著者
赤羽 久忠 古野 毅 宮島 宏 後藤 道治 太田 敏孝 山本 茂
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.108-115, 1999-02
参考文献数
14
被引用文献数
4

温泉水の中で, 自然の倒木が珪化していることがあり, これが地質時代に形成された珪化木の一つの形成現場であるという報告がある(Leo and Barghoorn 1976;赤羽・古野, 1993).筆者らはさらにこれを確かめるため, 木片を7年間にわたって温泉水の流れに浸し, 珪化の進行を観察した.珪酸の増加は約1年で重量比~0.72%, 2年で~2.90%, 4年で10.65%, 5年で26.78%, 7年で38.11%に達した.珪化は, 珪酸の球状体が木材組織の細胞内腔を充填することによって行われている.珪酸が木材組織へ浸潤する機構について, 珪酸の球状体が道管~道管壁孔を経由し各細胞まで到達した痕跡を確認した.今回確認した珪化木の形成機構は, 地質時代の珪化木形成を説明するものである.すなわち, 条件が整えば, 地質時代に形成された珪化木も数年~数10年という驚くべき短期間で行われた可能性がある.
著者
赤羽 久忠 古野 毅 宮島 宏 後藤 道治 太田 敏孝 山本 茂
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.108-115, 1999-02-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
14
被引用文献数
1

温泉水の中で, 自然の倒木が珪化していることがあり, これが地質時代に形成された珪化木の一つの形成現場であるという報告がある(Leo and Barghoorn 1976;赤羽・古野, 1993).筆者らはさらにこれを確かめるため, 木片を7年間にわたって温泉水の流れに浸し, 珪化の進行を観察した.珪酸の増加は約1年で重量比~0.72%, 2年で~2.90%, 4年で10.65%, 5年で26.78%, 7年で38.11%に達した.珪化は, 珪酸の球状体が木材組織の細胞内腔を充填することによって行われている.珪酸が木材組織へ浸潤する機構について, 珪酸の球状体が道管~道管壁孔を経由し各細胞まで到達した痕跡を確認した.今回確認した珪化木の形成機構は, 地質時代の珪化木形成を説明するものである.すなわち, 条件が整えば, 地質時代に形成された珪化木も数年~数10年という驚くべき短期間で行われた可能性がある.
著者
竹之内 耕 茨木 洋介 小河原 孝彦 宮島 宏 松原 誠 西澤 あずさ 青井 真 平松 良浩 中川 和之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

