著者
佐藤 由美 落合 広美 小林 由美子 泉田 佳緒里 栗原 アツ子 若木 邦彦
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.250-255, 2016 (Released:2016-10-12)
参考文献数
9

背景 : 近年, メトトレキサート (MTX) は, 関節リウマチ (RA) の治療薬として広く用いられ, 使用頻度は増加している. しかし, 副作用としてのリンパ腫の発生も多く報告されるようになった. 今回私たちは, 左膝関節滑膜に発生した MTX 関連リンパ増殖性疾患 (MTX-LPD) のまれな 1 例を経験したので報告する. 症例 : 62 歳, 女性. 9 年前に RA 発症, 8 年前より MTX 投与開始. 8 ヵ月前より左膝関節の腫脹と疼痛を認めた. 関節液細胞診にて MTX-LPD が疑われ, 滑膜切除術が行われた. 結論 : 発生部位として非常にまれな滑膜に限局した MTX-LPD の 1 例を経験した. 細胞診検体よりセルブロックを作製し, 確定診断に近づくことができた症例であった. 加えて, 新潟県立リウマチセンターで発生した MTX-LPD 10 例を検討し, 若干の考察を加えて報告する.
著者
端 晶彦 弓納持 勉 村田 晋一 近藤 哲夫 奈良 政敏 中澤 久美子 端 圭子 大森 真紀子 加藤 良平 星 和彦
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.126-133, 2006-03-22 (Released:2011-12-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

目的:分葉状頸管腺過形成(Lobular endocervical glandular hyperplasia; LEGH)と悪性腺腫(Minimaldeviation adenocarcinoma; MDA)の細胞学的・組織学的検討を行い, 術前細胞診の意義を検討した.方法:LEGH11例, MDA2例の13例の術前細胞診標本および摘出病理標本を用いて細胞学的・組織学的に検討した.結果: 細胞質の黄色調粘液は, LEGHとMDAとの鑑別には有用ではないが, 胃型形質発現の病変を検出するのには有用と考える. LEGHの細胞診では細胞集塊は平面的な出現形態を示し, 核の重積性はなく, 核小体は目立たない. MDAでは細胞集塊は立体感があり, 核の重積性, 核小体の大型化が認められる. 核内空胞(核内細胞質封入体: Intranuclear cytoplasmiac inclusion(INCI))の出現はLEGHに特徴的な所見である可能性がある. LEGHに腺癌を合併する症例では, LEGH特有の細胞に混じって腺癌が示唆される細胞が認められる場合がある.結論:細胞診検査はLEGHとMDAの検出に有用であり, また両者の鑑別にもきわめて重要である.
著者
野崎 正行 小林 克己 中村 厚志 吉川 郁子 深澤 雄一郎
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.543-544, 1998-09-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
3

We report a case of retinoblastoma in an adult male without any family history. A 23-year-old man came to our hospital complaining of myiodesopsia in his right eye.Funduscopic examination demonstrated a tumor on the periphery of the right fundus in the optic area.Fine needle aspiration cytology revealed many clusters of small round cells and necrotic debris. Rosette-like formation was also present.Immunocytochemical study of the smear showed that the tumor cells were positive for neuron-specific enolase (NSE) and synaptophysin. Extraction of the eyeball was performed and histological examination confirmed the presence of retinoblastoma.
著者
堀越 美枝子 石原 力 石井 英昭 伊古田 勇人 山口 由美子 柏原 賢治 城下 尚 村上 正巳
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.48-52, 2008 (Released:2010-07-14)
参考文献数
10

