著者
間嶋 隆一
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.57-74, 1987-07-15
被引用文献数
2

This study deals taxonomically with Japanese fossil and modern species of Glossaulax. The following species are recognized in Japan : Glossaulax didyma (Roding), G. bicolor (Philippi), G. hyugensis (Shuto), G. hagenoshitensis (Shuto), G. nodai Majima, G. reiniana (Dunker) and G. vesicalis (Philippi).
著者
田中 彌太郎
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.61-65, 1979-04-30

1977年10月中旬, 島根県江津市波子地先において漁獲された茨城県鹿島浦産の放流再捕コタマガイと地先で大発生したオキアサリにまじって, 両種の中間形と思われる識別困難な成貝が多数見出された。この中間形貝の所属に関する漁業関係者の質問にこたえて, 上記者の殻のいずれも稚小期に相当する殻頂部の彫刻を検した結果, その特徴は中間形貝はオキアサリと合致し, 輪郭, 大きさなどはややコタマガイに類似の傾向を示した。この事実から, 中間貝は, オキアサリの自然生息域に産卵期が等しく, 再生産可能なコタマガイを, 毎年多量に移殖したために自然下で生じた雑種であると思われた。
著者
近藤 高貴
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.181-198, 1982-10-31
被引用文献数
4

マツカサガイ属にはマツカサガイ, オバエボシガイ, オトコタテボシガイの3種が知られていた。これら3種について再記載を行なうとともに, 新種ニセマツカサガイの記載を行なった。ニセマツカサガイはマツカサガイに非常によく似ているが, マツカサガイより殻のふくらみが強く, 後縁がまるく少し湾曲していることにより区別できる。またグロキディウム幼生はマツカサガイとオバエボシガイでは楕円形の無鉤子幼生(いわゆるLampsilis型)であるのに対して, ニセマツカサガイでは亜三角形の有鉤子幼生(いわゆるAnodonta型)でオトコタテボシガイの幼生に酷似している。しかし親貝では, オトコタテボシガイの殻頂はニセマツカサガイより前方に位置することでこの2種は容易に区別できる。マツカサガイ属4種の類縁関係を主成分分析により調べた。その結果, マツカサガイが最も原始的な種と考えられ, ニセマツカサガイはマツカサガイから, オトコタテボシガイはニセマツカサガイから分化したものと推測された。またオバエボシガイはこれら3種とは系統的にかなり離れていると考えられた。
著者
平野 義明
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.35-47, 1979-04-30

岩礁性潮間帯中潮亜帯から高潮亜帯にかけて生息するマツバガイの習性および活動パターンについて, 向島臨海実験所近傍の観音鼻海岸において主として1977年7月から8月にわたり調査を行なった。本種は露出した岩面と岩のわれ目の中とに静止場所をもち, 帰家習性を示す。往復路は互いに異なった道筋をたどることが観察され, 帰家の機構はかなり複雑なものと推察される。また露出岩面に生息していた小型個体が生長に伴い近くのわれ目を静止場所とすることも観察された。行動距離は1日当り平均119cmであり, この値は光および潮汐条件の組み合わせによって変化した。光および潮汐状態が異なった組み合わせの観察期間2組(各々TYPE-AとTYPE-Bと名付けた)を選んで互いに比較した。TYPE-Aでは日没直後が高潮となり, TYPE-Bでは日没時と最干潮時が一致している。冠水時の行動個体数を比較すると昼間よりも夜間に多くの個体が活動し, 空気中に貝が露出した状態では昼間は全く動かないが夜間は冠水時よりも多数の個体が活動した。これらの結果から, マツバガイは夜行性が強いと言うことができる。行動の継続する間, 活動量には変化が認められた。進路の垂直方向要素は, 被水冠水状態では昼夜にかかわらず潮汐の上下方向に一致し, 露出状態で日没を迎えた場合は下方向であった。すなわち, 活動量の変化は, これらの垂直方向の動きの転換時に対応している。以上, 本種で得られた結果と他種カサガイの報告を比較すると, 潮汐と昼夜の条件に対する行動のリズム, 方向, 帰家習性の程度などにおいてマツバガイは固有の活動パターンを示している。
著者
天野 和孝 フェルメイ G. J.
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.209-223, 1998-10-31
被引用文献数
4

