著者
西久保 勝己 松原 聰 宮脇 律郎 横山 一己
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2007年度年会
巻号頁・発行日
pp.205, 2007 (Released:2008-09-02)

東京都奥多摩町の白丸鉱山より、新たにベニト石Benitoiteを見出した。ベニト石は、曹長石、マースチュー石、ガノフィル石-多摩石系鉱物、方解石などと密な集合をなす。紫外線短波で明るい青白色の蛍光を発する。
著者
高井 康宏 上原 誠一郎 宮原 正明
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2007年度年会
巻号頁・発行日
pp.215, 2007 (Released:2008-09-02)

1864年にニューカレドニアで発見された緑色の鉱物は発見者のGarnierにちなんでgarnierite(珪ニッケル鉱)と名づけられた。その後garnieriteは数種類の含ニッケル含水珪酸塩鉱物の混合物であることが分かり,現在では野外名として用いられている。現在,各地のgarnieriteについて再検討しており,今回は特に大分県豊後大野市若山鉱山(旧ニッケル鉱山跡)のものについて報告する。光学顕微鏡下で針状結晶と腎臓状組織が特徴的に見られ,それぞれをSEM-EDSで分析した。どちらの組織も非常に微細な組織を持っており,特に腎臓状組織部ではNiに富む部分とMgに富む部分が互層している複雑な組織などが見られた。化学組成はquartz (opal), Ni-serpentineとtalcの混合物的な組成を示した。TEM-EDSでした結果,Niに富む部分とMgに富む部分がnmオーダーで複雑な組織を形成していた。
著者
宮島 宏 松原 聰 宮脇 律郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2007年度年会
巻号頁・発行日
pp.201, 2007 (Released:2008-09-02)

新潟県糸魚川地方の海岸や姫川・小滝川河床から、粗粒なcorundumが転石として発見される(宮島ら, 1999 二鉱学会演旨)。今回、小滝川と青海海岸産のcorundumを含む試料から稀産雲母とSrを含む特異な組成を持つ雲母が発見されたので報告する。 ◆プライスワーク雲母 (Preiswerkite) PreiswerkiteはKeusen and Peters (1980)によりスイスの超苦鉄質複合岩体のrodingiteから発見され、 NaMg2Al[Al2Si2O10](OH)2という組成を持つ。産出例は比較的少なく、本邦では本報告が初産となる。本報告のpreiswerkiteは、糸魚川市小滝川で織田宗男氏が採集した礫に含まれていた。礫には径5~15mmの丸みを帯びた灰紫色ガラス光沢のcorundum, diasporeの集合体が多数存在し、preiswerkiteはその粒間を充填する淡黄色真珠光沢を呈する直径3mmの半自形結晶の集合体をなす。EDSによる分析値(wt. %)は、SiO2 30.75, TiO2 0.34, Al2O3 29.62, FeO 3.64, MgO 18.22, Na2O 4.74, K2O 0.95, Total 88.26となり、実験式は(Na20.7, K0.1) Σ0.8 (Mg2.0, Fe0.3) Σ2.3Al0.8 [Al1.8Si2.2O10](OH) 2となる。 ◆Srに富む雲母 (Sr-rich mica) Sr-rich micaは、糸魚川市青海海岸で小林浩之氏が採集した白地に青色部分が不規則な脈として存在する礫に含まれていた。白色部分は緻密なcelsianと劈開明瞭なmargarite, paragonite, Sr-rich micaからなり、少量のslawsonite, calciteを含む。青色部分は緻密なcorundum, diasporeからなる。margariteとparagoniteからは5 wt.%程度のSrOが検出され、Srに富む部分ではSrO = 15 wt.%を超え、0.75 pfuに達する。実験式は、(Sr0.75, Na0.15, Ca0.05) Σ0.95Al1.98[Al1.98Si2.05O10](OH) 2となり、margariteのSr置換体に相当する。CaとBaを主成分とする雲母は知られているが、Srを主成分とする雲母は知られておらず、公表された分析値でSrを含む例はない。糸魚川地方の蛇紋岩メランジュ中の構造岩塊からは多種のSr鉱物が発見されているが、このような特異な組成の雲母もその一例である。
著者
磯部 博志 有馬 智裕
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2007年度年会
巻号頁・発行日
pp.218, 2007 (Released:2008-09-02)

