著者
金田 重郎 井田 明男 酒井 孝真
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2014-IS-128, no.3, pp.1-8, 2014-05-30

サピア=ウォーフの仮説は,母語が対象世界の認識に影響する可能性を示唆している.特に,ソフトウェア開発上流工程では,自然言語 (母語) を用いるため,サピア=ウォーフの仮説の影響を受ける可能性がある.しかし,何故か,このことは,従来論じられて来なかった.そこで,本稿では,クラス図が英語の認知構造を反映していること,そして,そのことの認識なしでクラス図を理解しようとしても困難が生じる恐れがあること,を示す.ただし,著者らの従来研究では,日本では良く知られた英語 5 文型を用いてきた.5 文型は非英語圏出身者に英語を教えるためのツールであるが,現在の英国の文法書では,「所格」 を必須とする 7 文型が推奨されている.そこで,本稿では 7 文型を用いてクラス図を理解する.これによって 「もの-こと-もの」 パターンの本質も理解できる様になる.更に,クラス図では,関数従属性によるモジュラリティの確保が必要であることを論じて,7 文型の視点をも併せ,クラス図作成のためのガイドラインを提示する.このガイドラインの下で,日本語特有の 「存在文 (『ある』 型文)」 表現ではなく,関数従属性を取り出しやすい 「行為文 (『する』 型文)」 を用いて,日本語記述文を単文化すれば,日本語圏に生まれた者であっても,見通し良くクラス図を作成できる.本稿で示したクラス図への理解によって,初学者はより易しくクラス図の本質を学び得ると確信している.
著者
堀口 祐耶 市川 尚 阿部 昭博
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.7, pp.1-5, 2013-11-25

近年,地震などの災害によって,被災地周辺の観光地における風評被害が大きな問題となっているが,観光風評被害に関する状況・経過や対策に関する情報提供の研究や取り組みは遅れている.本研究の目的は,Web 上の散在する風評被害に関する事例を収集し,観光に関わる行政職員や事業者に情報提供を行うシステムの在り方を明らかにすることにある.本稿では,東日本大震災での風評被害事例の特徴分析と,その結果に基づく情報提供システムの開発について述べる.システム開発においては,事例分析結果等を踏まえ,これまで試作したシステムのメタデータ,提供機能,対象ユーザと公開方法について見直しを図った.また,有識者によるシステムの一次評価を実施し,提供情報を拡充した.By disasters such as earthquake in recent years, the harmful rumor in the tourist destinations around disaster areas has become a major problem. However, study of providing information in regard to various situation and measures of the harmful rumors in tourism is tardy. The purpose of our study is to clarify features of information system for gathering and providing of the harmful rumor cases in tourism on the Web. This paper describes characteristics analysis of harmful rumor cases caused by the Tohoku earthquake and tsunami in 2011, and development of information providing system based on the analysis results. In the system development, we reviewed previous specifications of prototype: meta-data, functions, operation policies and target users. Also through primary evaluation by tourism experts, we expanded content of the system.
著者
戸沢義夫 児玉公信
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2013-IS-125, no.4, pp.1-7, 2013-09-05

本研究会 「情報システムの有効性評価」 研究分科会では,情報システムを,人を含む複雑系と見た上での評価手法について 2010 年 9 月より議論を行い,量的評価のためのガイドラインを 2012 年 4 月に公開した.一方,質的評価についても継続的に議論を行い,2012 年 9 月には FIT2012 において質的評価に関するシンポジウムを主催するなど,精力的に活動し,このほど質的評価のためのガイドライン原案をまとめた.質的研究は,これまでの自然科学的アプローチとは大きく異なるものであり,その本質を正しく理解しておく必要がある.原案の内容を説明し,研究発表会参加者からの多くのコメン卜をいただくことで,最終案に反映したい.
著者
金田 重郎 吉田 和正 吉澤 憲治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.32, pp.31-38, 2009-03-11
参考文献数
21
被引用文献数
4

概念データモデリング (CDM) では,対象ビジネスの 「意味」 を図や言葉によって表現するこれは,対象ビジネスをひとつの 「語彙」 により表現し,モデラの間で相互に伝達していることに他ならないそうであるなら,言語学の意味論の蓄積を用いて,「CDM には何ができて,何ができないか」 を明らかにできる可能性がある.そこで,三浦つとむの言語過程説をベースとして,S.I.ハヤカワの一般意味論を用いて CDM を分析する.これによって,現状の CDM では,ハヤカワの外在的意味の範囲にモデリング対象が限定されていることを示す.そして,その限界を打破するため,CDM の組織間連携図に内在的意味を導入する手法を提案する.具体的に,心理学の動機付け理論を導入し,人間らしい組織改革の指針が CDM から得られることを示す.Conceptual Data Modeling (CDM) is a requirment-analysis method proposed by MASP Association. This paper analyzes the CDM approach by using Semantics Theory. Hayakawa's Generalized Semantics Theory shows that the CDM modeling is restricted to Externalized Semantics defined by the operation definition. As the result, CDM approach can be reinforced by introducing Internal Semantics to the modeling process. Thus, this paper applies Motivation Theory to the "Soshiki-kan Renkeizu" of the CDM. The proposed method has been applied to a road maintenance application and the effects of the proposed methods has been clarified.
著者
柿崎 淑郎 前田 陽二 辻 秀一
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2013-IS-124, no.1, pp.1-7, 2013-05-31

