著者
中津川 かおり 喜多 記子 植草 貴英 田代 直子 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成16年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.62, 2004 (Released:2004-09-09)

[目 的]米粉を主原料とした麺には、中国のビーフンやベトナムのフォーが代表的である。一般に諸外国で普及している米粉麺は、アミロース含量の高いインディカ米を主原料とし、独特のコシと歯ごたえを有するのが特徴である。そこで、ジャポニカ米の中でもアミロース含量が約20%のうるち米を用いた米粉麺の調製条件の検討とテクスチャーの改良並びに米の第一制限アミノ酸であるリジンの補足効果を目的として実験を行った。<BR>[方 法]インディカとジャポニカ種の精白米各々を一晩浸漬後ミキサーで粉砕し、50%米粉液を調製した。これを5倍希釈し、攪拌加熱(75_から_90℃)したゾルの流動特性をE型粘度計により測定した。またDSC及び光学顕微鏡観察により糊化特性を比較検討した。次いで各々の50%米粉液を65_から_75℃で半糊化させ、製麺後、蒸し加熱し、力学的測定と官能評価を行った。さらにジャポニカ種の品質改良のためタピオカ澱粉を添加した試料並びにアミノ酸の補足効果のため豆乳を添加した試料についても同様の測定を行った。<BR>[結 果]ジャポニカ種米粉ゾル(90℃加熱)は、高粘度でチキソトロピー性が顕著であった。DSC及び光学顕微鏡観察の結果、インディカ種の糊化温度がより高いことを確認した。タピオカ澱粉添加のジャポニカ種米粉ゾルはチキソトロピー性が低下し、豆乳添加では増大した。何れもCasson解析で降伏値の増大を確認した。米粉麺においてジャポニカ種は軟らかく、付着性が高く、官能検査での評価が低かったが、タピオカ澱粉や豆乳添加により無添加麺よりも総合的に高い評価を得た。(尚、演者は東横学園女子短期大学非常勤講師であり、実験は東京家政大学調理科学研究室の協力の基に行った。)
著者
小田 きく子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成16年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.16, 2004 (Released:2004-09-09)

[目的] 日本では米飯を握ったものを通称「おにぎり」と呼び、最近ではコンビニエン スストアーで大人気で、種類も多種類販売されている。そこで、全国各地ではこの米 飯を握ったものを何と呼び、中身に何を入れて、どんな形に握るか等を調査し、新し い「おにぎり」の開発を目的とした。[方法] 農山漁村文化協会発行の「日本の食生活全集」全47巻を資料として、この中に出てくる「おにぎり」に関する項目を_丸1_呼び方 _丸2_形 _丸3_米の種類 _丸4_中身(具)_丸5_外側_丸6_調理法 _丸7_利用法の7項目に分類し、その傾向を調べた。[結果] 資料の集計結果339個の「おにぎり」に関する事項があった。全国的にみると、_丸1_呼び方ではおにぎり・おむすび・握り飯の順に多く、_丸2_形では三角・丸・球の順に多く、_丸3_米の種類ではうるち米が最も多く、次いで麦飯・炊き込み飯の順であった。_丸4_中身では具なしが最も多く、次いで梅干・漬物の順で、_丸5_外側には何もつけないが最も多く、次いで味噌・黄な粉の順で、定番の「のり」はわずか18個で5%にすぎなかった。_丸6_調理法ではただ握るだけが最も多く、次いで握って焼くであった。_丸7_利用法では「農作業時の昼食」が最も多く、次いで「山仕事の昼食」・「おやつ」・「運動会」時であった。地域別に比較すると、その地域独特のものがあり、また全国各地にかならず「おにぎり」があることがわかった。そして共通していえることは、「保存できるもの」であり、その土地の「知恵と文化」を食べるといえる。
著者
久保 加織 尾川 由香里 團 愛 堀越 昌子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成16年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.45, 2004 (Released:2004-09-09)

