著者
石田 惣 木邑 聡美 唐澤 恒夫 岡崎 一成 星野 利浩 長安 菜穂子 So Ishida Satomi Kimura Tsuneo Karasawa Kazunari Okazaki Toshihiro Hoshino Nahoko Nagayasu 大阪市立自然史博物館 いであ株式会社大阪支社 イシガイ研究会 イシガイ研究会 イシガイ研究会 イシガイ研究会 Osaka Museum of Natural History IDEA Consultants Unionids Research Group Unionids Research Group Unionids Research Group Unionids Research Group
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History (ISSN:00786675)
巻号頁・発行日
vol.69, 2015-03-31

淀川(大阪府)では,2010年頃からヌートリアがイシガイ科貝類を捕食している.2012年9月〜2013年8月にかけて,八雲ワンド(守口市)でイシガイ類(イシガイNodularia douglasiaenipponensis,トンガリササノハガイLanceolaria grayana,ドブガイ属Sinanodonta spp.)の生貝及び合弁死殻を月ごとに採集し,捕食サイズや捕食率等の推定を試みた.採集されたイシガイの死殻の約70〜90%近くに捕食によるものと推定しうる傷があり,傷有り死殻の殻長の平均はすべての月において生貝の殻長平均よりも大きかった.これらの傾向はトンガリササノハガイの通年合計でも同様だった.生貝に傷が見られた例数はいずれの種でも0–3%未満だった.正確な比率の推定は難しいものの,調査地付近のイシガイとトンガリササノハガイの死亡要因の多くをヌートリアの捕食が占めている可能性は否定できない.また,ヌートリアは比較的大型のイシガイ類を好む傾向があると考えられる.イシガイ,トンガリササノハガイともに死殻の傷は左殻側よりも右殻側に多かったことから,調査地付近のヌートリアはイシガイ類を捕食する際に右殻側を手前にして開殻することが多いのかもしれない.ヌートリアによるイシガイ類の捕食は河川生態系への悪影響が懸念されることから,早急な対策が求められる.
著者
石田 惣 若ごぼう市民調査グループ
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History (ISSN:00786675)
巻号頁・発行日
no.77, pp.11-27, 2023-03-31

大阪府八尾市の伝統野菜である葉ごぼうを対象として,市民に呼びかけて販売店舗(または非販売店舗)と産地の情報を提供してもらい,産地ごとの販売地点の分布を調査した.販売店舗報告943件のうち,大阪府産は741件(78.6%)を占め,大阪府産のうち八尾市産は少なくとも642件(86.6%)を占めていた.大阪府産の大半は大阪府だけでなく隣接府県でも販売され,その大半の市区町で大阪府産は80%以上のシェアを占めていた.全報告件数に占める販売店舗の報告件数の割合は,大阪府,阪神間,奈良県北西部で比較的高く,主産地の八尾市では89%だった.大阪府の葉ごぼうの主な生産地は依然として八尾市域であり,地元で消費される傾向は強いものの,消費地は拡大していると考えられた.大阪府の隣接府県における葉ごぼうの消費は旧来の伝世によるものとは異なる食文化であり,この形成には大手系列スーパーの商品展開が関わっているのかもしれない.本稿ではSNSを用いた調査手法の有効性,大阪府内の小規模産地の地域消費,及び他県産葉ごぼうの流通についても若干の考察を加える.
著者
佐久間 大輔 石田 惣 石井 陽子 釋 知恵子 山中 亜希子 北村 美香
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.e1-e10, 2022 (Released:2022-04-04)
参考文献数
21

COVID-19 状況下で、博物館活動もネット上で゙の活動が多様性、量ともに大幅に増加した。デジ゙タルアーカイブ゙の活用も、各博物館で゙主に研究成果や所蔵品の公開を中心に進んで゙いる。ここでは、教育活動へのライブ配信の活用とそのアーカイブについて、大阪市立自然史博物館の活動を検討する。教育活動の類型に応じて、様々な配信手法を選択しているが、それぞれにオンライン上の活動に利点と限界があった。細かな工夫で魅力を補うことも試みた。また、教育映像コンテンツのアーカイブの効果についても言及した。
著者
長谷川 匡弘 石田 惣 松井 彰子 松本 吏樹郎 長田 庸平 初宿 成彦 植村 修二 和田 岳
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
自然史研究 = SHIZENSHI-KENKYU, Occasional Papers from the Osaka Museum of Natural History (ISSN:00786683)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.117-156, 2022-02-28

