的支援の認知度が低いことも課題として把握された.<br>今後の課題:夏休み期間の食料支援は,子どもの食事や家計に有益であること,NPOが学校や行政と連携することにより,必要な人に支援がつながることが示唆され,活動のスケールアップが課題である.
著者
長谷川 爽 栁川 由布子 關 奏 赤松 利恵
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.123-132, 2018-05-31 (Released:2018-05-31)
参考文献数
22

目的:男女及び発達段階別に小学生の過体重に関連する生活習慣を特定すること.方法:2015年6月に福島県教育委員会が実施した「食生活に関するアンケート」のデータを用いて,横断的自己記入式質問紙調査を行った.対象者は福島県内の公立小学校19校に通う3・5年生2,369人であった.χ2検定を用いて,体格,生活習慣を男女及び学年別(中学年・高学年)に比較した.その後,過体重に関連する生活習慣のオッズ比と95%信頼区間を求めるために,従属変数を体格,独立変数を生活習慣とし,地域を調整したロジスティック回帰分析を行った.結果:3年生1,011人,5年生1,157人,計2,168人(有効回答率91.5%)を解析対象とした.過体重の割合は,3年生に比べ5年生に多く(各々22.3%,26.7%,p=0.016),5年生では,女子に比べ男子に多かった(各々23.8%,29.4%,p=0.032).過体重と正の関連が認められた生活習慣は,男女別にみると,男子では食べる速さが速いこと,女子では朝食の頻度が低いことだった.学年別にみると,3年生では朝食の頻度が低いこと,5年生では食べる速さが速いこと,体育以外の運動の頻度が低いことだった.加えて5年生の女子では,夕食から就寝までの時間が長いことだった.結論:小学生の過体重に関連する生活習慣は男女及び発達段階で異なっていた.男子では食べる速さ,女子では朝食の頻度,3年生では朝食の頻度,5年生では食べる速さ,体育以外の運動の頻度が過体重に関連していた.
著者
坂本 達昭 早見(千須和) 直美 細田 耕平
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-12, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
27

目的:家の食事の楽しさと中学生と保護者の食事中のスマートフォン等の利用および共食頻度の関連を検討すること.方法:福井県内の中学2年生762名を対象に横断調査を実施した(有効回答者759名).調査内容は,基本属性,家の食事の楽しさ,中学生・保護者の食事中のスマートフォン等の利用,共食頻度とした.分析では食事中のスマートフォン等の利用は「週に1日以上使うことがある」群と「使うことがない」群に,共食頻度は「週4日以上」と「週3日以下」の2群に分けた.家の食事の楽しさを従属変数,食事中のスマートフォン等の利用,朝食・夕食の共食頻度を独立変数として男女別にロジスティック回帰分析を行った.結果:家の食事が楽しい者は,男子308名(82.6%),女子329名(85.3%)であった.多変量ロジスティック回帰分析の結果,男子の食事の楽しさには母親が食事中にスマートフォン等を利用しないこと(調整オッズ比(AOR):2.60,95%信頼区間(95%CI):1.29-5.25)が関連し,女子は父親が食事中にスマートフォン等を利用しないこと(AOR: 2.29,95%CI: 1.15-4.57),夕食の共食頻度(AOR: 2.62,95%CI: 1.37-5.04)が関連していた.結論:中学生が家の食事楽しいと感じるためには,保護者は食事中のスマートフォン等の利用を控えるべきであることが示唆された.
著者
會退 友美 衛藤 久美
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.279-289, 2015 (Released:2015-12-03)
参考文献数
31
被引用文献数
1

目的:共食行動と健康・栄養状態ならびに食物・栄養素摂取との関連について国内の研究動向を把握すること.方法:発行年は2001年~2011年までとし,データベース検索では,CiNiiと医学中央雑誌を用いて「共食OR孤食OR(家族AND一緒AND食事)」で検索した.ハンドサーチでは,日本健康教育学会誌,栄養学雑誌,日本家政学会誌の3誌を対象とした.表題,抄録,本文を精査し,採択基準を満たす20件を採択した.結果:全ての研究が横断研究であり,最も多い研究対象者は学童・思春期の11件であった.共食行動の調査項目で最も多かったのは,共食頻度(回数)をたずねた論文11件であり,回答の選択肢は1週間単位の頻度であった.全ての採択論文を分析した結果,食行動と健康・栄養状態の関連では,体格との関連はなかったが,共食頻度と良好な精神的健康状態には正の関連がみられた(6件/7件).食物・栄養素摂取との関連では,共食頻度とよい食事内容の間には正の関連があった(3件/3件).その他,健康的な食品の摂取頻度(3件/6件),食事の質と正の関連がみられた(1件/1件)が,栄養素と関連はみられなかった(0件/1件).結論:共食頻度と,良好な精神的健康状態および健康的な食品の摂取頻度には正の関連がみられた.しかし全ての報告が横断研究であり,子どもを対象とした報告が多かったことから,今後縦断研究も含めた国内での研究の積み重ねが必要である.
著者
島袋 桂 斎藤 美希 島袋 愛 金城 淳 幸地 将希 金城 太志 金城 昇
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.13-27, 2018

