出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, 1994

1アジア学術会議~科学者フォーラム~は,日本学術会議の主催により,アジア地域の9か国から,19人の各国の科学界を代表する科学者の参加を得て開催され,それぞれの国籍や専門分野を超えて,アジア地域における学術の振興という共通の目的の下,熱心な議論がなされた。本会合に参加した科学者は,学術の振興を通じた社会への貢献が重要であり,科学者の責務であるということを確認し,学術研究の成果は,人類の共通資産として,文化的,社会的,経済的発展を通じて,世界の平和と人類一の福祉に貢献するものであると信じる。また,そのためには,自然科学者と人文・社会科学者の密接な協力も不可欠である。2本会合に出席した科学者は,アジアの科学者による学術協力についての初の会合を提案し,開催した日本学術会議に感謝し,今後も,このような日本学術会議の努力が続けられることを期待する。3今日,世界は,環境悪化,人口爆発,資源の枯渇など人類の英知を結集して取り組まねばならない深刻な問題に直面しており,本会合での討議は,そのような問題の解決に向けての将来の国際協力に発展していくものである。4持続的開発は,アジア地域の各国にとって,21世紀に向けての共通の重要課題である。地理的,歴史的,文化的に密接な関係を持つアジア地域の科学者は,この問題に協力して取り組むことが重要である。事国際的な研究,技術・資源の共有等に当たっては,地域的な協力が効果的である。今後,そのような領域において,地域の発展のために協力を推進することが必要である。6学術の発展,社会の発展の基盤となる人材の育成は,科学者が地域的に協力して取り組むべき課題である。次世紀に向けて,人材の育成のため,アジアの科学者も協力することが必要である。7各科学者及び各国は,研究者の交流,共同研究,シンポジウム,ワークショップ等による情報の交換を促進するよう努力することが必要である。8学術協力は,対等互恵の原則に基づいて行われねばならない。9本会合の趣旨,提案を受け継ぎ,より密接な学術交流・協力の基盤となる将来の会合が開かれることを期待する。10アジア地域の科学者によるこのような会合を毎年開催すること,当面,日本学術会議がその事務局となること,アジア地域の学術動向についてのニュースレターを定期的に発行することを提案する。
著者
大矢 恭久 増崎 貴 時谷 政行 渡辺 英雄 吉田 直亮 波多野 雄治 宮本 光貴 山内 有二 日野 友明 奥野 健二
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.319-324, 2014-06

本レビューではプラズマ対向材料として注目されているタングステンの試料を,大型ヘリカル装置(LHD)の15サイクル実験(2011年)および16サイクル実験(2012年)期間中にLHD真空容器内に設置してプラズマ環境に曝露した際の水素同位体滞留能変化を調べた.これにより磁場閉じ込め装置の実機環境下での水素同位体滞留の基礎過程を理解するとともに水素同位体滞留能の変化がLHDにおける水素同位体挙動にどの程度影響を与えるのかを評価した.タングステン試料を約5000~6000ショット程度の水素プラズマ,300~800ショット程度のヘリウムプラズマおよび壁調整のためのグロー放電洗浄に曝した後に真空容器から取り出して観察したところ,表面には炭素堆積層が形成されており,その厚さは,堆積が多い場所の試料(DP試料)で4μm程度,熱負荷の高い場所の試料(HL試料)では100nm程度であった.これらの試料に重水素イオンを照射した後,昇温脱離ガス分析を行ったところ,重水素放出特性は純タングステンとは異なり,主要な放出ピークは800K-900Kに見られた.特にDP試料では900Kに大きな脱離ピークが見られた.純タングステンでは400K-600Kに脱離ピークが存在することから,LHDでプラズマに曝されたタングステン試料の重水素捕捉は純タングステンでの重水素捕捉とは状態が異なることが示唆された.LHDプラズマに134ショットだけ曝した試料の表面を観察すると,堆積層と表面近傍に転位ループが高密度に集積していることから,曝露初期には照射損傷導入と堆積層形成がダイナミックに進行し,これらに重水素を捕捉する能力が高いことが示唆された.
著者
辻 義之 田中 宏彦 大野 哲靖
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.85, no.9, pp.620-630, 2009-09-25
参考文献数
17

本章では,計測された時系列データの変動特性を解析するための基本的なツールであるフーリエ変換によるスペクトル解析の基礎について説明する.実験データにスペクトル解析を適用する際に留意すべき点を明らかにする.また相関関数とスペクトルの関係について解説し,スペクトルの理解に資する.クロススペクトルやバイスペクトルなど,さらに進んだ解析手法についても概説する.説明した手法を実際のプラズマ揺動データに適用し,得られた解析結果に対して解釈を与える.
著者
神野 智史 金崎 真聡 松井 隆太郎 岸本 泰明 小田 啓二 山内 知也 上坂 充 桐山 博光 福田 祐仁
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.95, no.10, pp.483-489, 2019-10