1. はじめに 新潟県糸魚川ジオパークには,1990年に公開されたフォッサマグナパークと呼ばれる糸魚川-静岡構造線(以下,糸静線)断層露頭の見学公園がある.国道148号脇の駐車場から遊歩道をへて断層露頭まで徒歩約10分の行程である.2018年8月の改修にあたっては,断層露頭の拡張のほか,断層のはぎ取り展示の設置や野外解説板の新設や改修が行われた.断層露頭近くの野外解説板には,防災科学技術研究所が開設した「地震だねっと!」(地震活動や歴史地震を閲覧できるホームページ)に接続できるQRコードを表示して,断層と地震を関連付けて学習できるようにした.ここでは,高校生を対象にした,「地震だねっと!」を活用した地震と断層の学習例を紹介する.2. 地震と断層の学習例(神奈川県の私立高校)(1) 断層に至る遊歩道での学習 二つの河川の川原の岩石の色が違うことに気づき,糸静線を境に地質が異なることを説明する.古生代の岩石を観察し,年代が古いほど多くの地殻変動を受けて硬いがボロボロの性質になっていることを理解する.近づくと見えてくる断層露頭では, 西側の古生代の岩石(暗緑色~白色)と東側の新生代の岩石の色調が,縦方向の不連続線を境に明瞭に異なり,それが糸静線であることが容易に理解される.(2) フォッサマグナと地震についての解説(野外解説板による) 糸静線はフォッサマグナの西端断層であり,日本列島形成と密接な関係があること,また,断層が動く時に地震が起き,中でも大きな断層運動が起こると断層が地表まで達して活断層と呼ばれること,また,動くたびに生じた変位が積み重なって,山地などの地形が形成されていくことを説明する.(3) 「地震だねっと!」からの情報生徒が携帯するスマートフォンで「地震だねっと!」に接続し,過去10年間の糸魚川周辺で起きた地震を表示する.画像から生徒が気づく点は以下のとおりである.・感じない地震を含めると,多数の地震が起きている.・地震が起きている場所と起きていない場所がある.・線状,楕円状に集中して起こる地震がある.・内陸の地震は,深さ10kmよりも浅いところで起きている.・活断層に沿って起きている地震とそうでない地震がある.・同じ活断層帯でも,地震が起きている場所と起きていない場所がある.・糸魚川は地震が空白で,活断層がない.・歴史地震が起こった場所に地震が集中しているようにみえる. その後,5年間,1年間,30日間,一週間,24時間と震源分布図を表示させていくと,表示される地震数は減少していく.24時間の画像でも,最新の地震が表示され,人が気づかない地震が今も起こっていることに驚く生徒も多い.(4) 断層露頭 露頭全体がボロボロになっていて,岩石が壊されていることに気づく.断層角礫との隙間には,さらに破砕された細粒物質(断層ガウジ)が充填されており,指で断層ガウジを押すと凹んで固結していないことがわかる.断層ガウジには,断層の運動方向を示す条線が認められるので,断層ガウジは岩石が粉砕されてできたことが理解される.マグニチュード7前後の地震を伴う断層運動では変位量が1.5~2mとされているので,糸静線に沿う落差(東落ち6000m以上)を考えると,過去3000~4000回の断層運動が起こって,フォッサマグナが落ち込んでいったことが想像できる.また,フォッサマグナの落差が進展する過程で,断層の幅が成長していったことが理解される.3. まとめ 「地震だねっと!」で示される震源分布図は,日本列島が地震の多い場所だと視覚的に理解でき,地震と断層を結び付けて考えるための良いツールである.断層露頭観察では,地質現象の結果の観察で終わってしまう傾向にある.しかし,「地震だねっと!」の利用によって地震と断層が関連付けられることで,生徒たちが地下の断層運動をイメージすることができるようになると期待される.今後,高校生を対象に「地震だねっと!」を利用した野外観察授業の経験を増やし,地震防災学習を含めた豊富な学習例をつくっていきたい.
著者
早川 由紀夫 藤根 久 伊藤 茂 Lomtatize ZAUR 尾嵜 大真 小林 紘一 中村 賢太郎 黒沼 保子 宮島 宏 竹之内 耕
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.3, pp.536-546, 2011-06-25 (Released:2011-09-06)
参考文献数
11

Two wood trunks, one charred and 75 years old and the other not charred and more than 199 years old, were collected from Hayakawa ignimbrite of Niigata Yakeyama Volcano. They were investigated using the radiocarbon wiggle-matching method to determine the age of the eruption. The result was 1225-1244 cal AD (95.4%), which is over 200 years younger than previous estimates. The eruption, including the Hayakawa ignimbrite, was the largest during the volcano's life period of 3000 years. Co-ignimbrite fallout KGc ash has been found at many archaeological sites spreading on the eastern flanks of Myoko Volcano and the Takada Plain. The age obtained here will provide a useful time constraint for archaeologists and volcanologists studying this area.
著者
宮島 宏 松原 聰 宮脇 律郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2010年年会
巻号頁・発行日
pp.74, 2010 (Released:2011-04-06)

新潟県糸魚川産のヒスイ輝石岩の研究の過程で,上記とは異なる産状のストロンチアン石が発見されたので報告する. ストロチアン石を含む岩石は青海川で転石として発見された.肉眼的には白色緻密半透明で,当初は細粒のヒスイ輝石岩と思われたが,ほとんどソーダ珪灰石からなる岩石であった.偏光顕微鏡と走査型電子顕微鏡では,ストロチアン石は最大長0.5mmの半自形~自形の長柱状~針状結晶の集合体で,集合体の形は不規則であり,母岩中に偏在している.結晶の伸長方向も一定ではなく,母岩の塊状のソーダ珪灰石に見られる脈の方向とも一致しない.また, ストロンチアン石は晶洞中や脈として産することが多いが,糸魚川産ストロンチアン石はそのいずれでもない. 試料が微細であるためガンドルフィカメラを用いてX線粉末回折データを得たところ,ストロンチアン石によく一致した. EDSによる化学分析の結果を,カチオン数が1となるように計算して得られた実験式は(Sr86.3 Ca13.4 Ba0.3)CO3となり,皆川(1995)の報告したものに近い組成を持つ.なお,母岩の大半を構成するソーダ珪灰石からはストロンチウムは検出されなかった. 糸魚川地方では,ヒスイ輝石岩,曹長岩,ロディン岩,コランダム岩などから多種多様なストロンチウム鉱物が発見されているが,ストロンチアン石のように一般に低圧で生成すると考えられているストロンチウム鉱物が発見されたのは初めてである.
著者
辻森 樹 原 智美 進士 優朱輝 石坂 知裕 宮島 宏 木村 純一 青木 翔吾 青木 一勝
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

