著者
長戸 かおる
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.79-85, 1982-03-01

ワヒスケ類は通常,ノハキ(Camellia japonica)の1園芸品種群として扱われているか,雄蕊の発育か悪く稔性か全くないか低いものか多く,また子房に様々の程度に毛かある点て大部分のノハキ園芸品種と区別される。その為,ワヒスケ類は時として独立種として扱われてきた。またその起原についても,ノハキとチャの雑種説やウイリアムノー(ノハキとサルウイノハキの雑種)に近いとする報告もあって,不明な点か多い。そこで本研究では,ワヒスケ頬の起原と分類上の位置を明らかにする為に,ワヒスケ類及ひノハキ属近縁種,特にノハキのアイソサイム変異を詳細に比較検討した。 エステラーゼに関しては,"太郎冠者"を除くワヒスケ類のサイモグラムは,ノハキて高頻度に見られるタイプであった。これに対し"大郎冠者"のザイモグラムは,ノハキては極めて稀であるか,トウノハキ・サルウインノハギ・ウイリアムノーて普通に見られるタイプであった。 アノトホスファターゼては,ワヒスケ頬て検出された6本のハノトは全てノハキにおいても見られた。またそのうちの3本はワヒスケ類とノハキたけて検出された。サイモクラムに関しては,7品種中4品種かノハキとの間にのみ共通なタイプを示した。また"大郎冠者"と"数寄屋"は他種に見られたいタイプであった。 以上の結果は,多くのワヒスケ類のサイモクラム変異かノハキのそれに最も近く,またノハキの変異内に含まれていることを示している。従って,多くのワヒスケ類はノハキの園芸品種中に起原したものと考えられる。しかし,多くのワヒスケ類のアノトホスファターセサイモクラムはノハキて比較的低頻度に出現するタイプであったことや,形態的にも他のノハキ園芸品種と区別されることは,ワヒスケ類かノハキの中でも特殊な一群を形成していることを示すものであろう。 "太郎冠者"については,2酵素のサイモクラムかノハキては非常に稀かあるいは全く見られないタイフてあり,ノハキと他種との雑種起原である可能性か考えられる。
著者
神代 隆 生沼 忠夫
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.355-362, 1986-12-01

葯培養によって得られたタバコの半数体倍加系統に見られる高頻度の遺伝的変異の成因の一つとして,コルヒチン処理による染色体数倍加過程の影響を検討した. 黄色種タバコ品種 Bright Yellow 103(BY 103)の1個体から葯培養によって約2,500個体の植物体を誘導した.この中から,自然に染色体を倍加したと思われる38個体の稔性個体を得,これらを自殖して自然倍加系統とした.残りの半数性植物体約200個体について,花序浸漬法によるコルヒチン処理(0.2%,48時間)を行ない,65個体で倍加種子を得た.一方,1個体の葯培養母木を2回自殖して,100系統の自殖系統を作成した.これら3種類の系統群,すなわち,自然倍加,コルヒチン倍加および自殖系統からそれぞれ30系統を任意に選抜して,圃場試験の供試材料とした.合計90系統を3回反復,乱塊法により配置し,開花期に全個体について,開花日数,草丈,全葉数,葉長および葉幅,全系統について収量およびアルカロイドタイプに関する調査を実施した.
著者
綱井 徳夫
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.239-250, 1981-09-01
被引用文献数
12

日本稲の主要70品種の感温性,感光性,基本栄養生長性の近似値を人工光環境調節装置を用いて調査し,各地域品種の特徴を検討した。供試品種を早生・中生・晩生品種群に.3分し,5月1日から15日間隔で3回播種日を変えて栽培し,品種の出穂日数を求めた。これらの品種群の出穂性を制御する要因について重回帰分析から以下の結果を得た。北海道地方に分布する品種及び東北と北陸地方の早生種は,感温陛と感光性が弱く,基本栄養生長性は短い。これらは日本稲の早生品種群を構成した。早生品種群の普通栽培下の出穂性の制御に最も強く関与するのは感光性であるが,栽培期問の日長が短い晩期栽培では基本栄養生長性の作用比率は感光性にまさる。しかし感温性は出穂性に関与しなかった。東北地方に分布する品種及び北陸と関東・東山地方の一部の品種は,基本栄養生長性が長く,感温性はやや強く,感光性は中位であり,日本稲の中生品種群を構成した。中生品種群の出穂性に及ぼす感光性の作用比率は,早生品種群より著しく増加し,晩期栽培下においても基本栄養生長性より大きかった。この品種群の感温性もその出穂性に関与しない。西南暖地に分布する帰種及び関東・東山と北陸地方の晩生種は感温性と感光性が強く,基本栄養生長性は短い。これらは晩生品種群を構成した。晩生品種群の出穂性の主要な制御要因は感光性であり,感温性と基本栄養生長性の関与は認められなかった。これより日本稲の出穂性の制御要因は感光性と基本栄養生長性であり,出穂性に及ぼす感光性の作用比率はきわめて大きい。基本栄養生長性の出穂性に及ぼす作用比率は感光性の弱い早生品種群(高緯度品種)ほど大きくかつ栽培期問の日長が短い条件(晩期栽培,低緯度地への移動)ではさらに増加した。また感光性の弱い品種ほど感光性と基本栄養生長性の出穂性に及ぼす作用比率の栽培期の日長変化に伴なう変動は著しい。
著者
百足 幸一郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.40-42, 1951-08-15

