著者
矢野 夏樹 下條 満代 權 偕珍
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.6, pp.86-92, 2019

自閉スペクトラム症(ASD)は、限局された興味関心や常同的・反復的な行動と社会的コミュニケーションや社会的相互作用の障害によって特徴づけられる神経発達症群の中の一つである。ASD者の就労しようとした際、対人関係にニーズを抱え、最終的に離職してしまうというケースが非常に多い。ASD者の就労を支援するためには、学校教育段階からのキャリア教育と職場でのASDに対する特性の理解に基づくマネジメントが必要となる。キャリア教育と職場でのマネジメントの双方を効果的に連続させていくためには一貫したアセスメントに基づいた個々人の特性把握を行わなければならない。そこで、本研究では、ASD者の特性と就労状況について概観し、キャリア教育に基づいて、学校教育段階から就労を見据えた実態把握と支援について考察した。韓, 沼館, 呉屋ら(2018)が開発したScale C<sup>3</sup>をはじめとして評価尺度に基づいた、社会的コミュニケーションについての支援や自身のこだわりについて自己理解を深めることが重要である。
著者
韓 昌完
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.6, pp.27-40, 2019

本研究では、子どもの概念形成と才能発掘の実態把握を行うための構造化された評価ツールCRAYON Book (3~5歳Ver.)を開発することを目的とした。CRAYON bookとは、Child Rearing Assist for Your Needs book(ニーズに応える子育て支援book)を表している。CRAYON Book (3~5歳Ver.)は、「環境と日常生活」、「概念形成」、「自己表現」、「理解」、「納得」の5領域を設定されている。幼児が置かれている「環境と日常生活」が「概念形成」の基盤となり、それが「自己表現(才能発掘)」につながると考えられる。幼児の「概念形成」には、大人の関わり方が重要であり「理解」という意識活動を通して、幼児の「概念形成」を促す。また、大人が幼児の「納得」を促すことで、「自己表現(才能発掘)」につながると考え領域を設定した。 今後、CRAYON Book(3~5歳Ver.)の信頼性および妥当性が検証され、構造化の仮説が検証されることによって、乳幼児が環境からの刺激を周囲の大人との相互作用によって自己表現として表出するまでのプロセスを分析し、保育・教育に必要な支援を計画するための評価ツールとして活用することが期待される。
著者
權 偕珍 太田 麻美子 照屋 晴奈
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.6, pp.41-55, 2019

社会における障害理解を促進し共生社会を実現するためには、障害を人間の多様性として捉え、多様な人材を社会で活用するというダイバーシティの観点(日本経済団体連合会, 2002)から障害理解教育を考える必要がある(權・太田, 2018)。また、障害理解は人間理解そのものであり、障害理解の社会的向上を図るために次世代を担う生徒に対する教育が不可欠である(芝田, 2013)ため、次世代の教育者である教員養成課程の学生を対象とした障害理解教育カリキュラムの開発が必要である(權・太田, 2018)。そこで、本研究では、現在カリキュラムの要素として挙げられている理念的領域と方法論的領域の内容を設定する事を目的とする。そのために、①. ダイバーシティ教育の観点に基づく障害理解教育カリキュラムに必要な理念的要素を設定する。また、②. ①で行われた結果を基に、現在日本の国立教員養成大学で行われている障害に関する授業のシラバスを収集し、設定した理念的内容と方法論的内容と対応分析する。
著者
下條 満代 照屋 晴奈 大城 政之
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.6, pp.56-64, 2019

次期学習指導要領(2017年3月公示)において文部科学省は、「社会に開かれた教育課程」を重視すると示し、各学校における「カリキュラム・マネジメント」の確立や、幼・小・中・高等学校の教育課程との連続性を重視した。そこで本研究では「カリキュラム・マネジメント」について文献研究を行い、その観点から特別支援学校と特別支援学級、ついては知的障害者教育の教育課程を中心に、課題について明らかにすることとした。結果として、①カリキュラム・マネジメントの定義及び内容の具体化(体系化)、②特別支援教育における教育課程編成及びカリキュラム・マネジメントの具体化の2点の課題が明らかとなった。特に後者に関し「特別支援学校」「特別支援学級」と大きな枠組みで捉えるのではなく、今後は各教育現場に合わせた教育課程編成及びカリキュラム・マネジメントの内容の具体化を図る必要があると考える。また、知的障害者教育についてはその障害特徴により、より独自性が求められるため現時点の定義や抽象的な内容で述べることが難しい。次期学習指導要領の移行期間である今だからこそ、更なる具体化が早急に必要であることが考えられる。
著者
小原 愛子 荒居 日和 岡田 直美
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-9, 2019

