著者
乾 健太郎 石井 雄隆 松林 優一郞 井之上 直也 内藤 昭一 磯部 順子 舟山 弘晃 菊地 正弥
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.289-300, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
54

自らの判断を説明できる能力は自然言語処理システムに期待される重要な要件である.説明はコミュニケーションであるから,説明できる能力についても,説明の目的や受け手との共通基盤化といったコミュニケーションの概念とリンクさせて研究することが望ましい.ライティング評価はそのような研究を進める格好の応用領域である.ライティング評価は,教育シーンにおいて学習者が産出するテキスト(記述式答案や論述文など)の質を評価・診断し,学習者にフィードバックすることによって学習を支援するタスク群を指す.教育目的の評価では説明は本質的に重要であり,したがってそこには説明の目的や手段など,教育学的な研究や実践の蓄積がある.ライティング評価ではそうした蓄積とリンクさせながら「説明できる自然言語処理システム」の研究を進めることができる.本稿では,ライティング評価における説明に焦点を当て,どのような評価タスクにどのような説明方法が考えられるか,どのような技術的実現手段が考えられるか,を論じる.近年の研究動向を概観しながら,内容選択,言語産出各レイヤの評価における説明生成の可能性を論じ,研究者のこの領域への参入を呼びかけたい.
著者
小林 瑞樹 林 優一 本間 尚文 水木 敬明 青木 孝文 曽根 秀昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ, 環境電磁工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.266, pp.11-15, 2014-10-16

これまで意図的な電磁妨害については,注入する妨害波の周波数とその強度のみに着目しており,妨害波を注入するタイミングについては十分な検討が行われていない.これに対し,本稿では,タイミングを制御した数V程度の妨害波を注入し,機器内部で特定処理が実行されたタイミングで電磁妨害を行った場合,機器に発生する故障について検討する.本検討では,機器の内部で実行される処理として暗号処理に着目し,その処理に応じて機器外部に伝搬するコモンモード電流を観測することで妨害電磁波を印加するタイミングを取得し,これを基に数百MHz程度の正弦波を数V程度の強度で電源ケーブル上に印加する.実験では,評価対象機器の内部に実装された暗号モジュールにおいて暗号処理を実行し,機器に接続された電源ケーブルから暗号処理に応じて発生するコモンモード電流をカレントプローブにより観測する.この様にして得られたコモンモード電流をトリガ信号として用い,妨害波を注入するタイミングを制御する.上述の手法を用いて意図的な電磁妨害を行った結果,暗号処理が実行されるタイミングにおいて高い確率で故障が発生することを確認した.また,故障により生ずる誤り出力から,暗号化に用いる秘密鍵が漏えいすることも確認した.
著者
石井 雄隆 菊地 正弥 舟山 弘晃 松林 優一郎 乾 健太郎
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.4, pp.1-7, 2022-11-28 (Released:2022-11-28)

AIの判断結果の理由の説明や,品質を評価できる説明可能なAIについて近年盛んに議論されている.本研究では,説明可能なAIを指向した和文英訳自動採点システムの開発と評価を行った.このシステムでは,複数の評価観点を採点項目として反映したモデルにより自動採点を行い,学習者に診断的なフィードバックを行うことが可能となる.日本人大学生を対象とした刺激再生法を用いた実験の結果,システムを用いた修正の傾向やシステムの利点と改善点が明らかとなった.
著者
渡邉 研斗 松林 優一郎 深山 覚 中野 倫靖 後藤 真孝 乾 健太郎
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2017-SLP-116, no.16, pp.1-12, 2017-05-08

本研究では楽曲のメロディを考慮した歌詞の自動生成手法を提案する.人間の作詞現場においては,予め作曲されたメロディに対して歌いやすい歌詞を創作する 「曲先」 と呼ばれる方法が広く行われている.しかしながら,自動歌詞生成の既存手法の多くは,韻やシラブルに基づく生成手法を提案しているものの,メロディと歌詞の関係を考慮しておらず,メロディの区切りと単語の区切りが一致しないような不自然な歌詞を生成してしまう問題がある.本研究では,メロディの音符と歌詞の読みが対応づいたデータを用いて,メロディの音の長さ ・ 休符の位置 ・ 繰り返し構造などの特徴と歌詞の相関を詳しく分析し,その結果をもとにした自動歌詞生成モデルを構築する.結果として作成されたモデルにより,休符や長い音符付近で行や段落 (連) が区切れている自然な歌詞が自動生成された.
著者
小林 優一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