レーザー駆動イオン加速技術において,ミクロンサイズの水素クラスターのクーロン爆発を利用して,高繰 り返しで,multi-MeV の純陽子線を発生させる方法を提案した.本研究において,クライオスタットで冷却した 高圧水素ガスをパルスバルブに接続した円錐ノズルを介して真空中に噴射することによりミクロンサイズの水素 クラスターターゲットを発生させる装置を開発した.水素クラスターのサイズ分布は,散乱光の角度分布から Mie 散乱理論に基づき,Tikhonov 正則化法を利用して数学的に見積もった.25 K,6 MPa の状態の水素を噴射し た場合,クラスターの最大サイズは 2.15±0.1 μm であると見積もられた.その上で,J-KAREN-P 施設において水 素クラスターをターゲットとした 0.1 Hz 高繰り返し陽子加速の実証実験を行った.トムソンパラボラスペクトロ メーターを用いたエネルギー測定では,最大 7 MeV の純陽子線を観測した.高出力レーザーパルスとミクロンサ イズ水素クラスターの相互作用過程に関する三次元 Particle-in-Cell(PIC)シミュレーションにおいては,レー ザー伝搬方向に加速される 300 MeV におよぶ高指向性の準単色陽子発生が予測され,本手法は,将来的に高繰り 返しの高エネルギー高純度陽子源の有力候補になる可能性を秘めている.
著者
山西,敏彦
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, 2007-06-25

核融合炉施設は核融合を起こす燃料として,放射性物質であるトリチウムガスおよび副次的に生じる高濃度トリチウム水を大量に取り扱う施設であり,施設内に設ける燃料循環システムにて処理を行い,燃料サイクルを施設内に閉じてしまうことが必要となる.したがって,核融合炉の安全確保と燃料サイクルの確立を目指す上で,トリチウム水の処理は鍵となる技術である.本報では,ITERにおけるトリチウム水処理システムの開発経緯,第一壁冷却水やブランケット冷却水の処理までを見通した核融合原型炉に向けた水処理総合システムの研究開発状況を紹介する.
著者
山口,栄一
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, 1993-07-25

Elementary processes of nuclear fusion reaction in solids have been studied by providing the sample in a vacuum system. The key factor of this study is heterostructures fabricated by depositing thin film oxides and Au on one and the other surface of deuteron-loaded palladium (Pd-D) plate. Using this method, we have detected ^4He production by the real time observation using high-resolution quadrupole mass (Q-mass) spectroscopy. It has been shown that the peak attributable to ^4He mass (4.0026 amu) appeared chaotically when the sample's temperature increased rapidly. The system of H-loaded (Pd-H) heterostructure, on the other hand, produced no peak at 4.0026 amu. We have also confirmed that the peak at 4.0026 amu in the Q-mass spectra is not due to the existence of contaminated ^4He in the air or in the D_2 cylinder used. This result indicates that a new class of nuclear fusion occurs in condensed matter.
著者
赤川,吉寛
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.73, no.9, 1997-09-25

The Japan Atomic Power Company (JAPC) has applied the Plasma Arc Melting Technology to treatment processes to reduce the low level dry active wastes (DAW) volume and to stabilize DAW for final disposal. JAPC decided to adopt an incineration/melting facility using the Plasma Arc Centrifugal Treatment Process (PACT) at the Tsuruga Power Station. In Switzerland, the ZWILAG (Zwischenlager Wurenlingen AG) also decided to adopt the PACT. Some laboratories in the U.S.A., France, and Germany, however, are carrying out their own R&D program to develop a plasma melting treatment for radioactivity contaminated soil among other things. Development of a thermal plasma treatment is now making progress on a world-wide scale in the field of radioactive wastes. I hope that this movement will be fruitful.
著者
政宗,貞男
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, 2000-12-25

The Reversed Field Pinch (RFP) has been believed to be dominated by anomalous transport due to strong magnetic fluctuations as with other low safety factor systems. However, for the last decade, RFP research has achieved significant progress in understanding its confinement physics. As a result, suppresion of the dynamo-induced fluctuations by controlling the current density profile has realized remarkable improvements in energy confinement time. Issues for near-term RFP research on the part of fusion programs includes active plasma control for confimenent improvement, stable operation for durations far exceeding the field penetration time of the conducting shell, heat and particle control, and possible optimization of the RFP configuration. Long term perspectives are also discussed.
著者
政宗 貞男 八木 康之
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.1217-1226, 2000-12-25
参考文献数
62
被引用文献数
2

The Reversed Field Pinch (RFP) has been believed to be dominated by anomalous transport due to strong magnetic fluctuations as with other low safety factor systems. However, for the last decade, RFP research has achieved significant progress in understanding its confinement physics. As a result, suppresion of the dynamo-induced fluctuations by controlling the current density profile has realized remarkable improvements in energy confinement time. Issues for near-term RFP research on the part of fusion programs includes active plasma control for confimenent improvement, stable operation for durations far exceeding the field penetration time of the conducting shell, heat and particle control, and possible optimization of the RFP configuration. Long term perspectives are also discussed.
著者
犬竹,正明
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.73, no.12, 1997-12-25

The importance of fusion rockets in space is described. Several types of manned spacecrafts which have been proposed so far on the basis of magnetic- and laser-fusion concepts are reviewed. Critical issues regarding these fusion rockets are discussed, taking into account the recent progress of magnetic- and laser-fusion experiments.
著者
萩原,克幸
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, 2006-05-25

階層型ニューラルネットワークは,与えられた入出力データに基づき,そこに内在する規則性を学習により獲得することを目的とした数理モデルであり,画像・音声の処理・認識,制御,時系列解析・予測からデータ解析まで,その応用は多岐にわたる.本稿は,階層型ニューラルネットワークに関する基礎を関数近似・学習・汎化性の観点からまとめるとともに,最近の理論的な課題について特異モデルの観点から述べたものである.