本稿では,属性を集約して管理する属性プロバイダ [1] において,ユーザの代理人として属性交換を制御する e-執事を提案する.e-執事は属性プロバイダの一機能として,サービスプロバイダからの属性要求に対して,属性交換の可否を判断したり,属性開示の粒度を設定したりする.また,e-執事は属性交換の履歴を記録することで,ユーザが把握しきれない属性交換の全容を管理し,ユーザを支援する.
著者
山岡 泰幸 大江 ひろ子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.32, pp.9-15, 2009-03-11

企業は世界的な競争環境のなかで、生き残りをかけた熾烈な戦いを続けている。次世代を担う優秀な新人が獲得できるかどうかは、組織の存亡に関わると行っても過言ではない。次世代に企業から期待されるコミュニケーション能力とは何かに着目すると、組織牽引の要素には単独リーダーシップとチームの総合力を高める触媒としての役割がある。本研究では後者が重要であると仮定し、それを実証するために、ある課題を学生にグループワークさせた。その課題達成までの行動やリーダーシップの発揮のしかたで、作業効率に差がでることを実証的に確かめた。Companies are trying to survive in a situation of harsh world wide competition every day. Whether a company can obtain capable freshmen is one of the highest concerns to the business continuation. There are two kinds of organization towage, one is solo leadership, the other is catalytic capability to move foreword a team. We observed that catalytic communication ability was a key element that companies require, through experimental research conducted with university students.
著者
安倍 尚紀
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.1-5, 2011-08-29

かつて、日本語を用いたブログがインターネット上のブログの 3 割以上を超えるという報告がなされた (旧テクノラティ社のデータによる)。そもそも、情報発信は、いかなる動機でなされるのだろうか。コミュニティ誌、防災無線やケーブルテレビなど、自治体において 「地域情報化」 は長い歴史をもっているが、これらトップダウンによる情報共有のスタイルは、インターネット接続のコストダウンや PC の普及の影響を受けて変容してきている。すなわち、純粋な行政情報を除いた、生活に密着する情報、たとえば観光情報やグルメ情報などは、市民を交えた双方向の取り組み、あるいは逆方向に市民ベースの取り組みにとって代わられつつあると言ってよい。広告料収入などを当て込んだ商業ベースのソーシャルメディア以外に、ここで注目してみたいのは、「地域のミュージアム化」 という発想である。GIS (地理情報システム) 技術を用い、地図ベースの仮想ミュージアムを市民主体で構築するという例もある。地域の有形・無形の歴史・文化資産、人々の記憶、その語りまで含めると、資源化の可能性は、創意工夫次第で無限大に広がることになる。スマートフォンが普及した近年、GPS の活用も有効だろう。報告者自身の海外調査やアーカイブズの活用事例をあげながら、考察してみたい。Some time ago, it was reported weblogs using Japanese have risen up over 30% among whole blogs. What is the motivation of sending information? "Informatization in community" has long been practiced in local town e.g. establishing a community radio, a community paper, or a cable TV network. However these all have so to speak 'Top Down' style in sharing information on the spot [based on typical mass media]. Now this 'Top Down' style in sharing information has gradually been changing at the result of cost down and prevalence of personal computer and internet. Thus here we would like to focus NOT on pure official broadcasting around regional administration BUT on bottom-up or interactive style of sharing information by citizens. The concept `making a virtual museum from a regional information` in addition to utilizing archives as resources or GIS (Geographical Information System) technology would be discussed.
著者
田中 亮太 小枝 正直
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2010-IS-114, no.4, pp.1-7, 2010-11-24

近年,YouTube など Flash を用いた動画共有サイトが多く存在しており,様々な動画がアップロードされている.その中には,許可を得ていない他人の顔などが映った動画もアップロードされており,個人情報の漏洩やプライバシーの侵害などの危険性がある.そこで本研究では,ActionScript3.0 を用いた疑似ストリーミング動画像に対する顔発見と隠蔽処理を行い,その実現可能性を検証した.