異種鉱物接触場は,鉱物形成に重要な役割を持つ。本研究では,超臨界熱水流動装置を用い,炭酸塩とシリカ鉱物接触部での鉱物形成過程を再現した。出発物質は,準安定相であるvaterite及びcristobaliteを用いた。これらを試料パイプに充填し,上流側/下流側を交換して実験した。実験条件は,温度450C,圧力50MPa,流量0.1ml/min,7日間または20日間である。実験後の試料パイプを切断して生成物を回収し,観察,解析を行った。 両相接触面から炭酸塩側約200µmで,vaterite仮像を示す非晶質シリカが観察された。それ以遠の炭酸塩側では,最大約700µmの範囲までwollastoniteの針状結晶が現れる。接触部近傍では,高濃度の溶存Si成分が存在し,vaterite外形を保存する非晶質シリカの析出が起こった。次いで,熱水流動に伴うwollastonite析出が起こった。
著者
山田 隆 滝沢 実
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2007年度年会
巻号頁・発行日
pp.199, 2007 (Released:2008-09-02)

埼玉県小松鉱山は変成層状マンガン鉱床であり、これまでにバナジウムを含む鉱物として、フィアネル石やヴォレライネン石の産出が知られる。今回、新たにアンセルメ石とフランシスカン石が見つかった。アンセルメ石はときにフィアネル石と共存し、低品位鉱石中の割れ目に沿って暗赤色~橙赤色、ガラス~樹脂光沢の最長2mm程の柱状結晶として産する。化学組成は、Mn1.04V1.98O6/3.17H2O、格子常数(単斜晶系)は、a=1.316, b=1.011, c=0.698(nm), β=111.6deg.。 フランシスカン石は低品位鉱石中の割れ目を充填する黒色不透明脂肪光沢の鉱物。断口は不規則、条痕は暗褐色。化学組成は、Mn6.2(V0.5W0.02□0.48)Si1.8[O10.2(OH)4.5]。格子常数(六方晶系)はa=0.8150, c=0.4804(nm)。
著者
石渡 明 市山 祐司
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2007年度年会
巻号頁・発行日
pp.58, 2007 (Released:2008-09-02)

かんらん石スピニフェックス組織は,長さ1メートルに達する薄板状のかんらん石の平行連晶組織であり,超苦鉄質のコマチアイト溶岩に特徴的とされる.露頭では一般にコマチアイト溶岩の上半部にスピニフェックスが発達するが,下半部は斑状組織のかんらん石沈積岩であり,岩床の場合も同様である.一方,かんらん石スピニフェックス組織は,北極海の海嶺玄武岩(顕微鏡サイズ)やコラ半島原生界の鉄ピクライト溶岩上部の玄武岩質部分などにも見られ,変成蛇紋岩や中世の製鉄遺跡の鉱滓などからも報告されている.最近,Ichiyama et al.は福井県小浜市南部の丹波帯緑色岩体から,長さ10 cm以上,間隔1~2 mmのかんらん石平行連晶(仮像)よりなるスピニフェックス組織を呈する玄武岩の転石を発見した.この転石は多数の鉄ピクライトの転石を伴うので,下部が鉄ピクライト,上部が玄武岩質岩石からなる分化した溶岩または岩床に由来すると考えられ,鏡下でも化学組成でも,コラ半島Pechenga地域原生界の同様の溶岩と酷似する.両者とも「石基」のチタン普通輝石が顕著な逆累帯構造を示す.Faure et al.(2006)によるスピニフェックス組織の再現実験は,結晶核密度が低く(事前にリキダス以上の温度に保ち除去),過冷却度が高く(リキダスより40~60℃下で結晶化開始),適度な温度勾配と冷却速度で結晶作用を行えば,スピニフェックスが成長することを示す.かんらん石スピニフェックス組織を示す丹波帯の玄武岩はノルムかんらん石をもち,かんらん石がリキダス相だったと考えられる.コマチアイト中だけでなく,玄武岩中にもスピニフェックス組織が形成されることは,化学組成を重視するIUGSの超苦鉄質火山岩分類案の妥当性を支持する.
著者
大西 政之 草地 功 小林 祥一
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2007年度年会
巻号頁・発行日
pp.204, 2007 (Released:2008-09-02)

大阪府箕面市温泉町に位置する平尾旧坑から産出したZn4SO4(OH)6・5H2Oの組成をもつ未知鉱物が,国際鉱物学連合の新鉱物・命名・分類委員会によって新鉱物・大阪石 (osakaite) として承認されたので,大阪石の産状,物理的・結晶学的性質,化学組成および成因について報告する.