著者
西村 安博
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
経済学論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.1356-1313, 2013-03

論説(Article)日本中世の裁判手続に関する理解の現状に関して、次の内容を明らかにした。第一に、「所務沙汰」において「当事者主義」は「原則」であるとする理解は、戦前の研究以降、継承されている。第二に、「検断沙汰」においては、「所務沙汰」における用語使用の例に倣って「弾劾主義」=「当事者主義」と定義され、用語使用の混乱が見られる。第三に、裁判手続の特色を描き出すためには、「証拠」法の究明が必要であるとの課題を示した。This study looks to clarify theories vis-à-vis legal procedures as practiced in medieval Japan, based on theories pertaining to the Kamakura shogunate. First, the prewar theory that the adversary system was, in principle, inherent in the trial of Shomu-sata, continued to be upheld. Second, the accusatorial principle used in the trial of Kendan-sata had come into use within the adversary system, but because of a misunderstanding; for this reason, there has been some confusion with regard the legal procedures therein. Third, the author addresses the means of establishing proof—an understanding of which is needed to clarify the realities of trials during that time.
著者
根川 幸男
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
経済学論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.1095-1120, 2013-03

本稿では,ブラジルの日系キリスト教教育機関「聖州義塾」を取り上げ,1930年代前半の動向と特徴を明らかにする.この時期の同塾は,経営の自立化,教師陣の一新,教会との分離など小林美登利による改革が行われた.その一貫として,生徒の自治組織として塾生会が発足し,剣道・野球などの課外活動が行われた.また,サンターナ分校設立は多言語・多国籍教育の環境を生み出し,教育事業の多角化をもたらした.こうして小林と義塾は,ブラジルの日系移民子弟教育において重要な地歩を占めることになる.This study discusses the characteristics of the Seishu Gijuku, as well as its and its impact on the overall education of the Japanese–Brazilian Nisei in the early 1930s. During this period, the headmaster of the institution, Midori Kobayashi, undertook a number of fundamental reforms, including the establishment of self-sustaining management, the reshuffling of teachers, and the separation of the school from the affiliated church organization. As part of those reforms, a student organization called Jukuseikai was established; its student members enjoyed kendo (Japanese fencing) and baseball, among other activities. Furthermore, a multilingual and multinational education was offered at a branch school in Santa Ana, allowing Seishu Gijuku's educational offering to become diversified and thus contribute overall to improvements in the education of Japanese–Brazilian Nisei children.論説(Article)
著者
船橋 恒裕
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
経済学論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.439-452, 2008-03

医療サービス同様、介護サービスについても、地域間に大きな格差があるといわれている。そこで、本稿では、近畿地方において、介護費用におよぼす要因を明らかにし、地域において特徴や大きな違いがあるのかを示したい。結論として、介護保険における回帰分析から、全ての府県で、「老年人口」が介護費用の増加に大きくかかわっていることが示された。その他、「介護給付件数」と「高齢者世帯」が、医療費に影響を与えることが判明した。論説(Article)
著者
木山 実
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
経済学論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.1312-1282, 2013-03

明治9年に設立された三井物産は、先収会社と三井組国産方という2つの源流が合流して成り立つものであった。本稿は、その源流の1つである先収会社および草創期三井物産には、どのような人材が勤務していたのかを明らかにしたものである。本稿では、先収会社には従来想定されていたよりも多くの人員が勤務していたこと、また先収会社時代から慶応義塾出身者が何人か雇用されていたことを示した。義塾で近代的な西洋式簿記や外国語の知識を身につけた彼らは、貿易商社たる三井物産の基礎を構築するのに貢献したと考えられるのである。論説(Article)
著者
上ノ山 賢一
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
経済学論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.575-593, 2012-03

本稿は内生成長を伴う世代重複モデルを用いて、習慣形成が貨幣供給率の変化による経済成長率の変化に対してどのような影響をもたらすのかを分析した。その結果、均衡が一意に決定する場合には、貨幣成長率の上昇は、内生成長率を低下させることが示された。その一方、均衡が複数となる場合には、高成長率となる均衡はサンスポット均衡となり、貨幣成長率の上昇が内生成長率を上昇させるが、低成長均衡では低下させる可能性があることが明らかとなった。研究ノート(Note)
著者
船橋 恒裕
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
経済学論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.743-769, 2010-03

論説(Article)近年、日本では、少子化が社会的問題になっている。この論文では、出生率低下を引き起こす要因を明らかにし、少子化対策について言及したい。そこで、合計特殊出生率について回帰分析を行う。結論として、婚姻率の上昇、世帯人員数の増加、病院数の増加が、合計特殊出生率の上昇に強くかかわっていること、そして、所得の増加は、合計特殊出生率上昇に対してマイナス要因であることが示された。
著者
北坂 真一 菅原 千織
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
経済学論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.357-384, 2011-12

高等教育機関の効率性を定義し計測した上で、その改善を目指す研究が世界的に注目されている。教育における効率性の計測は重要なテーマであるにもかかわらず、高度な計量分析の手法が大学のような高等教育機関に応用されるようになったのは比較的最近のことであり、その研究の蓄積は多くない。本稿では確率的フロンティアモデルにより経済的効率性を分析するための計量分析の手法を概観し、あわせてそうした手法を大学の効率性の分析に用いた欧米の研究を簡潔に展望する。研究ノート(Note)
著者
北坂 真一 Shinichi Kitasaka
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
経済学論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.749-778, 2014-03

本稿では、国立大学法人81大学の5年間にわたるパネルデータを使い、確率的フロンティア費用関数を推定した。その推定されたフロンティア関数から、規模の経済性や費用の非効率性を計算し、主に以下のような結果を得た。1.確率的フロンティア費用関数は通常の費用関数と有意に異なり、費用の非効率性が国立大学の費用関数において重要な問題であることを示している。2.全体と個別のアウトプットについて規模の経済性が認められたが、範囲の経済性は各アウトプットについて認められなかった。3.国立大学の間で広い範囲にわたり費用の非効率性について格差があり、その各大学の費用非効率性は時間の経過に従い減少していることが示された。中尾武雄教授古稀記念論文集