著者
西谷 隆夫
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1_9-1_21, 2008-07-01 (Released:2011-05-01)
参考文献数
29

今回の「技術の原点」は,DSP(Digital Signal Processor: 信号処理プロセッサ)の発明者の一人として世界的に認知されている西谷隆夫先生によるDSP 黎明期から現在までの発展についての後編です.(前編:http://w2.gakkai-web.net/gakkai/ieice/vol4.html)後編では,DSPの市場が拡大するにつれ,非技術的な競争が支配的になっていく現在までの状況,及び,今後の発展について論じて頂いています.前編に引き続き,数々のイノベーションについての,興味深いエピソードをお楽しみ下さい.(編集委員会)
著者
藤本 大介
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.142-150, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)
参考文献数
40

近年,外界の情報を取得し,自身の制御を行う自動運転車などの開発・普及が進んでいる.このような機器においては,外界の情報を取得するセンサを用いる.その際,機器はセンサからの情報を信頼し動作するため,攻撃者によりセンサの情報が改ざんや妨害されるとその動作を不正に制御される可能性がある.このように外界の情報を取得し制御するような機器においてはセンサからのデータのセキュリティを考える必要がある.本稿ではセンサが外界から情報を取得する過程におけるセキュリティについて概観する.
著者
土屋 利雄
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.181-193, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)
参考文献数
16

現在,我が国で深海探査といえば海洋研究開発機構(JAMSTEC)のほぼ独壇場である.1971年に発足したJAMSTECは,80年代に入るまで所有船舶もなく政府からの深海探査のための予算も多くは望めなかった.そのような状況で我々は,日本で初めて米国製の深海探査ソーナーシステムを導入し,それらの技術を習得しながら運用を行ってきた.更に本稿では,国産化された様々なソーナーを使って成功した第二次大戦中の沈没船や墜落したロケットエンジンを発見した手法についても解説する.
著者
杉山 昭彦
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.51-60, 2012-07-01 (Released:2012-07-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

最近25 年にわたるオーディオ符号化技術の発展,特にMPEG オーディオ標準化の過程を概観し,筆者が開発や標準化に関与した技術を紹介する.最初に,MPEG オーディオ標準化の歴史をたどり,オーディオ符号化の発展を概観する.次に,MPEG-2 AAC の標準化以降,情報圧縮の基本フレームワークとして確立されたMPEG-2/-4 AAC の符号化処理を説明する.続いて,筆者が技術開発や標準化に深く関与した技術について,その内容を紹介する.最後に,冗長性削減の観点から,オーディオ符号化技術発展の流れを概観し,今後の展望を述べる.
著者
芳賀 高洋
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.205-216, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)
参考文献数
20

本稿は,2020年度,COVID-19パンデミックの対応として,教育関係者だけではなく,世間一般からもかつてない大きな注目を集めた「教育の情報化」,特に「オンライン教育」における著作権取扱いに関して詳しく解説し,今後の課題を述べる.なお,著作権取扱いに関しては2020年1月に「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」が発表した「改正著作権法第35条 運用指針策定に関する論点整理」に基づき解説する.
著者
阪井 和男
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.266-287, 2018-04-01 (Released:2018-04-01)
参考文献数
81

多重知能理論の登場と現在までの普及の現状を振り返り,教育への応用の事例を紹介する.特に,大学教育への適用を念頭に,最近話題になっているポートフォリオ評価やアクティブラーニングへの適用について論じる.そして,大学の正課外教育の活動として実践され始めたエクスターンシップにおけるアンケート分析から,事前・事後の回答の変化に焦点を当てた多重知能理論に基づく分析が有効であることを示し,この変化を説明する場のモデルを提案し場のパラメータを推定する.なお,場のパラメータの妥当性についても論じる.最後に,エクスターンシップの参加学生は集団全体としてはチクセントミハイ(M. Csikszentmihályi)のフロー状態へ向かっていることを定量的に示す.
著者
香田 徹
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.4_16-4_36, 2009-04-01 (Released:2011-05-01)
参考文献数
101

CDMA は信号の時間・周波数の2軸に加えて+1,−1 の2値の拡散符号という第3の独立軸を設けることでTDMA, FDMA に代わり多重化を達成する第3の多元接続方式である.“ディジタル通信”でアナログ量が関与するのは,雑音の混入が不可避な,ヒトとかかわる入出力部分と通信路の前後に限定され,これらの部分で信号処理は重要な役割を果たす.本論文ではHeisenberg の不確定原理,シャノンの標本化定理,2WT 定理等の通信の基本原理に立ち戻り, 拡散符号の代数的対確率的生成法,i.i.d. 対マルコフ符号, ナイキスト条件の要否, 直交波形対擬似直交波形,Gabor 空間の方形排反分割対重畳分割等の対比の観点からガウス振幅の搬送波及びカオスで生成された拡散符号によるCDMA の有用性を論じる.
著者
坊農 真弓 吉川 雄一郎 石黒 浩 平田 オリザ
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.326-335, 2014