大阪府下から記録されている哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類、昆虫類、その他無脊椎動物、コケ類、維管束植物について、主に明治時代以降に持ち込まれたと考えられる外来種を整理し目録を作成した。結果として哺乳類11種、鳥類12種、爬虫類3種、両生類2種、魚類45種、昆虫類・クモ類196種、その他無脊椎動物68種、コケ類3種、維管束植物種800種がリストアップされた。This list shows non-native species that are thought to have been introduced mainly after the Meiji era and were recorded in Osaka Prefecture. As a result, the following species were listed, Mammals: 11 species, birds: 12 species, reptiles: 3 species, amphibians: 2 species, fish: 45 species, insects and spiders: 196 species, other invertebrates: 68 species, mosses: 3 species, vascular plant species: 800 species.
著者
石田 惣 山田 浩二 山西 良平 和田 太 渡部 哲也
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
自然史研究 : Shizenshi-kenkyu, occasional papers from the Osaka Museum of Natural History (ISSN:00786683)
巻号頁・発行日
vol.3, no.15, pp.237-271, 2014-12-28

文献、標本、ならびに著者または研究者らによる調査・観察記録を渉猟することで、大阪府の汽水域・砂浜域の無脊椎動物および藻類相を調べた。その結果、記録種は総計で無脊椎動物が571 種群、藻類が57 種群となった。本報ではそれらの種と参照資料のリストを示す。
著者
石田 惣 中田 兼介 西 浩孝 藪田 慎司
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.334-344, 2019-06-24 (Released:2019-08-30)
参考文献数
30

生物研究者が撮影した動画を収集し、利用公開するアーカイブを運用する上で起こり得る課題を抽出するため、アーカイブに対する研究者のニーズ、対象データの潜在量や記録媒体、データ提供者が認容できる利用条件等について研究者にアンケート調査を行った。教育目的での利用可能性には提供者・利用者双方の立場のニーズがある。課題として、・デジタル化により増大する動画量への対応、・レガシー媒体への対応、・ウェブ公開や営利利用、目的を問わない利用に提供者側の抵抗感があり、アーカイブやオープンサイエンスの意義について理解を求める必要性、・データの利用時の編集の是非、・データのウェブ公開可否の判断基準、等が見出された。
著者
岩崎 敬二 石田 惣 馬場 孝 桒原 康裕
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1-4, pp.67-81, 2017-11-27 (Released:2018-01-11)
参考文献数
50

Mytilus trossulus Gould, 1850 is a mytilid bivalve with a boreal distribution in the northern Pacific Ocean, northern Atlantic Ocean, and Baltic Sea. The distribution of M. trossulus in Japanese waters was hitherto believed to be restricted to the northernmost island of Hokkaido. However, we discovered dry specimens and dead shells of this species on the northern and central Japan Sea coasts of Honshu Island. Specimens were collected before 1936, before 1948 and in 1951 from Shikaura, Fukui Prefecture (35°56´N, 135°59´E), and were archived at the Fukui City Museum of Natural History as "Mytilus edulis Linnaeus 1758". Dead shells with rotten soft bodies were collected from the Kisakata sandy shore, Akita Prefecture (39°12´24˝N, 139°53´40˝E) on March 29, 2014. In addition, we found old records of the nonindigenous congener M. galloprovincialis Lamarck, 1819 in molluscan lists that were published in Akita, Niigata, Ishikawa and Fukui Prefectures from the 1930s to 1950s. This species was introduced to Japan before 1932 and appears to have been infrequently confused with M. trossulus. In 2007, 2010 and 2014, we conducted field surveys in the regions where the dry specimens and dead shells had been collected but found no M. trossulus specimens. In view of the results of the field surveys and water temperature regime in its distribution range, we believe that the dry specimens and dead shells had drifted from the more northerly Japan Sea coasts of Russia or Hokkaido. The old records of M. galloprovincialis in the molluscan lists may indicate the actual occurrence of the nonindigenous species during the early years of its invasion in Japan.
著者
石田 惣平
出版者
日本会計研究学会
雑誌
会計プログレス (ISSN:21896321)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.21, pp.63-79, 2020 (Released:2021-09-01)
参考文献数
33