1.Observations on artificial 4x-Bellis perennis L. and 4x-Centaurea cyanus L. obtaind through colchicine treatment were described in view of breeding. 2.The chromosome numbers of B.perennis and C.cyanus were confirmed by the auther to be 2n=18 and n=9 for the former and n=12 for the latter, whichi did not accord with the results of Saito(1950) who had reported n=10 for both of them.
著者
佐藤 茂俊 坂本 一朗 白川 浩二 仲宗 根智
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.385-396, 1988-12-01
被引用文献数
4

イネ第7染色体に座乗する早生遺伝子がこれまでに見出されている(佐藤・新城1983)。この早生遺伝子と蔡岡(1968)が報告した早生遺伝子Ef_1^bとの関係を調べるとともに,この早生遺伝子の染色体上の位置を決めることを目的として,相互転座系統T3-7とRT7-11ならびに標識遺伝子系統HO775を早生遺伝子の供与親とし,台中65号を反復親とする9ないし10回の連続戻し交雑により,早生の同質遺伝子系統T65・ER-1,T65・ER-5およびT65・ER-6を育成した。T3-7は北海道の在来イネ品種である黒色稲-2をガンマー線処理して作出された系統であり(佐藤ら1975),RT7-11は長崎の原爆被曝イネから見い出された系統である(岩田1970).また,H0775は第7染色体に座乗する淡緑色葉遺伝子pglを持つ標識遺伝子系統である.なお,B_5F_1までの初期世代では出穂期と転座点あるいはpglとの連鎖を利用することにより,第7染色体の早生還缶子を確実に選抜した. 出穂期の遺伝分析の結果,上記の3早生系統はいずれも第7染色体に属する1対の完全優性の早生遺伝子をもつことを明らかにした.これら3系統ならびにTSAI(1976)の育成した北海道在来のイネ品種である坊主5号に由来する早生遺伝子Ef_1^bを持つ同質遺伝子系統の間で早生遺伝子に関する対立性検定を行なった結果,いずれの早生遺伝子も第7染色体のEf_1座に存在し,また類似した作用力を持つ遺伝子であることを明らかにした.
著者
門馬 栄秀 角田 重三郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.159-165, 1979-06-01
被引用文献数
9

長野県農業試験場桔梗ケ原分場(理長野県総合於業試.験場中信地方試験場)より種子を分譲されたトウモロコシの自殖系統.および単交配雑種,自然交配品種,品種問交配雑種,(第1表)を,1970年仙台にて温室で育て,第8〜9葉のC0_2取込み速度を,温室25℃,照度8万ルックス(白熱燈,25cm水フィルター)下で比較した。ヘテロ接合型(単交配,品種間交配,自然交配品種)は,ホモ接合型である自殖系統に比し,単位葉面積当たりの光合成速度(P_A)が顕著に高かったので光利用効率が高いと言える。ヘテロ接合型のP_Aが高いことには,ヘテロ接合型の単位葉面秩当たりの窒素,クロロフィル,乾物含量が比較的高いことが,ある程度は関係していると見られる(第1図)。次に,単位葉窒素当たりの光合成速度(窒素効率),単位クロロフィル当たりの速度(クロロフィル効率),単位葉乾物当たりの速度(乾物効率)は,自殖系統内,ヘテロ接合型内でみると単位葉面積当たりの窒素,クロロフィル,乾物含量が増した場合,それぞれ減少する傾向を示した(第2〜4図)。この傾向を考慮に入れて,自殖系統とヘテロ接合型とを比較すると,ヘテロ接合型の窒素,クロロフィル,乾物効率は自殖系統べ顕著に高いと言える(第2〜4図)。ヘテロ接合型の高P_Aは,ヘテロ接合型の高い窒素,クロロフィル,乾物効率によるところが大きいようである。
著者
崔 寛三 高橋 成人
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.197-204, 1979-09-01
被引用文献数
1

