著者
竹内 裕
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.876-877, 2009-09-15
被引用文献数
1

魚類の生殖機構。基礎と応用。水産増養殖への応用。発生工学的アプローチによる生殖細胞のコントロール。現在までに多くの魚種の種苗生産技術が確立しているが、クロマグロやブリ、ウナギのように、未だ産業レベルで完全養殖を行うには、多くの課題が残されている魚種も少なくない。特に、これらのいずれの魚種においても、良質の受精卵を安定供給する技術が発展途上である。例えば、クロマグロは親魚が大型であるため、海上のイケスで養成することが必須であり、成熟誘導のために環境制御(水温や日長制御)を行うことは原理的に不可能である。また、ブリやウナギにおいては、受精卵の質の安定性に問題が残されており、親魚養成から成熟誘導技術のさらなる改善が望まれている。我々は、最近、サケ科魚類を用いて生殖細胞の異種間移植系を確立し、"ヤマメにニジマスの配偶子を生産させる技術(代理親魚養殖)"を開発した。これにより、ドナー種よりも小型かつ若齢で成熟する宿主種(=代理親)を利用して、省スペースで効率的にドナー種の種苗を生産可能であることが示された。さらに、これらの代理親魚の体内では、宿主種の内分泌系支配によりドナー種由来の配偶子が生産されるため、陸上水槽内で宿主魚の成熟に適した環境を提供することで、目的の種苗を周年採卵することも可能になると期待される。したがって、本技術を上記各魚種に応用することで、クロマグロを生むマサバ、ブリを生むマアジ、ウナギを生むアナゴ、などの生産も可能になると期待される。現在、我々は、マグロ類やブリ類など多くの水産上有用魚種と同タイプの分離浮遊卵を産卵する小型の海産魚であるニベを用いた生殖細胞移植技術の開発を行っている。本稿では、海産魚における代理親魚養殖の確立に向けた戦略、現状および課題について概説する。
著者
岩本 有司 森田 拓真 小路 淳
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.841-848, 2010-09-15
被引用文献数
5

先行研究が行われている有明海筑後川河口域とは環境条件が異なる広島湾北部および太田川水系 2 河川下流域においてスズキ仔稚魚の出現と食性を調査した。仔稚魚の分布密度は砂浜海岸に比べて河川内浅所において有意に高かった。仔稚魚の消化管内容物は枝角類とカイアシ類が中心であり,それらの種組成は各河川および定点の餌料生物環境に対応して変化した。<i>Sinocalanus sinensis</i>(汽水性カイアシ類)が主要餌料生物となる筑後川下流域だけではなく,太田川下流域もスズキ仔稚魚の主要な生息場であることが明らかとなった。<br>
著者
片野 修
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.425-431, 2009-05-15
被引用文献数
1 5

オオクチバスの釣られやすさに見られる個体差について実験池で調べた。1 日おきに 10 回調査したところ,1 回に釣られるバスの数は日ごとに減少した。個々のバスが実験期間を通して釣られた回数には 0~8 回と大きな差があり,同じ個体が 1 日に 2 回釣られることも 3 例認められた。釣られた記録から,65 尾のオオクチバスのうち 34 尾は,用心深い個体(8 尾),学習する個体(10)尾,釣られやすい個体(16 尾)に分けられた。オオクチバスでは,釣られる危険に対する学習と用心深さや釣られやすさの個体差の両方が認められる。<br>
著者
伊藤 靖 三浦 浩 中村 憲司 吉田 司
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.1019-1026, 2009-11-15
参考文献数
28
被引用文献数
5 5

マアジの行動様式を把握するため日本海佐渡島羽茂地先の水深 45 m に設置された人工魚礁において,超音波バイオテレメトリー(V9P-1H, VEMCO 社製)を全長 30 cm のマアジへ外部装着し,追跡を行った。追跡は 2008 年 6~7 月の間に 1 尾ずつ 7 回行った。マアジは日中には人工魚礁や天然礁の天端から高さ 10 m 程度に留まり,夜間は水深 5~10 m の表層を遊泳しながら礁から離脱し,早朝,礁に移動し,日中,礁に蝟集するといった明確な日周行動を示した。<br>
著者
境 正 山口 徹 河原 聡
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.453-455, 2009-05-15

水産練り製品製造中の脂質酸化の変動を明らかにするため,ちくわ及びかまぼこ中の 4-ヒドロキシヘキセナール(HHE)とマロンアルデヒド(MA)含量を測定した。スケソウダラより作成した冷凍すり身から,ちくわは焼きにより,かまぼこは蒸しにより作成した後,0℃ にて 2 日間貯蔵した。加工前後及び貯蔵期間中,ちくわ及びかまぼこの HHE 含量は有意ではないが増加した。加工後ちくわの MA 含量は有意に増加し,かまぼこの MA 含量は有意に減少した。貯蔵 2 日目にちくわの MA 含量は有意に減少し,かまぼこのそれは有意に増加した。<br>