著者
梅田 匡純 森下 元賀 川浦 昭彦 河村 顕治
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.222-229, 2018-07-01 (Released:2019-07-15)
参考文献数
27

脳卒中患者の歩行獲得にとって,長下肢装具(KAFO)から短下肢装具(AFO)への移行は重要な要素となる.膝継手遊動化のKAFOを装着した歩行練習は,その過程の中で多く経験するが,足部調整には経験則によるところが大きい.AFOを対象にした報告では,足底屈制動の有効性に異論はないが,膝伸展を補うとされる足背屈制動については,推進力が抑制されるなどその見解は分かれる.そこで健常者13名を対象に,膝継手遊動のKAFOを装着し足背屈制限有無の歩行時床反力から検討を加えた結果,足背屈制限を付加した場合においても推進力は維持され,かつ膝関節は伸展方向へ安定させる傾向を示した.この結果からKAFOにおける足背屈制限は,AFO移行に向けた有効適応の可能性を示唆させた.
著者
樋口 隆志 井上 茂樹 川上 照彦 河村 顕治 横山 茂樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.383-389, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
29

【目的】2 種類の異なる小胸筋ストレッチ方法の効果の違いを明らかにすることである。【方法】対象は高校野球部員34 名とした。測定項目は小胸筋長,安静時の肩甲骨位置,上肢挙上時の肩甲骨回旋角度とした。ストレッチ方法はdoorway stretch(以下,DW-stretch 法)とretraction30° stretch(以下,R30-stretch 法)とした。【結果】二元配置分散分析の結果,小胸筋長の指標であるRib4-CP および肩甲骨位置の指標であるAD-R において交互作用が認められた。また,2 つのストレッチ法でRib4-CP およびAD-R の変化量に有意差が認められた。【結論】小胸筋を伸張させるとされるDW-stretch 法とR30-stretch 法のうち,DWstretch 法は安静時の小胸筋長や肩甲骨の位置をより変化させる可能性が示唆された。
著者
京極 真 寺岡 睦 小林 隆司 河村 顕治
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.521-524, 2014-06-15

Abstract:本論では,作業療法教育における学部・大学院5年一貫教育プログラムの概要を紹介し,実践報告を通してその利点と課題を明らかにした.今回,わが国の作業療法業界で初めて学部・大学院5年一貫教育プログラムに選抜された学生に対し,大学院教育を行った.その結果,意義として,①作業療法学の発展に貢献し得る人材を早期に育成しやすい,②作業療法養成課程におけるキャリアプランを豊かにし,学生のモチベーションの向上に資する,の2点があると論じた.他方,課題として,①教育体制の充実と工夫が必要である,および②大学院教育期間の短縮により受ける制約の検証が必要である,の2点があると論じた.
著者
大西 邦博 堀 芳郎 河村 顕治
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.771-775, 2019 (Released:2019-12-21)
参考文献数
25

〔目的〕本研究は当院でTKAを施行した26名26膝の術後1年までの身体機能の推移を術前および健常群と比較検討した.〔対象と方法〕TKA群26名と健常群19名を対象に,膝関節可動域,歩行時痛,等尺性膝伸展筋力,10 m歩行速度,Timed Up & Go test(TUG)を比較検討した.〔結果〕術前と比較し,歩行時痛,膝関節伸展可動域,10 m歩行速度,TUGは向上するが,膝関節屈曲可動域や膝伸展筋力はまだ不十分であった.また健常群と比較すると,歩行時痛,膝伸展筋力,歩行速度,膝関節伸展可動域は同程度まで回復するが,膝関節屈曲可動域やバランスはまだ不十分であった.〔結語〕術前と比較すると,術後1年は膝関節屈曲可動域と膝伸展筋力はまだ不十分であり,健常群と比較すると膝関節屈曲可動域とバランスはまだ不十分であった.