【目的】福井県や滋賀県のさば街道筋に古くから伝わるへしこ(魚のぬか漬け)は、塩漬けした魚を米ぬかとともに数ヶ月から1年程度漬けることによって製造される。本研究では、数種類の市販へしこの成分を分析するとともに、官能評価を行い、各成分と官能評価との関連性について明らかにすることを目的とした。【方法】福井県および滋賀県で製造、販売されたさばへしこを試料とし、塩分、遊離アミノ酸、核酸関連物質などの分析を行った。さらに、SPMEファイバーに吸着させた揮発性成分をGCMSにより分析した。官能評価は、大学生30人をパネルとして行った。【結果】へしこの呈味に関わる成分として、塩分と遊離アミノ酸、有機酸が検出されたが、呈味性核酸関連物質はほとんど含まれていなかった。塩分は7.5%から15.5%と試料間の差が大きく、官能評価では塩分濃度の違いを多くのパネルが塩辛さとして感じていた。ヒスチジンを除くすべての遊離アミノ酸は生さばより多く含まれていた。アスパラギン酸やグルタミン酸含量の高いへしこで酸味を強く感じるパネルが多く、甘味や旨味と遊離アミノ酸量との間に関係はみられなかった。揮発性物質としてエタノールや酪酸、酢酸エチル、アセトアルデヒド、2‐エチルフランなど微量でも特徴的なにおいをもつ物質が検出され、これらがへしこのにおいの特徴を示すと考えられた。なれずしから検出される揮発性成分と比較した結果、へしこはなれずしより発酵臭が少なく生魚の臭いに近いと考えられた。試料間では、発酵臭や生ぐさ臭、エステル臭をもつ揮発性成分の検出のされ方に差が見られ、官能検査でも検出された揮発性成分から予想される臭いの特徴を認めることができた。
著者
長島 万弓 石山 絹子 七野 知子 安本(白戸) 知子 福田 靖子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成16年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.112, 2004 (Released:2004-09-09)

[目的] 発芽玄米の例にもあるように食品素材の発芽による機能性向上が研究されるようになり、ゴマについてはすでに「発芽ごま」として市販化されているが、その機能性向上についての科学的根拠は明らかとされていない。今回この「発芽ごま」の発芽前後のサンプルを比較し、ゴマの機能性と食味に及ぼす発芽の影響について検討した。[方法] 市販されているものと同種のトルコ産金ゴマを試料とし、発芽前と発芽48時間後(市販「発芽ごま」と同条件)のゴマを、それぞれ焙煎したサンプルとして入手した。両サンプルの一部は粉砕後溶媒抽出をおこない、一部は官能検査に用いた。抽出物はHPLCによりゴマリグナンの定量分析を行うとともに、DPPHラジカル捕捉能を測定した。高リグナン新品種「ごまぞう」についても同様の実験を行い比較した。[結果] 市販品と同種の金ゴマについては、発芽前にはほとんど検出されなかった抗酸化性リグナン・セサミノールが発芽48時間後には検出されるようになり、DPPHラジカル捕捉能も約2倍に向上することが明らかとなった。「ごまぞう」に関しても同様にセサミノールの増加がみられたが、今回の発芽条件においては金ゴマのほうが「ごまぞう」よりも約1.5倍多く生成されることが確認できた。さらに発芽の初期段階でUV吸収を有する高極性成分の存在が認められたが、この構造等については現在検討中である。また、官能検査では未発芽ごまに比べて発芽ごまには甘味の増加が認められた.
著者
小川 宣子 山中 なつみ 長屋 郁子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成16年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.4, 2004 (Released:2004-09-09)

(目的)洗米・浸漬・加熱といった炊飯過程におけるマグネシウムイオンの存在が、飯の性状に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。(方法)米は平成14年度岐阜県産初霜(搗精度90%)を使用し、0.0006Nの塩化マグネシウム溶液(以下、Mg溶液)で炊飯した。米と同重量のMg溶液(25℃)で3回洗米し、米の重量の1.4倍量となるようにMg溶液を加えて25℃で1時間浸漬した後、間接式電気炊飯釜にて25分間加熱し10分間蒸らした飯(Mg飯)を試料とした。蒸留水を用い同様の条件で炊飯した飯(蒸留水飯)を対照とした。飯の性状について、加熱吸水率の測定、一粒法による硬さ,付着性,瞬間弾性率の物性測定、走査電子顕微鏡による表面構造の観察を行った。凍結切片をKMG-20-AM染色してマグネシウムの分布を調べ、さらに三点識別嗜好法による官能検査を行った。また、炊飯過程におけるマグネシウムイオンの存在が、飯の不溶性ペクチン量,水溶性ペクチン量に及ぼす影響を硫酸カルバゾール法により測定した。(結果)Mg飯の加熱吸水率は2.30倍で蒸留水飯の2.34倍に比べて有意(p<0.01)に低かった。Mg飯の硬さ1.48×105Pa、瞬間弾性率1.67×105Paは蒸留水飯に比べて有意(p<0.01)に高く、硬い飯であることが示され、官能検査の結果、Mg飯の硬さは好まれなかった。Mg飯の表面における網目構造の空洞が蒸留水飯に比べて小さかったことから、Mg飯が硬くなったのは吸水が不十分であったことが要因として推定できた。これはMg飯は蒸留水飯に比べて水溶性ペクチン量が少なかったことから、飯の表面部分に存在するマグネシウムによって、水溶性ペクチンが不溶性ペクチンとなり吸水を抑制した可能性が考えられた。
著者
小谷 スミ子 佐藤 優子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成16年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.66, 2004 (Released:2004-09-09)