Nunakawaite' (strontiojoaquinite) is an orthorhombic variety of strontiojoaquinite [Sr2Ba2(Na,Fe)2Ti2[Si4O12]2O2(O,OH)2·H2O]; it is a rare joaquinite group mineral that is only found in a riebeckite-bearing albitite in the serpentinite-matrix mélange of the Itoigawa–Omi area. The mineral was originally named after 'Princess Nunakawa' (nunakawa hime) in the Japanese Shinto mythology 'Kojiki'.'Nunakawaite' is characterized by remarkably high Ba, Zr, Nb, Zn, LREEs, MREEs, and enriched in U (35.8–721 µg·g-1), Pb (2.2–31 µg·g-1), and Th (7.42–2365 µg·g-1). LA-ICPMS analyses show highly variable U/Pb (238U/206Pb = 9.245–68.98) and Pb (207Pb/206Pb = 0.0758–0.756) isotope ratios, and the scattered trend define an isochron line with a lower intercept at 89.19 ± 1.07 Ma. The 'nunakawaite' U–Pb age confirms that the 'nunakawaite'-hosted riebeckite-bearing albitite formed at late Cretaceous. This implies that the serpentinite-matrix mélange unit with early Paleozoic jadeitites and late Paleozoic blueschist, eclogite and amphibolite was reactivated by a significantly younger tectonic event.In-situ Sr-Pb isotope analyses show two different isotope trends between Sr-rich accessory minerals in riebeckite-bearing albitite ('nunakawaite' and ohmilite) and those in jadeitite (itoigawaite, stronalsite, vesvianite, Sr-rich epidote). The Sr-Pb isotopes also support the idea that the riebeckite-bearing albitite formed by a fluid-induced metasomatic event different from the jadeitite-forming metasomatism at early Paleozoic. The formation of riebeckite-bearing albitite at ~90 Ma is coeval with late Cretaceous granitic intrusion of the Omi area (youngest zircon U–Pb: 90.8 ± 1.1 Ma: Nagamori et al. 2018). The granitic intrusion might have acted an important role in the formation of 'nunakawaite'. In other words, reactivation of metasomatic mineralization in the Paleozoic serpentinite mélange is recorded in the Cretaceous riebeckite-bearing albitite.
著者
川崎 雅之 宮島 宏
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.34-40, 2013 (Released:2013-03-02)
参考文献数
29

Mr. Shinmatsu Ichikawa was a prominent mineralogist, although he was an ordinary citizen and not in government service. He lived from the late Meiji Period to the early Showa Period. He taught in elementary school and teacher training school despite not having a regular university education. He was self-taught in mineralogy and foreign language, and became a pioneer in the field of crystal morphology. His contributions include observations of the etched surfaces of natural minerals and of artificial etched quartz crystals and quartz spheres. He observed the etch pits, etch hillocks, growth hillocks and striations on the surfaces of several minerals found in Japan, engraved their positions, shapes and distributions on metal plates, and discussed his observations.   He built the Ichikawa Mineral Laboratory in his house in 1918 to store his collection of minerals, rocks and fossils (more than 7000 specimens in all). His collection includes big quartz crystals twinned after Japan law from the Otome mine, twisted quartz from the Naegi region, amethyst crystals from Mt. Ametsuka and the Yusenji mine, natural etched minerals from various parts of Japan, and many minerals from the North America. The Laboratory is a historic cultural site in his hometown. Its preservation and enlightenment activities are cooperatively carried out by the local government and a neighborhood self-governing body.
著者
宮島 宏 松原 聰 宮脇 律郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2007年度年会
巻号頁・発行日
pp.201, 2007 (Released:2008-09-02)

