著者
佐藤 優希 町田 和梨 荒井 弘和
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = BULLETIN OF Sports Research Center, HOSEI UNIVERSITY (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.59-62, 2023-03-31

スポーツにおいてメンタルトレーニング(MT)をはじめとした心理面の強化は実力発揮のために必要不可欠である。国内では「スポーツメンタルトレーニング指導士」によって指導・普及活動が行われているが,MTの実施率は思うように高まっていない現状にある。本研究ではMTの実施率向上を図るためにトランスセオレティカル・モデルと呼ばれる理論の中心的な要素である「行動変容ステージ」を用いて調査をした。対象者の行動変容ステージの実態を把握することでそれぞれのステージに合わせた働きかけを検討できる。そこで本研究の目的は大学生アスリートを対象に,性別,競技種目および競技レベルという観点からMTの変容ステージについて検討し,MTの実施率を把握することであった。その結果,MTの行動変容ステージはそれぞれ前熟考期・熟考期は39人(12.62%),準備期は86人(27.83%),実行期・維持期は184人(59.55%)であり,約6割の者がMTを実施していることが明らかになった。また関心度について,また競技レベルで比較した結果,競技レベルの高いアスリートの方が競技レベルの低いアスリートに比較してMTの実施率が低いことが明らかになった。
著者
荒井 弘和 榎本 恭介 鈴木 郁弥 町田 和梨 深町 花子
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = BULLETIN OF Sports Research Center, HOSEI UNIVERSITY (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.5-9, 2023-03-31

本研究の目的は,大学生アスリートにおけるスポーツ・ライフ・バランスの現状,および理想と現実のギャップを検証することであった。さらに,初年次学生である1年生と2-4年生の間でスポーツ・ライフ・バランスの指標を比較したうえで,理想と現実のギャップとウェルビーイングとの関連も検討した。大学生アスリート149名のデータを分析したところ,(1)スポーツ・ライフ・バランスは,時間的なバランスも,精神的なバランスも,やや競技生活に偏っていた。(2)学年差を検討したところ,精神的なバランスは,2年生以上の方が競技の比重が大きかった。(3)時間的なバランス・精神的なバランスともに,バランスの現状と理想と現実のギャップが,ウェルビーイングと部分的に関連していた。
著者
吉田 康伸 濱口 純一 山田 快
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = Bulletin of Sports Research Center, Hosei University (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
no.36, pp.93-99, 2018-03

本研究では,男子バレーボールにおける攻撃パターンの傾向について,2017 年男子ワールドグランドチャンピオンズカップの日本戦のうち,VTR 録画した10 ゲーム,34 セットを対象に,後日再生して私案の記録用紙に記録し,集計作業を行った。測定した項目は①攻撃種類の分類,②ポジション別のバックアタック,③攻撃パターンの分類で,それぞれコンビネーション攻撃の出現率,打数の出現率,決定率などを算出し,日本チームと日本チーム以外の二つを比較検討しながら考察を進めた。結果として,男子バレーボールにおいてはほぼ全てのコンビネーション攻撃の中にバックアタックを組み込んでいることが明らかになり,同時にフロントとバックプレーヤーを合わせた4 人攻撃もほぼ全てに出現していたことが明らかになった。またバックアタックは一度のコンビネーション攻撃の中で,二人のバックプレーヤーが同時にバックアタックを仕掛けるWBA の打数が多数を占めた。戦術的には日本チームとそれ以外の世界上位チームに差はみられず,既に攻撃戦術についてはこれ以上ないレベルにまで行きついている部分もあるため,今後はよりスピーディーで精度の高いプレーが求められることになると予想される。
著者
佐藤 みほ香 杉本 恵子 伊藤 マモル
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = Bulletin of Sports Research Center, Hosei University (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
no.37, pp.41-47, 2019-03

大学体育会アスリートを対象に摂取量を適切にコントロールしたプロテイン粉末の摂取が身体組成,運動機能および運動後の疲労感に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,異なるプロテイン粉末を摂取する2つの被験者群における1ヵ月摂取後の身体組成,運動機能および運動後の疲労感の変化を栄養・食事指導の教育的観点から比較した。用いたプロテイン粉末は,アサヒ社製ディアナチュラアクティブ (DNA) および明治社製ザバスWHEY100 (WHEY100)であった。その結果,DNA群では摂取前後でミネラル量のみに有意な低下が認められ,WHEY100群では水分量,たんぱく量,ミネラル量,骨格筋量で有意な低下,体脂肪量で有意な上昇が認められた。また,健康関連QOL (HRQOL: Health Related Quality of Life) の指標であるSF36-v2アンケートの結果では,10項目中「FP (日常的役割機能;身体) 」「GH (全身的健康感)」「FP (活力)」「SF (社会的生活機能)」「RE (日常的役割機能;精神)」「MCS (精神的側面のQOL)」「RCS (社会的側面のQOL)」の7項目においてDNA摂取群の方が高得点を示した。その中でも「GH (全身的健康感)」では有意に高い値を認めた。以上のことから,DNAの摂取は本研究に協力した被験者の身体組成維持や健康関連QOL向上にWHEY100よりも貢献する可能性を示唆した。
著者
町田 和梨 榎本 恭介 飯田 麻紗子 大平 有記 荒井 弘和
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = BULLETIN OF Sports Research Center, HOSEI UNIVERSITY (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.31-36, 2023-03-31

