著者
春山 幸志郎 川上 途行
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.352-357, 2015 (Released:2015-07-04)
参考文献数
23
被引用文献数
2

目的:脳卒中患者におけるTimed Up and Go test(以下TUG)と運動イメージ能力を反映したimagined TUG(以下iTUG)の時間差の指標が転倒予測に有用か否かを明らかにすること.方法:脳卒中患者47 名の自宅退院後6 カ月間の転倒発生を追跡調査した.ベースラインとして対象者の年齢,性別,疾患名,麻痺側,罹病期間,転倒歴,歩行補助具の有無,MMSE,TUG,TUGとiTUGの時間差(delta time)を退院時に評価した.転倒および評価結果からロジスティック回帰分析を実施し,転倒予測因子を抽出した.結果:追跡可能であった対象者は33 名であり,転倒率は48.5 %であった.解析の結果,delta timeのみが有意な因子であり(p<0.01),転倒予測のためのカットオフ値は0.88 %であった.結論:脳卒中者における自宅退院後6 カ月間の転倒発生はdelta timeにより識別可能であった.
著者
二宮 晴夫 冨士 武史 永冨 孝幸 永渕 輝佳 荒木 直哉 水田 典孝
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.160-167, 2018-02-16 (Released:2018-03-28)
参考文献数
30
被引用文献数
1

目的:鏡視下腱板修復術後のリハビリテーション期間延長に関わる因子を明らかにすること.対象:当院で施行した576肩(男性331肩,女性245肩,平均年齢63.9±12.3歳)を対象とした.後療法は3週間の固定を基本とし,術後翌日よりリハビリテーション開始.方法:術後リハビリテーション期間が6カ月で終了した376肩(男性228肩,女性148肩,平均年齢63.9±11.8歳)をA群,6カ月以上リハビリテーション継続を必要とした200肩(男性103肩,女性97肩,平均年齢63.5±13.3歳)をB群として2群に分類.検討因子は,保険種別,罹病期間,術前の可動域・筋力・運動時痛・肩関節疾患治療成績判定基準,断裂の部位・形態・修復状況,術後3カ月時の可動域ならびに6カ月時の可動域と筋力を独立変数とし,2群のリハビリテーション期間を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った.統計学的検討はEZRを使用.有意水準は5%.結果:リハビリテーション期間には保険種別・術前の断裂形態・術後3カ月の屈曲角度ならびに外旋角度・術後6カ月時の外転筋力が有意に関連していた.
著者
朝田 隆
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.224-226, 2018-03-16 (Released:2018-04-20)
参考文献数
8

高齢化社会の進行とともに認知症,特にアルツハイマー病(AD)の問題がクローズアップされる.特に,近年その予防が注目されるようになり,多くの研究報告がなされている.これまでの認知症予防法研究において,最大のエビデンスをもつものが運動の習慣であり,特に有酸素運動の効果が強調されてきた.また,最近ではその効果のメカニズムについても示されつつある.こうしたところから,2018年初頭にアメリカから軽度認知障害(MCI)についての新たなガイドラインが示され,規則的な運動を週に2回程度,6カ月以上にわたって続ければ有効とする良質な報告が相当数存在するとも強調されている.
著者
三國 信啓
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.650-653, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
18

Evaluations of brain function pre- and intra- operatively has been essential to maintain the quality of life in patients undergoing neurosurgery. These evaluations, which have been developed through studies in epilepsy, are now essential in neurosurgery for brain tumors and vascular diseases. The goal of functional brain mapping followed by function monitoring, is to perform surgery more safely and effectively thereby allowing for better outcomes. When choosing among multiple modern modalities for brain functional evaluation, we should consider the physiological aspects of each of these methods from a view point of functional recovery or compensation. Clinical usefulness and differences between intraoperative electrical stimulation of the cortex and subcortical fibers and clininical symptoms under an awake state to preserve affected or unaffected function during neurosurgery are also discussed. Further consideration of the actual network connecting each eloquent area may ultimately lead to a new concept in neurosurgery as well as in neuroscience itself.
著者
玉城 雅史 冨田 哲也 菅本 一臣 川島 邦彦 清水 憲政
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.774-778, 2016-10-18 (Released:2016-11-17)
参考文献数
16