本研究では、乳幼児保育・教育のカリキュラム評価に必要な要素について考察するために、保育所保育指針の内容をIN-Child Recordの14領域の観点と、「概念形成」、「才能発掘」、「子育て支援」の観点から分析した。乳児の保育のねらい及び内容は、「姿勢・運動・動作」、「コミュニケーション」が該当するものが最も多く、1歳児以上3歳未満の保育のねらい及び内容は「概念形成」と「コミュニケーション」、3歳児以上では、「概念形成」、「コミュニケーション」、「社会生活機能」が多く該当した。乳児は、運動機能が著しく発達し、首がすわったり寝返りをするようになったりと、概念形成の土台となる「姿勢・運動・動作」が重要となるため、カリキュラム評価の際はそれらについて取り入れることが重要だと考えられる。また、1歳児以上は、「概念形成」を行いながら言葉を獲得したり、思考力を深めたりするため、カリキュラム評価の際も「概念形成」に関して評価を行うことが必要だと考えられる。また、乳児から3歳児以上の保育・教育において「コミュニケーション」は常に重要となるため、コミュニケーションの観点も取り入れたカリキュラム評価を行うことが必要だろう。
著者
韓 昌完
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education (ISSN:21899185)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.27-40, 2019 (Released:2019-02-28)
参考文献数
17

本研究では、子どもの概念形成と才能発掘の実態把握を行うための構造化された評価ツールCRAYON Book (3~5歳Ver.)を開発することを目的とした。CRAYON bookとは、Child Rearing Assist for Your Needs book(ニーズに応える子育て支援book)を表している。 CRAYON Book (3~5歳Ver.)は、「環境と日常生活」、「概念形成」、「自己表現」、「理解」、「納得」の5領域を設定されている。幼児が置かれている「環境と日常生活」が「概念形成」の基盤となり、それが「自己表現(才能発掘)」につながると考えられる。幼児の「概念形成」には、大人の関わり方が重要であり「理解」という意識活動を通して、幼児の「概念形成」を促す。また、大人が幼児の「納得」を促すことで、「自己表現(才能発掘)」につながると考え領域を設定した。 今後、CRAYON Book(3~5歳Ver.)の信頼性および妥当性が検証され、構造化の仮説が検証されることによって、乳幼児が環境からの刺激を周囲の大人との相互作用によって自己表現として表出するまでのプロセスを分析し、保育・教育に必要な支援を計画するための評価ツールとして活用することが期待される。
著者
權 偕珍 太田 麻美子
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
ジー
巻号頁・発行日
vol.5, pp.61-76, 2018

2006 年に国連で障害者権利条約が採択されてから、日本国内でも様々な領域(厚生労働省, 2017: 文部科学省, 2012a)で、その権利を保障するための障害理解が重要視されてきた。しかしながら、現在行われている障害理解は、障害者を保護して支援する対象として捉えており、その結果、社会の中で共に生活し、働く仲間として障害者が認識されない一因となっている(權・田中, 2016)。社会における障害理解を促進し、障害のある者と障害のない者が共に生きる社会(“共生社会”)を実現するためには、障害を人間の多様性として捉え、多様な人材を社会で活用するというダイバーシティの観点(日本経済団体連合会, 2002)から障害理解教育を考える必要がある。そこで、本研究では、日本、韓国、アメリカ合衆国、イギリスの高等教育機関における教員養成制度及びダイバーシティ観点に基づいた障害理解教育について整理し、動向を把握する。
著者
小原 愛子 下地 華愛 太田 麻美子 野崎 美沙
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
ジー
巻号頁・発行日
vol.5, pp.18-33, 2018

通常の学級に在籍するASD傾向の子どもへの社会スキルプログラムを開発するための構成概念の検討を行うために、海外のASD傾向の子どもへ実践報告を分析した。ERIC-Institute of Education Scienceの論文データベースにおいて「ASD social skill」で検索した結果、14件が分析対象となった。主に「伝える能力」の「自分の気持ちを伝える」、「語彙力を身につける」といった実践が多く、「場を整理する能力」の「空間を整理する」に該当する実践報告はなかった。「伝える能力」に関しては、特にビデオモデリングやソーシャルストーリーなどの模倣や汎化といった指導方法が効果的とされる実践が多かったため、今後、プログラム開発の際はそれらの手法を取り入れることが重要であることが示唆された。プログラム実施期間は、それぞれの実践によって異なっていたため、さらに分析を行って適切なプログラム実施期間や頻度を考察することが今後の課題として挙げられた。
著者
照屋 晴奈 矢野 夏樹 下條 満代 韓 昌完
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
ジー
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-60, 2018

