著者
松尾 庸平
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.770-773, 2016-10-18 (Released:2016-11-17)
参考文献数
7
被引用文献数
1

腰椎のキネマティクスは胸椎とは異なり,胸郭,肋骨による支持がないために大きな運動性と可動域を有する.また腰部脊柱管狭窄症・腰椎変性すべり症・腰椎変性側弯症などの変性疾患や腰椎圧迫骨折・腰椎破裂骨折などの外傷の好発部位となる.その理由としては,上位脊柱からの荷重や運動負荷が腰椎に集中するからであると考えられている.こういった疾患を治療するうえで,腰椎の解剖とキネマティクスへの理解は大変重要である.本稿では腰椎の解剖と疾患との関係性,キネマティクス研究の歴史について述べる.
著者
金﨑 雅史
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.969-973, 2017-12-18 (Released:2018-01-10)
参考文献数
18

進行したがんやCOPDを有する患者において,薬物療法などの病態生理学的治療によって呼吸困難の病態を完全に改善できることは少ない.しかし,多くの慢性疾患と一致して,COPDでは身体活動性は重要な生命予後指標であり,呼吸困難の存在は身体活動制限の主要因子である.したがって,適切な治療のうえでなお存在する呼吸困難にも多角的視点から緩和的介入が求められる.本稿では,呼吸困難に苦しむ患者の暗澹たる思いに光を灯す手法となり得る非薬物療法を自験例も含めて概説する.
著者
浦部 博志 垣田 清人
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.23-27, 2019-01-18 (Released:2019-03-04)
参考文献数
8

失語症患者に対する経頭蓋磁気刺激治療は十分なエビデンスがあるとはいえないが,脳卒中による慢性期失語症患者に対して反復経頭蓋磁気刺激治療と集中的なリハビリテーション治療を行うことで,その効果が認められてきている.十分なエビデンスが得られない要因の1つに失語症自体が上肢麻痺に比べると複雑であり,かつ個々の症例ごとに異なる点がある.経頭蓋磁気刺激治療にあたっては,まず画像検査で機能的代償部位を評価し,個々に応じた刺激方法を選択する必要がある.今後は,症例を積み重ねていき,再検討することにより経頭蓋磁気刺激治療の有効性を高めていきたい.
著者
生駒 一憲
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.626-628, 2016-08-18 (Released:2016-09-16)
参考文献数
6

脳卒中後などにみられる難治性神経因性疼痛に対し,反復経頭蓋磁気刺激の有用性が報告されている.罹患側運動野に高頻度刺激を行うと除痛効果が得られる.リハビリテーションに難渋する原因となる神経因性疼痛に対し,治療の1つの選択肢となり得る.
著者
平野 哲
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.392-398, 2020-05-18 (Released:2020-06-13)
参考文献数
19
被引用文献数
1

脳卒中患者で下肢麻痺が中等度以上である場合には,麻痺の完全な回復は困難であり,装具や歩行補助具を用いた歩行再建が現実的な目標であることが多い.道具を使った新しい歩容を修得する過程では運動学習が起こるため,効果の高い歩行練習とは,運動学習を促進させる歩行練習であるといってよい.したがって,歩行練習を支援するロボットにも,運動学習を促進する機序が必要であり,医療者もこのことを理解してロボットを活用する必要がある.本稿では,運動学習を促進する工夫を備えたロボットについて,ウェルウォークを例に説明する.ロボットを用いた歩行練習のエビデンスや今後の展望についても言及する.
著者
芝野 康司 菅本 一臣
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.754-757, 2016-10-18 (Released:2016-11-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1

肩関節運動は肩甲骨と上腕骨の共同運動であり,またリハビリテーション(以下,リハ)においてもその役割は重要視されている.しかし,肩甲骨の動きは外転運動などでは明らかにされているが,水平内外転運動に関しては,あまりよく知られていない. また肩関節外旋位での水平内外転運動は,肩関節脱臼や投球動作のcocking phaseに相当し,脱臼術後のリハにおいても肩甲骨の動きが不十分であれば,可動域制限をきたす.健常人の肩関節水平内外転運動における肩甲骨の3次元動態解析を行い,肩甲骨の動態を解明することにより,肩関節の機能改善につながることを期待する.
著者
鬼頭 伸輔
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.38-43, 2019

<p>うつ病は,抑うつ気分,興味・関心や喜びの喪失を基本症状とする精神疾患であり,国内ではおよそ100万人の患者が治療を受けている.一方,約1/3の患者は複数の薬物療法に反応しないとされる.このような治療抵抗性うつ病に対して,わが国でも,反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が新規治療法として承認された.標準的な刺激条件である左背外側前頭前野への高頻度rTMSは,うつ病にみられる前頭前野と辺縁系領域の機能的不均衡を是正し,うつ病を改善させていると考えられる.rTMSの普及には,有効性および安全性の観点からも適応となる患者に対して適切にrTMSを実施することが肝要であり,その適正使用および技術の均てん化が求められる.</p>
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.683-713, 2010-10-18 (Released:2010-10-29)

摂食・嚥下器官の構造…井出 吉信 683嚥下造影からみた摂食・嚥下の運動学—二次元動作解析ソフトを用いたVF 画像解析—…依田 光正 690嚥下内視鏡からみた摂食・嚥下の運動学…藤島 一郎 699筋電図と嚥下圧からみた摂食・嚥下の運動学…青柳陽一郎 703CTからみた摂食・嚥下の運動学—320-ADCTを用いて—…馬場 尊 707
著者
小﨑 慶介
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.348-352, 2016-05-18 (Released:2016-06-13)
参考文献数
7
被引用文献数
2 3