我が国の地域医療計画の現状として、制度に明記された文言の背景には、医療圏の定量的な評価が必要だとされているが、GISによる分析技術の普及前は行政区域による圏域設定が一般的であった。本稿では、GISによる診療圏分析を行うことで、神奈川県次期「地域医療計画」へ医療圏域内外のアクセシビリティの分析手法のひとつとして、GISがどの程度、実証的に分析出来得るのかを示した。 <br> 地域医療計画の最新の政策動向としては、厚生労働省(2012)次期医療計画の作成指針に「自然的社会的条件を無視した医療圏設定になる可能性が有ること。」が指摘された。だた、先行研究より、医療圏再設定の条件として示されている①人口規模や②流出入率の具体的な数字に関し、根拠と成り得る資料等は無いことが分かった。本稿では、医療圏域の設定の評価を行う前段階として、先ず神奈川県内の医療圏域(全11医療圏)の構造を分析する為に、日常生活圏を設定し、GISを用いて医療施設から到達圏分析を行った。<br> 高齢者の日常生活圏は、石原(1984)、登張ら(2003)(2004)を参考に、大都市部・地方部問わず、時速3km/h(徒歩速度)で500m圏内に設定した。これらの結果から研究対象地域の病院・診療所からの時間距離の10分を日常生活圏として設定し、到達圏分析を行った。次に、田中(2001)を参考に、如何なる移動手段を用いても、日常生活圏に関しては、医療機関から30分圏域を移動に伴う最長時間と設定し、医療機関からの道路ネットワークを用いて到達圏を分析した。<br> また、神奈川県全域の医療機関、病院(全343施設)・クリニック(全6544施設)を対象に、標榜出来る診療科33科ごとに到達圏分析を行った。その結果、神奈川県では、「人工透析施設」が横須賀三浦地区で不足している点が分かった。神奈川県次期「地域保健計画」中に、人工透析が可能な施設数が相対的に不足していることから、その事実を加筆し、今後の対策を同時に考えていく必要性があることを指摘したい。<br> 最後に、今後の人口構造の変化に伴い、病院間の統合や新設に関する議論が活発に進んでくることが予想される。この時流に従い、本稿では、計画予定の交通インフラ拡張及び病院新設の神奈川県藤沢市の事例を参考に、当該地区のアクセス構造の変化について、GISを用いて分析した。その結果、湘南藤沢記念病院(仮称)から距離にして30分圏域に藤沢市全域で高齢者人口数が相対的に多い沿岸部、つまり片瀬江ノ島周辺地区まで、到達圏域が拡張されたことが分かった。 <br> &nbsp;
著者
若林 哲宇 丸山 誠太 星野 遼 森 達哉 後藤 滋樹 衣川 昌宏 林 優一
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.2, 2017-10-16

電波再帰反射攻撃(RFRA: RF Retroreflector Attack)とはサイドチャネル攻撃の一種である.盗聴を行いたいターゲットにFETとアンテナから構成されるハードウェアトロイ(HT)を埋め込み,そこへ電波を照射するとHTを流れる信号が反射波で変調されて漏洩する.攻撃者はこの反射波を復調することでターゲットの信号を盗聴することが可能となる.反射波の復調にはSDR(Software Defined Radio)を利用する方法が安価で簡単であるが,性能の限界が専用ハードウェアと比較して低い.本研究ではSDRによる電波再帰反射攻撃の脅威を示すとともにその限界を調査した.
著者
林 優一
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.28-37, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)
参考文献数
13

