著者
岡 浩一朗
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.69-70, 2015 (Released:2015-06-05)
参考文献数
10
著者
久保 元芳 赤荻 冴
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.127-141, 2023-08-31 (Released:2023-09-17)
参考文献数
26

目的:小・中学校におけるWBGTの測定状況とそれに応じた熱中症予防の取組,WBGTの活用の利点や課題等を明らかにすること.方法:横断的実態調査研究として,関東地方A県内で無作為抽出した小・中学校の保健主事を対象に質問紙調査を実施し,小学校65校,中学校64校分を分析した.WBGTの測定状況や場所について,校種等によるクロス集計を行った.自由記述項目のWBGTに応じた対応例,WBGT活用の利点と欠点については,その意味を吟味したカテゴリー化を行った.結果:小・中学校ともに約90%でWBGTを測定しており,校庭・グラウンドや体育館が多い一方,教室,プール等は少なかった.WBGTに応じた対応を行っている小学校は81.5%,中学校は64.1%であり,21°C以上から水分補給や休憩の呼びかけがみられ,WBGTの上昇に伴って対応が多様化し,31°C以上では多くの学校で屋外の運動や活動を中止していた.WBGT活用の利点として,各種教育活動の実施程度について妥当な判断ができたり,児童生徒や教職員の熱中症予防への意識向上が図れたりすること,欠点として,WBGTに応じた対応で教育活動の計画的な実施に支障が出る場合があること,児童生徒の観察が疎かになること等が挙げられた.結論:小・中学校の多くでWBGTが測定,活用されているが,教育活動の計画的な実施との調整など,活用上の課題も明らかとなった.
著者
緒方 裕光
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.173-179, 2023-08-31 (Released:2023-09-17)
参考文献数
32

統計的多重性の問題と多重比較の方法は,データ解析における重要課題の1つである.1950年代から現在に至るまで,一元配置分散分析の結果に応じて複数群の平均値を比較する方法として,様々な多重比較の方法が開発されてきた.近年,臨床試験において複雑な研究デザインが用いられるようになり,統計的多重性の問題はさらに重要になっている.多重比較は統計的多重性の問題を解決するためのアプローチであり,研究の科学的意義を高めるためにも研究計画の段階から適切な多重比較の方法を選択する必要がある.本稿では,統計的多重性の問題の基本的考え方を述べるとともに,多重比較の代表的方法の特徴と留意点について概説する.
著者
青柳 健隆
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.166-172, 2023-08-31 (Released:2023-09-17)
参考文献数
15

学術誌等において質的な手法を用いた研究を目にする機会も増えてきたが,いまだに質的研究が広く,そして適切に理解されているとは言い難い.本稿では,質的研究と量的研究の比較を通して,質的研究の特長を明示することを主目的とした.また,エビデンスレベルや質的研究の特長に基づく量的研究との使い分け,混合研究法としての質的研究と量的研究の相互補完的な活用方法についても報告する.加えて,そもそも「質的」とはどういうことなのかについても検討した.まとめると,質的研究とは探索的・仮説生成的であり,俯瞰的・抽象的な範囲を取り扱うことを得意とし,要素や関係性の「存在」を重視するという特徴を持っている研究手法であった.対する量的研究は,検証的・確認的で,限定的な範囲について結論づけることに適しており,「数」を重要視するパラダイムを有していることが確認された.両者それぞれに特長があるため,研究分野のエビデンスレベルや研究目的,データの性質などに応じて妥当かつ信頼性の高いものを選択または組み合わせて用いることで研究のクオリティを高めることが可能となる.
著者
緒方 裕光
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.30-35, 2023-02-28 (Released:2023-03-12)
参考文献数
30

多くの科学分野においてP値に基づく統計的仮説検定は,主要な統計解析方法の1つとして広く使われている.しかし,近年この方法が持っている本質的な問題点が指摘されるようになってきている.2016年には,アメリカ統計学会(American Statistical Association, ASA)がP値の誤用や誤った解釈に対して警告を発している.現在一般的に用いられている統計的仮説検定の基本的な考え方は,Fisherが1920~1930年代に開発したものであり,それをのちにNeymanとPearsonが定式化した.この統計的仮説検定の中心的概念の1つがP値である.P値に基づく統計的仮説検定にはいくつかの本質的欠点があるものの,研究者や統計実務者にとって依然として非常に有用な方法である.また,現時点では,これに替わる有力な統計学的方法が確立されているとは言えない.したがって,統計的仮説検定を使う際には,この方法に対する理解を深めたうえで,誤用や間違った解釈に留意しつつ,可能な限り欠点を補う方法を採用していくことが望ましい.
著者
木下 紀之
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.306-312, 2021-08-31 (Released:2021-09-03)
参考文献数
7