目的 白飯は保存によりデンプンが老化し食味は硬くボソボソする。特にアミロース含量の高い米は老化しやすい。これを防ぐため柑橘果汁、食酢などを添加して炊飯する方法が考案されている。これらの飯に含まれるレジスタントスターチ(以下RSと略)を測定すると同時にRS生成に及ぼすアミロース含量と保存の影響について検討した。方法 1.試料:平成15年度新潟産コシヒカリ、平成15年度滋賀産日本晴、平成12年度タイ産タイ米、2.試料の調製:白飯は米に重量の1.5倍の水を加え、酢飯は米と炊き水合計重量の6%の食酢を炊き水に添加し、全自動炊飯器JNL-T551 Wで炊飯した。3.試料の保存:炊き上がり後、あらかじめ洗って水を切っておいた飯台に移し、ぬれ布巾をかけ放冷した。その後およそ100gずつ秤量し、市販の食品包装用ラップフィルムに包み、室温(23℃)および冷蔵(4℃)で2日間保存した。4.RSの定量:Goni等(1996)の方法を一部改変して測定した。5.アミロースの定量:Mestres等(1996)のDSCを用いた方法で測定した。結果 1.食酢を加えて炊飯することでいずれの米も粘りは増した。2.コシヒカリ、日本晴、タイ米を炊飯した白飯のRS量はそれぞれ0.10±0.02%、0.14±0.04%、0.77±0.02%であり、酢飯のRS量はそれぞれ0.11±0.03%、0.17±0.02%、0.50±0.08%であった。食酢添加によりタイ米のRS量は著しく減少した。3.すべての飯は保存によりRS量が増加し、酢飯のRS増加量は白飯より多かった。4.タイ米の酢飯は、保存により白飯と同程度のRS量になった。
著者
永塚 規衣 木元 幸一 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成16年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.99, 2004 (Released:2004-09-09)

【目的】昨年の調理科学会大会において、煮こごり調製時、特に煮汁に溶出したコラーゲンの可溶化と調味料との関係に注目し、各種調製条件の違いが煮こごりの物性に及ぼす影響について報告した。今回はコラーゲンの可溶化と加熱時間及び加熱温度との関係に注目し、煮こごりの物性変化を微視的に追跡・検討を行った。【方法】試料の鶏手羽先を約1cm角切りにし、50gに全面が水に浸る水量30gを加え600Wの電熱器で加熱、沸騰後火力を300Wに調節して、10分から120分までの定時間加熱した後、各試料をろ過し、煮汁が30mlとなるように調製した(100℃加熱試料)。同様に加熱温度を90℃に保持しながら加熱した試料を調製した(90℃加熱試料)。各試料ゾルの動的粘弾性、17O-NMRによる緩和時間(T1)、動的光散乱による粒度分布、GPC及び電気泳動による分子量分布を測定した。次いで各試料を内径32mm、高さ15mmのペトリ皿に分注し、冷蔵庫で24時間保存してゲル化させ、破断特性を比較した。【結果】鶏手羽先は加熱を続けるほど動的弾性率が増加し、硬いゲルを形成した。緩和時間も加熱時間の経過と共に短くなる傾向がみられ、水分子の活動が抑制されていることが推測された。また、動的光散乱、電気泳動結果より、加熱時間と共に粒径及び分子量が小さくなる傾向がみられた。肉中のコラーゲンは加熱すると熱変性しゼラチンとなるが、溶出された成分のうち、α成分が特異的にゲル形成能が高い傾向にあると示唆されており、本GPC結果から加熱時間の経過と共にα成分が増加している傾向が認められた。また、100℃加熱ゲルが90℃加熱ゲルよりもゲル強度の高いゲルを形成していた。