著者
井口 恵一朗
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.356-359, 2011-05-15
参考文献数
37
被引用文献数
4

近頃のアユ資源は,小刻みな年変動を繰り返しながらも,全体としては減少傾向を突き進んでいる。積年の種苗放流にもかかわらず,資源水準の低迷から脱出できない現実がある。問題の背景には,現行の増殖事業における実効性の乏しさがうかがわれる。これまでに私は,アユの生活史のさまざまな局面について調査する機会を得てきた。本稿では,アユ資源の復調を願う生態学的な視点から,本種の持続可能性について論じてみたい。
著者
秋山 清二
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.905-912, 2010-09-15
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

海底に残置された逸失刺網の漁獲継続期間について検討するため,千葉県館山湾の海底に刺網を 2000 日間浸漬し,浸漬時間と羅網個体数の関係を調べた。刺網にはイセエビ 15 個体,イセエビ以外の甲殻類 25 個体,腹足類 8 個体,魚類 5 個体,その他 2 個体の合計 55 個体が羅網した。羅網個体数は実験開始直後に急増し,浸漬 11 日目に最大となった後,減少した。羅網個体数の減少過程は指数関数で表され,漁獲継続期間は 182 日と推定された。漁獲継続期間はイセエビや魚類では短く,イセエビ以外の甲殻類や腹足類ではより長期に及んだ。<br>
著者
後藤 友明
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.1187-1189, 2012-11-15
参考文献数
9
被引用文献数
3

東日本大震災により岩手県地先の沿岸域に放置された底刺網 4 張りを回収し,漁具の状態とゴーストフィッシングの実態を評価した。回収された漁具は,設置位置からの大きな移動は認められなかったが,多くの付着物や網成りの低下が見られていた。回収された刺網によってカレイ類とカジカ類が優占する魚類と甲殻類が合計 10 種 55 個体・8,717 g 採集された。漁具間の罹網個体数に差は認められず,震災からおよそ 3 ヶ月経過した回収時においてもカレイ類やカジカ類を中心とする底魚類の罹網と死亡が繰り返されていることが示唆された。<br>
著者
土屋 勇太郎 Nishihara Gregory N. 寺田 竜太
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.189-197, 2012-03-15
参考文献数
48
被引用文献数
2 7

鹿児島産ホンダワラ属 5 種の光合成を 10~36°C の温度で測定した。純光合成速度はそれぞれ 20~24°C で最高値を示し,マメタワラとヤツマタモク,ヒジキは 16~28°C ,コブクロモクとキレバモクは 16~24°C で最高値と有意差のない速度を示した。呼吸速度はいずれも高温で増加した。光化学系IIの電子伝達速度はそれぞれ 28~30°C で最高値を示し,32°C 以上で減少した。生育地の夏季の水温環境(約 29°C)では,電子伝達の阻害はないと示唆されるが,それ以上の水温では光合成活性の低下の可能性が考えられた。<br>
著者
田中 敏博 吉満 敏 今吉 雄二 石賀 好恵 寺田 竜太
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.20-30, 2013-01-15
被引用文献数
1 16

鹿児島湾内 230 地点で海藻・海草類の調査を行い,ガラモ場やアマモ場(アマモ,コアマモ)の分布を明らかにした。また,ガラモ場を構成する主要なホンダワラ属海藻 10 種については,各種の分布を整理した。その結果,ガラモ場を 159 地点で確認し,アマモ場を 41 地点で確認した。温帯域に広く分布するヒジキ,イソモクやヤツマタモク,マメタワラは湾内各地に広く見られたが,亜熱帯から暖温帯に広く分布するトサカモクやフタエモク,コブクロモク,キレバモク,コナフキモク,シマウラモクは湾中央部や湾口部に多く見られた。<br>
著者
貞方 勉
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.969-976, 2000-11-15
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

産卵期と幼生ふ出期およびその間の海深別の採集個体の年齢群を解析することにより, ホッコクアカエビの着底以降の海深別の分布と移動を調べ, これまでに得られた知見と合わせて本種の生活史を明らかにした。本種は浮遊幼生期を経て着底後, 成長にしたがって海深の深い方へ移動する。海深400-600mが交尾・産卵海域で, 主群は雄では3,4,5歳, 雌では6,8,10歳である。3-4月に産卵した抱卵個体は, 約10ヶ月の抱卵期間後の1-2月に海深200-300mに移動して幼生ふ出をおこなう。
著者
深田 陽久 橋口 智美 柏木 丈拡 妹尾 歩美 高桑 史明 森岡 克司 沢村 正義 益本 俊郎
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.678-685, 2010-07-15
参考文献数
33
被引用文献数
5 9

養殖ブリの高付加価値化を目的として下記の試験を行った。試験 1 ではユズ果汁をブリ飼料に添加することによって血合筋の褐変を抑制できるか検討した。飼料 1 kg にユズ果汁を段階的に添加し,ブリ幼魚に 40 日間給与した。ユズ果汁の添加によって,成長を損なう事無く,血合筋の褐変が抑制されていた。試験 2 としてユズ果汁を添加した飼料を 30 日間与えたブリの筋肉中からユズ香気成分の検出と同定を行い,香りの成分が果汁を添加した飼料より移行し,蓄積されたことを明らかにした。<br>
著者
松倉 隆一 澤田 浩一 安部 幸樹 南 憲吏 永島 宏 米崎 史郎 村瀬 弘人 宮下 和士
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.638-648, 2013-07-15
参考文献数
33
被引用文献数
6

標準体長(SL) 3.1~7.7 cm のイカナゴ当歳魚について,周波数 120 kHz におけるターゲットストレングス(TS)を姿勢角±30°の範囲で測定した。音響理論散乱モデルで推定した理論 TS と比較すると,姿勢角 0°付近で最大値 −68.8~−60.8 dB(実測)及び −68.7~−61.5 dB(理論)を示した。実測値と理論値の差は −1.6~0.9 dB と小さく,特に±10°のメインローブの範囲でよく一致した。採集海域の条件で推定した最大 TS と SL の関係は <i>TS</i>=43.1 log <i>SL</i>−96.1 となった。<br>