膝関節は,骨,靱帯,筋肉のそれぞれが合わさって屈曲と伸展だけではなく,屈曲に伴う大腿骨-脛骨間のrollback motionと外旋運動を認める.変形性膝関節症では,一部に内旋運動を認める症例があり,正常膝とは異なる動態を認めた.2D/3Dレジストレーション法を用いた人工膝関節術後の動態解析では,大腿-脛骨コンポーネント間の屈曲角度は平均120°程度であった.脛骨に対する大腿骨の外旋運動は認められるものの,その回旋量は約10°前後と正常膝に比べて少なかった.またキネマティックパターンはさまざまであり,インプラントの表面形状,手術手技により規定されている可能性が高かった.
著者
千野 直一
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.53-60, 2018-01-18 (Released:2018-02-22)
参考文献数
15

Polio epidemics in the USA during the 1940s and 1950s were among the most feared diseases of the 20th century. Sister Elizabeth Kenny and President Franklin Roosevelt both made key contributions to modern rehabilitation medicine, leading to the promotion of global progress made by the International Society of Physical and Rehabilitation Medicine a half century later. Dr. Miland Knapp at the University of Minnesota was also considered a pioneer in modern rehabilitation medicine, as he supported the Kenny treatment method for acute polio patients. The Kenny method was subsequently widely adopted in the USA.
著者
内藤 典子 山口 晴保
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.106-110, 2018-02-16 (Released:2018-03-28)
参考文献数
17

認知症の地域包括ケアは,家族を含めた関係者が認知症の定義や特徴を踏まえ,本人と家族が不安なく過ごすことができる環境を整備することにより達成される.環境を整備するにあたっては,その残存機能を活用しつつ生活機能を高め,ADL,IADL,社会的な活動を維持するのに必要なリハビリテーションが各地域内で提供されるよう調整されることが望ましい.本稿では,認知機能そのものへのリハビリテーションや,認知症による生活障害へのリハビリテーション,さらには脳卒中など合併症へのリハビリテーションについて,その対応原則を含めて解説した.これらの包括的な取り組みにより,認知症の人が「認知症という困難」を抱えながらも安心して暮らし続けられる地域をめざそう.
著者
西野 卓
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.936-940, 2017-12-18 (Released:2018-01-10)
参考文献数
18

呼吸困難は異常な呼吸感覚であり,呼吸困難の発生には呼吸調節系で重要な役割を果たしているいくつかの感覚受容器が大きく関与している.受容器からの情報は延髄,視床を経由し,体性感覚野や大脳辺縁系に収束する.現段階で最も有力な呼吸困難の発生機序は,中枢-末梢ミスマッチ説あるいは出力-再入力ミスマッチ説と呼ばれている説であり,これらは中枢からの運動出力と神経受容器からの求心性入力に乖離あるいはミスマッチが存在する場合に呼吸困難感が発生するという説である.この説において,中枢からの運動出力は逆行性に大脳皮質感覚受容野に伝えられ,求心性入力には呼吸調節系に存在するすべての受容器からの入力が含まれる.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.453-471, 2011-07-18 (Released:2011-08-09)

アンケート結果報告…青柳陽一郎,石合 純夫 453川崎医科大学リハビリテーション医学教室から…青柳陽一郎,平岡 崇,椿原 彰夫,目谷 浩通,関 聰介 454和歌山県立医科大学リハビリテーション科から…中村 健, 幸田 剣,田島 文博 458鹿児島大学大学院医歯学総合研究科運動機能修復学講座リハビリテーション医学から…衛藤 誠二 461熊本大学病院リハビリテーション部における学生・初期研修医に対する教育・広報…大串 幹 464福島県立医科大学附属病院リハビリテーションセンターの場合…矢吹 省司 467慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室から…松本真以子 470
著者
中島 務 杉浦 彩子
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.233-239, 2017-03-18 (Released:2017-06-09)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

Web of ScienceのRehabilitation分野の136誌およびEigenfactor上位10誌に2010~2015年の間に掲載された国別論文数を調査した.136誌の61,210論文中1,658論文(2.71%),Eigenfactor上位10誌の12,584論文中303論文(2.41%)が日本からであった.比較のためClinical Neurology, Orthopedics, Otorhinolaryngology, Gastroenterology & Hepatology, Urology & Nephrology分野の論文数につきRehabilitation分野と同様に調査した.日本のRehabilitation分野の論文割合は,他の分野と比べ,全体でも上位10誌でも有意に少なかった.その理由と対策につき,日本の医学全般とリハビリテーション分野の観点から検討した.
著者
原 貴敏 垣田 清人 児玉 万実 土井 孝明 安保 雅博
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.228-233, 2014 (Released:2014-05-10)
参考文献数
16