新潟県糸魚川地方の海岸や姫川・小滝川河床から、粗粒なcorundumが転石として発見される(宮島ら, 1999 二鉱学会演旨)。今回、小滝川と青海海岸産のcorundumを含む試料から稀産雲母とSrを含む特異な組成を持つ雲母が発見されたので報告する。 ◆プライスワーク雲母 (Preiswerkite) PreiswerkiteはKeusen and Peters (1980)によりスイスの超苦鉄質複合岩体のrodingiteから発見され、 NaMg2Al[Al2Si2O10](OH)2という組成を持つ。産出例は比較的少なく、本邦では本報告が初産となる。本報告のpreiswerkiteは、糸魚川市小滝川で織田宗男氏が採集した礫に含まれていた。礫には径5~15mmの丸みを帯びた灰紫色ガラス光沢のcorundum, diasporeの集合体が多数存在し、preiswerkiteはその粒間を充填する淡黄色真珠光沢を呈する直径3mmの半自形結晶の集合体をなす。EDSによる分析値(wt. %)は、SiO2 30.75, TiO2 0.34, Al2O3 29.62, FeO 3.64, MgO 18.22, Na2O 4.74, K2O 0.95, Total 88.26となり、実験式は(Na20.7, K0.1) Σ0.8 (Mg2.0, Fe0.3) Σ2.3Al0.8 [Al1.8Si2.2O10](OH) 2となる。 ◆Srに富む雲母 (Sr-rich mica) Sr-rich micaは、糸魚川市青海海岸で小林浩之氏が採集した白地に青色部分が不規則な脈として存在する礫に含まれていた。白色部分は緻密なcelsianと劈開明瞭なmargarite, paragonite, Sr-rich micaからなり、少量のslawsonite, calciteを含む。青色部分は緻密なcorundum, diasporeからなる。margariteとparagoniteからは5 wt.%程度のSrOが検出され、Srに富む部分ではSrO = 15 wt.%を超え、0.75 pfuに達する。実験式は、(Sr0.75, Na0.15, Ca0.05) Σ0.95Al1.98[Al1.98Si2.05O10](OH) 2となり、margariteのSr置換体に相当する。CaとBaを主成分とする雲母は知られているが、Srを主成分とする雲母は知られておらず、公表された分析値でSrを含む例はない。糸魚川地方の蛇紋岩メランジュ中の構造岩塊からは多種のSr鉱物が発見されているが、このような特異な組成の雲母もその一例である。
著者
金沢大学資料館 奥野 正幸 宮島 宏 濱田 麻希 松永 篤知
出版者
金沢大学資料館
巻号頁・発行日
pp.1-17, 2018-09-19

開催期間: 平成30年9月19日(水)~10月28日(日)
著者
宮島 宏 百瀬 孝仁 大塚 勉 那須野 雅好 遠藤 公洋 赤羽 久忠 松原 聰 宮脇 律郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2010年年会
巻号頁・発行日
pp.88, 2010 (Released:2011-04-06)

中房温泉のこれまで『明礬』とされていた噴気生成物の大部分は,タマルガル石Tamarugite NaAl (SO4)2・H2Oであることがわかったので報告する.本鉱物はチリのTamarugalパンパスから発見されたもので,国内産出例として大分県別府明礬温泉(皆川, 1994),埼玉県吉見丘陵の吉見百穴洞窟内壁面(堀口ら, 2000)がある. 中房川の右岸の噴気帯から白色と黄褐色の2種類の噴気生成物が認められた.量的には前者が卓越する.EDXによる化学分析とXRDによるX線粉末回折データから黄褐色昇華物はソーダ鉄明礬石と鉄を含む明礬石であったが,白色昇華物は明礬石ではなくタマルガル石であった.また,かつて林間学校の宿泊用に使われていた木造の建物内の床面に,タマルガル石と少量のアルノーゲン,明礬石からなる厚さ5cmに達する噴気生成物が発見された.タマルガル石は薄い板状結晶(最大長30μm,厚さ2~3μm)である.Fe-poor でNa, Kが存在しているときにはタマルガル石と明礬石が生成し,Fe-richであるとタマルガル石とソーダ鉄明礬石が生成し,共にソーダ明礬石は生成しない.
著者
宮島 宏 松原 聰 宮脇 律郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.201, 2007

