著者
山本 昌幸 小路 淳
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.53-61, 2016

瀬戸内海中央部の砂浜海岸(調査時の水深1.0~5.7 m)で小型底びき網調査を2002年5月から2005年9月まで37回実施し,39種以上14,013尾の魚類を採集した。水温は9.0(2月)から30.3℃(8月)の間で変動した。一曳網あたりの魚種数は1.25(1月)から9.50尾/曳網(6月)の間で,個体数密度は0.6(1月)から103.5尾/100 m<SUP>2</SUP>(10月)の間で変動した。魚種数と個体数密度は春から夏に増加して秋から冬にかけて減少し,水温との間に有意な正の相関が認められた。優占上位6種(個体数%)はヒメハゼ(62.6%),アラメガレイ(11.4%),シロギス(6.7%),ネズッポ属(6.4%),ササウシノシタ(3.3%),ヒラメ(3.2%)であった。
著者
坂井 陽一 越智 雄一郎 坪井 美由紀 門田 立 清水 則雄 小路 淳 松本 一範 馬渕 浩司 国吉 久人 大塚 攻 橋本 博明
出版者
広島大学大学院生物圏科学研究科
雑誌
生物圏科学 : 広島大学大学院生物圏科学研究科紀要 (ISSN:13481371)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.7-20, 2010-12-24

瀬戸内海安芸灘に位置する大崎上島の沿岸魚類相について,餌釣りと潜水観察による調査を実施した。ガラモ場の存在する桟橋を中心に調査定点を島の南部北部それぞれに設定し,オキアミ類とゴカイ類を餌に約10名が1時間釣りを行う作業を2007年5月から2008年3月まで隔月で実施し,出現魚類の季節変化を検討した。また,2007年5月から7月にかけて,屋代島から竹原までの安芸灘広域に9ゾーン26調査点を設け,同様の調査を実施し,出現魚類の水域ゾーン間の相違を検討した。本調査により総計29科63魚種を記録した。そのうち高水温期にのみ出現する南方系魚種は4種のみであった。記録した魚種の76%(48種)は伊予灘で記録されているものであった。一方,宇和海での魚類相データとの魚種共通率は30%前後に留まり,安芸灘を含む伊予灘以北の水域が生物地理学的に中間温帯区(西村,1981)と定義されていることの妥当性が裏付けられた。大崎上島において周年および冬期を除き常時記録されたのは,カサゴ,メバル,ハオコゼ,クジメ,アサヒアナハゼ,マダイ,ウミタナゴ,スズメダイ,メジナ,コブダイ,ホシササノハベラ,キュウセン,ホンベラ,クラカケトラギス,ホシノハゼ,イトヒキハゼ,ヒガンフグ,コモンフグであった。これら18魚種の多くは安芸灘広域調査においても広く出現が認められ,安芸灘の浅海魚類群集の基本構成種と考えられた。ホシササノハベラは愛媛県中島周辺水域での出現頻度が極めて高く,同種の安芸灘における主要な個体群が安芸灘南西エリアに存在する可能性が示唆された。また,過去に瀬戸内海での記録のないホシノハゼが安芸灘広くに確認され,急速に分布拡大を進めていることが示唆された。We surveyed fish fauna at shallow waters of Aki Nada, Seto Inland Sea by the line fishing census, using small hooks attaching clamworms or krills as baits, during May 2007 - March 2008. We set up survey points at piers with Sargassum belt in Osaki-Kami Shima Island, and conducted the census (ca. 10 person x 60 min at each) bimonthly to analyze seasonal differences of fish fauna. In order to evaluate geographic variation of fish fauna, we also held the census at 26 survey points of nine zones situated a wide area in Aki Nada during May-July, 2007. A total of 63 species of 29 families were recorded. Of 63 species, 76 % were commonly recorded in Iyo Nada region. In contrast, the common species ratio fell to ca. 30% in comparison with data recorded in Uwa Sea region, which strongly supports the validity of the border of biogeographical regions between "Warm temperate region" including Uwa Sea and "intermediate temperate region" including Iyo Nada and Aki Nada (Nishimura, 1981). The almost year-round occurrences in the Osaki-Kami Shima were admitted in the following 18 species, Sebastiscus marmoratus, Sebastes inermis, Hypodytes rubripinnis, Hexagrammos agrammus, Pseudoblennius cottoides, Pagrus major, Ditrema temmincki, Chromis notata notata, Girella punctata, Semicossyphus reticulatus, Pseudolabrus sieboldi, Halichoeres poecilopterus, Halichoeres tenuispinnus, Parapercis sexfasciata, Istigobius hoshinonis, Cryptocentrus filifer, Takifugu pardalis, Takifugu poecilonotus. Most of these species commonly occurred in the survey zones in Aki Nada waters, suggesting that these are core components of fish fauna in shallow waters of Aki Nada.
著者
坂井 陽一 越智 雄一郎 坪井 美由紀 門田 立 清水 則雄 小路 淳 松本 一範 馬淵 浩司 国吉 久人 大塚 攻#橋本 博明
出版者
広島大学大学院生物圏科学研究科
雑誌
生物圏科学 (ISSN:13481371)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.7-20, 2010