<p>目的:本研究では楠木の戦略理論を参考に,コンセプトを「パートナーづくり」,しかけを「競走」とした健康づくりプロジェクト戦略モデルを作成し,戦略に沿って実践した運動キャンペーン「貯歩っとレース」のプロセス評価を行った.</p><p>事業/活動内容:沖縄県A村では,平成20年度から健康づくりプロジェクトが展開され,ステークホルダーへのフォーマティブリサーチにより,地域住民のつながりが強い等の特徴が明らかにされた.その資源を活かすために,平成24年度から新しい戦略を導入した.一定期間の歩数を記録する「貯歩っとレース」の内容も地域の特徴を活かした形に変更された.その評価のために,戦略変更前後の参加者1,087名への調査と住民2名にインタビューを行った.</p><p>事業/活動評価:戦略変更前後を比較した結果,「貯歩っとレース」の平均参加者数は46.8名から137.8名に増加し,記録シートの提出率は46.8%から75.3%に増加した.また,国が推奨する目標歩数を超えた参加者も増加した他,非活動的な住民も参加者に取り込めたことが示唆された.インタビューから,住民同士の呼びかけで参加者が集まっていたこと,特に「貯歩っとレース」後にウォーキングを実施する住民の増加が確認された.</p><p>今後の課題:「パートナーづくり」と「競走」による戦略モデルの有効性が示唆され,参加者増加や事業後の運動実施等の成果があった.地域と関わりがない住民へのアプローチが今後の課題となる.</p>
著者
Don NUTBEAM
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.210-222, 2017-08-31 (Released:2017-09-07)
参考文献数
30

Objective: To provide an overview of the key concepts, and issues of definition and measurement in health literacy, before considering approaches to improving health literacy in populations, and the implications for policy and practice.Contents: Health literacy describes the possession of literacy skills that are required to make health-related decisions in a variety of different environments (home, community, health clinic). These skills vary from individual to individual, and poor health literacy has been consistently associated with adverse health outcomes. Health literacy can be improved through effective communication and education, and is moderated by the environment in which communication occurs. In clinical settings, research has consistently shown that low health literacy can be successfully identified, and can be improved through effective patient education to deliver better health outcomes. In the wider community, improving health literacy requires more than the transmission of new information, it also involves the development of empowering personal skills that enable participation in a range of actions that can protect and improve health. New communication technologies provide both challenges and opportunities for health education.Conclusion: More personalised forms of communication, and active educational outreach will best support the goal of promoting greater independence in health decision-making. This requires more sophisticated understanding of the potential of education to strengthen both personal and community action to improve health. The use of relevant theories and models can provide important guidance on content, sequencing and delivery of health and patient education programs.
著者
神馬 征峰
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.171-176, 2013 (Released:2014-06-11)
参考文献数
2

背景:論文査読は論文の質を上げるために有効な手段である.査読をめぐるやり取りのポイントをあらかじめ知ることによって,投稿者は投稿原稿の小さなミスを避けることができる.本稿では本誌への投稿者のために,査読をめぐる主要な疑問や指摘を示すことを目的とする.内容:タイトルとキーワードは,自分の論文を他の研究者に読んでもらうための入り口である.投稿者は読者の目をひきつけるような魅力的なタイトルをつけ,自分の論文が共通のキーワード検索によって見つかりやすくなるように出来る限りMeSHキーワードを使用すべきである.和文抄録に関しては執筆要領にある小見出しをつけ,方法には研究デザインを示すこと,結果にはできるだけ主要データを示すこと,そして最後に結論ではその内容が引用されることを意識して記載することが重要である.また英文抄録は文法の修正だけでなく読みやすさにも気をつけて仕上げるべきである.最後に本文に関しては,諸言では総論から各論へ,考察では各論から総論へというストーリー展開をするとよい.また方法は専門家に読まれることを意識すること,結果に関しては図表の数を増やしすぎないようにし,結論につながるデータを明快に示すべきである.結論:基本的なミスを事前に防ぐことによって,論文の本質に関わる査読が可能になる.そのような査読をしてもらえるように,ぜひ基本的なルールをマスターし,明快で説得力のある論文作成にとりかかっていただきたい.
著者
神馬 征峰
出版者
JAPANESE SOCIETY OF HEALTH EDUCATION AND PROMOTION
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.253-261, 2013