新潟県糸魚川地方の海岸や姫川・小滝川河床から、粗粒なcorundumが転石として発見される(宮島ら, 1999 二鉱学会演旨)。今回、小滝川と青海海岸産のcorundumを含む試料から稀産雲母とSrを含む特異な組成を持つ雲母が発見されたので報告する。◆プライスワーク雲母 (Preiswerkite)PreiswerkiteはKeusen and Peters (1980)によりスイスの超苦鉄質複合岩体のrodingiteから発見され、 NaMg<SUB>2</SUB>Al[Al<SUB>2</SUB>Si<SUB>2</SUB>O<SUB>10</SUB>](OH)<SUB>2</SUB>という組成を持つ。産出例は比較的少なく、本邦では本報告が初産となる。本報告のpreiswerkiteは、糸魚川市小滝川で織田宗男氏が採集した礫に含まれていた。礫には径5~15mmの丸みを帯びた灰紫色ガラス光沢のcorundum, diasporeの集合体が多数存在し、preiswerkiteはその粒間を充填する淡黄色真珠光沢を呈する直径3mmの半自形結晶の集合体をなす。EDSによる分析値(wt. %)は、SiO<SUB>2</SUB> 30.75, TiO<SUB>2</SUB> 0.34, Al<SUB>2</SUB>O<SUB>3</SUB> 29.62, FeO 3.64, MgO 18.22, Na<SUB>2</SUB>O 4.74, K<SUB>2</SUB>O 0.95, Total 88.26となり、実験式は(Na<SUB>20.7</SUB>, K<SUB>0.1</SUB>) <SUB>&Sigma;0.8</SUB> (Mg<SUB>2.0</SUB>, Fe<SUB>0.3</SUB>) <SUB>&Sigma;2.3</SUB>Al<SUB>0.8</SUB> [Al<SUB>1.8</SUB>Si<SUB>2.2</SUB>O<SUB>10</SUB>](OH) <SUB>2</SUB>となる。◆Srに富む雲母 (Sr-rich mica)Sr-rich micaは、糸魚川市青海海岸で小林浩之氏が採集した白地に青色部分が不規則な脈として存在する礫に含まれていた。白色部分は緻密なcelsianと劈開明瞭なmargarite, paragonite, Sr-rich micaからなり、少量のslawsonite, calciteを含む。青色部分は緻密なcorundum, diasporeからなる。margariteとparagoniteからは5 wt.%程度のSrOが検出され、Srに富む部分ではSrO = 15 wt.%を超え、0.75 <I>pfu</I>に達する。実験式は、(Sr<SUB>0.75</SUB>, Na<SUB>0.15</SUB>, Ca<SUB>0.05</SUB>) <SUB>&Sigma;0.95</SUB>Al<SUB>1.98</SUB>[Al<SUB>1.98</SUB>Si<SUB>2.05</SUB>O<SUB>10</SUB>](OH) <SUB>2</SUB>となり、margariteのSr置換体に相当する。CaとBaを主成分とする雲母は知られているが、Srを主成分とする雲母は知られておらず、公表された分析値でSrを含む例はない。糸魚川地方の蛇紋岩メランジュ中の構造岩塊からは多種のSr鉱物が発見されているが、このような特異な組成の雲母もその一例である。
著者
宮島 宏 松原 聰 宮脇 律郎 三石 喬
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.125, 2003