発芽時の光に対して遺伝的に異たる反応性をもつレタス品種MSU15(暗発芽性)とMSU16(光発芽性)とを用い,両品種の種子形成条件と発芽特性との関係を検討した。その結果,MSU15の暗発芽性は種子形成過程が短目条件であるとき,その特性が明瞭に認められた。一方,MSU16の光発芽性は種子形成期の低温条件によって誘起され,高温条件によって抑制される傾向を示した。また,種子の貯蔵日数に伴なって両品種の光反応性は大きく変動し,以下に述べる3つの特徴のある生理相が認められた。変動第1期(収穫直後から貯蔵3ケ月まで)両品種とも比較的に高い暗発芽率を示すが遠赤色光の照射によって,その暗発芽は抑制される。変動第2期(貯蔵後4ケ月から8ケ月まで)両品種とも暗発芽率が急激に低下するが赤色光の照射によって,その暗発芽は著しく促進される。変動第3期(貯蔵9ヶ月から15ヶ月まで)品種MSU15の種子発芽は光によって影響されないがMSU16の種子は赤色光による発芽促進と青色光および遠赤色光による発芽抑制が認められる
著者
志村 喬 杉山 範子
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.230-240, 1965-12-25

Frost resistance of nine different varieties of the tea plant was studied in different ways mainly as regards to seasonal change. The following results were obtained. Frost resistance of nine varieties tested is ranked in the following order ; Yabukita, U-22 (triploid) and U-24 (triploid) are very resistant ; Y-1, Y-3, Y-6 and Benihomare moderately resistant ; X-10 and X-12 are slightly resistant. Frost resistance increased with the decrease of water content in leaves, and simultanuously with the increase of osmotic concentration in the leaf cell. Frost resistance increased also with the increase of sugars content. Varieties with leaves containing more total sugars in midwinter were more resistant, although varieties with leaves containing more reducing sugars were not always more resistant. Tannins content in leaves had no definite relation with frost resistance. The increase of frost resistance has no direct relation with the content of total nitrogen and water soluble nitrogen, while water soluble protein increased with the increase of frost resistance, and varieties which contain more water soluble protain in leaves in midwinter are more frost-resistant
著者
井上 康昭
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.17-28, 1984-03-01

トウモロコシの一代雑種育種では,一般組合せ能力に対する改良と並行して,特定組合せ能力(SCA)の高い組合せの選定が必要となる。しかし,両親のSCAを適確に予知する方法は現在のところ十分に確立されていない。経験的に,遠縁の組合せ程SCAが高い傾向にあることが知られるため,地理的分布や形態的特性の違いによる分類結果や,育種の系譜を参考にして近縁関係を推定し両親組合せを決定している。SUTOら(1956)は,アジアに分布するフリント種を5つの型に分類した。これにアメリカデント種を加えた6つの型が日本における主た育種材料である。本研究の目的は,これら6つの型の間のSCAについての関係を明らかにし,一代雑種育成における両親決定上の一助にしようとした。 6つの型に属する11の自然受粉品種を選び,それらの間のダイアレル交雑の子実収量を検定した。さらに,ダイアレル分析から得られたSCA効果によって,異なる型の間のSCAについてその相対的大きさを比較した。 その結果,(1)異なる型に属する品種組合せ,特にフリント種とテント種との組合せにおいて収量およびSCA効果が高い傾向にあり,多収一代雑種が得られることが推測された。(2)カリビア型とアメリカデント種との組合せおよびペルシア型と他の型との組合せにおいて高いSCAが認められた。(3)本研究で得られたSCA効果と,従来の分類結果から推定される型の間の近縁関係との間に密接た関係が認められた。そのため,SCA効果に基づいた型の間の近縁関係の推定を試みた。
著者
衣川 堅二郎 谷本 宜隆
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.341-344, 1987-09-01

ラテンアメリカ,ネパール,日本の在来トウモロコシ各35,7および2品種のカルス形成能とカルス生長能を,完熟穀実の胚盤培養によって評価した.培地はMURASHIGE and SKO0G(1962)による組成に1lあたり2,4-D5mg,蔗糖30gおよび寒天8gを加えて用いた,キューバのTuson1とネパールの128A2に高いカルス形成能が,ボリビアのPatillo,コロンビアのPOyaなどに高いカルス生長能がみられた.また,Cateto Sulinoなどではカルス形成能の異たる系統が分離した.どの品種においても植物体は再生しなかった.
著者
桑田 晃
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.27-32, 1964-03-25