韓・沼館・呉屋(2018)が開発したScale for Coordinate Contiguous Career (Scale C<sup>3</sup>)は、学校や職場において観察することのできる、対象者の実態把握に関連する評価項目を仮説に基づいて、構造化した尺度である。本研究では、Scale C<sup>3</sup>自己評価用(高校生版)を作成し、Cronbach's α係数を用いて尺度の信頼性の検証を行った。また、得られたデータから生徒の傾向や現時点における尺度の有用性について考察することを目的とした。信頼性の検証結果、全項目及び全領域でα>0.700となり、高い信頼性が確認された。特に全項目においては、α=0.972と非常に高い値となり、尺度全体の信頼性が検証された。また、パス解析を用いた検証にて、「パーソナリティ」から「キャリア」の「人間関係形成能力」「自己理解・自己管理能力」を媒介し、「課題対応基礎能力」「キャリアプランニング能力」に影響を与える可能性があることが示された。カットオフ値についてもその結果から、協力校の生徒の傾向も見ることができた。Scale C<sup>3</sup>を使用し、学校や職場において、観察する対象者の実態を構造的に捉えることのできる可能性があることが示された。今後は、教員の客観的評価ができるScale C<sup>3</sup>を含め、データを増やしカットオフ値の設定や、パス解析にて様々な仮説モデルを検証していくことが求められる。
著者
韓 昌完 沼館 知里 呉屋 光 照屋 晴奈
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education (ISSN:21899185)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-20, 2018 (Released:2018-03-15)
参考文献数
34

高等学校以降の教育機関及び就労後の職場において、障害の有無によらず包括的な支援を必要としている人が増加しているにもかかわらず、自立と社会参加を見据えたキャリア形成に関する支援・指導が体系的に行われているとは言い難い状況が先行研究等から明らかとなった。そこで本研究では、高校生から成人までを対象としたキャリア形成のための評価と継続的支援を行うためのツールの開発を目的とした。すでに開発された小中学校版のIN-Child Recordを用いて、沖縄県内キャリア教育事業の実践取組指定校である3校を対象に縦断的なデータ収集を行い、回答の傾向や変化に基づき項目の修正を行った。さらに、データ収集に参加した1校の高等学校において校長を含めた7名の教員を対象に構造化された質問紙を用いて意見調査を行い、さらに具体的な項目の修正を行った。また、先行研究の分析に基づいて領域、項目の修正を行った。これらを通して、パーソナリティとキャリアの2つの分類から構成される合計100項目の尺度の試案を開発し、それぞれの領域の定義を行った。今後は試案に対する内容的妥当性、信頼性・構成概念妥当性の検証が必要である。
著者
田仲 未来 小田切 岳士 森 浩平 田中 敦士
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.4, pp.54-66, 2018

本研究では、視覚障害特別支援学校の教員が現場で必要とされる専門性について明らかにするために、教員が必要と認識している教育や研修内容について、自由記述内容からカテゴリー化して整理することを目的とした。盲学校赴任前に必要な知識・技能や、県内の大学(専門機関)に教育研修を求める内容等について、視覚障害特別支援学校の教員を対象にアンケート調査を行った。 その結果、教員が必要とされる専門性について、「指導方法・実践・補助教材・教具」や「心理・生理・病理」、「点字・歩行」や「情報機器」といったカテゴリーに分けられ、今後求められる教育研修の在り方について課題を整理した。
著者
矢野 夏樹 金 彦志
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.4, pp.67-73, 2018

本研究では、教員養成課程における知的障害の心理・生理・病理に関する講義のシラバスを知的障害の診断基準の変化に基づいて分析することによって、今後の課題を導出することを目的とした。全国の国公立大学と私立大学の内、教員養成課程を有する大学の知的障害の心理・生理・病理に関する講義を解説する大学を抽出し、その講義の達成目標および授業計画を分析した。結果として、国公立23校、私立大学23校の計46校において、知的障害の適応機能に関する内容をシラバスに明記していることが明らかになった。また、記載されている内容を見ると、言語とコミュニケーションに関する内容が多くを占めており、実用的な適応機能に関してはほとんどの大学において記載されていなかった。今後、知的障害児者の実用的な適応機能に関連して、自立活動の内容を知的障害の心理・生理・病理の講義に盛り込み、シラバスに明記することが必要となるだろう。
著者
太田 麻美子 金城 晶 梅田 真理 韓 昌完
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.4, pp.36-53, 2018

