- 著者
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焼山 和憲
伊藤 直子
石井 美紀代
脇崎 裕子
谷川 弘活
- 出版者
- 西南女学院大学
- 雑誌
- 西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, pp.7-18, 2003
- 被引用文献数
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本研究の目的は,精神障害者が地域社会で生活していくために必要な地域住民の社会的距離を分析し,地域ケアに必要な支援対策を検討することである。調査対象は,北九州市近郊に居住する生活者211名である。内訳は,男性163名(年齢41歳〜80歳,平均60.7歳)及び女性47名(年齢45歳〜77歳,平均65.2歳)である。調査方法及び内容は,アンケートによる精神障害者の地域ケア,社会的距離及びイメージの意識調査である。精神障害者が地域で生活していくために阻害となる要因は,地域住民の気持ち・考えに「精神障害者が退院後も継続して精神病院でケアをうけることに希望する」が最も多く(77名,36.48%),「地域に居住し訪問看護や地域のサポートを受けながら在宅ケアを受けることに希望する」が少ない(8名,3.78%)ことである。また,社会的距離に影響する要因は,結婚や借家といった個人のプライバシーに関することには影響せず,雇用,奉仕活動,職場の同僚及び近隣関係になるといった近接関係に強く影響している。性差及び年齢格差別では,男性より女性に社会的距離への影響が強く,それも年齢が高くなるほど強い傾向が見られた。今回の調査は,池田小学校殺傷事件があった後の調査であり,回答にバイアスがあることは否定できない。精神障害者の社会復帰は,家族,専門病院,行政,地域ぐるみでのケアが重要である。そのためにも,退院前から間接的に接触体験の機会や教育が必要と思われる。