木本であるフヨウ(H. mutabilis)(2n=92)と草本であるクサフヨウ(H. moscheutos)(2n=38)との交雑の後代に新しい複二倍体を育成することが出来た。これを「アイフヨウ」(H. muta-moscheutos KUWADA)(2n=130)と命名する。本種の主な特性は次の通りセ'ある。F_1と同様に雑種強勢を示す。茎葉の諸形質は木本のフヨウに薯しく類似する。両親に比し花は大きく,その色は華麗であり,開花期間は著しく長い。花粉稔性高く,花粉粒は両親より大きい。の大きさは両親とほぼ同じである。種子の型はフヨウに類似し,またフヨウと同様に毛茸を有するが,その大きさは長さ,幅,厚さともにフヨウより大きい。種子稔性は両親よりやや劣るが良好である。本種のPMCでは65_<II>が観察され,成熟分裂は特に異常は認められず,根端における染色体数は130であった。
著者
池田 一
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.44-52, 1961-03-25

小麦品種の発芽種子,幼植物,葉身におけるアミラーゼ活力の変異と遺伝について研究し次の結果を得た。1. 発芽種子と幼植物のアミラーゼ活力の間には+0.90,また発芽種子と出穂期における葉身のアミラーゼ活力との間には+0.87の相関係数が認められた。2.この研究の範囲においては,アミラーゼ活力の強い形質は単因子で優性に遺伝した。3. アミラーゼ活力における温度の後作用が認められた。しかしこれは一つの例外を除き1代で消失した。4. 異る土壌型の後作用もまた認められた。そしてこの場合,発芽種子のアミラーゼ活力と同じ土壌に育つた葉身の活力との間の相関係数は+0.74であった。5. 発芽種子のアミラーゼ活力は,主要品種の試料の産地が寒い地方から暖い地方に移動するにつれ,2.41ccから0.35ccの範囲において漸次減少し,その地理的変異は2月の平均気温と密接た関係を示した。以上の結果から,小麦におけるアミラーゼ活力の地理的分布は,温度に対する遺伝的及びそれと同様な傾向をもつ非遺伝的な適応現象であろうと推察した。
著者
平野 寿助 菅 洋
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.107-111, 1963-06-25

(1)秋播性大麦(ハシリハダカとspontaneum nigrum)の完全春化した種子を,温室室で播種し,一定期問,短日(8時間日長)及び長日(24時間日長)下で育て,その後その逆の条件下に移し先週処理の後作用及び目長転換の出穂に及ぼす影響を調査した。(2)短日→長日の場合前処理される短目の日数が増加するほど,播種後出穂迄日数は増加する。しかし長目に移してから出穂迄の日数は,ハシリハダカでは前処理.短日目数の増加と共に減少しH. spontaneum nigrumではほぼ一定で変らなかった。前者は春化後の短日遅延の少ない早生品種に層し後者は短目遅延の多い晩生品種1に属する。(3)長目→短目の場合,前処理される長目の日数が増加するほど播種後出穂迄目数及び短日に移してから出穂迄日数が減少する。長日前処理の増加に伴う出穂迄日数の減少の度合は,H. spontaneum nigrumでは著しく大きくハシリハダカではあまり大きくたい。しかしこの・両者共一定目数長目処理すると,後は短日下においても連続長目下と同じに出穂する様にたる。このことは,一定期間長日処理されると最終葉数が決定し,後は短目にしてもそれが変更されたいことを示すものであろう。その日数はおおむね20目であった。葉数の面からは,大体6〜8日長日処理すれば,後は短日においても,連続長日下と同じ葉数で出穂Lた。この出穂迄日数と葉数とのずれ(20目と6〜8日)は,前長目処理が短いと葉長持に止葉長が著しく長くだり,そのため展開迄日数が増加するためと思われる。
著者
芦川 孝三郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.46-51, 1972-02-29
被引用文献数
2
著者
江川 宜伸 田中 正武
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.445-450, 1984-12-01
被引用文献数
2 4