本研究の目的は運動部に所属する女子大学生アスリートを対象に,練習の前と試合の前における化粧行動の有無,化粧行動に関する工夫について調査を行い,女子大学生アスリートの化粧行動の実態を探索的に調査することであった。分析の結果,練習前(50.0%)・試合前(51.3%)ともに,化粧行動を「絶対にしない」と回答した者が最も多かった。一方で,練習前(9.1%)・試合前(13.6%)ともに,化粧行動を「絶対にする」と回答した者が一定数いることがわかった。女性アスリートの中には,「競技者としての自己」と「女性としての自己」を分けて捉えてしまう者もいるが,化粧行動は,2つの自己をつなぎ合わせる行動になり得る。今後は,化粧行動と競技パフォーマンスとの関連や,化粧行動と競技に伴うストレス反応との関連を検討することが期待される。
著者
町田 和梨 榎本 恭介 松原 裕一 荒井 弘和
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = BULLETIN OF Sports Research Center, HOSEI UNIVERSITY (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.25-29, 2023-03-31

本研究の目的は,運動部に所属する大学生アスリートを対象に,競技活動中の日焼け予防行動の変容ステージ,実際に行っている日焼け予防行動について調査を行い,大学生アスリートの日焼け予防行動の実態を探索的に調査することであった。分析の結果,「私は現在,競技活動において日焼け予防をしていない。また,これから先もするつもりはない」と回答した者(前熟考期)が67.4%と最も多く,「私は現在,競技活動において定期的に日焼け予防をしている。しかし,始めてから6か月以内である」と回答した者(実行期)が3.1%と最も少なかった。また,これらの日焼け予防ステージの結果は性別間と競技場所(室内/室外)間で有意な差が見られ,学年別(1年生/2-4年生)においては有意な差が見られなかった。このことから,性別間や競技場所間で日焼け予防行動に差があることや,学年や年齢は関係なく,個々の意識や考え方が日焼け予防行動に関連している可能性が示された。
著者
中野 陽太 鈴木 郁弥 荒井 弘和 Suzuki Fumiya 荒井 弘和 Arai Hirokazu
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = Bulletin of Sports Research Center, Hosei University (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
no.33, pp.37-39, 2015-03

本研究の目的は、大学体育会運動部を対象として、性差に着目して、リーダー(キャプテン・主将)とサブリーダー(副キャプテン・副将)について詳細な検討を行うことであり、「大学生競技者は性別によって求めるリーダー像、サブリーダー像が異なる」という仮説を検証した。体育会運動部に所属する大学 1 ̶ 4 年生 87 名を対象として、主将のリーダーシップ尺度を用いて、理想のリーダー像と理想のサブリーダー像を調査した。その結果、主将の「人間関係調整」のみにおいて、女子の方が有意に高いという結果が得られた。よって、仮説は部分的に支持されたといえる。
著者
松岡 悠太 中澤 史
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = Bulletin of Sports Research Center, Hosei University (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
no.37, pp.19-24, 2019-03

本研究では,育成年代に該当にする中学生サッカー選手を対象に,ポジションごとのパーソナリティの差異及び傾向を検討した。調査対象者は,中学生のサッカー選手,合計125名(平均年齢13.47 ± 0.93歳:全て男子)であった。個人のパーソナリティを客観視するために開発されたパーソナリティ検査であるエゴグラムを用いて,ポジション(FW,MF:トップ下・サイドハーフ・ボランチ,DF:センターバック・サイドバック,GK)ごとの心理特性を検討した。その結果,FCの自我状態の項目において,FWとボランチ及びFWとサイドバックのポジション間で有意な差が認められた。また,細分化したMFとDFのポジション間でも,それぞれ特徴的なパーソナリティ傾向が認められた。今回の結果から,各ポジション間でパーソナリティの差異及び傾向があることが明らかとなった。このことから,育成年代に該当する中学生において,ポジションの決定や転向を考える際に,技術や戦術,体格という基準に加え,選手のパーソナリティという新たな基準を設けて考える必要性があることが示唆された。
著者
浅井 玲子
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = Bulletin of Sports Research Center, Hosei University (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
no.36, pp.51-54, 2018-03

本研究では,競技連盟主催の東京六大学野球ゼミナールの取り組みにおいて,大学スポーツの資源を活用し,学生がスポーツを支え,活性化する体験が,文部科学省が示す職業的発達や経済産業省が求める社会人基礎力の育成に寄与する可能性を検証することを目的とした。対象者は当該ゼミナールの1期生11 名であり,尺度として「改訂版社会人基礎力尺度」を使用し,2 年間の取り組みによって当該ゼミナールに参加しない大学生活と比較した場合に参加者がどのような力をつけることが期待されるか,「社会人基礎力」という視点から検証した。当該ゼミナールでの活動と,その他の大学生活での社会人基礎力獲得に対する期待を比較するために,回答結果を対応のあるt 検定を用いて分析した結果,ゼミナールの活動に参加した学生たちは,当該ゼミナールでの活動が社会人基礎力の獲得にポジティブな影響を与えると考えていることが示された。当該ゼミナールでの活動において,大学スポーツの現状,スポーツ界の現状を調査,分析し,企画の実現性を考慮するプロセスを経て提案を行うこと,また,自身の所属とは異なる大学の学生や多くの社会人との活動を通じて,社会人基礎力の獲得や向上への手応えを参加者が得ていることが示された結果であった。