著者
松元 亮治 高橋 博之
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.864-867, 2013-12

X線天文衛星やガンマ線望遠鏡等による観測を通して,突発的なX線・ガンマ線増光を示す天体が多数発見されてきた.これらのフレア現象では,太陽フレアに類似した天体表面で発生する磁気エネルギー解放に加えて,中心天体の周りに形成される降着円盤および降着円盤コロナ,中心天体近傍から噴出するジェット・アウトフロー中での磁気エネルギー解放と粒子加速が寄与していると考えられている.ブラックホール近傍から噴出するジェットやパルサー風では電磁エネルギーをいかにして熱エネルギーや運動エネルギーに変換するかが問題となっており,その機構として磁気リコネクションによる磁気エネルギー散逸が候補になっている.高エネルギー宇宙物理学分野は相対論的な磁気リコネクションおよび粒子加速の理論・シミュレーション研究と観測・実験の連携を通して急進展が期待される分野であり,100年来の課題である宇宙線加速機構の研究も新たな段階に入りつつある.
著者
河崎,善一郎
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, 2008-07-25

近年の研究成果によれば,雷雲内の電荷分離は,着氷電荷分離機構により理解できる.すなわち通常成熟期の雷雲では,電荷構造は雷雲上部から下部にかけて正負正の三重極構造となっている.そして落雷は雷雲の成熟期に最も頻繁に発生,概ね中層の負電荷域から稀に上層の正電荷域から開始する.また雲内の電荷間での中和で放電の完結する雲放電は,落雷よりもさらに頻繁に発生する.これらの議論を踏まえ,本稿では最後に,雷放電進展の様相を,VHF波帯広帯域干渉計による観測結果として紹介している.
著者
馬田,敏幸
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, 2012-03-25

放射線の個体への影響について,人の疫学調査で得られた知見を一般的な観点から述べ,マウス個体を使ったトリチウム水による高線量・高線量率の研究により,何がわかっているのか明確にする.そして低線量・低線量率の放射線披ばくによる生物影響を感知する実験系をトリチウム生体影響研究に応用した研究や,必要とされている新しい高感度検出系の開発について概説する.
著者
山口 栄一 西岡 孝
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.p743-751, 1993-07

Elementary processes of nuclear fusion reaction in solids have been studied by providing the sample in a vacuum system. The key factor of this study is heterostructures fabricated by depositing thin film oxides and Au on one and the other surface of deuteron-loaded palladium (Pd-D) plate. Using this method, we have detected ^4He production by the real time observation using high-resolution quadrupole mass (Q-mass) spectroscopy. It has been shown that the peak attributable to ^4He mass (4.0026 amu) appeared chaotically when the sample's temperature increased rapidly. The system of H-loaded (Pd-H) heterostructure, on the other hand, produced no peak at 4.0026 amu. We have also confirmed that the peak at 4.0026 amu in the Q-mass spectra is not due to the existence of contaminated ^4He in the air or in the D_2 cylinder used. This result indicates that a new class of nuclear fusion occurs in condensed matter.
著者
泰地,真弘人
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, 1994-04-25

This paper describes the development of special-purpose computer systems for Ising models, "Ising Machine" m-TIS 1 and 2. The first two sections explain Ising models and their Monte Carlo simulations. In section 3 and 4, I describe my motivation to build a special-purpose computer and the development of m-TIS 1. In section 5 and 6, the use of field-programmable gate arrays in a special-purpose computer is discussed. In the last two sections I discuss the potential abilities and future prospects of both Ising machine and a special-purpose computer in general.
著者
草野,完也
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, 2014-02-25

太陽黒点活動にはSchwabeサイクルと呼ばれる約11年の周期変動と様々な長期変動があることがわかっている.特に,17世紀のマウンダー極小期に代表される大極小期は地球気候にも少なくない影響を与えたことが示唆されている.しかし,太陽黒点の周期活動と長期変動のメカニズムは未だに十分理解されていない.太陽表面の振動から太陽内部の状態を再現する日震学の進展とコンピュータによる数値モデルの発達により,太陽活動の基本的な性質を説明すると共にこれを予測する試みが進みつつある.
著者
西川,和男
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, 2013-03-25

我々は放電を用いて空気中の水分子と酸素分子を電離し,空気中に正極性と負極性のクラスターイオンを放出することにより,浮遊菌を除去する技術を開発した.本章では,本技術によるクラスターイオンの生成メカニズム,菌の抑制効果のメカニズムを紹介するとともに,実空間試験において実証されたクラスターイオンの効果について報告する.
著者
永島,圭介
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, 2008-01-25

金属やプラズマのように自由電荷を持つ物質表面では,表面電荷の集団振動である表面プラズモン(あるいは,プラズマ表面波)が存在できる.この集団振動が外部から与えた電磁波と結合した系は表面プラズモンポラリトンと呼ばれる.この表面波が存在できるのは,磁場が横波であるTMモードの場合だけである.1つの境界面にTMモードの電磁波を入射した場合,振幅反射率の特異点(分母がゼロになる点)が表面プラズモンの共鳴条件に一致し,この条件から表面プラズモンの分散関係が得られる.ここでは,実際の実験系に見られるような複数の境界面がある場合について,多波干渉理論を用いて表面プラズモンの正確な分散関係を求めた.さらに,この分散関係を用いて,表面プラズモン共鳴を応用した高時間分解かつ高空間分解のイメージング測定法について議論した.
著者
野田 章 想田 光 白井 敏之
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.461-465, 2010-08-25
参考文献数
32

ベクトルボソンの生成に向け,2次ビームの反陽子を加速器で自在にハンドリング可能な性能に向上する素粒子物理学上の必要から考案されたビーム冷却法は,確率冷却法によりこの目的を達成し,さらに電子ビーム冷却による電子・分子イオン衝突の精密研究やイオンビームの1次元オーダーリングを実現するに至っている.こうした成果をもとに,より低温の極低温ビーム(クリスタルビーム)の実現に向けて,さらに強力な冷却力を有するレーザー冷却を3次元で実現する試みが進んでいる.本章ではビーム冷却により熱を除去し,ビーム温度の軽減を図り,極低温の結晶化ビームの実現を図るアプローチの概要を紹介する.
著者
甲斐 昌一
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.368-373, 2012-07-25
参考文献数
11

本章では生体における非線形力学の話題を提供する.植生パターンのような空間パターン形成などについては,すでにいくつかの論文や解説等で取り上げたので,ここではリズムに関する話題に絞り,植物の発芽にともなう概日リズムの形成過程と雑音の効果を述べる.そこではリズムの誘導同期,いわゆる確率同期現象が観測される.この現象を植物生理や構造の詳細に立ち入らずに,専門外の方々にも理解できるように図を多用しながら紹介する.
著者
栗山 正明
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.1162-1167, 1996-11-25
参考文献数
16

High power negative-ion sources and related technologies regarding neutral beam injection (NBI) system for plasma core heating and NBI current drive in a high density and reactor-grade large size plasma have progressed conspicuously, and a few hundreds keV- class negative-ion based NBI comes into a step of practical use. The 500keV negative-ion based NBI system for JT-60 at JAERI has completed in March 1996 and is increasing the beam power injected into the JT-60 plasma. Additionally the 180keV system for LHD at NIFS is under construction aiming at the completion in 1998. Furthermore, the R&D works of the MeV class negative-ion source and accelerator for ITER are also being progressed, and a high power NBI with MeV class beam energy has become realistic.