著者
晴山 仁志 武田 直毅 山口 辰美 服部 広太郎 石崎 善昭 兼元 敏隆 山口 潤 水無瀬 昂
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.633-639, 1984 (Released:2011-11-08)
参考文献数
18

23歳, 未婚女性. 無月経と著明な男性化徴候を呈し来院. 血中testosteroneの異常高値と, 右側の付属器腫瘍を認め, 諸検査から, 卵巣の男性化腫瘍を疑い, 開腹した. 右側の充実性卵巣腫瘍を確認し, 組織学的に, 中等度分化型のSertoli-Leydig cell tumorの像を呈していた. 摘出腫瘍の捺印細胞診, 酵素抗体法を用いた組織内testosteroneの検索, および電顕的検索を行った. 本例は, 術後血中testosteroneが征常化し, 月経も再来した.
著者
梅森 宮加 梅澤 敬 堀口 絢奈 土屋 幸子 春間 節子 副島 友里恵 沢辺 元司 鷹橋 浩幸
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.271-275, 2017
被引用文献数
2

<p><b>目的</b> : High-grade urothelial carcinoma (HGUC) の診断精度を向上させるため, 標本作製法の改良を試みた.</p><p><b>方法</b> : 自然尿 491 検体を対象とし, 遠心管ウイングタイプと従来遠心管を使用し BD サイトリッチ<sup>TM</sup>法で標本作製を行った. 2 種類の遠心管における, 正常の上皮細胞数と異型細胞の検出率を算出し, 疑陽性例を再評価し組織診断と比較した.</p><p><b>成績</b> : 上皮細胞数の中央値は, 遠心管ウイングタイプが 37.5 個, 従来遠心管が 14.0 個, 異型細胞の検出率はそれぞれ 13.6%, 2.7%であり, 遠心管ウイングタイプで共に向上した (p<0.001). 疑陽性例の再評価では, 陰性 6 例, 異型細胞 53 例, 悪性疑い 74 例, 悪性 2 例であった. 異型細胞 15 例中 9 例 (60%) と悪性疑いの 35 例中 24 例 (69%) が組織診で HGUC と診断された.</p><p><b>結論</b> : 標本作製に遠心管ウイングタイプと BD サイトリッチ<sup>TM</sup>法を用いることで, 細胞回収量と異型細胞の検出率向上に寄与する.</p>
著者
己斐 澄子 手島 英雄 南 敦子 片瀬 功芳 山脇 孝晴 星 利良 藤本 郁野 山内 一弘 荷見 勝彦 都竹 正文
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.1048-1053, 1994 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9

閉経後の患者で, 細胞診で老人性変化が主体で一部にHPV感染を疑う所見を認めたが, 十分なHPV感染細胞所見を示さなかった8症例にエストロゲン (プレマリン) 負荷を施行した. 抱合型エストロゲン, プレマリン1.25mgを2週間経口投与した. 投与前は少数のkoilocyteやparakeratocyteを認めただけであったが, 投与後は, 炎症性背景が消失し, parakeratosis 100%(8/8), koilocytosis 75%(6/8), smudged様濃染核75%(6/8), giant cell 50%(4/8), multinucleation62.5%(5/8) の率でHPV感染に特徴的な細胞所見が出現した.HPV-DNAは, Southern blot法で5例を検索し, 100%(5/5) 陽性であった. ISH (in situ hybridization) 法で他の3例を検索し, 33%(1/3) がHPV-DNA陽性であった.エストロゲン投与は, 老人性膣炎と悪性細胞を鑑別するだけでなく, 老人性膣炎でのHPV感染診断に有用であった. 老人性変化, 老人性膣炎症例でHPV感染を示唆する細胞が出現している場合, エストロゲン (プレマリン) 投与により, さらにHPV感染細胞所見が明瞭となることがわかった.
著者
三宅 康之 有安 早苗 広川 満良 椎名 義雄 郡 秀一 三宅 実甫子 吉沢 梨津好
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.151-155, 1996-03-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
10