Alien hand syndrome (AHS) is a rare neurologic disorder in which movements are performed without conscious will. Cognitive rehabilitation is usually first considered for treating AHS. However, we proposed different modalities for the treatment. This is the first case report showing therapeutic effects of the NEURO-15 program that consists of low-frequency repetitive transcranial magnetic stimulation and intensive occupational therapy on AHS symptoms and upper limb dysfunction caused by a stroke one year and three months before. A 68-year-old male developed right upper limb palsy secondary to cerebral infarction on the medial side of the left frontal lobe. On admission, he exhibited disturbed skilled motor behavior, compulsive grasping of the right upper limb, and dissociated behavior of the right hand independent from the left. The right hand interfered with the actions executed by the left hand. The left hand restricted the right hand in its actions by holding it. Six months after the onset, his Activities of Daily Living improved and he was discharged from hospital to home. However, his compulsive grasping of the right upper limb symptoms remained, and he underwent NEURO-15 one year and three months after the onset. His right upper limb function improved. Compulsive grasping of the right upper limb disappeared, and the contradictory action of the right upper limb was rarely seen. These results suggested that NEURO-15 influenced the neural network including the primary motor cortex and supplementary motor area.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.599-604, 2015 (Released:2015-11-10)

リハビリテーション科医としての開業-在宅医療に特化したクリニックという選択-…神山 一行 599リハビリテーション科単科である当院の歩みと現状…水野 雅康 602
著者
百崎 良 岡田 昌史 奥原 剛 木内 貴弘 緒方 直史 安保 雅博
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.606-613, 2018-07-18 (Released:2018-08-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

目的:本研究の目的は日本におけるリハビリテーション医学領域の研究登録状況を調査し,今後のリハビリテーション医学研究のあり方について検討することである.方法:UMIN-CTR(2005年以降)の登録データを用い,リハビリテーション医学領域の介入研究を網羅的に検索した.研究デザインや結果公開状況,登録時期などのデータを収集し,検討を行った.結果:21,410件のデータより,529件の研究が抽出された.研究デザインは並行群間比較が54%と最も多く,有効性の検討を目的とした研究が65%と多かった.比較試験の86%はランダム化がなされており,53%はブラインド化がなされていた.研究開始前の事前登録は50%あり,事後登録研究に比べ,結果の公開割合が少なかった.結論:研究登録数は経年的に増加していたが,研究の透明性を確保するためにも事前登録を心がける必要があると考えられた.リハビリテーション医学領域においても臨床研究を適切に計画・登録できる医療者のさらなる育成が重要だと考えられた.
著者
清水 康裕 鈴木 亨 才藤 栄一 村岡 慶裕 田辺 茂雄 武満 知彦 宇野 秋人 加藤 正樹 尾関 恩
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.527-533, 2009
被引用文献数
8 16

対麻痺者の歩行再建には骨盤帯長下肢装具が用いられている.装具は,関節の自由度を制限することで立位や歩行の安定を得る.しかし起立・着座の困難や歩行時の上肢への負担が大きく,実生活での使用に限界があった.股・膝・足関節に屈曲伸展自由度と力源を有する歩行補助ロボットWPAL(Wearable Power-Assist Locomotor)を開発中であり,予備的検討として,従来装具であるPrimewalkと比較した.1)対麻痺者3名において,歩行器を用いての起立・着座の自立度と歩行距離を比較した.装具では介助や見守りを要した例を含め,WPALでは3 名とも起立・着座と歩行が自立した.連続歩行距離はPrimewalkの数倍であった.2)練習期間が最長であった対麻痺者1名でトレッドミル上の6 分間歩行における心拍数,PCI,修正ボルグ指数,体幹の側方方向の動揺を比較した.心拍数,PCI,修正ボルグ指数が有意に低く,体幹の側方動揺が有意に少なかった.下肢に自由度と力源を付与したWPALは対麻痺歩行再建の実現化を大きく前進させるものと考えられた.