著者
大友 堅一郎
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.519-522,a1, 2008-06-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
2

岩出山大堰の位置する大崎耕土は, 宮城県北部に広がる県内有数の穀倉地帯 (約20,000ha) であり, 全国的に銘柄米として知られている「ササニシキ」「ひとめぼれ」の発祥の地でもある。本耕土の用水源の一つである北上川水系江合川は, 上流で荒雄川とも呼ばれ, その源は鳴子町 (現大崎市) 鬼首の中央にある荒雄岳であり, その麓にある鳴子ダムを経て大崎耕土を横断して北上川に合流している。大堰は, この江合川から取水し大崎耕土の一角 (約4,000ha) を灌漑するため, 約400年前に仙台藩祖伊達政宗公が岩出山の地に築造したものである。その大堰の役割や築造から改修・復旧の変遷等について紹介する。
著者
塩野 隆弘 原 貴洋 山元 伸幸 原口 暢朗 生駒 泰基
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.75, no.9, pp.817-820,a2, 2007-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
11

サトウキビ栽培圃場における労力的・経済的負担が少ない営農的赤土流出防止対策法として, 草生帯とソバ栽培導入による対策技術に着目し, これらの赤土流出に対する有効性とその負担について調査した。野外試験の結果, 設置幅0.5mの草生帯とソバ栽培導入による対策の赤土流出軽減率はそれぞれ68%と39%で, 赤土流出に対する有効性が示唆された。また, これら対策の実施による負担費用はサトウキビの粗収益の3~4%と試算された。ソバ栽培導入による対策では, ソバワラ生産量の増加によって対策効果の向上が期待でき, ソバ子実収穫量の増加により負担経費の削減が期待できることが示唆された。
著者
今橋 真二
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.740-741,a3, 2007

高知県中西部の二級河川新荘川は日本で最後にニホンカワウソが現認された川として有名である。いまなお清涼な水質を保つ新荘川下流域には, 現在14カ所の農業用取水堰があるが, 河床低下等によりアユ等の遡上を阻害して炉る状況にある。本報では, 学識経験者, 地域住民, 漁業関係者の意見を反映させながら改良に取り組んだ魚道工事について紹介する。
著者
中島 善人 宇津澤 慎
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.795-799,a1, 2008-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

我々は, 核磁気共鳴スキャナーとよばれる装置を開発中である。この装置は, 核磁気共鳴分光の原理を用いて, 原位置またはオンサイトで試料中の水を定量かつリアルタイムで計測できるポテンシャルがある。片側開放型という特殊な構造を採用しているので, 計測対象がどんなに大きくとも, その表面を非破壊でスキャンできるという特長がある。この装置が農業農村工学に使える可能性があることを, 2つの室内実験, すなわち土壌サンプルの体積含水率計測, セメントペーストの硬化過程のモニタリング, の成功によって例証した。
著者
吉田 貢士 塩沢 昌 田中 幸夫 星川 和俊
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.75, no.11, pp.967-970,a1, 2007

平成16年10月に発生した新潟県中越地震では, 中山間地域に散在した集落へ至る交通網等が寸断され, 新潟県旧山古志村をはじめとする各地で集落が孤立し,「孤立集落」の深刻さを浮き上がらせた。本研究では, 中越地震において被害が最も甚大であった旧山古志村および小千谷市, 川口町の信濃川右岸地域を対象として集落の孤立リスクを既存のGISデータをもとに検討した。また, 容易に入手可能な50mメッシュ標高データを用いて, 中越地震発生時の道路寸断に伴う集落の孤立状況を勘案し, 各道路の寸断リスク・集落の孤立リスクの分布図作成を行った。
著者
田代 優秋 森 淳
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.365-370,a1, 2016

<p>農業農村整備事業における環境配慮は原則化によって法的根拠も得られ,社会全般としては「環境配慮はよいこと」という捉えられ方をしているが,現場では今なお揉めてしまう。本報では,環境配慮を巡るこれまでの議論を整理しながら,環境配慮の「現場の難しさ」が生産現場において当事者間の立場や考えの違いによってうまれるしっくりこないモヤモヤとした感情と捉えた。その改善のためには俯瞰的な事例の分析と,難しさを二項対立で解くのではなく農家にとって「不公正性の問題」で捉える必要性を指摘した。</p>