保存尿の免疫細胞化学的検索により, デコイ細胞がポリオーマウイルス感染細胞と断定し得た1例を報告する. 症例は15歳, 女性で, 神経芽細胞腫の治療経過中に尿中にデコイ細胞が観察された. 後日, 尿沈渣保存液中に保存しておいたデコイ細胞の免疫細胞化学的検索にて, ポリオーマウイルス感染細胞であることが証明された. 尿沈渣を保存することの重要性とその活用について述べる.
著者
田島 将吾 堀内 啓
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.242-243, 2011-07-22
参考文献数
2

We report invasive lobular carcinoma with apocrine differentiation in a 51-year-old woman. Despite fine-needle aspiration cytology four times, a definite diagnosis was difficult because cells with apocrine differentiation and unequivocal atypia were consistently found each time. These cells appeared as cellular clusters in which dyshesion was commonly observed. Scattered single cells with apocrine differentiation were numerous. These findings show the high discohesion of lobular carcinoma and the diagnosis was histologically confirmed in surgical specimens. Cellular apocrine cell clusters therefore suggest neoplastic lesions with apocrine differentiation and high discohesion suggests lobular carcinoma.
著者
畠 榮 鐵原 拓雄 三宅 康之 広川 満良
出版者
特定非営利活動法人日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.549-555, 1996-11-01
参考文献数
14
被引用文献数
8
著者
阿部 俊弘 山田 知之 中山 吉則 樋口 英次郎
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.789-793, 1986

特徴ある細胞診所見を呈した子宮内膜異型増殖症の1症例を経験したので報告する.症例は52歳の閉経婦人で, 子宮腔内にポリープ状腫瘤を形成し, 組織学的には角化を示す著明な扁平上皮化生と異型腺増殖が認められた.頸部擦過および内膜細胞診には異常角化細胞とともに強いエオジン好性を示す無定形のケラチン様物質 (keration body) が多数認められた.<BR>本症例には内膜異常のrisk factorであり, hyperestrogenismと関連する肥満と糖尿病がみられたが, これらに加えて組織学的にも炎症所見が著明であったこと, 周囲環境の刺激を受けやすいポリープ状を呈したことなどにより著明な扁平上皮化生をきたしたものと思われた.
著者
鳥居 貴代 布引 治 甲斐 美咲 野田 定
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.604-611, 1994 (Released:2011-11-08)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

性周期各相の子宮内膜変化について, 内膜細胞診と同時に施行された内膜組織診とを比較し, 性周期各相に対応する細胞集団および構成細胞の形態変化から組織構築を推定し得る細胞診断基準を求め, 内膜細胞診における性周期推定の応用を試みた.性周期は, 増殖期は前期・後期, 分泌期は前期・中期・後期にわけ, それぞれの特徴的所見をNoyesのDating the endometriumや五十嵐のEndometriogramを参考として10項目-(1) 腺細胞の核分裂 (2) 核の偽重層 (3) 核下空胞 (4) 分泌像 (5) 間質の浮腫 (6) 間質の偽脱落膜様変化 (7) 問質細胞の核分裂 (8) 白血球浸潤 (9) 腺管の蛇行 (10) 螺旋動脈-からなる診断基準を作成し, その有用性を検討したととろ, 個々の細胞所見のみならず被覆上皮, 腺管, 間質細胞などの組織構築をふまえた出現様式を判定基準に取り入れたことで, より組織診に近い診断が得られることがわかった.
著者
北澤 純 高橋 顕雅 西野 万由美 岡本 明子 宮元 伸篤 新川 由基 黒澤 学
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.136-141, 2018