目的:株式会社ファミリーマートは,中食商品を中心に取り組んだ減塩活動が2020年の厚生労働省スマートライフプロジェクトの「健康寿命をのばそう!アワード」で厚生労働大臣最優秀賞を受賞した.本報は,その取り組み内容と今後の方向性の報告を目的とした.内容:食市場における中食比率が高まる中で,ファミリーマートでは2018年から減塩プロジェクトを立ち上げた.学協会により認定を受けたスマートミール弁当や,JSH(日本高血圧学会)減塩食品の開発導入を皮切りに,2019年9月から2020年8月までの1年間で,弁当類・麺類・総菜類などを含めて28種類の既存商品の減塩化を行った.この間の販売数量は約1億食で,減塩効果は約100 tとなった.その内の26種類は「減塩」を商品パッケージに標榜しない「こっそり減塩」とした.これは消費者の「減塩」という表現に対するネガティブなイメージを回避するだけでなく,「おいしさ」重視の考え方から「減塩を標榜できる」減塩率にはこだわらないという方針としたためである.まとめと今後の方向性:ファミリーマートでは年間50億食以上の中食商品を販売している.ただし,これまでに達成したのは1億食の減塩である.今後も既存商品の見直しをすすめ,おいしさとボリュームはそのままの「こっそり減塩」を推進し,国民の健康寿命の延伸に貢献してゆきたい.
著者
武見 充晃
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.298-305, 2021-08-31 (Released:2021-09-03)
参考文献数
10

「研究をするために欠かせないもの」には何があるだろう.研究費は間違いなくその1つである.実験やフィールドワークにも,学会や原著論文での成果発表にも,資金=研究費は必要となる.だが研究費は万人には配られない.科研費・公的受託・民間助成に応募した者のうち,採択された10~30%の人だけが受給できる.研究者は,助成金の申請書を生涯にわたって書き続け,その採否に一喜一憂し続ける.本報告は,2020年11月14日に開催された,日本健康教育学会第7回若手の会学習会「研究費をとるコツ」の内容の抜粋である.これから初めて助成金を申請する,大学院生や博士学位取得直後の若手研究者を対象に,どのように研究構想を練り,実験計画を立て,申請書を書くと良いかを,思考法と文章テクニックという2つの観点でまとめた.
著者
竹林 正樹 藤田 誠一 吉池 信男
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.28-37, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
25

目的:小児肥満が深刻な青森県下北地域において,下北ブランド研究所では,母親と子が健康意識を大きく変えなくても小児肥満を予防できる食環境の整備を目的とした健康中食のマーケティングを実施した.本稿ではPDCAサイクルを用いた評価内容を示した.事業/活動内容(PLAN・DO):保育園保護者へのインタビュー(n=11)や質問紙調査(n=441)等から,当地域では親子向け健康中食の市場創出機会ありと判断した(推定市場規模6,200万円).ターゲットを「中食の摂取頻度が高く,子にヘルシー中食を食べさせたいと考える母親」,ポジショニングを「親しみ」と「手軽さ」と設定した.保育園給食メニューを中心に5品を発売した.事業/活動評価(CHECK):業者は健康中食を安定的に製造せず,ターゲット層の利用は推定市場規模の0.1%で,当地域での小児肥満予防に与える影響は極めて限定的であったと推測された.消費者ニーズがあったにもかかわらず業者を製造へと動かせなかった原因を「業者の心理を十分考慮しないまま戦略設計し,業者に事業の魅力が伝わらなかったため」と分析した.今後の課題(ACT):改善策として,業者と消費者が直接対話できる場を設定した.この策はナッジ(強制を伴わずに行動を促す仕組みやシグナル)によるものであり,業者は健康中食への愛着が高まり,製造へと一歩踏み出すことが期待される.
著者
岩室 紳也
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.21-27, 2023-02-28 (Released:2023-03-12)
参考文献数
4