人間の「社会性」とは何か.この問いに対し,ロボット・アンドロイド演劇プロジェクトは一つの答えを示してくれる可能性がある.本解説記事では,まず本プロジェクトの経緯と背景を説明する(2.).次に,ロボット・アンドロイド演劇をエスノグラフィ及び会話分析することの意味を,演出場面に実際の起こったやりとりの事例分析に基づいて明らかにする(3.).続いて,ロボット・アンドロイド演劇のロボット工学・認知科学における意味を,制作の実態と世界公演に対する評価などから議論する(4.).最後に,ロボット・アンドロイド演劇の演劇としての意味を,社会におけるこの試みの位置付けを明らかにすることから考察する(5.).
著者
山根 信二
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.197-204, 2016

混乱するハッカー及びハッキングの理解を整理するために,本稿ではこれまでのハッカーのパブリックイメージがどのように形成されたのかをたどり,それらを史的展開の中に位置付ける.ハッカーの極端なパブリックイメージは時代ごとの不安が投影されていると考えることができる.これらはマスメディアによって作られただけでなく,計算機科学者や学会も役割を果たしてきた.更にハッカーに注目することで,これまでのコンピューティングの歴史を見直す新たな試みについて論じる.最後に今後の人材育成戦略についても取り上げる.
著者
林 優一
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.28-37, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)
参考文献数
13

情報セキュリティ確保に関する重要性が日々増大する中,上位レイヤにおけるセキュリティ確保と同様,物理層におけるセキュリティ確保の重要性も高まっている.近年の計測器の高精度化・低価格化,計算機の高速化と記憶装置の大容量化に伴い,従来では技術的に困難だった高度な攻撃の脅威が増大しており,こうした脅威は軍事・外交分野のみならず民生品へと拡大している.本稿では,物理層におけるセキュリティの中でも,攻撃の痕跡が残り難いため,その脅威の検出が困難とされる電磁波を通じたセキュリティ(電磁情報セキュリティ)の問題に焦点を当て,民生用機器にも拡大している電磁波を通じた情報漏えいの脅威について解説するとともに,情報漏えいのメカニズム,そして,メカニズムに基づく上位レイヤのプロトコルやアプリケーションに依存しない情報機器全般に適用可能な漏えい情報の計測を困難化する対策手法を紹介する.
著者
岡崎 秀晃 磯貝 海斗
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.44-59, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)
参考文献数
47

各産業に大きな利益と社会に大きな利便をもたらすと期待されている飛行型ドローン(マルチロータ)には,墜落という潜在的リスクが存在するため,モータ故障時の飛行制御の確立は重要課題となっている.本論文では,主としてモータの完全な故障問題に注目して,マルチロータのモータ故障問題の研究成果を紹介する.また,オイラー角の状態変数アプローチに基づいた,動作点(平衡点)とモータ完全故障時の墜落回避飛行状態の関連性の研究についても述べる.
著者
西浦 敬信
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.57-64, 2016-07-01 (Released:2016-07-02)
参考文献数
28
被引用文献数
1 7

パラメトリックスピーカを用いた高臨場音場再現手法について簡潔に解説する.特にパラメトリックスピーカの原理や従来の変調方式を説明した上で,高音質と高音圧を同時に実現可能なハイブリッド型振幅変調方式や音圧が最大となる距離を推定可能な復調評価指標を紹介する.加えて空間の1点でのみ音場を再現可能な極小領域オーディオスポット方式やスピーカの近傍でのみ音場を再現可能な近距離音響再生方式,及び音場再現エリアを制御可能な新しい音響再生デバイスの紹介など最新の研究動向を分かりやすく解説する.
著者
仲地 孝之
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.288-301, 2018-04-01 (Released:2018-04-01)
参考文献数
43
被引用文献数
1

MPEG Media Transport(MMT)は,ISO/IECのMoving Picture Experts Group(MPEG)が制定する次世代メディア伝送の国際標準規格である.高効率映像符号化のHEVC,マルチチャネルオーディオ符号化の3D Audioを含むISO/ICE23008のシステムパートとして位置付けられる.放送や通信など多様なネットワークでのメディア配信に適した方式であり,高信頼伝送のための機能もサポートしている.ISO/IEC 23008-1はメディアのカプセル化,配信プロトコル,制御情報を規定し,ISO/IEC 23008-10では高信頼伝送のための誤り訂正符号を規定する.現在は,実応用へ向けた取組みが加速している.本稿では,MMTの規格概要について解説するとともに,通信・放送分野への具体的な応用例として,① 4K・8K次世代ディジタル放送,② 超臨場感通信,③ 低遅延・マルチキャスト映像配信について紹介する.