日本の小児リハビリテーションの歴史は,田代義徳,柏倉松蔵,高木憲次らを中心として,1910年代に始まった肢体不自由児療育運動が1つの発端となっている.この運動を通して,社会から隔絶された手足の不自由な児童に教育,整形外科的治療とリハビリテーション(医学的治療),職業教育が施されるという枠組みが形成された.戦争によっていったんこの仕組みは壊滅的な打撃を受けたが,戦後は児童福祉法制定などを通して制度の整備が進められた.時代の変遷とともに対象疾患や病態が変化しており,今後もより包括的な枠組みの中で小児リハビリテーションを推進することが求められている.
著者
原 行弘
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.452-458, 2016-06-18 (Released:2016-07-21)
参考文献数
10

導出した筋活動電位に比例して電気刺激が行われる随意運動介助型機能的電気刺激(integrated volitional control electrical stimulator,以下IVES)は,容易な装着・操作に加えて筋肉スイッチといえる自律型制御を採用している.筋活動電位測定と電気刺激を同一筋肉で行える特徴があり,従来不可能であった可動域にまで関節機能を拡大できる.近赤外光脳機能測定装置を用いた検討では,IVES使用によって対側大脳感覚運動野の脳血流増加を認め,体性感覚入力増加と麻痺手の随意的運動促通の両方が相乗効果をもって,脳神経機構の再構築に寄与すると思われる.IVESのパワーアシストモード,外部入力モードは,脳卒中などで崩れた大脳半球間バランスを是正する作用があり,有用なニューロリハビリテーションの手段といえる.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.301-317, 2011-05-18 (Released:2011-06-10)

リハビリテーションにおけるセロトニン神経の役割…有田 秀穂 301カテコールアミンによるrestorative neurology—脳卒中と頸髄損傷での運動機能回復促進—…西野 克寛 306ダウン症候群患者のQOL向上のための塩酸ドネペジル療法…近藤 達郎 307蛋白同化ホルモンのリハビリテーションへの応用…岡本さやか 313
著者
五百川 和明
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.984-988, 2018-12-18 (Released:2019-01-21)
参考文献数
26

アロマセラピーは医療の補完代替療法の1つとして注目されており,認知症患者の知的機能の改善,がん患者の痛みやストレス,QOLなどの改善のほか,高齢者のバランス機能改善や転倒抑制効果など,従来の補完代替療法に留まらず,リハビリテーション医療との併用効果が期待できる.作業療法においてもアロマセラピーを併用することで,対象者の気分や情動の変化とともに,治療対象の作業行動や生活行為に好影響を与える可能性がある.しかしながら,作業療法とアロマセラピーの併用効果に関する科学的根拠は乏しく,今後のさらなる研究が求められる.
著者
松平 浩
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.615-619, 2016-08-18 (Released:2016-09-16)
参考文献数
10

運動器疼痛であることを把握する3か条は以下の通りである.①患者に,指1本で疼痛部位を示させる,②疼痛部位を直接見て触る(左右差がないかを確認),③関節や脊椎を動かしたときに誘発され,その痛みに一貫性があるかを確認する.急性痛では,速やかにその発痛源を同定かつ除痛し,不要な苦悩の助長と疼痛行動を強化させないことが重要である.一方,難治化した慢性痛の治療目的は,「すでに強化されてしまった苦悩と疼痛行動を弱化し健康行動を増やすこと」であり,主役は運動療法である.筆者は,運動療法を3タイプに大別して頭文字をとりACEと総称し,症例に応じて必要なメニューを選択し,その意義を患者に明確に伝え処方することを推奨している.
著者
栢森 良二
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.957-961, 2013 (Released:2014-02-04)
参考文献数
6
被引用文献数
4 5

Thalidomide embryopathy resulted in babies born with deformities such as phocomelia after their mothers took only a few tablets of thalidomide drug during 36 to 56 days after their last menstrual periods. There are two thalidomide embryopathy groups depending upon whether their hypoplasia is in the limbs or the auditory organs. In the limb group, deformities range from amelia to hypoplasia of the thumb. In the auditory group, the severity can be determined by the degree of deafness. This group is often associated with aplasia of the abducens and facial nucleus. Fifty years after the thalidomide scandal, the drug is still in use. It helps treat leprosy, multiple myeloma, AIDS and cachexia. As of June 2012, there are two hundred and ninetyfive victims still living in Japan. Disabilities include inadequate pinch and grasp, besides short reach. In the last two decades, the condition of these patients has worsened with chronic intractable pain due to overuse of hypoplastic skeletal muscles. They are now suffering from snapping fingers, stenosing tenosynovitis (trigger finger) and carpal tunnel syndrome. As their concomitant deformities or impairments include dislocation of the shoulder, droopy shoulders, hip dislocation, cervical block vertebrae, thoracic kyphosis, scoliosis, occult spina bifida, and L 6 lumbarization, these have become secondary etiologies for chronic pain, resulting in a dependent ADL condition. For these patients, physical exercise or recreation activities have become a viscous circle of ever increasing pain, weakness and fatigue. Furthermore, the resulting inactivity and weight gain has made ADL even more problematic. They also suffer from internal organ anomalies. Thus, a variety of problems including weakness and chronic intractable pain, which may be called post-thalidomide syndrome, has created an additional barrier for the surviving thalidomide embryopathy patients in social participation, as their aging is progressing.