日本および北朝鮮の中期中新統初期のヒレガイ属, Ceratostoma makiyamai, C. sp.を検討した。これらを加え, ヒレガイ属はC. nuttalli (Conrad), C. virginiae (Maury), C. foliatum (Gmelin), C. rorifluum (Adams & Reeve)の4グループに細分される。本属はおそらく大西洋起源で, 中新世前期までにカリフォルニアに, 中新世中期の初期までに北東アジアに分布を広げた。このような中新世前半に北東太平洋から北西太平洋へと分布をひろげる移動パターンはチヂミボラ属など他の多くの北方系種にも特徴的に見られる。
著者
藤原 義弘 小島 茂明 溝田 智俊 牧 陽之助 藤倉 克則
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.307-316, 2000-12-31
被引用文献数
5

日本海溝の超深海域より採集したオトヒメハマグリ科ナラクシロウリガイCalyptogena fossajaponicaの共生細菌の性状を明らかにするため, 形態観察, 硫黄含有量および同位体組成分析, 分子系統解析を行った。透過型電子顕微鏡観察により, この二枚貝の鰓上皮細胞中に多数の細菌を確認した。また, この二枚貝の軟体部の硫黄含有量と硫黄同位体組成の解析により, 硫黄細菌の存在を示唆する結果を得た。更に, この細菌の16SリボソームRNA遺伝子配列を決定し, 系統解析を行ったところ, この細菌は深海の熱水噴出域, 冷水湧出域に生息する他のオトヒメハマグリ科二枚貝の共生硫黄細菌と近縁であった。この共生細菌はガラパゴスシロウリガイ, ナギナタシロウリガイおよびフロリダ海底崖産シロウリガイ類の1種の共生細菌と単系統群を形成した。これら4種の二枚貝は他の多くのシロウリガイ類に比べて大深度に分布していた。シロウリガイ類は種ごとに垂直分布が異なることが知られているが, このような垂直分布様式の違いはそれぞれの共生細菌の影響を受けているのかもしれない。
著者
中野 大三郎 伊澤 邦彦
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.235-241, 1996-09-30
被引用文献数
4

三重県伊賀盆地の上野市大谷と大山田村甲野の2地点で1988年から1991年に, カワニナを採集し, 母貝の殻高と胚数の関係及び殻高25-30 mmの母貝を用い保育嚢にみられる胚の発育段階による胚構成の季節変化から生殖周期, 保育期間, 年産仔数を検討した。年による生殖周期の基本パターンには大きな相違は認められなかった。夏には発生初期の胚が保育嚢に多く認められ, 1腹の平均胚数は大谷では約1000個, 甲野では約700個と最大を示し, 夏以降秋まで産仔による減少を続ける。越冬した胚は春に産出し, この季節の胚数は最小となり, 大谷及び甲野ともに約250個であった。卵は4月下旬から10月中旬までの長期間にわたり保育嚢に継続して供給され, 4月下旬から8月下旬までに供給された卵は6月下旬から10月中旬に稚貝となり産出されると推定された。8月下旬以降の供給された卵は越冬し, 翌春の4月以降6月までに稚貝となり産出されると推定された。温暖期の4月から10月の胚の成長速度に相違がないと仮定した場合, 再生産力として1母貝当り大谷で1550個/年から2100個/年, 甲野で約1200個/年が見積られた。
著者
河合 渓 山口 志織 井手 名誉 五嶋 聖治 中尾 繁
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.105-112, 1994-08-31
被引用文献数
4

