著者
栗原 和枝 中井 康裕
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1191-1202,1301, 2000-10-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
25

界面活性剤の形成する分子集合系の相互作用ならびに特性評価に対する表面力測定の適用を紹介する。表面力測定装置 (SFA) や原子間力顕微鏡 (AFM) について簡単に説明し, 分子集合系に関する詳細な研究が紹介されている。具体的には1) アンモニウム界面活性剤の自発的なベシクル形成に対する対イオンの効果の解明, 2) 塩添加によるベシクルの融合と凝集の機構と相互作用測定, 3)生体リン脂質の二分子膜間相互作用, 4) アミノ酸 (グリシン) 基間の水素結合相互作用, 5) 金属キレート脂質単分子間相互作用とキレート基であるイミノ二酢酸基の異なる解離状態, pH依存, ならびに銅錯体形成過程の評価, 6) 疎水性粒子または親水性粒子と気泡間の粒子-気泡相互作用における界面活性剤の影響の研究について述べられている。
著者
Satou Chiemi Goto Hirofumi Yamazaki Yuya Saitou Katsuyoshi Matsumoto Shoji Takahashi Ou Miyazaki Yosuke Ikuta Keiichi Yajima Yosuke
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.601-606, 2017
被引用文献数
4

<p>Monoacylglycerol (MAG) and diacylglycerol (DAG) are minor components of edible fats and oils, and they relate to the quality of these foods. The AOCS official method Cd 11b-91 has been used to determine MAG and DAG contents in fats and oils. There are, however, difficulties in the determination of MAG and DAG using this analytical procedure. Therefore, we improved this method by modifying the trimethylsilyl derivatization procedure and replacing the internal standard (IS) material. In our modified method, TMS-HT (mixture of hexamethyldisilazane and trimethylchlorosilane) was used for derivatization of MAG and DAG, which was followed by liquid-liquid extraction with water and <i>n</i>-hexane solution containing the IS, tricaprin. Using the modified method, we demonstrated superior repeatability in comparison with that of the AOCS method by reducing procedural difficulties. The relative standard deviation of distearin peak areas was 1.8% or 2.9% in the modified method, while it was 5.6% in the AOCS method. In addition, capillary columns, such as DB-1ht and DB-5ht could be used in this method.</p>
著者
早瀬 文孝
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.1137-1145, 1997-10-20 (Released:2009-10-16)
参考文献数
45
被引用文献数
7 7

メイラード反応は食品の加工, 貯蔵時の化学的成分変化の中で最も重要な反応の一つである。この反応は非酵素的に進行し, 土壌中や生体内においても進行する。メイラード反応は酸化的反応と非酸化的反応に類別できる。酸化的反応において, グルコースの自動酸化や酸化的糖化反応 (glycoxidation) によって後期段階反応生成物 (AGE) が生成する。その反応過程に活性酸素が生成する。非酸化的反応においては3-デオキシグルコソン (3DG) のようなデオキシオソンが生成し, AGEの生成へと反応は進行する。一方, AGEの一種でもあるメラノイジンはヒドロキシルラジカル, 過酸化水素, スーパーオキシドのような活性酸素を強力に消去する。この消去活性はメラノイジンの抗酸化性や脱変異原性発現機構の一つとして説明できうる。
著者
村上 千秋 高橋 次郎 新保 國弘 丸山 武紀 新谷 〓
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.423-427,460, 1997-04-20 (Released:2009-10-16)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

有機培養及び無機培養におけるクロレラの脂質について調べた。1) 中性脂質量は乾物量当たり2~3g/100gであった。これらには両培養方法ともワックスエステルが 80%, トリアシルグリセリンが20%含まれていた。2) リン脂質は有機培養では8.6g/100g, 無機培養では6.2g/100gであった。これらの組成 (PG, PC, PE, PI) は両培養とも類似していたが, 脂肪酸組成は著しく異なっていた。3) 糖脂質は両培養とも5.7g/100gであった。これらの組成 (MGDG, DGDG, SQDG) 及びその脂肪酸組成は両培養で異なった。4) C16 : 4及び C18 : 4 の両脂肪酸は糖脂質及び PG を除くリン脂質で検出されたが, トリアシルグリセリンには検出されなかった。5) C16 : 1のトランス酸は PG のみ含まれていた。その含有量は有機培養で1.6%, 無機培養で2.3%であった。
著者
深澤 透 堤 崇史 東海林 茂 荏原 紘 丸山 武紀 新谷 〓
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.247-251,261, 1999-03-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
11
被引用文献数
4 18