ミャンマー産ひすい輝石岩から、ストロナルシ石成分を最大48 mol%含むSrに富むバナルシ石(以下、Sr-Bnl)が発見された。バナルシ石はNa<SUB>2</SUB> Ba Al<SUB>4</SUB> Si<SUB>4</SUB> O<SUB>16</SUB>なる組成を持つ長石族鉱物で、イギリス・WalesのBenallt鉱山が原産地である(Smith et al., 1944)。原産地以外には、スウェーデン (Welin, 1968)、東京都白丸鉱山(加藤ら, 1987)、ミャンマー(Harlow and Olds, 1987)、ロシア(Koneva, 1996)、南アフリカから報告がある。本報告のSr-Bnlは淡緑色半透明緻密堅硬のひすい輝石岩中に、無色透明ガラス光沢、最大1.5cm×0.7cmの不規則形で偏在していた。Benalltや白丸のバナルシ石と同様、短波長紫外線で赤色蛍光を発する。青紫色異常干渉色と不規則な消光を示し、明瞭な劈開はない。ひすい輝石岩の空隙を充填したような産状を示すが、(1) Sr-Bnlと接するひすい輝石は半自形結晶で破断されていないこと、(2) Sr-Bnlに包有される自形から半自形のひすい輝石があること、(3) Sr-Bnlの外形が丸みを帯びた不規則形であることから、Sr-Bnlはひすい輝石岩が脆性破壊を被って生じた割れ目に後から晶出したものではなく、ひすい輝石岩生成の晩期にひすい輝石とともに熱水条件下で生じたものと考えられる。<br> EDSによる代表的分析値は、SiO<SUB>2</SUB> 37.79, Al<SUB>2</SUB>O<SUB>3</SUB>31.81, BaO 14.66, SrO 6.52, Na<SUB>2</SUB>O 9.34, Total 100.12 wt%で、これからNa<SUB>1.92</SUB> (Ba<SUB>0.61</SUB> Sr<SUB>0.41</SUB>) <SUB>Σ1.02</SUB> Al<SUB>3.98</SUB> Si<SUB>4.01</SUB> O<SUB>16</SUB>という実験式(O=16)を得る。BSE-imageでは、Ba/(Ba+Sr)=0.67-0.52の組成変動に対応する若干の濃淡が認められるが、大半はBa/(Ba+Sr)=0.6前後の組成である。バナルシ石のSr置換体がストロナルシ石(stronalsite Na<SUB>2</SUB> Sr Al<SUB>4</SUB> Si<SUB>4</SUB> O<SUB>16</SUB>)で、Hori et al., (1987)が高知市蓮台の変塩基性凝灰岩中の脈から報告した。他に岡山県大佐町のひすい輝石岩(Kobayashi et al., 1987)、ロシアZhidoisky massifの輝岩中の脈(Koneva, 1996)、糸魚川・青海地域と兵庫県大屋町のひすい輝石岩(宮島ら, 1998)から産出報告がある。<br> Harlow and Olds (1987)のミャンマー産バナルシ石は端成分に近い組成で、母岩はコスモクロア輝石、クロム鉄鉱、ニーベ閃石、エッケルマン閃石などを含む特異な岩石でひすい輝石岩ではない。本報告のようにバナルシ石とストロナルシ石の中間的な組成ものはKoneva (1996)による報告が唯一である。<br> 蓮華帯のひすい輝石岩からは、その生成晩期に熱水条件下で生じたSrやBaを主成分とする鉱物が報告されている(例えば、Miyajima et al., 1998による糸魚川石)。しかし、ミャンマー産ひすい輝石岩からは未発見だった。今回、Sr-Bnlが発見されたことで、ひすい輝石岩にSrやBaを主成分とする鉱物が出現することが蓮華帯のひすい輝石岩に限られた特異な現象ではないことが明らかになった。日本やミャンマーのひすい輝石岩にSrやBa鉱物が共通して産することは、その生成機構と密接に関係したことであろう。
著者
新里 貴之 中村 直子 竹中 正巳 高宮 広土 篠田 謙一 米田 穣 黒住 耐二 樋泉 岳二 宮島 宏 田村 朋美 庄田 慎矢 加藤 久佳 藤木 利之 角南 聡一郎 槇林 啓介 竹森 友子 小畑 弘己 中村 友昭 山野 ケン陽次郎 新田 栄治 寒川 朋枝 大屋 匡史 三辻 利一 大西 智和 鐘ヶ江 賢二 上村 俊雄 堂込 秀人 新東 晃一 池畑 耕一 横手 浩二郎 西園 勝彦 中山 清美 町 健次郎 鼎 丈太郎 榊原 えりこ 四本 延弘 伊藤 勝徳 新里 亮人 内山 五織 元田 順子 具志堅 亮 相美 伊久雄 鎌田 浩平 上原 静 三澤 佑太 折田 智美 土肥 直美 池田 榮史 後藤 雅彦 宮城 光平 岸本 義彦 片桐 千亜紀 山本 正昭 徳嶺 理江 小橋川 剛 福原 りお 名嘉 政修 中村 愿 西銘 章 島袋 綾野 安座間 充 宮城 弘樹 黒沢 健明 登 真知子 宮城 幸也 藤田 祐樹 山崎 真治
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

徳之島トマチン遺跡の発掘調査をもとに、南西諸島の先史時代葬墓制の精査・解明を行なった。その結果、サンゴ石灰岩を棺材として用い、仰臥伸展葬で埋葬し、同一墓坑内に重層的に埋葬することや、装身具や葬具にサンゴ礁環境で得られる貝製品を多用することが特徴と結論づけた。ただし、これは島という閉ざされた環境ではなく、遠隔地交易を通した情報の流れに連動して、葬墓制情報がアレンジされつつ営まれていると理解される。