IN-Childとは、包括的教育を必要とする全ての子どもを指す用語であり、IN-Child Recordとは、IN-ChildのQOL向上の観点から支援ニーズを検討する為の82項目14領域で構成されているツールである。本研究では、IN-Child Recordの14領域を用いて、既存の論文・学会発表における指導実践を分析することで、ASD傾向のあるIN-Childに対して教育現場で行われている指導・支援方法を典型化し、課題を明らかにすることを目的とした。その結果、ASD傾向のあるIN-Childに対する指導・支援として、①保護者も含めた、学校やスクールカウンセラーとの定期的な情報共有の必要性、②スケジュールや物理的構造化の必要性、③応用行動分析の観点を含めた行動マネジメントの必要性が明らかになった。今後、ASD傾向のあるIN-Childに対する行動マネジメントの観点を決め、具体的な指導プログラムを開発する必要がある。
著者
韓 昌完 沼館 知里 呉屋 光 照屋 晴奈
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-20, 2018

高等学校以降の教育機関及び就労後の職場において、障害の有無によらず包括的な支援を必要としている人が増加しているにもかかわらず、自立と社会参加を見据えたキャリア形成に関する支援・指導が体系的に行われているとは言い難い状況が先行研究等から明らかとなった。そこで本研究では、高校生から成人までを対象としたキャリア形成のための評価と継続的支援を行うためのツールの開発を目的とした。すでに開発された小中学校版のIN-Child Recordを用いて、沖縄県内キャリア教育事業の実践取組指定校である3校を対象に縦断的なデータ収集を行い、回答の傾向や変化に基づき項目の修正を行った。さらに、データ収集に参加した1校の高等学校において校長を含めた7名の教員を対象に構造化された質問紙を用いて意見調査を行い、さらに具体的な項目の修正を行った。また、先行研究の分析に基づいて領域、項目の修正を行った。これらを通して、パーソナリティとキャリアの2つの分類から構成される合計100項目の尺度の試案を開発し、それぞれの領域の定義を行った。今後は試案に対する内容的妥当性、信頼性・構成概念妥当性の検証が必要である。
著者
金 ヘナ 小原 愛子 角谷 麗美 韓 昌完
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.3, pp.50-56, 2017

特別支援教育の分野では、障害児のQOL向上が重要視されており、韓・小原ら(2014)は、障害児の教育成果をより客観的に評価するためにQOLの概念を取り入れた特別支援教育成果評価尺度(Special Needs Education Assessment Tool; SNEAT)を開発した。本研究では、SNEATの全国標準化の一環として、関東地方である栃木県でSNEATの信頼性・妥当性の検証することを目的とした。2017年1月~2月に栃木県内にある特別支援学校の、自立活動の授業でSNEATを実施し、29件のデータを分析対象とした。信頼性に関しては、Cronbach's α係数が0.7以上であり、高い信頼性が得られた。また、妥当性に関しては、潜在曲線モデルを用いた縦断的データ分析が、χ2=10.731、 CFI=0.990、 TLI=0.984、 RMSEA=0.051であり、高いモデルの適合度が示された。さらに、授業評価の点数の変化に与える要因として、特別支援学校経験年数、障害種の2つがあることが明らかとなった。
著者
小田切 岳士 森 浩平 田中 敦士
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.3, pp.65-76, 2017

「教職員のための障害学生修学支援ガイド」(日本学生支援機構,2015)では、障害のある大学進学希望者や学内の障害のある学生に対し、大学等全体としての受入れ姿勢・方針を示すことが重要とされている。希望を申し出にくい消極的な環境を放置したまま、ただ本人からの支援申請を待つことは、合理的配慮の不提供につながるといっても過言ではない(松田,2016)が、現在それぞれの国公立大学において障害学生支援規程等の方針がどの程度公表されているかといった状況はこれまでに明らかとされていない。そこで本研究では、障害のある大学進学希望者や学内の障害のある学生が比較的情報を入手しやすいと考えられる、ホームページ上での公開状況や公開内容について閲覧・調査を行った。その結果、国立大学88大学のうち、障害学生支援に関する基本方針を大学ホームページ上に公開していた大学数は24校(27.3%)に留まった。また、内容については「目的」、「定義」、「機会の確保」等の20カテゴリに分類された。
著者
矢野 夏樹 太田 麻美子 船越 裕輝 金 彦志
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.3, pp.18-24, 2017