瀬戸内海安芸灘に位置する大崎上島の沿岸魚類相について,餌釣りと潜水観察による調査を実施した。ガラモ場の存在する桟橋を中心に調査定点を島の南部北部それぞれに設定し,オキアミ類とゴカイ類を餅に約10名が1時間釣りを行う作業を2007年5月から2008年3月まで隔月で実施し,出現魚類の季節変化を検討した。また,2007年5月から7月にかけて,屋代島から竹原までの安芸灘広域に9ゾーン26調査点を設け,同様の調査を実施し,出現魚類の水域ゾーン間の相違を検討した。本調査により総計29科63魚種を記録した。そのうち高水温期にのみ出現する南方系魚種は4種のみであった。記録した魚種の76%(48種)は伊予灘で記録されているものであった。一方,宇和海での魚類相データとの魚種共通率は30%前後に留まり, 安芸灘を含む伊予灘以北の水域が生物地理学的に中間温帯区(西村, 1981)と定義されていることの妥当性が裏付けられた。大崎上島において周年および冬期を除き常時記録されたのは,カサゴ,メバル,ハオコゼ,クジメ,アサヒアナハゼ,マダイ,ウミタナゴ,スズメダイ,メジナ,コブダイ,ホシササノハベラ,キュウセン,ホンベラ,クラカケトラギス,ホシノハゼ, イトヒキハゼ,ヒガンフグ,コモンフグであった。これら18魚種の多くは安芸灘広域調査においても広く出現が認められ,安芸灘の浅海魚類群集の基本構成種と考えられた。ホシササノハベラは愛媛県中島周辺水域での出現頻度が極めて高く,同様の安芸灘における主要な個体群が安芸灘南西エリアに存在する可能性が示唆された。また,過去に瀬戸内海での記録のないホシノハゼが安芸灘広くに確認され,急速に分布拡大を進めていることが示唆された。
著者
長谷川 拓也 小路 淳
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.574-579, 2017 (Released:2017-08-07)
参考文献数
21
被引用文献数
4

シロウオの遡上実態と産卵場の環境特性を広島県三津大川において調査した。2016年の漁期は2月下旬~4月下旬であり,漁獲量は大潮の時期に多く小潮の時期に少ない傾向を示した。卵塊分布密度が最高となった地点は,河口から約350 m上流側であった。その地点の塩分は,小潮期には終日ほぼ0であったが,大潮期の満潮時には約25に上昇した。既往知見に比べて高い塩分にさらされる場所においても本種の産卵が確認され,一定期間は淡水及び汽水にさらされる環境であることが産卵場の形成要因として重要である可能性が示唆された。
著者
岩本 有司 森田 拓真 小路 淳
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.841-848, 2010-09-15
被引用文献数
5

先行研究が行われている有明海筑後川河口域とは環境条件が異なる広島湾北部および太田川水系 2 河川下流域においてスズキ仔稚魚の出現と食性を調査した。仔稚魚の分布密度は砂浜海岸に比べて河川内浅所において有意に高かった。仔稚魚の消化管内容物は枝角類とカイアシ類が中心であり,それらの種組成は各河川および定点の餌料生物環境に対応して変化した。<i>Sinocalanus sinensis</i>(汽水性カイアシ類)が主要餌料生物となる筑後川下流域だけではなく,太田川下流域もスズキ仔稚魚の主要な生息場であることが明らかとなった。<br>
著者
小路 淳 高須賀 明典 三田村 啓理
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