北海道北東部に位置するサロマ湖において1990年12月から1993年10月にかけてヒメエゾボラNeputunea arthriticaの生殖周期, 寄生虫による感染個体の割合とこれらの個体の生殖腺発達について検討を行った。組織学的観察により生殖腺と貯精嚢の発達過程を卵巣と精巣は4期, 貯精嚢は3期に区分した。その結果, 雌雄共に1年を周期とした生殖周期が示された。発達過程は卵巣で8月∿11月が回復期, 10月∿4月が成長期, 4月∿7月が成熟期, 5月∿8月が放出終了期であり, 精巣は4月∿5月が回復期, 4月∿7月が成長期, 8月∿12月が成熟期, 11月∿4月が放出終了期であった。また, 貯精嚢は7月∿8月が休止期, 9月∿12月が貯留期, 4月∿6月が放出終了期であった。その結果, 交尾期は4月∿8月, 産卵期は5月∿8月と推定された。また, 雌では放出終了期の個体の割合が非常に低いことが示された。寄生虫に感染した雌個体は生殖巣指数(GSI)の値が周年にわたり非常に低く, 生殖腺はほとんど発達していないと考えられる。一方, 感染雄個体のGSIは低い値を示しているが, 非感染個体のGSIの周期と同調した傾向を示しており, 寄生虫に感染しても生殖腺は発達すると考えられる。寄生虫感染個体の割合を湖内各地で調べたところ, 感染率は0%から60%と様々であったが, 全域の感染率は3.7%と低い値を示した。これらの結果から, 寄生虫の感染はヒメエゾボラの生殖腺の発達に影響を与えているが, 湖全域での産卵抑制の主要な原因にはなっていないと考えられる。
著者
近藤 高貴 山田 雅彦 草野 恭文 酒井 健司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.177-179, 2000-06-30
被引用文献数
4

カワシンジュガイの天然宿主としては, これまでヤマメ, アマゴ, ヒメマスとニジマスの4種が知られている。これらの魚種は全てサケ属に属し, これまでイワナ属の魚種がカワシンジュガイの宿主になることは報告されていなかった。北海道富良野市内を流れる布礼別川で1997年7月7日に採集したアメマスとカワマスの鰓に, カワシンジュガイの幼生が多数寄生していることを見いだした。この幼生の殻長は0.22∿0.37 mmで, 放出時の幼生の大きさ(殻長約0.07 mm)に比べるとかなり成長していた。このことから, イワナ属に属するこの2種がカワシンジュガイ幼生の宿主となっていると考えられた。
著者
バーチ J. B.
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.20-27, 1968-08-31

核型分析が近縁種問の類縁関係を知るのに非常に有効であることは明かであるが, 軟体動物では僅かにSTAIGER(1954)その他数篇の報告があるに過ぎない。これはよい検鏡標本を作るのが大変困難なためで, この問題を解決するために著者は組織培養を計画した。材料はCatinella vermeta(SAY)(オカモノアラガイ科)とHelix pomatia L.(ブドウマイマイ, エスカルゴ;マイマイ科)である。1) 生殖腺の摘出。殻をよく洗い, 70%アルコールで拭き乾いてからこわして軟体部を取出す。次に中腸腺(肝ぞう)に埋没している生殖腺(両性腺)を注意深く摘出する。この際, 小葉を傷つけぬことが大切である。生殖腺は蝸牛用生理塩水で数回洗った後, 1&acd;2mm^2に切刻んで手早く生理食塩水で洗って培養管に入れ培養液に浸しておく。使用器具その他は充分消毒滅菌し, 殺菌灯下で操作することはいうまでもない。2) 培養。4種の培養液(調製等については文献及び付記参照)を使用したが, 結果は何れも良好であった。培養液には何れも10^<-3>モルになるようにコルキシンを添加する。濃度は10^<-5>, 10^<-7>でも効果があった。培養管は室温(23℃)及び15℃に4日間おいたが, 大抵は42&acd;48時間後検鏡標本を作った。1&acd;24時間位では分裂像は稀である。また培養温度は23℃も15℃も大差なかった。3) 検鏡。1mm^2位の小片をスライドに取り, 醋酸オルセイン押しつぶし法で検鏡する。4) 結果。C. vermetaでは4対の中部付着型(中部狭窄型, V型ともいう)と小さい2対の次中部付着型(L型)の染色体があり, そのうち1対は他のどれよりも大きい。H. pomatiaでも前種同様で端部付着型(I型)の染色体はないが小型で数が多く, 16対の中部付着型, 11対の次中部又は次端部付着型(J型)の染色体が見られた。両種共染色体の長さは, 細胞が異ってもほぼ一定していた。このように組織培養法が核型の分析や比較に応用されれば, 系統分類学上多大の効果をもたらすものと信ずる。(稲葉明彦 抄訳)
著者
湊 宏
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.109-111, 1975-09-30

