- 著者
-
横山 実
- 出版者
- 日本犯罪社会学会
- 雑誌
- 犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
- 巻号頁・発行日
- no.12, pp.141-158, 1987
日本と韓国の非行少年について,比較研究をおこなう手はじめとして,両国の公の統計の分析をおこなった.公の統計を用いる比較研究には,多くの問題点が存在している.しかし,日本と韓国の比較研究は,他国間のそれと比べて,その問題点は,より軽微であると思われる.何故ならば,日本と韓国との間には,統計作成の方法,法律における犯罪の定義等で,類似性がみられるからである.公の統計によると,日本では,1970年代の後半から1980年代前半にかけて,人口あたりの非行少年の比率が増大している.この間,成人や年長少年の犯罪は,かならずしも増加していない.著しく増加したのは,年少少年による軽微な犯罪である.このような犯罪の数は,統制機関の活動如何によって,簡単に増減しうる.戦後最悪といわれた高い非行率は,社会統制機関,特に警察が,補導および検挙の活動を活発化したために,もたらされたのであろう.韓国においても,これと同じ現象が見られるであろうか.韓国では,1970年代に,高度経済成長期を迎えた.この間,成人の犯罪率も,少年のそれも,ともに増加している.少年が犯した犯罪の内訳では,日本に比べて,暴力犯の比率が高い.身分別では,学生の比率が高まりつつあるとはいえ,無職が3分の1強を占めている.経済状態では,下層階級の者が9割近くを占めている.年齢別では,18〜19歳の年長少年が,半数近くとなっている.公の統計から,これらの特徴を読みとる限りでは,韓国の社会統制機関は,成人や年長少年の犯罪の処理に,追われているようである.日本で最近見られているような現象は,韓国において近い将来に生じるとは,いえないようである.