知的障害の最新の診断基準においては、従来のIQを中心とした知能指数による定義から、臨床的評価を重視した適応機能を重視した定義に変更が行われた。教育分野においても、知的障害児の教育に関して、学力よりも社会生活能力に重点をおいた教育が行われている。しかし、知的障害児の社会生活機能に関連する評価には尺度の不在や教員の専門性の不足といった課題がある。本研究では障害児のQOL向上の観点から開発された特別支援教育成果評価尺度(Special Needs Education Assessment Tool: SNEAT)を用いて知的障害児に対する社会生活機能の授業成果を測定し、その分析を通して評価に影響を与える要因を明らかにする。また、その要因から今後知的障害児に対する社会生活機能向上ための教育活動の在り方を検討することを目的とする。結果として知的障害児に対する社会生活機能の授業成果に影響を与える要因として「子どもの学部」と教師の「通算教職経験年数」「特別支援教育経験年数」の3つが明らかになった。今後の研究として、教師の経験年数や専門性によらない、知的障害児の社会生活機能向上のための教育プログラムの開発が必要であろう。
著者
森 浩平 陳 麗婷 小田切 岳士 橋本 実夕 田中 敦士
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.3, pp.25-37, 2017

現在の聴覚障害教育は、医療の発展を背景に障害の重度・多様化が進み、幼児児童生徒の実態も大きく変化している。また、聾学校に勤務する教員としての役割に加え、小・中学校等の教員への支援や通常学級等に在籍する幼児児童生徒に対する指導・支援といったセンター的機能も果たさなければならず、研修や研究等による幅広く高い専門性の習得が求められている。そこで本研究は、A県内の聾学校教員に質問紙調査を行い、聴覚障害教育に関する専門性の実態を明らかにし、今後必要な教育や研修等のあり方について検討することを目的とした。今回の調査により、聴覚障害教育に関する専門性について、年齢や経験で身につくだけではなく、免許保有の有無が興味・関心や能力特性の把握、理解力に即した指導等の専門性に関連があることが示唆された。
著者
太田 麻美子 權 偕珍 小原 愛子
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-17, 2017

IN-Childとは、包括的教育を必要とする全ての子どもを指す用語であり、IN-Child Recordとは、IN-ChildのQOL向上の観点から支援ニーズを検討する為の82項目14領域で構成されているツールである。本研究では、IN-Child Recordの14領域を用いて、既存の論文・学会発表における指導実践を分析することで、ADHD傾向のあるIN-Childに対して教育現場で行われている指導・支援方法を典型化し、課題を明らかにすることを目的とした。その結果、ADHD傾向のあるIN-Childに対する指導・支援として、①保護者と実施できる身体面に関する具体的かつ効果的な指導方法の必要性、②海外の文献も含めたADHDの特性に特化した生活面に関する指導法の収集の必要性、③「聞く」に関する指導法と、ADHDの特性に特化した読み書き能力を高めていくため指導法の開発が必要であることが明らかになった。
著者
小田切 岳士 森 浩平 田中 敦士
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education (ISSN:21899185)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.65-76, 2017 (Released:2018-02-13)
参考文献数
9

「教職員のための障害学生修学支援ガイド」(日本学生支援機構,2015)では、障害のある大学進学希望者や学内の障害のある学生に対し、大学等全体としての受入れ姿勢・方針を示すことが重要とされている。希望を申し出にくい消極的な環境を放置したまま、ただ本人からの支援申請を待つことは、合理的配慮の不提供につながるといっても過言ではない(松田,2016)が、現在それぞれの国公立大学において障害学生支援規程等の方針がどの程度公表されているかといった状況はこれまでに明らかとされていない。そこで本研究では、障害のある大学進学希望者や学内の障害のある学生が比較的情報を入手しやすいと考えられる、ホームページ上での公開状況や公開内容について閲覧・調査を行った。その結果、国立大学88大学のうち、障害学生支援に関する基本方針を大学ホームページ上に公開していた大学数は24校(27.3%)に留まった。また、内容については「目的」、「定義」、「機会の確保」等の20カテゴリに分類された。