背景 : アカントアメーバ角膜炎 (Acanthamoeba keratitis) はコンタクトレンズ装着者に増加傾向がみられる. 原因は淡水, 土壌等に生息しているアカントアメーバ (Acanthamoeba) の感染によるもので, 角膜擦過細胞診標本にて嚢子 (cyst), 培養検査にて原虫の嚢子 (cyst), 栄養体 (trophozoite) を検出できた 3 例を経験したので報告した.症例 : 角膜擦過細胞診で原虫の嚢子が確認できた. パパニコロウ染色ではライトグリーンにより嚢子壁が染色され, 内部は茶褐色あるいは不染性であった. PAS 染色では嚢子壁陽性, 嚢子内部は暗赤色を呈していた. ギムザ染色では嚢子壁が青紫色に好染した. また, 培養により得られた塗抹標本に蛍光染色を施し, 蛍光を発するアカントアメーバの嚢子を検出できた.結論 : アカントアメーバ角膜炎はアカントアメーバ原虫を検出し, 早期に治療することが重要である. 検出方法には病巣擦過物のパーカーインク KOH 法による直接鏡検あるいは培養が代表的な検査方法であるが, 角膜擦過細胞診標本でパパニコロウ染色, PAS 染色, ギムザ染色標本の鏡検によるアカントアメーバ原虫の検出は簡便であり, 早期に治療へ結びつくことができるため, 有用な検査方法である.
著者
日野 明子 広瀬 隆則 山田 順子 高井 チカ子 山口 美紀 佐野 寿昭
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.93-97, 1999-01-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

鼻腔内腫瘍として発症した浸潤性下垂体腺腫を経験したので細胞所見とともに報告する. 症例は64歳, 女性. 右鼻閉感と鼻出血が出現し, 耳鼻科にて鼻腔内腫瘍を指摘された. 頭部MRIで腫瘍は蝶形骨洞を主座とし, 眼窩, 上顎洞, 筋骨洞, 鼻腔への進展が認められた. トルコ鞍は腫瘍で置換されていた. 鼻腔からの生検で神経内分泌腫瘍と診断され, 当院脳神経外科にて経蝶形骨腫瘍摘出術が行われた. 捺印細胞像では腫瘍細胞は均一で平面的に配列していた. 細胞質は豊富でライトグリーンに淡染し, 核は円形でクロマチンは細顆粒状に増量していた. 組織像では充実性もしくは索状に配列し, perivascular pseudorosetteやmicrocystがみられた. 免疫組織化学にてcytoker-atin, chromogranin A, synaptophysinが陽性で, 下垂体前葉ホルモンは陰性であった. 電顕的には神経内分泌顆粒が認められた. 以上から下垂体腺腫null cell typeと診断した. 本腫瘍は頭蓋内の良性腫瘍だが, 時に周囲の骨を破壊して眼窩や鼻腔などの頭蓋外へ進展することがあり, 悪性腫瘍と誤認しないことが大切である.
著者
河野 伊智郎 谷口 恵美子 覚道 健一 宮内 昭 隈 寛二
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.116-120, 1995 (Released:2011-11-08)
参考文献数
19

甲状腺腫瘍領域で近年, 穿刺吸引細胞診が広く用いられてきている. 従来, 甲状腺腫瘍の良性悪性の判定は困難であったが, 細胞診の導入により術前診断可能な症例が増え, その診断能も格段に向上してきた. 特に, 乳頭癌と髄様癌は, 細胞診でほぼ確診に近い診断を行うことが可能である. 本稿では, 甲状腺髄様癌に焦点を置き, その組織学的特色と, 細胞診における鑑別診断について記載した. 甲状腺髄様癌の特色は, 多稜型の粗結合性細胞が, 乳頭構造や濾胞構造をとらずに出現することであり, 壊死は認めず, ときにアミロイドを混じることがある. 紡錘形亜型の髄様癌では, 間葉系腫瘍様の紡錘形細胞が, 上皮配列をとらずに出現することがある. 腫瘍細胞は, 一般的に細胞質が広く, N/C比は小さく, 免疫組織学的に細胞質内のカルシトニンを証明すれば確定診断となる. 細胞の極性がないため, 核の位置はまちまちで, クロマチンの増量や核異型の程度も, 比較的乏しいものから, かなり強いものまで多彩である. しかし一般的には, 乳頭癌に比べると異型度は高度であり, クロマチンの粗大凝集を特色とする. また稀に核内封入体も認めることがあるので留意が必要となることがある.
著者
成富 真理 畠 榮 福屋 美奈子 鐵原 拓雄 鹿股 直樹 小塚 祐司 森谷 卓也 定平 吉都
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.32-35, 2013 (Released:2013-03-13)
参考文献数
9

