著者
山本 佳代子 稲木 光晴 山根 正夫
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.66-71, 2005-02-28
被引用文献数
1

人は動物から様々な恩恵を受けている。動物介在療法/活動はハンディキャップを持つ人に心理学的、身体的、社会的に望ましい効果を与える。我々の国では、動物介在療法/活動は高齢者や障害者の福祉施設において行われている。しかしながら、動物介在療法/活動が体系的に行われている施設は少なく、それ故に動物介在療法/活動の効果に関する研究も少ない。我々は動物介在療法/活動の一つである乗馬療法の効果について研究している。本稿において我々は、乗馬療法の歴史・目的・手順に加えて最近の研究で報告された乗馬療法の効果についてレビューする。
著者
加来 卯子 八尋 俊子
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.155-164, 2005-02-28

女子短大生のライフスタイルの実態を把握して、学生の日常生活に対する現状認識を深め、学生指導に資する知見を得ることを目的に本研究を行った。女子短大生の睡眠行動の実態および起床時の生活行動の実態に関する研究に続くものである。西南女学院短期大学家政科および生活創造学科の学生に対し、所定の期間における任意の金・土・日曜または土・日・月曜の連続する3日間を選んで、NHK国民生活時間調査の行動分類表に沿った1日24時間の生活行動および摂食行動の記入を依頼した。摂食行動の分析から、欠食や中食、外食の利用が日常的になっている実態が浮かび上がった。また欠食、中食は一人暮らしに多い傾向を示した。孤食を自宅通学生の摂食状況から見ると、朝食で約50%、夕食で20%を超えた。食事の開始時刻は、特に土・日曜の朝食では長い時間帯に2つのピークが表れて行為者は広く分布したが、この結果から起床時刻との対応が示唆された。アルバイト従事者の夕食開始時刻は22時以降が最も多く、50%前後の者が21時以降であった。以上より、学生の食習慣の変容が確実に進行していること、家庭における食習慣形成の指導性に大きな期待をかけることには無理があること、特に一人暮らしの学生については規則的な食習慣の形成を助長させる教育の機会が必要であることが問題点として明らかにされた。健康日本21が掲げる21世紀における国民の健康寿命の延長を実現するためには、様々な機会を捉えて食習慣が健康に及ぼす影響の重大さを啓蒙していくことの必要性を痛感させられた。
著者
竜口 和惠
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.104-111, 2005-02-28

1997年春から2001年春にかけて、北九州市内で販売されているホウレンソウについて、そのシュウ酸含量、硝酸含量を酵素法により測定した。シュウ酸含量は生ホウレンソウ100g中に約600〜1000mg含まれるという従来から報告されてきた値よりも低く、100g中約200〜600mgであった。硝酸含量は生ホウレンソウ100g中約80〜800mgと一番含量の低い試料と高い試料との間に10倍の差があった。ホウレンソウを葉部と葉柄部とに分けて測定すると、ほとんどの試料について葉にはシュウ酸が多く、逆に葉柄部には硝酸が多く含まれていた。重量の5倍の水で2.5分間ゆでるとシュウ酸含量は40〜80%、硝酸含量は30〜80%の減少が認められ、残存量はシュウ酸よりも硝酸で大きい傾向にあった。栽培時期や産地の違いによるホウレンソウのシュウ酸含量、硝酸含量に一定の傾向は認められなかった。
著者
友原 嘉彦
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.93-101, 2021

本研究はさくらももこの代表作「ちびまる子ちゃん」を通して、女性クリエイターの観光に対する行動と捉え方を考察したものである。さくらの幼少期を投影したキャラクターであるまる子がタイの南の島に滞在した話を掘り下げて確認することで、さくらが観光活動においてどのように振る舞い、また、観光をどのように捉えているのかが明らかになった。まる子はプサディーという地元の子と懇意になることでタイの南の島が自分と密接に関係する地域となり、継続的に関わっていきたい対象である「サードエリア」となった。女性クリエイターさくらももこの観光は第一義的に「『サードエリア』の構築活動」であることが示された。
著者
金谷 めぐみ
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.33-38, 2021

モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756-1791)の《ソルフェージュと声楽練習Solfeggien und Gesangsübungen K.-V.393》(以下《ソルフェージュ》)に収められている全5曲(Solfeggio 1,-2,-3,-Fragment, およびEsercizio per il canto)と、アスパージア(《ポントの王ミトリダーテ Mitridate, re di Ponto K.87(74a)》)のアリアの中に類似する旋律を見出すことを目的に、読譜および音源聴取を行った。 アスパージアのアリア「迫り来る運命から Al destin, che la minaccia」と「ソルフェージュ1」の一節に類似する旋律を見出した。アスパージアのアリアは、オペラ《ポントの王ミトリダーテ Mitridate, re di Ponto K.87(74a)》の初演で歌唱したベルナスコーニ(Antonia Bernasconi, 1738-1816)の要望に添って調性および旋律に修正が施され、アリアの一節は、妻コンスタンツェの歌唱訓練を想定して作曲した「ソルフェージュ 1」に書かれたと推察した。 本稿において「ソルフェージュ1」とアスパージアのアリアに類似する旋律について解析を行い、声楽上の共通点について記し、アリアの背景を調査し、報告した。
著者
焼山 和憲 伊藤 直子 石井 美紀代 脇崎 裕子 谷川 弘活
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.7-18, 2003
被引用文献数
1

本研究の目的は,精神障害者が地域社会で生活していくために必要な地域住民の社会的距離を分析し,地域ケアに必要な支援対策を検討することである。調査対象は,北九州市近郊に居住する生活者211名である。内訳は,男性163名(年齢41歳〜80歳,平均60.7歳)及び女性47名(年齢45歳〜77歳,平均65.2歳)である。調査方法及び内容は,アンケートによる精神障害者の地域ケア,社会的距離及びイメージの意識調査である。精神障害者が地域で生活していくために阻害となる要因は,地域住民の気持ち・考えに「精神障害者が退院後も継続して精神病院でケアをうけることに希望する」が最も多く(77名,36.48%),「地域に居住し訪問看護や地域のサポートを受けながら在宅ケアを受けることに希望する」が少ない(8名,3.78%)ことである。また,社会的距離に影響する要因は,結婚や借家といった個人のプライバシーに関することには影響せず,雇用,奉仕活動,職場の同僚及び近隣関係になるといった近接関係に強く影響している。性差及び年齢格差別では,男性より女性に社会的距離への影響が強く,それも年齢が高くなるほど強い傾向が見られた。今回の調査は,池田小学校殺傷事件があった後の調査であり,回答にバイアスがあることは否定できない。精神障害者の社会復帰は,家族,専門病院,行政,地域ぐるみでのケアが重要である。そのためにも,退院前から間接的に接触体験の機会や教育が必要と思われる。
著者
金谷 めぐみ 植田 浩司
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.59-70, 2018-03-01

キリシタン音楽、カトリックの讃美の歌声が日本から消えて200 有余年(鎖国・禁教時代)、ペリーの来航(1853)を機に、幕末・明治の開国の時代を迎えた。明治新政府は、キリスト教禁止の幕府政策を継承したが、明治6年に禁教令を廃止し、信教の自由を認めた。来日したカトリック教会と正教会、そしてプロテスタント教会の宣教師たちは、西洋文明を伝え、キリスト教の伝道と教育活動を展開し、日本の社会はキリスト教とその音楽に再会した。 日本における礼拝を執り行うために、また日本人が讃美するために、各教会は聖歌集および讃美歌集を出版した。とくにプロテスタント教会の讃美歌の編集では、日本語と英語の性質の異なる言語において、五線譜の曲に英語を翻訳した日本語の歌詞をつけて、曲と歌詞とのフレージングとアクセントを合わせることに努力が払われた。 本総説において、著者らは、明治時代に日本で歌われたカトリックの聖歌と正教会の聖歌、そしてプロテスタント教会の讃美歌について楽譜付讃美歌が出版された経緯を記し、文献的考察を行った。
著者
甲斐 達男
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.87-98, 2007

