著者
真野 佳典 豊泉 長 藤井 和之 菊池 義公 永田 一郎 堂本 英治 寺畑 信太郎 玉井 誠一
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.239-243, 1999-05-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

子宮頸部扁平上皮癌のまれな一亜型である子宮頸部乳頭状扁平上皮癌の1例を経験したので, その細胞学的特徴を, ヒト乳頭腫ウイルス (HPV) の検索結果を含め報告する. 症例は36歳女性. 肉眼的には, 子宮頸部からカリフラワー状に外向性発育を示す, 易出血性な腫瘍がみられ, 強く悪性が疑われた. しかしながら細胞学的には, 高度異型成から上皮内癌程度の細胞所見で, 浸潤癌を示唆する細胞所見は得られなかった.摘出標本による組織学的検討では, 狭細な血管線維性間質を伴い, 乳頭状に外向性発育を示すとともに, 一部に間質浸潤がみられ, 乳頭状扁平上皮癌 (FIGO Stage Ib 2) と診断された. またPCR法によりHPVの検索を行ったところHPV 16型 (High-risk type) が検出された. 同症例では細胞診および生検で, 浸潤癌の術前診断が困難な例が多く, 上皮内癌とunderdiagnosisされる可能性が想定される. しかしながら肉眼像およびコルポスコピー所見で, 子宮頸部乳頭状扁平上皮癌を鑑別にあげることができれば, 細胞診における豊富な腫瘍細胞量, 細胞集塊, 個々の細胞異型などの所見と生検を併用することで, 術前に確診に至ることも可能と思われる.
著者
隅越 かつ子 上坊 敏子 新井 努 川口 美和 渡辺 純 蔵本 博行
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.521-526, 2000-11-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

背景: 子宮頸部乳頭状扁平上皮癌は, 組織学的にまれな乳頭状構造を示す扁平上皮癌であり, 生検で浸潤病変を診断することは困難なことが多いとされている.症例: 61歳, 2経妊1経産.肉眼的に子宮頸部に乳頭状に隆起した腫瘍を認め, 浸潤癌を疑う所見であった.細胞所見としては (1) 著明な腫瘍壊死性背景の中に孤立性または大小の集塊を形成して多数の異型細胞が出現していた.(2) 異型細胞は比較的小型であるが多形性に富み核大小不同もみられた.(3) 核は円形-長円形でクロマチンは増量し細顆粒状であった.(4) 核小体は余り目立たず, 小型なものが1, 2個みられる程度であった.(5) 細胞質は厚く, ライトグリーン好染性であった.(6) 一部のクラスターでは乳頭状構造が目立ち, 血管を含む間質の介在を認めた.生検組織所見では浸潤所見は明らかではなかったが, 手術標本では, 腫瘍組織は著明な乳頭状増殖を示し, 血管の増生を伴う間質組織を覆うように腫瘍細胞が認められた.また深部では非角化型扁平上皮癌が間質へ浸潤していた.結論: 細胞診では明らかな浸潤癌の所見であったが組織診では浸潤が確認できなかったことから, 本疾患における浸潤の診断においては細胞所見が有用である
著者
黒島 義克 大竹 賢太郎 楾 清美 松崎 晶子 齊尾 征直 吉見 直己
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.55-59, 2014 (Released:2014-03-13)
参考文献数
13
被引用文献数
2

目的 : ラオス国は開発途上国で, いまだ女性の死亡原因の一位は子宮頸がんである. しかし, その予防のための検診のみならず, 細胞診に関しても十分に実施されていない. 今回, 健常女性における子宮頸部細胞診スクリーニングを実施・検討した.方法 : ラオス国首都ビエンチャン市内の 3 つの地区に居住する 22~65 歳の健常人ボランティア女性の総数 1000 名に対して自己採取型の加藤式自己搾過法器具を使用して子宮頸がん細胞診検査を実施した.成績 : 細胞診判定はベセスダシステム 2001 に準拠した. NILM ; 893 例 (89.3%), ASC-US ; 33 例 (3.3%), LSIL ; 19 例 (1.9%), ASC-H ; 3 例 (0.3%), HSIL ; 1 例 (0.1%), SCC ; 1 例 (0.1%), 不適正標本に関しては 50 例 (0.5%) であった. また, HPV 感染を示唆する koilocytosis を呈する症例は 24 例 (2.4%) であった.結論 : LSIL 以上の要精検率に関しては, 日本と比較すると 2 倍を示し明らかに高い印象であった. koilocytosis を呈する症例数も本邦と比べて多い傾向であった.
著者
大竹 賢太郎 齊尾 征直 黒島 義克 安里 良子 吉見 直己
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.271-272, 2013 (Released:2013-08-29)
参考文献数
5

We examined how to improve the cell recovery for cell block preparations using cervical liquid-based cytology (LBC) samples. Forty cases of both NILM and LSIL, respectively, were split into three groups and three different cell block preparation methods were applied such as nylon mesh, OCT compound and cotton. The total cell number (isolated cells and cells in cell clusters) and the incidence of cases with large clusters (≥50 cells) in specimens were counted. We found that the cotton method, by which clusters were significantly recovered, was better than the others. The cotton method is a useful tool for cell recovery in block preparations from LBC samples.