健康教育の基本は,伝えたいことが伝わり,伝えた相手が健康になれることであるが,多くの人は健康になるために何をすべきかは知っている.一方で専門職は業務の中でハイリスクアプローチ,早期発見,早期対応に傾倒するがあまり,ポピュレーションアプローチが社会にまん延する様々なリスクへのアプローチだという視点が弱い.なぜ知識があっても健康的な行動を実践できないか,リスクが何かがこれからの健康教育に不可欠な視点である.以前から健康づくり,人づくりの基本はコミュニケーションと言われてきた.目から入る情報はわかったような気になるだけで,耳から入る情報は想像力を育み記憶に残ると言われるように,健康教育でも文部科学省も指摘しているように対話的な学びを心掛けることが求められている.最終的に聞き手や受け手のこころに響き,気が付けば健康になっている健康教育とは,正確な情報を伝えるだけではなく,聞き手が自分自身の現実を受容しつつできることを具現化し,教育する側が聞き手のことを大切に,大事にしていることが伝わることが求められている.すなわち,健康教育とは単に伝え手と聞き手の情報のやり取りだけではなく,最終的には健康づくりの基本となるソーシャルキャピタルの三要素である信頼・つながり・お互い様が感じられる場づくりと考えている.
著者
笠原 美香 吉池 信男 大西 基喜
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.145-153, 2021-05-31 (Released:2021-06-16)
参考文献数
29

目的:青森県内と長野県内の高校生を対象とし,ヘルスリテラシー(Health Literacy: HL)に関して両県の地域差を含む実態を明らかにすること,およびHLの高低を規定する要因を明らかにすること.方法:2018年7月3日~24日に,青森県B市6校806人(公立,私立),長野県C, D市4校978人(公立のみ)の高校2年生を対象に自記式質問紙調査による横断研究を行った.調査項目は,性別,相互作用的・批判的ヘルスリテラシー(Communicative and Critical Health Literacy: CCHL),インターネット利用状況,学習面に影響すると考えられる「将来の夢」や目標を持っている,自分は「やればできる」と思う,学習意欲(勉強は好きである,保健の学習は好きである),「将来の生活習慣予測」である.各項目について地域間で比較を行った後に,重回帰分析によってCCHLが高いことと関連する因子を検討した.結果:青森県の高校生は,長野県の高校生に比べて,インターネットの使用頻度やCCHLが高かった.また,CCHLが高いことは,インターネット利用状況,「将来の夢」や目標を持っている,自分は「やればできる」と思う,保健学習が好きであること,将来,定期的な運動をする,定期的に体重管理をすると予測していることと,正の関連が見られた.結論:高校生のHL教育を推進していく上では,インターネットを利用した健康情報の活用,「将来の夢」や目標を持つこと,自分は「やればできる」と思える状況を促す教育が重要である.
著者
新保 みさ 中西 明美 會退 友美 衛藤 久美 坂本 達昭 中村 彩希
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.313-318, 2022-11-30 (Released:2022-12-26)
参考文献数
14

背景:日本健康教育学会栄養教育研究会は2019年度からナッジをテーマとした活動を行っている.本稿では2021年度の活動として2022年3月26日に開催した公開学習会「第2弾!今,注目のナッジを健康行動に活用するには~ナッジと健康行動理論の関係~」について報告する.内容:学習会は3部構成で,第1部は竹林正樹氏による講義「一発でわかるナッジの基本」,第2部は栄養教育研究会からの提案「健康行動理論とナッジについて」,第3部はグループワークによる「ナッジを効かせたチラシ作り」であった.参加者は63名であった.学習会に対するアンケート(回答者数57名,回答率90%)では回答者の98%が「非常に満足した」または「まあ満足した」と回答した.満足した理由には,チラシ作りのグループワークやグループワーク後の発表に対する講師の講評などが多くあげられた.「今後もナッジを勉強し続けたいですか」という問いに,全ての回答者が「そう思う」または「少しそう思う」と回答した.結論:本学習会を通じて,参加者のナッジについての理解を深めることができた.理論と実践を含めた学習会は新たな学びを提供し,今後の学習意欲も高めたことが示唆された.
著者
後藤 理絵 竹林 正樹 関根 千佳 福田 洋
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.294-301, 2022-11-30 (Released:2022-12-26)
参考文献数
24