背景 : 腎原発悪性リンパ腫はまれである. 腎原発 MALT リンパ腫の 1 例を経験したので報告する.症例 : 59 歳, 女性. 4 年前, シェーグレン症候群と診断された. 健診の超音波検査で右腎に 24 mm 大の low echo 域を認め, CT, MRI で右腎に多発性の腫瘤がみられた. 徐々に腫瘤像の増大を認めたため, CT ガイド下針生検および捺印細胞診を施行した. 捺印細胞診では, 上皮細胞, 多数のリンパ球, 形質細胞, 赤血球を認めた. リンパ球は小∼中型で, 核は類円形∼楕円形, 核クロマチンは顆粒状, 小型で好酸性の核小体が 1 個みられた. リンパ球に異型はみられず, 腫瘍性よりも反応性によるものと考えた. 針生検標本では, 全体に小リンパ球・形質細胞浸潤が強く, リンパ球の尿細管上皮内侵入と思われる像も散見された. 個々の細胞異型は軽微であった. 免疫組織化学では B 細胞性マーカー陽性細胞がより多く認められた. PCR 法で, IgH 遺伝子再構成を認めた.結論 : 細胞診ではリンパ球の異型が弱く, 診断に苦慮した. 臨床所見や画像所見なども参考にし, 慎重に診断を行う必要があると考えられた.
著者
友野 勝幸 小島 淳美 香川 昭博 佐伯 健二 大亀 真一 白山 裕子 寺本 典弘 野河 孝充
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.104-108, 2014 (Released:2014-05-26)
参考文献数
15

背景 : 子宮頸部 “胃型” 粘液性腺癌は内子宮口付近で内向性に発育するため細胞採取が難しく, 高分化型が多いこと, HPV が陰性であることから, 早期発見の難しい腫瘍として認識されつつある.症例 : 59 歳, 3 経妊 3 経産, 無症状. 集団検診を定期受診しており, 今回子宮頸部腺癌細胞が検出されたため紹介受診した. 液状化検体の導入に伴い, 細胞採取器具は, 綿棒からサーベックスブラシに変更されていた. 当院での細胞診も腺癌であったが, コルポスコピーは不適例, 頸管内掻爬では微量検体のみ採取可能で, 異型腺管は認めるも浸潤腺癌の確定診断は困難であった. 経腟超音波断層法では, 内子宮口付近に約 1 cm の結節影が不明瞭に描出され, MRI/PET-CT においても再現性を認めた. インフォームド・コンセントのうえ, 円錐切除術を省略し, 神経温存広汎子宮全摘術を施行した. 摘出組織では肉眼的に明らかな腫瘤や潰瘍の形成を認めず, 顕微鏡的に頸部内子宮口側を主座とする胃型腺癌が確認された (pT1b2pN0cM0). 術後化学療法を追加し, 24 ヵ月無病生存している.結論 : 本例の異型腺管は被蓋上皮下で浸潤性に進展し, 綿棒による異型細胞の採取は難しいと考えられた. 細胞採取器具の変更が, 異型細胞検出につながった可能性がある.
著者
岡崎 隆哉 工藤 隆一 水内 英充 佐藤 賢一郎 熊井 健得 橋本 正淑
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.62-69, 1989-01-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
14

著者らは術中に腹腔洗浄細胞診を行った子宮内膜癌42例の標本を用いて, 腹腔洗浄細胞診と他の予後因子との関係について検討した.1) 細胞診施行症例は臨床進行期I, II, III期の症例で開腹時肉眼的に子宮外浸潤および被膜破綻のない症例に限った.2) 細胞診の陽性率は16.7%(42例中7例) で組織型, 進行期による陽性率の差は明らかでなかった.3) ヒステロスコープ施行例と非施行例の陽性率に差は認められなかった.4) 筋層浸潤に関しては, 組織学的に漿膜に達しない浸潤であれば筋層浸潤の深達度による陽性率に有意差は認められなかった.5) 病巣の占拠率に関しては占拠率が高いものほど高陽性率を示したが, 小さい病巣でも陽性となる症例もあった. また病巣が卵管角から離れた症例でも20%(3/15) が陽性であった.6) 陽性例7例すべてに追加治療を施行したが, 全症例が現在再発徴候なく生存している (最長6年0ヵ月, 平均3年7ヵ月).