著者
天野 徹哉 玉利 光太郎 浅井 友詞 河村 顕治
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.374-381, 2011-08-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,内側型変形性膝関節症(内側型膝OA)患者を対象に薬物療法等の医学的処置の影響を統計的手法により取り除いたうえで,立ち上がり速度の関連因子を明らかにすることである。【方法】保存的治療中で,上肢支持なしで椅子からの立ち上がりが可能な内側型膝OA患者74名を対象とした。研究デザインは横断研究で,説明変数として膝関節周囲筋の最大等尺性筋力・立ち座り時の疼痛(VAS)と膝関節可動域の計測を行い,目的変数として5回立ち上がりテスト(TST-5)の計測を行った。また,基本属性と医学的属性である障害側(両側性または片側性)・非ステロイド抗炎症薬使用の有無・関節内注射の有無・関節穿刺排液の有無を交絡因子として扱った。統計学的処理は階層的重回帰分析による多変量解析を行った。【結果】TST-5の関連因子は,膝伸展筋力・膝屈曲筋力とVASであり(p < 0.05),これらの因子は基本属性や薬物療法等の医学的処置の影響からも独立していた。【結論】本研究の結果より,内側型膝OA患者の立ち上がりには基本属性や薬物療法等の医学的処置の影響とは独立して,膝伸展筋力・膝屈曲筋力と立ち座り時の疼痛が重要な関連因子であることが示唆された。
著者
宮地 司 羽田 圭宏 河村 顕治
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.17-21, 2020 (Released:2020-02-28)
参考文献数
15

〔目的〕異なる関節角速度での筋力と姿勢制御の関係性を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕健常成人男性70名を対象に,0,60,90,120,180,240,300 deg/secでの関節角速度における膝関節伸展筋力および筋パワーを測定し,片脚ドロップジャンプ着地時の緩衝係数や足圧中心(COP)軌跡長との関係性を検討した.〔結果〕関節角速度の増加に伴い発揮される筋力は有意に減少し,筋パワーは有意に増加した.また,90 deg/sec以上での筋力および筋パワーと緩衝係数やCOP軌跡長の間に負の相関関係を認めた.〔結語〕臨床での筋力測定は等尺性もしくは低速で行われているが,瞬時の姿勢制御には中速以上での筋力の重要性が示され,筋パワーが指標となることが解明された.
著者
天野 徹哉 玉利 光太郎 浅井 友詞 河村 顕治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3O1137, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】 変形性膝関節症(以下,膝OA)は,立ち上がりや歩行時などの疼痛・筋機能の低下・変形による関節可動域制限が主要因となり,移動動作能力の低下が最も問題とされている。我々は先行研究において,膝OA患者における歩行速度の関連因子は膝屈曲筋力,膝伸展筋力,歩行時の疼痛であることを報告した。しかしながら,本邦における膝OA患者の動作能力と関連因子の検証は,いまだ不十分である。今回,膝OA患者の立ち上がり能力に着目し,その関連因子について検討することを本研究の目的とした。【方法】 2009年3月から5月の間に当院整形外科で膝OAと診断され,保存的治療を実施している53名(男性12名,女性41名;年齢74.6±7.7歳)を対象とした。取り込み基準は,椅子からの立ち上がりが上肢の支持なしで可能な者とした。対象側は疼痛症状が強い側とし,左右同程度の疼痛の場合には膝関節可動域範囲の制限が強い側を対象側とした。研究デザインは横断研究で,立ち上がり能力を評価する指標として5回立ち上がりテスト(Timed Stands Test:以下,TST-5)を使用した。椅子からの立ち上がり動作を用いた評価法には回数法と時間法があるが,今回は回数を規定し時間を計測する回数法を採用した。