目的:20~40歳代の労働者向け口腔健康行動促進冊子作成のプロセス評価を行うこと.事業内容:20~40歳代労働者を対象に,ナッジを設計した口腔健康行動促進の漫画冊子を作成した.プロセス評価として作成担当者の意識の変化と作成コスト,読者の満足度等を調べた.作成担当者の意識はインタビュー,作成コストは実績から把握し,満足度等はナッジ群(ナッジ型漫画冊子を配布)と対照群(情報提供型冊子を配布)に無作為に割り付けた上でウェブ調査を行った.事業評価:作成後に担当者の意識向上が見られ,作成コストは約88万円だった.読者による冊子の印象(解析対象:ナッジ群119人,対照群120人)は,表紙は「面白そう」(ナッジ群,対照群の順に48.7%, 25.8%),「読みやすそう」(79.0%, 48.3%),「イラストが良い」(57.1%, 28.3%),「情報量が多い」(26.9%, 59.2%),「読むのが不快」(7.6%, 18.3%)で,いずれもナッジ群は有意に評価が高かった.表紙と本編の印象が一致する傾向の項目も見られた.歯周病の知識は,ナッジ群のみ有意に増加した.以上から,ナッジ型漫画冊子は読者の評価が高く,知識向上に役立ち,特に表紙のナッジが重要と示唆された.結論:ナッジ型冊子は,総じて好印象であり,有意な知識向上につながった.ただし,回答に応じて付与された経済的インセンティブが結果に影響した可能性がある.今後は経済的インセンティブのない条件で調査を行う必要がある.
著者
中村 千景
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.392-397, 2019-11-30 (Released:2019-11-30)
参考文献数
2

目的:著者らが所属する「National Network of Yogo teachers in Japan」は,IUHPE世界会議に1995年の第15回大会から継続して参加し,養護教諭の実践をポスター報告している.IUHPE世界会議に継続参加してきた経緯と,2019年第23回ニュージーランド大会の発表での状況ならびに今後の課題を紹介する.内容:2019年第23回IUHPE世界会議において,著者らが発表した7演題のポスターの内,「自殺」「メンタルヘルス」「性」をテーマにした3演題がポスターを利用した口頭発表に選出された.著者らのポスター発表の聴衆者にアンケートをとった結果,子どもの健康問題として「メンタルヘルス」が多く,「性」や「肥満」「むし歯」「虐待」「不登校」「アレルギー」「喫煙・飲酒・薬物」といった問題があげられ,子どもの健康問題は世界で共通している部分もあることがうかがわれた.まとめと今後の課題:子どもの健康問題は世界共通の部分がうかがえることから,養護教諭の仕事のあり方が世界の子どもたちの健康問題解決のために活用できるということを,国際学会の発表を通して伝え続けていくことが今後の課題である.
著者
中出 麻紀子 岩城 なつ美 中村 優花 黒谷 佳代
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.51-60, 2021-02-28 (Released:2021-03-10)
参考文献数
26
被引用文献数
1

目的:主食・主菜・副菜の揃った食事と生活習慣,知識・健康意識,健康状態との関連を明らかにする.方法:横断研究として,兵庫県の1大学の1~4年次学生を対象に2019年に自記式質問紙調査を実施し,健診データの提供も受けた.153名の女子学生を解析対象とし,主食・主菜・副菜の揃った食事(1日2回以上)の摂取頻度が週4日以上の高頻度群,週3日以下の低頻度群に分類し,2群間で生活習慣,知識・健康意識,健康状態を比較した後,年齢と現在の居住形態で調整した二項ロジスティック回帰分析を行った.結果:高頻度群は90名,低頻度群は63名であった.二項ロジスティック回帰分析の結果,自炊頻度が高い人(オッズ比〔95%信頼区間〕: 2.96〔1.15, 7.64〕),栄養に関する知識がある人(3.33〔1.30, 8.48〕),健康に気をつかう人(7.29〔3.13, 16.98〕)は,そうでない人と比較して高頻度群の割合が高かった.また,BMIや体脂肪率が高いことが高頻度群の割合が低いことと関連していた(それぞれ0.84〔0.72, 0.98〕,0.90〔0.83, 0.98〕).BMIが18.5以上25 kg/m2未満の人と比較し,18.5 kg/m2未満の人(3.49〔1.19, 10.22〕)では高頻度群の割合が高かった.結論:主食・主菜・副菜の揃った食事は自炊,栄養に関する知識,健康意識の高さ,体格と関連していた.
著者
中山 和弘
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.172-180, 2022-05-31 (Released:2022-06-10)
参考文献数
36