<p><b>背景</b> : 外陰 Paget 病は外陰悪性腫瘍の 1~2%とまれな腫瘍である. 今回, 擦過細胞診にて外陰 Paget 病を推定しえた 2 例を経験したため報告する.</p><p><b>症例</b> : 症例 1 ; 82 歳, 女性. 2 年前より外陰部掻痒感, 発赤があり, 症状が増悪したため当院へ紹介され受診した. 外陰部の擦過細胞診では, きれいな背景に孤立性に N/C 比が高くクロマチン微細な小型細胞が散見された. 核小体が複数みられ, 軽度核形不整を伴う細胞も認められた. 集塊はみられなかったが, 相互封入像が認められた.</p><p>症例 2 ; 79 歳, 女性. 近医で子宮筋腫を認めたため, 当院へ紹介され受診した. 当科受診時, 外陰部に広範な発赤を伴う皮膚肥厚を認めた. 外陰部の擦過細胞診では, きれいな背景に N/C 比の高い小型細胞が孤立散在性に認められ, クロマチンは微細で核小体が目立っていた. 平面的な小集塊も 1 ヵ所あり, 細胞は N/C 比が高く, 核小体が目立ち, クロマチンは微細だった.</p><p><b>結論</b> : 外陰部病変の擦過細胞診で異型のある腺系細胞が認められたら, Paget 病も鑑別に入れた精査が必要である. また, 外陰擦過細胞診にてブラシを用いることで細胞採取数が増加し, 診断精度が向上する可能性が示唆された.</p>
著者
野木 才美 山崎 龍王 藤田 裕 小林 織恵 大田 昌治 小林 弥生子 梅澤 聡
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.369-373, 2012 (Released:2012-12-10)
参考文献数
8

背景 : 今回われわれは, コルポスコピーおよび狙い組織診で異常所見を認めず, 子宮頸部擦過細胞診にて子宮頸部小細胞癌と診断しえた 1 例を経験したので報告する.症例 : 34 歳, 0 経妊 0 経産, 不正性器出血にて当院を受診した. 内診, 経腟超音波, コルポスコピー検査にても異常所見を認めず, 唯一, 子宮頸部細胞診で小細胞癌 ; (非常に小型で N/C 比の大きい, 核が濃染した異型細胞を認め小細胞癌を疑う所見) であったため, 狙い組織診を施行するも頸管腺の一部に扁平上皮化生を認めるのみで悪性所見を得なかった. 画像検査 (MRI) においても子宮頸部に明らかな腫瘤像を認めなかったために診断的円錐切除を施行したところ, 正常な扁平上皮組織下の間質部に, 浸潤性の小細胞癌を認めたため, 広汎子宮全摘+両側付属器切除+骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を施行したところ, 摘出子宮に癌の残存を認めないものの, 骨盤リンパ節に 1 個 (1/42) 転移を認めたため, 術後補助化学療法を施行した. 以後 1 年 6 ヵ月経過するも再発傾向を認めていない.結論 : 小細胞癌は予後不良であり, 今回のように摘出子宮に癌が残存していなくともリンパ節転移を認めることがあり, 安易な妊孕性温存意義は危険であると思われ, その診断に細胞診が有用であったために報告する.
著者
平園 賢一 篠塚 孝男 伊藤 仁 川井 健司 堤 寛 長村 義之
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.37-41, 1995 (Released:2011-11-08)
参考文献数
5

今回われわれは, 子宮頸部の神経内分泌細胞癌2例を経験し, 検討したので報告する.症例は32歳と50歳の主婦. ともに子宮頸部Ib期の臨床診断にて, 広汎子宮全摘および所属リンパ節郭清施行後, 50Gyの外照射を行ったが6ヵ月から1年で血行転移を来し, 化学療法 (CAP) を施行したが効果なく術後2年足らずで死亡した. 細胞像は, 孤立散在性または集団状に出現し, いわゆる対細胞もみられた。細胞はリンパ球よりやや大きく円形ないしは楕円形で大小不同を認めた. 細胞質は乏しく裸核状のものも多く, 核クロマチンは中等度増量し粗大顆粒状, 核小体は著明ではないが出現する場合は数個認められた. 組織像は, 主に小型で未分化な腫瘍細胞が充実性シート状に配列し, 一部カルチノイドにみられるような索状およびロゼット形成が認められ, 腺癌病変も一部に認められた. また腫瘍細胞に一致してグリメリュウス, 神経内分泌マーカーであるクロモグラニンA, NSE, Leu 7, 上皮性マーカーであるサイトケラチン, EMAが陽性を示した. 電顕的には細胞質に神経内分泌顆粒が認められた.
著者
広瀬 隆則 山田 順子 山本 洋介 佐野 暢哉 日野 明子 古本 博孝 山田 正代 佐野 壽昭
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.233-237, 1997-03-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
10
被引用文献数
4 4