背景:健康教育やヘルスプロモーションによる行動変容は最重要課題の一つである.しかしながら,これらの戦略をもってしても,行動変容が難しい場合がある.本稿では行動変容の一つの手段として,Positive Deviance Approachを紹介することを目的とする.<br>内容:他の人たちと同じ課題を抱えているにもかかわらず,その課題をよりうまく解決する人を positive deviant,その行為をpositive devianceという(本稿では以下いずれもポジデビと称する).1990年,米国のNGO,Save the Childrenがベトナムの4つの村で栄養調査を行った結果,3歳未満児の64%が栄養不良であった.ということは,36%は栄養不良ではない,ということでもある.この36%の中でポジデビを探した結果,見えてきた特徴は以下のようであった.「田んぼや畑からお金のかからない食品を入手している」,「汚れたら子供の手を随時洗わせている」,「子供が1日に食べる回数を2回から4,5回に増やしている」.これに基づいたポジデビ・アプローチをとることによって,7年間で 50,000人以上の子供たちの栄養状態が改善した.その後さらにこのアプローチは,院内感染対策,乳幼児死亡改善策,肥満対策,妊婦の栄養対策などに用いられ,困難な行動変容課題を克服してきた.<br>結論:ポジデビ・アプローチは行動変容が困難な健康課題を克服するための手段として有効に使える.日本でも今後これが広がっていくことを期待したい.老人対策,震災後の地域保健対策,学校のいじめ対策などに,このアプローチは使える可能性がある.
著者
崎間 敦 白井 こころ 奥村 耕一郎 田名 毅
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.245-250, 2016 (Released:2016-11-30)
参考文献数
11

目的:沖縄では健康寿命の延伸と健康格差の縮小を目指して,大学,行政,教育委員会および地域が連携した健康づくりが展開されてきた.その取り組みに至った背景および現状についてまとめた.内容:沖縄の健康課題は,特に青壮年期における循環器疾患の危険因子である糖尿病などの生活習慣病,メタボリックシンドロームおよびその予備群の急増,肝疾患や高血圧性疾患の年齢調整死亡率が全国よりも高くなっていることである.沖縄の健康寿命延伸のためには,疾病を予防する環境づくりが大切である.その方策として,学校での食育のさらなる強化,地域でのソーシャル・キャピタルを活かした健康づくりの実践などがあげられる.これまで沖縄で展開されてきた健康づくりに加え,沖縄県保健医療部と沖縄県教育庁の横断的事業として次世代健康づくり副読本事業が開始されている.また,琉球大学ゆい健康プロジェクトでは食育とソーシャル・キャピタルを活用した健康づくり支援事業を展開している.参加者を好ましい食行動へ誘導し,肥満者の体重を減少させる成績を得ている.結論:次世代健康づくり副読本事業と琉球大学ゆい健康プロジェクトを紹介した.学校や地域を介した健康づくりは県民の生活習慣病予防とヘルスリテラシーの向上に寄与し,健康長寿の延伸と早世予防の足掛かりと成り得る.
著者
高倉 実
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.239-244, 2016 (Released:2016-11-30)
参考文献数
29

目的:平成28年6月11日~12日に沖縄科学技術大学院大学で開催された第25回日本健康教育学会学術大会における学会長講演の内容を報告する.内容:はじめに沖縄の健康状況の現状と推移について触れ,平均寿命の延びが鈍化していることや生産年齢層の死亡率が高いことを示した.そして,その背景要因について,ライフスタイルが直接的な決定要因であること,その根本的原因と考えられる社会的決定要因の状況がきわめて悪いことを紹介した.次いで,健康の社会的決定要因の観点から,沖縄の「ゆいまーる」に代表される特徴的な社会的文脈と健康との関係について焦点を当て,沖縄の社会関係が健康悪化をバッファするかもしれないことについて考察した.これに関して,これまでの沖縄における高齢者および青少年の社会関係と健康に関するいくつかの知見を紹介した.結論:これらの知見を勘案して,人々の社会関係を活かした健康教育・ヘルスプロモーションがきわめて重要であることを強調した.
著者
嶋田 雅子 小林 陽子 坂口 寄子 岡田 加奈子 村山 伸子 佐々木 敏 武見 ゆかり
出版者
JAPANESE SOCIETY OF HEALTH EDUCATION AND PROMOTION
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.94-109, 2008
被引用文献数
1 1

目的: 小学生を対象に「弁当箱ダイエット法」を用いたランチバイキング学習を実施した.このランチバイキング学習を通して, 児童の食物選択内容が改善するかを検討した.<BR>方法: 東京都世田谷区の小学6年の児童61名 (男子30名, 女子31名) が2003年秋にこの研究に参加した.ランチバイキング学習は, 年間を通じた食に関する学習プログラムの最初と後半の2回実施された.児童の食物選択内容の変化を, 栄養素, 食品, 料理レベルで検討した.さらに, 児童自身の選択内容の変化の気づきについてワークシートを分析した.<BR>結果: 栄養素では, 脂肪エネルギー比が男子は41%から33%, 女子は42%から29%へと有意に減少した.一方, 炭水化物エネルギー比は男子は40%から51%, 女子は40%から55%へと有意に増加した.食品では, 白飯が男子は108gから192g, 女子は82gから186gへと有意に増加し, 緑黄色野菜, 及び野菜の総重量も有意に増加した.料理では, 「食事バランスガイド」のサービング (SV) 数に基づき評価した結果, 主食と副菜の平均SV数が増え, 主菜のサービング数が減少した.学習時に児童が記入したワークシートの記述内容の分析では, 多くの児童がバランスの良い食物選択について正しい認識をしていた.<BR>結論: このランチバイキング学習を通して, 児童がバランスのよい食物選択のための知識とスキルを獲得したと示唆された.