著者
コルニ マリア G. トレンティニ M.
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.258-261, 1990-11-30
被引用文献数
3

食用二枚貝2種V. aureaおよびR. philippinarum(最近養殖のため輸入されたアサリ)の染色体を再検し, 雌性細胞による知見を追加した.いずれも従来の雄性細胞による結果と一致し, 雌雄ともに2n=38, n=19で, 性染色体は認められなかった.
著者
奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.185-205, 1975-04-20
被引用文献数
1

黒瀬は八丈島のN20°W約43浬離れた所にあり, 頂上はやや平坦で, 200m以浅の広さが東西8.5km, 南北6kmの小さい礁である。1973年6月と11月及び1974年7月に調査船蒼鷹丸によって礁上の底棲生物採集を行った結果, 20回のドレッヂにより72種の貝類を得た。そのうち約半数が前報の銭洲・瓢箪瀬・高瀬の貝類群と共通なもので, オキナエビスガイ, コナルトボラ, などは比較的頻度が高いものであった。二枚貝類は非常に少なく, 前報の三礁上に多かったミソノナデシコやツヅレノニシキなどのChlamys属は1個体も採集されなかった。従来四国以南(西), 沖縄, 南シナ海方面からしか報告されてなかったコシダカオキナエビス, タミコカンスガイ, ヨシオキヌヅツミガイ, トキオキヌヅツミガイ, ウブダカラガイ, メメイモガイ, マイヒメイモガイなどが黒瀬上から見出され分布上興味がある。しかし, このように分布の中心から隔絶された棲息地では, 種数は著るしく少なくなることが予想される。特筆すべき種としてはコシダカオキナエビスガイは従来相模∿伊豆に分布中心をもつオキナエビスの紀伊∿九州方面の生態的等位者と思われていたが, 黒瀬上では両者ともすんでいることが判った。又, アケボノダカラガイの産地がミッドウェーとなっているが, 恐らくこの付近であろうとされていた推論が裏付けられた。Fusolatirus kuroseanusホソニシキニナ(新種)はカンダニシキニナに似るが細く色もうすく, 水管溝が細長い点で一見して区別される。Cuspidaria kurodaiセノシャクシガイ(新種)はやや細長く腹縁は直線的で嘴状部は太短かく, 丸く終り, この上に殻皮皺がある。
著者
藤倉 克則 小島 茂明 藤原 義弘 橋本 惇 奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.103-121, 2000-06-30
被引用文献数
11

海洋科学技術センター(JAMSTEC)が運用する深海調査システム(有人潜水調査船, 無人探査機, 深海曳航式カメラ)を用いて, 日本周辺の深海化学合成生物群集におけるオトヒメハマグリ科二枚貝の採集及び生息環境の観察を行い, 6種について新たな分布域を発見した。シマイシロウリガイは, 相模湾の初島沖と沖ノ山堆の冷水湧出域と沖縄トラフ伊平屋海嶺の熱水噴出域に分布していることが知られていたが, 沖縄トラフの北部伊平屋海嶺からも新たに発見された。テンリュウシロウリガイは, これまで知られている南海トラフ天竜海底谷の冷水湧出域に加え, 南海トラフ第三天竜海底谷からも発見された。ナンカイシロウリガイは, 南海トラフ竜洋海底谷の冷水湧出域に分布していることが知られていたが, 沖縄トラフ北部伊平屋海嶺の熱水噴出域にも新たに発見された。ニヨリシロウリガイは, これまで知られている南海トラフのユキエ海嶺や東海スラストの冷水湧出域に加え, 琉球海溝(南西諸島海溝)付近の喜界島沖の冷水湧出域から死殻が採集された。エンセイシロウリガイは, これまで知られている沖縄トラフ南奄西海丘に加え, 南海トラフ第二天竜海底谷の冷水湧出域に生息し, さらに南海トラフの室戸海丘と足摺海丘, 琉球海溝付近の黒島海丘から死殻が採集された。ノチールシロウリガイは, 天竜海底谷に加え, 南海トラフの第一南室戸海丘の冷水湧出域から新たに発見された。また, これまで日本周辺の深海化学合成生物群集から出現しているオトヒメハマグリ科に属するシロウリガイ属およびオトヒメハマグリ属二枚貝の地理的分布・鉛直分布をまとめた。そして, 日本周辺ではシロウリガイ属二枚貝の分布は, 熱水噴出や冷水湧出といった化学合成生物群集のタイプの違いや地理的な距離に左右されず, 同じ水深レベルには同じ種が出現する傾向が認められた。
著者
ウアール ロラン
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.273-280, 1996-12-31

Aspella schroederi n. sp, from Guam Island (Mariana Archipelago), and Orania rosea n. sp., from the western Indian Ocean and from the Philippine Islands, are described. Bursa lamellosa Dunker, 1863 is considered as a junior synonym of Aspella producta (Pease, 1861).
著者
ウァール ロラン
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.205-214, 1990-11-30

ニューカレドニア付近のドレッヂ採集品から既に20種のアッキガイ科の4新種が発表されているが, ここにさらに新種を加える.Dermomurex (Takia) wareni(模式標本の殻長54.5 mm), Ponderia elephantina (8.1 mm);Pygmaepterys menoui (7 mm)及びTrophon multigradus (27.5 mm).
著者
春日井 隆
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.37-44, 2000-03-31

