著者
山口 晴幸
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.49-78, 2013-06-01 (Released:2017-07-07)
参考文献数
3
被引用文献数
1

地盤を構成する土の水質浄化機能,汚染物質への緩衝作用,地下水・土中水への化学成分供給能力などに関する土の環境化学的特性を解明するためには,各種化学成分の主要な供給源となる植物の枯死・腐植化に伴う化学成分組成の変質を把握し,地盤の深さ方向における主要化学成分の動態について評価することが重要となる。ここでは,まず樹葉を対象に,「生葉」が枯死し「枯葉」として落葉し,さらに生物的腐植・分解作用を経ていずれは安定した土壌有機物となる,土壌形成に転化する一連の過程について,元素レベルからの考察を試みている。さらに植物起源とする土壌有機物の腐植・分解過程で生成・溶脱される多種多様な化学成分は,土や土中水の化学成分組成を支配する重要な要因となっていることを,深度方向における地盤の主要な化学成分組成の推移傾向との因果関係から明らかにしている。
著者
山縣 光晶
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.1-38, 2006-02-01 (Released:2018-01-08)
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
潮 明良
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.113-124, 2021-10-01 (Released:2023-01-11)
参考文献数
3

山口県防府市西目山で発生した大規模な山林火災によって,多くの森林の緑が失われた。この失われた森林を早期に回復させるため,造林事業や治山事業により緑化が図られた。西目山の一帯は,花崗岩の岩石が露岩する急峻な地形のため,人力による緑化作業が困難な区域はヘリコプターを使用した航空実播が実施されている。航空実播が実施された当時は,航空実播の施工は技術的に確立されておらず,試行錯誤が繰り返された時期にあたるが,航空実播実施後約50年を経過した西目山には,散布した種子のアカマツをはじめ多くの広葉樹が生育し,多面的機能を有した森林へと回復している。この西目山地区における航空実播工は,治山事業の実施から100年を経過したことを機に林野庁が選定した「後世に伝えるべき治山~よみがえる緑~」60選に選定されている。
著者
田村 淳
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.134-146, 2019-06-01 (Released:2020-08-05)
参考文献数
34

自然植生の回復のためにシカ柵(以下,柵)を設置したとしても,必ずしも以前の植生に戻るわけではないこと,また,柵を設置したら数十年スケールで維持する必要があることを,丹沢のブナ林とモミ林の研究事例から紹介した。ブナ林の事例では,同一斜面上の設置年の異なる2基の柵において,柵内各1群と柵外から1群の計3群の土壌を採取して,撒きだし試験により埋土種子の組成を調べた。シカの採食に弱い多年草の個体数は3群ともにほとんど無かったことから,シカの採食に弱い多年草の回復は埋土種子に頼ることはできず,地上部に植物体があるうちに柵を設置する必要があると考えられた。モミ林の事例では,林冠ギャップ下と閉鎖林冠下に柵を10年間設置してモミなど10種の稚樹の樹高成長を調べたところ,すべての樹種はギャップ下の柵内で樹高が高くなっていたが,モミの樹高は最大で37cm であった。林冠下の柵内では樹高は当初と変わらず20cm 未満であった。モミ林ではギャップが形成されてから柵を設置する方がよく,それでも柵を数十年維持する必要がある。以上のように,柵による植生回復には限界があり時間がかかるものの,衰退した自然植生や脆弱な生態系では優先して柵を設置することが望まれる。
著者
北原 曜
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.11-37, 2010-02-01 (Released:2017-08-30)
参考文献数
30
被引用文献数
9
著者
末次 忠司 大槻 順朗
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.141-156, 2021-08-01 (Released:2022-11-04)
参考文献数
12

近年各地で水害が発生しているが,防災・減災のためには,従来の堤防やダムによる整備以外に流域対応の施設や対応が必要となる。令和2(2020)年7月に国土交通省は審議会の分科会答申を踏まえて,「流域治水」への転換を進めることとした。今後これを着実に推進するにあたっては,総合治水の反省の下に,課題を踏まえながら,施策を実施していくことが必要である。また,その際,治水行政や河道・施設計画を分析・評価した水害裁判の判決にも着目して、流域治水手法の位置付けや適否などについて考慮しなければならない。