5種類の有機リン系農薬 (ジクロルボス, パラチオンメチル, マラチオン, クロルピリホス及びクロルフェンビンホス) を大豆油に添加し, 脱ガム, 脱酸, 脱色及び脱臭工程を行った後の精製油中の農薬残留量を測定した。得られた結果は次のとおりである。 (1) 脱ガム処理では原油中の各リン系農薬はわずかに減少した。 (2) 脱酸処理では脱ガム油中のジクロルボスは明らかに減少したが, 他の農薬は約80%以上残存した。 (3) 脱色処理では吸着剤による脱酸油中のジクロルボス及びクロルフェンビンホスの減少率はそれぞれ約70%及び60%であった。一方マラチオン及びクロルピリホスの減少率はそれぞれ約30%及び5%であった。パラチオンメチルは活性炭を含む吸着剤を用いると極端に減少した。 (4) 260℃の脱臭処理により全農薬が完全に除去された。 (5) 原油中のリン系農薬 (ジクロルボス, パラチオンメチル, マラチオン, クロルピリホス及びクロルフェンビンホス) は一般の精製処理により完全に除去されることを確認した。
著者
飯田 隆雄
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.439-448,503, 1999-05-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
48

ダイオキシン類は都市ゴミや産業廃棄物等の焼却から発生し, 生活環境を汚染してきた。その結果, 食品を介した人体汚染が進み, 内分泌撹乱物質としても心配されている。油症は今から30年以上前に西日本一帯で発生した食用ライスオイルによる大規模な食中毒事件である。一見, ダイオキシンと何ら関係がないように見えるが, 実はライスオイルに混入していたポリ塩素化ダイベンゾフランをはじめとする, いわゆる, ダイオキシン類が原因で発生している。また, 台湾においても同様の事件が発生している。2, 3, 7, 8-四塩化ダイベンゾ-p-ダイオキシン (TCDD)はサリンの2から10倍も強い毒性を持つといわれ, 1997年2月にIARC (International Agency for Research on Cancer) はフランスのリヨンで開いた専門家会議でTCDDをヒトに対して発がん物質であるというカテゴリーに分類した。我々は, 日本人の母乳や血液等のダイオキシン類による汚染を調査してきた。本稿ではこのダイオキシン問題について人体汚染中心に紹介し, さらに, ダイオキシン類と日本の油症および台湾のYuchengについて概要を述べた。
著者
金子 秀雄
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1049-1055,1198, 1999-10-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
17

女性ホルモン様作用を有する植物エストロゲンは現在200種類が知られており, その中でもイソフラボン類のcoumestrol, genisteinおよびdaidzeinは強い活性を示す。これらのイソフラボン類は, エストロゲンレセプターに対して高い親和性を示す。イソフラボン類は, 内分泌撹乱作用で話題となっている合成化合物 (例 : bisphenol-A, 4-nonylpheno1) よりも強いエストロゲン作用 (in vitro) を示し, また, 日本人の場合は大豆製品を通じて大量のイソフラボン類を摂取しているために内分泌撹乱作用が議論されている。一方, イソフラボン類は骨粗巻症治療, 前立腺がん予防, 乳がん予防, コレステロール低下作用等の種々の薬効があると報告され, 植物エストロゲン類のリスク/ベネフィトの両面をよりよく評価するために, さらなる分子レベルの研究の進展が期待される。
著者
大西 正男 伊藤 精亮
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.1213-1225, 1997-10-20 (Released:2009-10-16)
参考文献数
53
被引用文献数
5 10 5

代表的な植物スフィンゴ脂質であるグルコシルセラミド (セレブロシド) は細胞膜と液胞膜の主要な脂質成分のひとつである。一般にスフィンゴ脂質は構造的な要因として膜を強固にする機能を有することが知られているが, 植物細胞では高含量のセレブロシドの存在は低温条件下での膜の流動性制御に対してマイナスに作用するとともに局部的な膜の相転移状態を引き起こす可能性がある。現在, 植物の低温傷害あるいは凍結傷害と関連したスフィンゴ脂質の役割について多くの研究がなされている。本総説では, 動物スフィンゴ脂質とは顕著に異なる植物スフィンゴ脂質の構造知見を概説し, その中で低温感受性と低温耐性植物から分離したセレブロシドの分子種多様性について述べるとともに, DSC分析から明らかになったセレブロシド分子種の熱特性ならびに低温ストレスに対する応答としてのセレブロシド組成の変化について説明する。また, 著者らの植物スフィンゴ脂質の代謝に関する最近の研究成果についても紹介する。
著者
高津戸 秀 糸川 恵美子 阿部 文一 鳴海 安久
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.727-730,735, 2000-07-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

エノコログサ属植物に含まれるステロールのガスクロマトグラフィーによる定量を行った。アワ (Setaria italica) では, シトステロールは種子, 葉, 茎及び根の各器官においても最も多く含まれていた。また, シトスタノールは種子に局在し, スティグマステロールは葉及び茎に局在していた。エノコログサ (S. viridis), オオエノコロ (S. X pycnocoma) 及びキンエノコロ (S. glauca) についても種子, 葉, 茎の器官別にステロール含量を解明した。シトスタノールはこれら3種において, アワよりは少ないながらも検出された。オオエノコロの種子, 葉, 茎における主要植物ステロール (カンペステロール, スティグマステロール及びシトステロール) の含量はアワのそれと良く似ていた。キンエノコロとエノコログサでは, 葉及び茎での主要ステロール含量は種子と比べて著しく少なく, アワやオオエノコロの葉及び茎の主要ステロール含量とは大きく異なっていた。同じイネ科エノコログサ属植物において, このような相違点が見られたことは化学分類的に興味深い。