水槽内でヒメイカIdiosepius paradoxusの繁殖行動を観察した。交接は非産卵時だけでなく産卵時にも観察された。非産卵時の交接は頻繁に行われた。オスはメスに近づき, すばやくメスの腕基部をつかみ, 生殖腕(左第4腕)を用いて精莢をメスに付着させた。交接の前にオスのメスに対する求愛は無く, 交接時間は短く5秒以内であった。交接後, メスが頭, 首および腕について精莢を口器を用いてついばむのが観察された。産卵はメスが水槽内のアマモ葉体に背中の粘着器官で張り付いて行い, 漏斗から出した卵を一つづつ腕で抱え込み, 腕全体を用いてアマモ表面に押しつけ付着させた。また, 観察を行ったすべての産卵において, 産卵中のメスにオスが交接を行うのが観察された。オスは産卵中のメスに近づき, メスの腕基部にしがみつき, 卵が送り込まれてくるメスの腕の中に精莢をつかんだ生殖腕を挿入した。メスの産卵時の交接には複数のオスが参加する場合が多く, メスを取り囲むように集まってくる。しかしオス同士の闘争行動や優先的なオスの存在は確認されなかった。
著者
山根 正気 冨山 清升
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.61-64, 1986-03-31

スマトラ・ジャワ両島の間に位置するクラカタウ諸島の生物相は, 1833年の大爆発により潰滅的な打撃をうけたといわれる。1908年から生物の再移住についての数次の調査がなされたが, 1934年を最後に約50年間中断されてきた。これまでに同諸島からは12種の陸産貝類が報告されていたが, 1982年の調査では8種が確認されそのうち2種(Amphidromus banksi, Pseudopartula arborascens)は未記録種であった。今回の調査には陸産貝類の専門家が同行しなかったため, 得られた結果はきわめて不充分なものと考えられるが, 少なくとも新たな種の移住が続いていることが強く示唆された。
著者
奥谷 喬司 江川 公明
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.285-289, 1985-12-31
被引用文献数
9

海洋科学技術センターの"しんかい2000"によって, 相模湾東部海域でシロウリガイCalyptogena soyoae Okutani, 1957の生活状態と遺骸堆積を観察した。潜航は1984年6月5日に行われ, 35°01′N, 139°12′E付近, 水深1130∿1000mの範囲であった。シロウリガイの死殻は, 直径数mから数十mのパッチ状に散乱していたが, 生貝は少く, 死殻堆積の中心をやや離れた所に, 体の前半を埋め, 殻を僅かに開いた状態で見つかった。体にはへモグロビンが含まれ濃紫赤色で, マニピュレーターによって破壊されると赤い血が流れ出した。シロウリガイのパッチには, エゾイバラガニと思われるカニ及び束状になった管棲多毛類の群集が伴っていた。
著者
冨山 清升
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.211-227, 1984-10-15

タネガシママイマイSatsuma tanegashimae(Pilsbry)の種内変異について特に個体群間変異(地理的変異)の統計学的解析を行った。殻の20形質を計測し, 判別分析法, クラスター分析法によって個体群間の類似度を解析した。その結果以下のようなことがわかった。1. 本研究でタネガシママイマイとして扱った種は地理的変異が著しいが, すべての個体群が近縁種であるコベソマイマイとは明確に区別される。2. タネガシママイマイは4個の地理的グループ(宇治, 草垣, 三島-トカラ, 種子-屋久)に分けることができる。3. 宇治群島家島, 草垣群島上ノ島の個体群は他個体群にくらべ非常に特異的であり, 特に宇治群島個体群は若干の形質でコベソマイマイに似る。4. 硫黄島, 竹島の個体群は人為的に黒島から入った可能性が高い。5. トカラ列島の個体群は, 種子-屋久グループに対立する1つのグループを形成する。このことから, トカラ列島が過去に陸塊でつながっていた可能性が示唆される。
著者
渡辺 久美 安藤 和人 土屋 光太郎 瀬川 進
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.291-301, 1998-12-31
被引用文献数
2

ソデイカの浮遊卵塊から得られた孵化6目前の胚から、孵化4∿5日後の孵化幼生までの発生を観察した。孵化6目前の胚は、器官形成期にあり、ほぼStage IXの発生段階(Neaf, 1982)にあると判断された。この胚には既に多くの色素胞が形成されており、ソデイカの発生上の特徴として色素胞出現時期が他のツツイカ類に比べ早いことが判った。また、孵化個体の色素胞の数は他のツツイカ類の孵化個体に比べ顕著に多かった。第III、IV腕の発達が遅く、孵化4∿5日後の個体の腕長式は、I>II>IV>IIIであった。また、観察の結果、従来腕として認識されていたものが触腕であることが明らかとなった。孵化4∿5日後の個体の触腕は第I腕の2倍の長さに発達していたが、触腕掌部は分化しておらず、基部寄り1/3の位置に4列に13∿14個の吸盤が形成されていた。この触腕の形態および吸盤の位置は成体とは大きく異なり、ソデイカのparalarva期を定義する上での重要な形質の1つであると考えられた。
著者
石田 惣 岩崎 敬二
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.55-59, 1999-06-30

捕食者であるアクキガイ類を, イガイ科二枚貝ヒバリガイモドキが足糸で捕捉する行動について, 野外及び室内実験で調べた。ヒバリガイモドキのベッド上にいたアクキガイ類の108個体中10個体に足糸が付着しており, 足糸の付着とともに腹足が仰向けのアクキガイ類は, 少なくとも30時間はそのままの状態であった。室内で観察されたヒバリガイモドキの巻貝に対する足糸付着行動は, ムラサキイガイ等での過去の報告と類似した特徴を持っており, 足糸を用いて巻貝を捕捉する能力をヒバリガイモドキも有しているとみられる。この行動は今までイガイ亜科の3種で知られるのみで, ヒバリガイ亜科の種では本報告が初めてである。足糸による捕捉という対捕食者防衛行動は, イガイ科の多くの種に共通する戦略なのかもしれない。