Land snails of the Genus Parmarion belonging to the family Helicarionidae include two species (HOFFMANN, 1940). The specimen of Parmarion martensi SIMROTH, 1893, reported in this paper was collected by Mr. K. UOZUMI on January 2th, 1975 from Ishigaki Island, the southern Ryukyus, Japan. The reported distribution of Parmarion has been limited to the Southeast Asia (Hainan Is., Cambodia, Sumatra, Java, Lumbok and Borneo) and the northernmost record was from Hainan Island, China. This specimen here reported represents the first record of the species from Japan, or some 1400 km northeastern range extension.
著者
近藤 高貴
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.227-236, 1987-12-31
被引用文献数
5

岡山県旭川水系の祇園用水に生息するイシガイ類7種の繁殖期を調べた。その結果, グロキディウム幼生の放出時期に関して"冬繁殖"と"夏繁殖"の2つのグループが認められた。ここでは冬繁殖とは水温10℃以下でもグロキディウム幼生を放出できるグループ, 夏繁殖は水温10℃以上でしかグロキディウム幼生を放出しないグループと定義した。また, カタハガイでは寄生期間中に幼生の殻の生長が見られたが, 他の種では見られなかった。以上の結果と文献の資料に基づいて, 日本産イシガイ類の繁殖様式を, 1)冬繁殖で寄生期間中に幼生が生長する種(カタハガイ), 2)夏繁殖で寄生期間中に幼生が生長する種(カワシンジュガイ), 3)冬繁殖で寄生期間中に幼生が生長しない種(ニセマツカサガイ, オトコタテボシ, カラスガイ, ドブガイ, マルドブガイ), 4)夏繁殖で寄生期間中に幼生が生長しない種(マツカサガイ, オバエボシ, イシガイ, タテボシ, ササノハガイ, トンガリササノハガイ, イケチョウガイ)の4つのタイプに分類した。
著者
ブシェ フィリップ ポッペ ギド
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.15-32, 1988-04-15

Alcithoe aillaudorum n. sp. is the first Alcithoe known outside New Zealand waters ; it is however not considered a Gondwanian vicariant relict but is probably a recent immigrant that dispersed from New Zealand to New Caledonia via the Norfolk ridge. Lyria exorata n. sp. is known from Capel and Kelso Banks, two submerged flat plateaus surrounded by abyssal depths in the Coral Sea. L. habei Okutani, 1979 is a new record for New Caledonia. Records of other Lyria are reviewed and summarized. Although the distribution of Lyria in the Western Pacific corresponds rather well with the limits of the Pacific plate, this distribution appears to be a result of constraints in larval biology rather than a reflection of the plate tectonic history of the area.
著者
ブシェ フィリップ ワレン アンドル
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.172-184, 1988-10-15

Exilioidea Grant & Gale, 1931 is transferred from the family Buccinidae to the Turbinellidae based on its radular and shell morphology. From an examination of types and representative material of E. rectirostris (Carpenter, 1864), E. kelseyi (Dall, 1908), and Plicifusus obsoletus Talmadge, 1971, it is concluded that these names are synonyms and based on a northeast Pacific species with great, clinal, latitudinal and bathymetrical variation. The East Pacific abyssal Fusus rufocaudatus Dall, 1896 is transferred to Exilioidea and three new species are described : E. indica, Indian Ocean, 2900-4040 m ; E. costulata, SE Asia, 1025 m ; E. atlantica, Gulf of Mexico, 880-3365 m.