情報セキュリティ確保に関する重要性が日々増大する中,上位レイヤにおけるセキュリティ確保と同様,物理層におけるセキュリティ確保の重要性も高まっている.近年の計測器の高精度化・低価格化,計算機の高速化と記憶装置の大容量化に伴い,従来では技術的に困難だった高度な攻撃の脅威が増大しており,こうした脅威は軍事・外交分野のみならず民生品へと拡大している.本稿では,物理層におけるセキュリティの中でも,攻撃の痕跡が残り難いため,その脅威の検出が困難とされる電磁波を通じたセキュリティ(電磁情報セキュリティ)の問題に焦点を当て,民生用機器にも拡大している電磁波を通じた情報漏えいの脅威について解説するとともに,情報漏えいのメカニズム,そして,メカニズムに基づく上位レイヤのプロトコルやアプリケーションに依存しない情報機器全般に適用可能な漏えい情報の計測を困難化する対策手法を紹介する.
著者
永田 真 三浦 典之 本間 尚文 林 優一 崎山 一男 Danger Jean-Luc
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

サイドチャネル攻撃への耐性を有し、高度に電磁波セキュリティを保証する暗号VLSI技術を確立した。具体的には、(1)暗号コア近傍に接近する電磁界マイクロプローブをオンチップで検知するサイドチャネル攻撃センサの回路技術、(2)暗号コア近傍における電磁界マイクロプローブとサイドチャネル攻撃センサの結合の電磁界シミュレーション及びセンサ回路の動作シミュレーション手法、(3)暗号コアから漏洩するサイドチャネル情報を用いて暗号コアを認証・真正性を確認する技術の開発に成功した。また、半導体集積回路の試作チップを用いたプロトタイプシステムを構築し、研究成果の効果を実証した。
著者
小林 優一 河端 瑞貴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