子宮頸部にはまれに神経内分泌癌が発生することが知られている. 30歳, 妊娠29週の女性の子宮頸部に発生した小細胞性神経内分泌癌の1例を経験したので, 細胞所見を中心に報告した. 患者は不正性器出血を主訴として来院し, 頸部前唇にピンポン玉大の腫瘍が見出されたため, 広範子宮全摘出手術が行われた. 術後, 大量化学療法と末梢血幹細胞移植が施行されたが, 合併症のため約7ヵ月後に死亡した. 擦過細胞診では, 小型で裸核状の腫瘍細胞が壊死物質を背景に孤立散在性ないし結合性の弱い小集塊として認められ, 肺小細胞癌の細胞所見に類似していた. 組織学的に腫瘍細胞は, 胞巣状, 索状ないしリボン状に配列し, 多くの細胞でGrimelius法により好銀顆粒が証明された. 免疫組織化学的に, Chromogranin A, neuron specific enolase, synaptophysinなどの神経性マーカーが陽性を呈しており, 小細胞性神経内分泌癌と診断された. 本腫瘍は, 小細胞性扁平上皮癌や低分化腺癌との鑑別が難しいが, これらの腫瘍より進行が早く悪性度が高いので, 早期に診断し強力な治療を開始することが大切である. 診断上, 細胞診のはたす役割は大きいと考えられた.
著者
河野 美江 戸田 稔子 脇田 邦夫 高橋 正国 入江 隆 紀川 純三 寺川 直樹
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-3, 2001-01-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9

目的:10代女性の子宮頸部擦過細胞診における異常例の頻度とその背景を知ることを目的とした.結果:松江生協病院産婦人科を受診した10代女性164例に対し子宮頸部擦過細胞診を行った. クラスIIIa以上の細胞診異常例は12例 (7.3%) にみられ, 11例がクラスIIIa, 1例がクラスIIIbであった. 細胞診異常例12例中4例が妊娠例であり, 性行為感染症が7例にみられた. 追跡が可能であった10例中7例では, 7~84ヵ月の間に細胞診判定が正常化した. クラスIIIbであった1例は子宮頸部円錐切除術で高度異形成と診断された.結論:細胞診異常例が高率にみられたことから, 10代であっても子宮頸部擦過細胞診を行うことが重要であると考えられた. また, 細胞診判定に際してはsexual activityが高い例では性行為感染症を含む炎症性変化に注意が必要であることが示された.
著者
星田 義彦 原留 成和 山下 展弘 村上 一郎 宮宅 健司 宮谷 克也 吉野 正
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.692-697, 1995
被引用文献数
4

われわれは, 甲状舌骨嚢胞からの穿刺吸引細胞診によって術前に癌化を診断しえた甲状舌管癌の1例を経験したので報告する. 症例は67歳の女性. 2年前より, のどぼとけのような前頸部の小腫瘤に気付いていたが放置していた. 数ヵ月前より, 急に腫瘤が増大したため, 当院外科を受診し入院となる. 甲状舌骨嚢胞と考えられたが, 嚢胞内の穿刺吸引細胞診を施行したところ一部で核内細胞質封入体を認める乳頭状癌の像を呈した. 甲状舌管癌の診断のもと腫瘍摘出, 所属リンパ節廓清を行った. 摘出腫瘤は直径6cm大で弾性硬, 表面平滑. 割面では嚢胞状部と嚢胞内腔に乳頭状に突出する充実性の腫瘤形成がみられ, 組織学的にも乳頭癌であった. 甲状舌骨嚢胞の癌化の頻度は長嶺らによると1.61%であり, 本邦での報告例は自験例を含めて26例と比較的まれである. 甲状舌骨嚢胞の癌化を腫瘍摘出前に知ることは重要なことであるが, 画像診断のみから良悪性を判定することは難しい. したがって, 甲状舌骨嚢胞の摘出の術前に侵襲の少ない嚢胞穿刺細胞診を行うことは有用であると考える.