COVID-19パンデミックは,虚偽や誤解を招くような情報を含めた情報が氾濫するインフォデミックを引き起こし,健康情報を入手,理解し,評価して活用できるヘルスリテラシーにさらに注目が集まった.ヘルスリテラシーは,COVID-19に適切に対応できる効果を持つかについて世界中で研究が開始され,それがCOVID-19に関する知識や行動と関連していたと指摘されている.パンデミックでは,政府や市民がすぐに行動を起こす必要があるため,ヘルスリテラシーの向上に時間をかけることは難しく,緊急の対応と封じ込めが求められる事態に個人や社会が備えるために育成しておくことが重要である.特にCOVID-19に対して適切に対処できるには,ヘルスリテラシーだけでは十分ではなく,政治社会経済的な側面を含めた新しく不確実で頻繁に変化する情報の信頼性を適切に評価して意思決定できるスキルが問われる.また,ヘルスリテラシーの新たな側面としてソーシャルメディアの普及を伴うデジタル化の便益とリスクを,グルーバルで政治的な側面から検討することが必要だとされている.パンデミック対応に必要な連帯や社会的責任を理解する力,健康に悪影響を及ぼす社会的・経済的な構造やプロセスを変化させるコミュニティの能力を向上させるよう政府などに求める力(社会的ワクチンとも呼ばれる),すなわち政治・社会を変える批判的ヘルスリテラシーが求められる.
著者
秋山 美紀
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.100-108, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
27

緒言:効果的なヘルスコミュニケーションプログラムは,個人はもとより,組織,コミュニティ,そして社会全体を健康な方向に変えていく影響力を持つ.本稿は,健康課題を抱える人を取り巻くマクロな環境を変えることを念頭に置いたヘルスコミュニケーションの実践例や教育プログラムを紹介しながら,人と環境との交互作用の重要性を再確認する.内容:コミュニケーションは単体でも,当該社会における健康課題や優先課題を知らしめたり,組織間関係を強化することが可能である.しかしながら,起きた変化を持続させたり,より複雑に絡み合う課題を解決するには,他の戦略と組み合わせる必要があることが知られている.このことから,ヘルスコミュニケーションの研究,実践,教育は,他分野と融合しながらダイナミックな広がりを見せており,例えば,欧米の公衆衛生大学院ではアドボカシーや住民参加型ヘルスリサーチ等を関連科目として教授するようになっている.最近のヘルスアドボカシーの顕著な成果として,糖分を多く含むソーダ飲料への課税が挙げられる.Berkeley市を筆頭に米国の複数の都市で導入されることになったものである.親の会,学校,公衆衛生の専門家らによる効果的なパートナーシップが,キャンペーンを成功に導いた事例である.まとめ:日本でも多分野の知見を導入しながら多層的に健康活動が展開されていくことが求められている.そのためにはヘルスコミュニケーションの裾野をさらに広げていく必要がある.
著者
吉池 信男
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.59-67, 2022-02-28 (Released:2022-04-16)
参考文献数
22

目的:健康教育やヘルスプロモーションにおいて,人々の食行動への介入を行うことの倫理性及び効果的な手段について,社会的変化や急速に進む技術革新を踏まえて考察すること.内容:1)基本的人権としての「食べること」と介入の倫理性,2)栄養と健康を捉える視点(栄養学的観点),3)食行動を規定する様々な要因,4)ヒトの食行動の生理学的な理解,5)食行動の社会経済的な規定要因,6)デジタルトランスフォーメーション時代における新たな展開,という6つの視点から考察を行った.展望:基本的人権としての栄養や食物選択の自由を前提として,それらに何らかの介入を加えることの倫理性や社会的な正当性を考えることが必要である.また,食品企業等の経済活動に対して,国民の健康保護を目的として政府が介入を行う際には,その理論的根拠を考えつつ,食品選択に関して自己責任に委ね難い子ども等への特段の配慮が必要である.一方,デジタル技術を中心とした技術革新が急速に進む中で,新たな視点から食行動に関与する要因やメカニズムを理解し,社会におけるヘルスリテラシー促進の努力もさらに必要である.食と栄養の未来を予測しながら,新たな価値の創造につながるような健康教育やヘルスプロモーションの実践と研究を行いたいと考えている.