立ち上がり能力の関連因子として,性別,年齢,Body Mass Index(以下,BMI),患者立脚型変形性膝関節症患者機能評価尺度(以下,JKOM)スコア点,自己効力スケール(以下,K-ASES-J),膝屈曲筋力,膝伸展筋力,大腿四頭筋に対するハムストリングの筋力比(以下,H/Q比),下肢伸展筋力,疼痛の程度(visual analog scale:以下,VAS),膝関節伸展角度,ハムストリング柔軟性(以下,HM柔軟性)の計測および調査を行った。統計学的処理は,TST-5を従属変数とした重回帰分析による多変量解析を行った。説明変数は膝屈曲筋力,膝伸展筋力,H/Q比,下肢伸展筋力,VAS,膝関節伸展角度,HM柔軟性の7項目,交絡因子は性別,年齢,BMI, JKOMスコア点,K-ASES-Jの5項目とした。さらに,説明変数と交絡因子の多重共線性の影響を考慮し,膝屈曲筋力,膝伸展筋力,H/Q比の3つの説明変数を同時に同じモデルに含めることはせず,従属変数に対して3つのモデルを立て解析を行った。統計解析には統計ソフトSPSS(Student Version 16.0)を用い,有意水準は5%とした。【説明と同意】 本研究は吉備国際大学「人を対象とする研究」倫理規程,『ヘルシンキ宣言』あるいは『臨床研究に関する倫理指針』に従った。対象者には書面および口頭にて本研究の目的と内容に関する説明を行い,書面による同意を得た。また,データの収集,分析,公表では個人情報が特定出来ないように連結匿名化を行った。なお,本研究は吉備国際大学倫理審査委員会の承認(承認番号08-14)を得て実施した。【結果】 TST-5に影響を与える因子は,膝屈曲筋力(p=0.008,偏回帰係数-0.42),膝伸展筋力(p=0.034,偏回帰係数-0.32)と立ち座り時のVAS(p<0.05,偏回帰係数0.26~0.34)であった。すなわち,立ち座り時間の短縮には膝屈曲筋力と膝伸展筋力が高値であること,立ち座り時の疼痛が低値であることが関係していた。【考察】 膝OA患者を対象に立ち上がり能力の関連因子について検討した。本研究の結果よりTST-5には膝伸展筋力だけではなく,膝屈曲筋力,立ち座り時の疼痛も関連があることが明らかとなった。また,H/Q比がTST-5に有意な関連性がないことから,膝伸展筋力,膝屈曲筋力がどちらか単独で強ければTST-5が短縮されるのではなく,膝関節周囲筋の筋力が全体的に関連する可能性が示唆された。先行研究より立ち上がり能力の関連因子として,身体機能レベルでは膝伸展筋力,足関節背屈角度などの報告がされ,特に膝伸展筋力との関連性が指摘されている。下肢筋力においては,先行研究を支持する膝伸展筋力とともに膝屈曲筋力も立ち上がり能力に関連することが,本研究の結果より示唆された。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果から,膝OA患者の立ち上がり能力には膝伸展筋力だけでなく,膝屈曲筋力と立ち座り時の疼痛も関連があることが明らかとなった。現在,膝OA患者に対する筋力強化運動として主に膝関節伸展筋の運動が実施・指導されている。しかし,本研究の結果より今後,膝屈曲筋力を含めた膝関節周囲筋力と立ち上がり能力についての縦断研究や介入研究を行い,立ち上がり能力との因果関係について検討する必要がある。
著者
福添 伸吾 玉利 光太郎 河村 顕治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AdPF1005, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】歩行中,身体は2つの機能的単位であるパッセンジャー(上半身と骨盤)とロコモーター(骨盤と下半身)に分けられ,ロコモーターの筋活動の有無や程度はパッセンジャーの姿勢で決定される(月城,2005)。しかしながら,歩行中のパッセンジャーの姿勢がロコモーターの筋活動に与える影響については良く分かっていない。先行研究(高橋,1998)より体幹を股関節において35°に屈曲させた歩行では,大殿筋,中殿筋,大腿二頭筋の筋活動が歩行周期を通しておよそ200%に増加したと報告がある。しかし,健常人がこのような姿勢で歩行することは稀であり,むしろいわゆる猫背と言われる上部体幹屈曲姿勢を呈す場合が多い。本研究では,パッセンジャーの姿勢がロコモーターの筋活動に与える影響について検討し,その際歩幅や歩行速度,股関節の運動が両者の関係に影響を与えるか明らかにすることを目的とし以下の研究を行った。【方法】対象は,整形外科学的・神経学的に問題のない健常男性15名(年齢22.1±1.2歳,身長:170.5±4.1cm,体重:63.5±8.1kg)とした。