本研究は2005年から2013年までに日本の株式市場に上場している企業を対象として,経営者の在任期間と業績予想の正確度との関係を検証している。分析の結果,経営者の在任期間と業績予想の誤差との間にはU字の関係があることが確認されている。また,経営者の在任期間と業績予想の誤差との関係は経営者の年齢やコーポレートガバナンスの質に応じて変化することがわかっている。本研究の発見事項は,経営者は就任して一定期間までは自社を取り巻く経営環境や社内にある様々な経営資源に関する知識の収集に努めるため,業績予想の正確度が改善する一方で,一定期間をすぎるとエントレンチメントが支配的となり,経営者には業績予想の正確度を高めようとする動機がなくなるため,業績予想の正確度が低下することを示唆している。
著者
石田 惣
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3-4, pp.105-118, 2020-09-25 (Released:2020-10-10)
参考文献数
50

Citizen science is a powerful way to survey the distribution of alien species in a broader area and is effective in promoting public awareness. I conducted a citizen science project to survey the distribution of the alien Decollate Snail Rumina decollata in Osaka, central Honshu, Japan. This species has spread over the Prefecture in recent years. As a first step I set up ‘train station survey' in which each volunteer selects a train station in Osaka and looks for the snail on foot for 1 hour within a 1-km radius from the station. This survey revealed that the snail inhabits mainly the Senboku area (the northern part of southern Osaka). The next step aimed to investigate in greater detail the snail's distribution in the Senboku area using the following methods: 1) Grid survey: each volunteer selects a focal grid (conforming to the third-order-unit grid defined by the Statistics Bureau of Japan, ca. 1 km square) and looks for the snail within the grid for 1 hour. 2) Gathering observations from residents: fliers are handed out to municipal elementary school children and library visitors in the Senboku area, or a social networking service is used to gather snail observations from the residents. Integration of the results of these surveys revealed that the Decollate Snail occurred in fifty-one third-order-unit grids in Osaka Prefecture at the end of November 2019. Information from residents indicated that the snail had been introduced between 2000 and 2010 in Osaka and that one probable dispersal route was via gardening or agricultural materials such as soil or seedlings. The train station survey is an effective way to screen a high-density area. Observations were provided continuously for four months by residents who had found out about this project from the fliers distributed to the elementary school children. This suggests that fliers in schools may be effective in collecting observations of alien species.
著者
石田 惣 藪田 慎司 中田 兼介 中条 武司 佐久間 大輔 西 浩孝
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

自然史博物館が動画資料を体系的に収集・公開するしくみがあれば、公共財としての研究・教育資源になる。本研究では動画を収蔵資料とするための課題を抽出し、その解決策を探り、収蔵モデルを構築した。主な課題は寄贈者が受け入れやすい利用許諾条件と、資料の安全な保管である。そこで、寄贈される資料に他の博物館も同一条件で利用できるサブライセンスを設定し、他館と複製を共有するしくみを考えた。これにより、多くの寄贈者が認容する教育目的の利用機会が増えるとともに、資料の分散保管が実現できる。この枠組みに基づき、メタデータセットやウェブ公開時のチェック項目等を設定して、動画資料データベースを作成した。
著者
石田 惣 岩崎 敬二
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.55-59, 1999-06-30

捕食者であるアクキガイ類を, イガイ科二枚貝ヒバリガイモドキが足糸で捕捉する行動について, 野外及び室内実験で調べた。ヒバリガイモドキのベッド上にいたアクキガイ類の108個体中10個体に足糸が付着しており, 足糸の付着とともに腹足が仰向けのアクキガイ類は, 少なくとも30時間はそのままの状態であった。室内で観察されたヒバリガイモドキの巻貝に対する足糸付着行動は, ムラサキイガイ等での過去の報告と類似した特徴を持っており, 足糸を用いて巻貝を捕捉する能力をヒバリガイモドキも有しているとみられる。この行動は今までイガイ亜科の3種で知られるのみで, ヒバリガイ亜科の種では本報告が初めてである。足糸による捕捉という対捕食者防衛行動は, イガイ科の多くの種に共通する戦略なのかもしれない。