沿岸生態系における魚類群集の主要な捕食者―被捕食者を特定するための魚類群集調査と胃内容物解析を広域的に実施した.コアサイトとして季節別調査を実施した瀬戸内海と北海道では,季節に関係なく捕食者のバイオマスが夜間に増大することが明らかとなった.日中に比べて夜間に藻場を利用する大型魚食性魚類が増加することにより,小型魚類の被食リスクが高まる傾向が南北サイト,季節で共通して認められたことは,夜間の藻場において日中よりも捕食圧が高まることが普遍的なものであることを支持している.一連の結果から,沿岸域の食物網構造は,小さい時空間スケールで大きく変動する特性を備えていることが明らかとなった.
著者
上 真一 小路 淳
出版者
広島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ミズクラゲやエチゼンクラゲなどの有害クラゲを捕食する天敵クラゲを探索し、その捕食能力を利用した有害クラゲ種の発生制御の開発を目的としている。今年度は下記の研究成果を得た。(1)天敵クラゲ種の探索と捕食能力の測定水温25℃において、有櫛動物のウリクラゲ(湿重量:約20g)は体重約10gのカブトクラゲを1日に最大2個体捕食した。水温20℃において、刺胞動物のユウレイクラゲ(湿重量:約300g)は体重130gのミズクラゲを8時間で完全に捕食した。アカクラゲ(湿重量:約150g)は体重5gのエチゼンクラゲを2-3時間で完全に捕食した。オキクラゲは自らより大型のミズクラゲを捕食可能であった。また、アマクサクラゲもミズクラゲやエチゼンクラゲを捕食可能であった。以上のように、旗ロクラゲ目の中で比較的強い刺胞毒を有する種類は、他のクラゲ種を捕食し、天敵として機能することが明らかとなった。(2)安定同位体比に基づくクラゲ類の餌-捕食者関係瀬戸内海に出現するカブトクラゲ、ミズクラゲ、アカクラゲの安定同位体比から、それらの食性を推定した。安定同位体比はいずれもカイアシ類などの動物プランクトン食性を示し、本方法では天敵クラゲとなるクラゲ種を特定することはできなかった。(3)汽水湖におけるミズクラゲの餌生物と共食い可能性の調査富栄養汽水湖である中海本庄工区には膨大なミズクラゲ個体群が出現する。それらの消化管内容物を調査することにより、餌生物の特定と共食いの有無の調査を行った。ミズクラゲは湖内に出現するカイアシ類などの動物プランクトンをほぼ無選択に捕食しており、ミズクラゲを餌として捕食することはなかった。サイズの異なるミズクラゲ同士を水槽内に収容しても、共食いを行うことはなかった。
著者
笠井 亮秀 小路 淳 小路 淳
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

フィールド調査の結果、ミズクラゲ重量と底層の溶存酸素濃度の間に負の相関が認められた。またミズクラゲの分布域と、魚卵稚仔や動物プランクトンの分布域は、一致していなかった。安定同位体比分析より、ミズクラゲは魚卵稚仔を含む動物プランクトンを主な餌とする雑食性であると推定された。ミズクラゲは強い貧酸素耐性を有しており、沿岸域の 貧酸素化にともない、ミズクラゲへの栄養フローが増大していると推定される。
著者
海野 徹也 長澤 和也 小路 淳 斉藤 英俊
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

放流事業によって漁獲量が著しく回復した広島湾のクロダイについて、産卵場、卵分布、稚魚の分布、成長、食性などの初期生態を解明した。クロダイの主産卵場は広島湾の湾口部に形成され、産卵は夜間であり、卵は幅広い水深に分布した。卵密度と稚魚の日周輪解析より、産卵ピークは5月下旬から6月中旬であり、着底は7月上旬から中旬にピークを迎えることがわかった。稚魚の主食はヨコエビ類、カイアシ類、であったが、生息環境に応じ柔軟性を示していた。
著者
小路 淳
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

陸域起源物質が河口域の魚類生産に与える影響の時空間変動を評価するために,太田川河口域において物理・生物調査を実施した.周年調査によりスズキが生活史初期に河口域に広く分布することが明らかとなった.スズキ仔稚魚は2月下旬から5月末にかけて河口域の優占種となった.胃内容物調査と安定同位体比分析の結果から,春季の上流域では河口域における魚類生産に対する陸域起源物質への貢献度が高まることが明らかとなった.