歩行条件は1)体幹装具を装着(上部体幹中間位)での歩行(以下,条件A),2)体幹装具を装着で上部体幹屈曲位での歩行(以下,条件B)の2条件とし,それぞれ5回ずつ実施した。なお歩行は快適速度とした。体幹装具は,ダイヤルロック式サブオルソレン装具を使用した。矢状面上の歩行動作をデジタルビデオカメラ(SONY,HDR-CX550),により撮影し,動画解析ソフトDartfish(株式会社ジースポート),を用いて踵接地時の股関節屈曲角度と上部体幹屈曲指標を計測した。なおこれらを同定するため,マーカーを対象者の右上前腸骨棘,右上後腸骨棘,右肩峰,右大腿骨外側顆,右大転子に貼付した。歩行中における大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋,大腿直筋,内側広筋,外側広筋,半腱様筋,大腿二頭筋(以下,BF)の筋活動を表面筋電計(Noraxon社製)を用いて測定した。最大等尺性収縮時の筋活動を100%として標準化し,踵接地から0.1秒間の積分値を求めた。統計は条件間の筋活動の違いを対応のあるt検定, B条件での筋活動上昇を説明する変数を同定する目的で重回帰分析をそれぞれ実施した(alpha=0.05)。【説明と同意】対象者には事前に本研究の目的を十分説明し,EMGを用いた運動機能測定に関する十分な理解と協力の意思を確認し,同意書を得た上で実施した。【結果】条件Aに対して,条件Bで筋活動が上昇した筋群は,BF(p=0.004)であった。また,重回帰分析によりBFの筋活動上昇を説明する変数として,歩幅(B=3.069,p=0.044)と股関節屈曲角度(B=-0.400,p=0.082)が抽出された。【考察】条件Aに対して条件Bでは,BFのみ有意に筋活動の増大を認めた。条件Bでは条件Aよりも重心線が通常よりも前方に移動するため,外的股関節屈曲・膝関節伸展モーメントが増大した結果,拮抗する大腿後面の筋群を中心に筋活動量が増大したと考えられる。殿筋群は,単関節筋であり主に関節の安定化に寄与すると言われているが,上部体幹屈曲位での歩行においては,脊柱起立筋とハムストリングスを結ぶ筋・筋膜を介して(Myers,2001)股関節でなく膝関節にストレスが大きくかかった可能性がある。 BFの筋活動上昇を説明する変数として,股関節屈曲角度の減少が抽出された。これは骨盤後傾角度の増大に伴うBFの筋活動の増加を意味している。この理由については推測の域を出ないが,上部体幹屈曲による腰椎の代償的伸展がより困難な者は,踵接地時の外的体幹屈曲モーメントが高まった結果BFの活動が亢進した可能性がある。また,骨盤後傾角度の増加に伴って股関節は自動的に外旋し,膝関節は屈曲・内反する(佐保,1996)と言われており,その反応的活動としての膝関節外反保持のため,BFが活動を高めた可能性も否定できない(福井,1997)。これらの結果から,上部体幹屈曲はBFの筋活動を亢進させ,BFの活動は股関節屈曲角度の増減に関連することが示唆された。【理学療法学研究としての意義】若年健常者男性において腰椎疾患有病率は非常に高く,臨床現場ではハムストリングスの短縮やタイトネスが散見される。こういった病態の一因として上部体幹の屈曲姿勢,いわゆる猫背が関与している可能性は以前より指摘されていたものの,それを実証したものは無かった。本研究はその根拠を呈示できたのではないかと考える。踵接地時のBFの活動に股関節屈曲が関与している要因として前額面上の運動機能連鎖の作用も考えられ,今後の検討課題である。
著者
河村 顕治 加納 良男
出版者
吉備国際大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

PC12細胞から変異源処理によって細胞内シグナル伝達系に突然変異をもった特殊な神経細胞であるPC12m3細胞を開発した。PC12m3細胞は薬剤や様々な物理刺激に鋭敏に反応するので、抵抗性を示す細胞を見つけPC12m321細胞と命名した。PC12m321細胞はPI3Kに突然変異をもっていた。PI3Kは主としてインスリンによって活性化し、Aktを介してサバイバルの上昇や長寿遺伝子の活性化に働いている。PC12m3細胞に100 mAの電気刺激を30分与えたところ、増殖因子によるAkt活性を大きく抑制した。これは、電気刺激がAkt活性の抑制を介して長寿遺伝子FOXOの活性化に働くことを示している。