パンは発酵時間が長いほど柔らかく硬化速度も遅くて良いということが経験的に信じられてきた。これは発酵生産物である有機酸やアルコール類がパン骨格を適度に潤滑させるためと説明されている。またパンの硬化速度には、発酵時間だけでなく生地のミキシング方法も影響すると考えられている。っまり、緩やかに時間をかけて生地を捏ね上げて作ったパンは、高速ミキサーで一気に捏ね上げたものよりも硬化速度が遅い。しかしながら製パン法の違いによって適する基本配合は大きく異なり、さらに加工者の質目標や好みによって用いる原材料や使用量が異なる。従って一般に経験的に認識されている製パン方法とパンの硬化速度の関係は、発酵時間やミキシング方法の影響だけを純粋に反映しているわけではない。そこで本報では、生地発酵時間の長短とミキシング法の違いがどの程度パンの硬化速度に影響を与えるのかを検証した。ここではパンの硬化速度に影響を与える3つの因子(製パン配合、パンの比容積、パンの残糖)を考慮して実験を行った。その結果、発酵時間の最も長い中種法と最も短い短時間法との間には僅かな差しか見られなかった。通常のミキシング法と高速ミキシング法の差も僅かであった。この事実はパンの硬化特性は配合による影響が大きいことを示唆するものである。
著者
前田 由紀子 立石 和子 谷岸 悦子 松林 太朗
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.11-21, 2018-03-01

【目的】本研究は、精神科に勤務する看護師が認定看護師の資格を取得する過程とその後の経験を明らかにすることを目的とする。【方法】精神科病棟に勤務する認定看護師7 名を対象とし、個別に半構成的面接を実施した。精神科を選択した理由、認定看護師課程を受講した理由と過程、資格取得後の経験についての語りをデータとし、質的帰納的に分析した。【結果】精神科認定看護師を目指した理由は、<専門性の向上><精神科看護師としての自己の人生への問い><職場の改革><役割遂行の向上>の4 カテゴリーに分類された。認定後の経験は、<看護実践能力の向上><認定看護師としての役割遂行><実践におけるジレンマ><精神科認定看護師への評価の低さ>の4 カテゴリーが抽出された。【考察】資格取得の過程は、組織的な目標管理の下ではなく、個々の問題意識からキャリアアップを目指すという特徴があり、認定後の活動への影響が考えられる。組織における精神科認定看護師への理解や活動への支援により更なる活動実績が期待される。
著者
ブラウン馬本 鈴子
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.153-162, 2017

フェミニズムでは、女友達の存在は、女性が自立を図る上で重要であると考えられている。作家ジェイン・オースティンの作品では女性同士の" real friendship"は存在するのであろうか。本稿では初期の作品であるNorthanger Abbey(1818)の女主人公Catherine Morland とその友人Isabella Thorpe やTilney 兄妹との友情を中心に、オースティン作品の中で女友達を登場させる意義の解読を試みた。Isabella との浅はかな友情を通して、彼女の狡猾で浮気性な本性が露呈されると同時に、主人公の〈単純〉〈純粋〉〈未熟〉な性格が強調される現象を確認した。また精読によってIsabella の友情の動機が、Catherine を利用して結婚相手を獲得することであることを明らかにした。やがてCatherineの友情は、IsabellaからTilney兄妹へと舵を切るが、Claudia L. Johnsonの指摘" The band of good friends is all related by marriage in the end"にあるように、結末ではHenry Tilney はCatherine の夫となる。道徳的に堕落したIsabella との友情の終焉と平行して、ゴシック小説の低俗さを悟ったCatherine が、自己成長によって究極の男女愛を手に入れる様子を検証した。Isabella は小説の3分の2でいなくなり、他の登場人物からも読者からも忘れられる。以上の考察から、オースティン作品の中における女性同士の友情には限界があるという結論に至った。
著者
金丸 英子
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.52-58, 2004

近代アメリカ・プロテスタント教界を代表するワルター・ラウシェンプッシュ(Walter Rauschenbusch,1861-1918)の代表的な著作、『Christianity and Social Crisis』(1907年出版)から、ラウシェンブッシュが唱導した社会的福音において、社会福祉がどのように捉えられていたかを探る。また、ラウシェンブッシュの主張の中に、キリスト教の使信と社会福祉理念を切り結ぶ哲学的な接点を見出してゆき、キリスト教主義大学で福祉を学ぶ人たちにキリスト教から提供しうる視点を模索する。