2011年,厚生労働省は医療圏の設定において,従来の人口規模に加え,基幹病院までのアクセシビリティを考慮するとの指針を示した.そこで本研究では,医療機関へのアクセシビリティに基づく新しい医療圏(医療アクセス圏)を提案し,沖縄の事例を通じて医療の受けやすさを比較する.対象地域は,地理的に内外の流入の少ない沖縄本島とし,対象医療機関は基幹病院の1つである救急告示病院とした.<br> まず,保健医療サービスの需要(人口)の分析を行った.医療サービスを受診する需要サイドの2010年から2050年にかけての人口総数の推移を調べた.その結果,沖縄本島の3つの医療圏の中で,北部医療圏の総面積が沖縄本土の36.2%と最も大きく,2010年から2050年にかけての人口減少率が2倍以上に該当する地区数が,他の医療圏と比較して著しい多いことがわかった.沖縄本土の2倍以上減少率をする地区全体に占める,北部医療圏の割合は39.8%である.<br> 次に,沖縄本島における,救急告示病院から30分圏域を表す医療アクセス圏を作成した.移動限界距離は,カーラー救命曲線(Cara,1981)を基に,多量出血を伴う疾患の致死率が50%以上に高まる30分圏域と定めた.その結果,沖縄北部医療アクセス圏では医療アクセス圏外で暮らす人が101,272人中20,620人になっていた.さらに,各医療圏の救急告示病院数と医療アクセス圏内の地区数を比較した.北部医療圏の総面積は中部医療圏に比べ,約1.9倍大きい.しかし,救急告示病院の圏域内の総数は同数である.これらの数値から,北部医療圏の救急医療を受療出来る機会は相対的に少ないと予想された.<br> さらに,北部医療アクセス圏と隣接する圏域との救急医療の受診しやすさを比較するために,各医療圏のアクセシビリティ指標を算出した.アクセシビリティ指標の算定式は, two-step floating catchment area (2SFCA) 手法(Luo and Wang,2003)を用いた.当初は,北部医療圏は沖縄本島の3つの医療圏内で面積が最も大きく,救急告示病院も少ないことから,需要に比べ供給が少ない,いわゆる需要過多になろうと予測していた.しかし,アクセシビリティ指標を計算することにより,医療アクセス圏内だけで,隣接する圏域同士を比べたら,北部医療圏は中部医療圏に比べ約2.8倍受診しやすいことがわかった.<br> 上記の様な,圏域ごとのアクセシビリティ指標を用いた比較だけでは,具体的に圏域内の,何処の地区から救急告示病院までのアクセシビリティにコストが生じるのか見えづらいという課題があった.これを改善するために,アクセシビリティの算出にODコストマトリクスのデータを用いて,北部医療圏内の医療サービスが相対的不足地区を見つけるための分析を行った.ODコストマトリクスのデータには,3つの救急告示病院と町丁字毎の重心からの1.距離と2.病院病床数,これら2つの変数を用いて(Huff,1964)の修正ハフモデルを用いて,分析した.修正ハフモデルとは,商業施設の集客力を測るためには,売り場の面積に比例し,距離の2乗反比例するというモデルである.今回は,北部医療圏にある3つの救急告示病院における吸引力を算出するために,商業施設の売り場面積に当たる変数に病床数を用いた.北部医療アクセス圏の小地域(町丁字)毎に修正ハフモデルを参考としAccess Cost Index(ACI)を求めた.2010年より,厚生労働省が沖縄県の医療圏見直し対象圏域として指摘した北部医療圏を対象に,救急告示病院へのアクセシビリティを小地域毎にACIを算出した.その結果,北部医療圏の中心市街地の北西部から南部にかけて,3つの救急告示病院から離れるに従いACIは徐々に下がることが確認された.<br> 本研究では,アクセシビリティ指数を医療アクセス圏毎に計算し,比較することで,隣接する医療アクセス圏同士の受診のしやすさが明確になった.2013年,沖縄県保健医療計画(第6次)によると,北部医療圏は今後も医療過疎地域として指摘されており,人口対医療従事者数や人口対病床数で同県他医療圏同士を比較する分析方法だと,救急医療へのアクセスのしやすさに関してやや現状に即していない結果が出てしまっていた.<br> 本研究では,救急医療へのアクセスのしやすさをより現状に即した分析をする為に,医療の受診しやすさに関して,アクセシビリティという指標に着目して,医療圏の現状を分析した.具体的には,救急医療を受診する際に用いる医療アクセス圏マップを作成した.さらに,医療アクセス圏同士を,アクセシビリティ指標を用いて比較することで,医療アクセス圏ごとの受診しやすさが明らかになった.
著者
松林 優一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.14-15, 2015-12-15

述語項構造は述語を中心として文章中の各単語の意味的な役割関係を結びつける表現であり,複雑な文構造・文章構造を持った文章において「誰が,何を,どうした」といった文章理解に重要な情報を簡潔に表現する.既存の解析器では述語と項の間に直接的な文法上の主従関係がある比較的容易な事例においてはF値で90%弱と高い精度が得られているものの,項の省略を補う必要がある事例においては,50%未満の低い精度水準にとどまっており,解析の質に大きな開きがある.一方,日本語では項が省略される事例は全体の40%を占めるため,これらをどのように補うかが重要な課題となっている.
著者
松林 優一郎 岡崎 直観 辻井 潤一
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.4_59-4_89, 2010 (Released:2011-06-09)
参考文献数
26

FrameNet,PropBank といった意味タグ付きコーパスの出現とともに,機械学習の枠組みを利用した自動意味役割付与システムが数多く研究されてきた.しかし,これらのコーパスは個々のフレームに固有の意味役割を定義するため,コーパス中に低頻度,或いは未出現の意味役割が数多く存在し,効率的な学習を妨げている.本論文は,意味役割付与における意味役割の汎化問題を取り上げ,既存の汎化指標と新たに提案する指標を役割の分類精度を通して比較し,それぞれの特徴を探求する.また,複数の汎化指標を同時に利用する分類モデルが自動意味役割付与の精度を向上させることを示す.実験では,FrameNet において全体の精度で 19.16% のエラー削減,F1 マクロ平均で 7.42% の向上を,PropBank において全体の精度で 24.07% のエラー削減,未知動詞に対するテストで 26.39% のエラー削減を達成した.