新世界に起原したトウガラシは,4つの栽培種からたる。それらのうち,C.chinense,C.baccatum 及び,C.pubescens の3種は,主として中南米でのみ栽培されているのに対し,C.annunm var.annunm は,世界中の温帯から熱帯にかけて広く栽培されている。その野生型Var.minimum は,合衆国南部,メキシコ,グァテマラから南米のペルー低地に自生している。筆者らは,C.annunm の両変種間の類縁関係を明らかにするため,京都大学による中央アメリカ及び中央アンデス地域の植物探索によって得られた材料を中心に種内のF_1雑種を作出し,その成熟分裂を観察した。その締果,野生型には,相互転座による染色体構造分化が認められ,供試系統をその染色体構造に基づいてA,B及びCの3群に分類することができた。この3群間にみられる多価染色体に関しては,A-B群間,A-C群問の雑種は4価,B-C群間は,6価を生じた。供試系統の多くは,A群に属し,染色体構造に関しては,A型が最も普遍的な型であり,B及びC型は,A型から染色体構造分化により生じたものと思われる。B型の地理的分布は,メキシコ,ボリビアに,C型のそれは,グァテマラである。野生型に見られる核型の地理的分布による大きな変異(PICKERSGILL 1971)から判断すると,野生型には分布の各地で染色体構造分化が起こっている可能性がある。一方,栽培型に一は,構造変異は認められず,供試系統はすべてA群に分類された.なお,我が国対馬在来種もA群であった。本結果並びに栽培型の核型が均一なこと(PICKERSGILL 1971)を考え併せると,栽培型の起原は比較的新しく野生のA型群から起原したと結論される。
著者
丹羽 勝
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.421-428, 1985-12-01
被引用文献数
1

南米低緯度地方に栽培されるダイズ5品種と,日本の2品種を用いて,異なる日長条件下,または異たる播種日で栽培し,開花迄日数と主茎節数の変化を観察し,低緯度地方品種と日本品種の日長反応性を比較した. 第一複葉展開時から植物を12時間,12時間40分,13時間20分,14時間の各日長で処理したところ,開花迄日数および主茎節数は日長時間とともに指数関数的に増加した.日長時間に対する指数回帰から,12時間日長における開花迄日数および主茎節数(N12),開花迄日数および節数の日長による増加率(IR)を推定したところ,品種間に差が見られた. 開花迄日数,主茎節数とも,IRの最も大きい品種は日本のアキセンゴク,最も小さい品種は低緯度地方のIAC-8であったが,IRには低緯度地方品種と日本品種との間には,一定の傾向が見られなかった.一方,N12に関しては,開花迄日数および主茎節数とも,日本の品種は低緯度地方品種にくらべて,小さい値を示した. 供試品種のうち,低緯度地方品種3,日本品種2の合計5品種を用いて,5月21日から8月9日にかけて,20日間隔の異なる播種日で,植物を自然日長下,6時より18時までは30℃,18時より6時までは25℃の温度条件で育てたところ,開花迄日数および主茎節数は播種日が遅くなるにつれて減少した.出芽から開花迄の期間の日長時間を平均したところ,平均日長もまた播種日が遅くなるにつれて減少した. 開花迄日数,主茎節数とも,平均日長に対して指数回帰を行なったところ,よく適合した、各品種について,平均日長が14時間のときの開花迄日数,および主茎節数の値(N14)と,それぞれの形質のIRを推定した.開花迄日数,主茎節数ともIRには日本品種と低緯度地方品種の間には差が見られず,N14は日本品種のほうが小さかった。
著者
森 宏一 高橋 萬右衛門
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.226-238, 1981-09-01
被引用文献数
1

インド型イネ品種"Karalath","Chamock"および"Dalashaita"を日本型イネの検定用系統およびインド型イネの"Surjamukhi"と交雑し,花青素の基本着色遺伝子に関する遺伝分析を行った。これまでのC一A一P遺伝子体系をそのまま適用した限りでは,上記の交雑F_2集団において,両親の着色型から期待される正常分離を示す場合の外に期待外の着色型あるいは分離比を示す場合があった。そこで遺伝機構を説蔓月するために,CおよびP座に新しい対立遺伝子を仮定した。すなわち"Karalath"からはC脱,PKを,"Charnock"からはCBc,Pcを,そして"Da1ashaita"からはC^<BK>およびP^Kたる対立遺伝子を想定した。これらの対立遺伝子と従来の対立遺伝子との優劣関係は次のとおりである。[numerical formula]なお,分布遺伝子P^KはPよりも〓先への分布能カが劣り,P^CはP^Kよりも更に分布能力が低い。上述の遺候子仮説に基づくなら,本実験で供試したほとんどの組合せについて,そのF_2分離を統一的に説明できる。またF_3検定を行った5交雑組合せの内では3組合せでこの遺伝子仮説が支持された。残りの2組合せではF_3系統比に関し適合度が必ずしも高くはなかったが,F_3系統内での分離そのものは期待される分離であった。