5 0 0 0 OA 転換性障害

著者
渡辺 俊之
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.193-197, 2018-03-16 (Released:2018-04-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

転換性障害は,心理的葛藤,喪失体験,過剰なストレス,トラウマといった心理的要因に伴う情動が身体症状に転換される疾患である.身体には原因を探すことができない随意運動機能障害や感覚機能の異常が生ずる.転換性障害患者は,麻痺や感覚異常のような症状をもつことで何らかの「利」を得ることがある.これが疾病利得と呼ばれる.なぜ身体症状をもたねばならなかったのか? 身体症状を持続させている外的要因は何か? こうした心理的背景の理解がリハビリテーション科医には必要になる.こうした心理的背景を理解したうえで,患者と一緒に「未来」を語ることが必要である.運動療法を続け歩けるようになれば,充実した生活が待っているという感覚になれれば,症状は改善していくに違いない.
著者
矢吹 省司
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1250-1255, 2021-11-18 (Released:2022-01-14)
参考文献数
14

慢性疼痛の治療には,薬物療法,心理療法,リハビリテーション治療,インターベンショナル治療,手術治療,そして集学的治療などがある.近年,痛みに関する教科書やガイドラインが発刊されている.本稿では,これらの書籍を参考にしながら,慢性疼痛の治療について解説した.さらに,2021年に発刊された「慢性疼痛診療ガイドライン」での推奨度やエビデンス総体の総括についても記載した.慢性疼痛の病態には,身体的要因のみならず,心理的・社会的要因も関与するため,慢性疼痛の治療にかかわる医療従事者の専門分野や治療内容もこれらの要素や要素間のかかわりを踏まえた多様なものである必要がある.
著者
和田 直樹
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.204-208, 2019-03-18 (Released:2019-04-26)
参考文献数
17

パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)の非運動症状として,自律神経障害は頻度の高い病態であり,中枢神経のみならず,末梢神経,自律神経にもαシヌクレインが沈着することが原因と考えられている.便秘,循環機能障害,排尿障害,性機能障害,発汗障害,流涎などの症状を認めるが,運動症状の発現以前から出現する症状も多くpremotor symptomとも呼ばれている.自律神経障害は患者のADL,QOLを低下させるため,早期発見・治療を行うことが重要である.
著者
野口 翔平 玉置 昌孝 中道 哲朗 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.618-626, 2017-08-18 (Released:2017-10-03)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

目的:立位での一側下肢への側方体重移動における腰背筋群・足部周囲筋の役割を解明する目的で,側方移動中の姿勢変化と腰背筋群・足部周囲筋の筋活動パターンを検討した.方法:対象は健常男性24名(24.3±2.6歳).直立位から2秒間で側方移動させ,そのときの足底圧中心(COP)と両側多裂筋・腸肋筋・最長筋,移動側足部内反筋群・腓骨筋群の筋電図波形,ビデオ画像を計測した.結果:骨盤は水平移動した後,COPの移動側変位途中から非移動側挙上を生じた.下肢では側方移動に伴い移動側足部回内による下腿の外側傾斜を生じた.このとき,COPが移動側へ変位する途中から非移動側多裂筋・腸肋筋・最長筋,移動側足部内反筋群・腓骨筋群の筋活動が増加した.結論:非移動側多裂筋・腸肋筋・最長筋は骨盤非移動側挙上に対する胸腰部非移動側側屈に関与した.このとき,足部内反筋群・腓骨筋群は足底接地した状態での足部回内に関与した.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.15-38, 2011-01-18 (Released:2011-02-03)

マイルド加温,運動によるヒートショックプロテイン(HSP 70)の誘導とストレス防御…伊藤 要子,山田 芳彰,本多 靖明 15リハビリテーションにおける温泉医学…前田 眞治 21温熱の消化器・腎・皮膚への影響…飯山 準一 28温熱療法の生物学的効果—癌治療への応用~遺伝子発現への影響—…和田 重人,田渕 圭章,高崎 一朗,古澤 之裕,趙 慶利,近藤 隆 33
著者
中俣 恵美
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.706-710, 2016
被引用文献数
1

医療・福祉・保健分野において,高齢化および疾病構造の変化に伴う課題解決の方策として多職種協働による地域包括ケアシステムが注目されている.これには職種間の相互理解,各々の高い専門性の追求にとどまらず,職種間の隔壁を超えた幅広い視野をもってアプローチすることが求められる.そして,これを具現化するためにはICFを共通概念,共通言語として活用することが必要である.ICFは生活機能を包括的に捉える視点と枠組みを示すものであり,これを協働のためのツールとして取り扱うことが望ましい.しかし現状では概念の取り違えやツールとしての活用に課題もある.本論ではICFの特性について再確認すると共に実践の現場での活用方法を述べる.
著者
辰村 正紀 芋生 祥之 金岡 恒治
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.771-777, 2019-10-18 (Released:2019-12-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1

発育期腰椎分離症に対する保存療法は運動休止を要するため,身体機能の低下,モチベーションの低下が懸念事項となる.本研究では,腰椎分離症の保存療法中の運動制御の評価法としてSahrmann Core Stability Testを用いた.理学療法介入前に比べ,介入後は有意にSahrmann Core Stability TestのLevelは向上した.Sahrmann Core Stability Testによる評価は治療初期の運動制御能力の評価,段階的に強度を増す腰椎分離症の訓練の進達度の評価,競技復帰後の運動制御能力の状態の評価,選手のモチベーションの維持など多様な可能性を秘めている.
著者
塚越 大智 山本 周平 和田 洋典 寺島 さつき 大澤 竜司 松森 圭司 伊藤 駿 中村 幸男 長峰 広平 池上 章太 堀内 博志
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.20042, (Released:2022-01-14)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Coronavirus disease 2019 (COVID-19) has been spreading globally since 2019;however, comprehensive rehabilitation of elderly patients with COVID-19 pneumonia remains a challenge. A 76-year-old American woman with COVID-19 pneumonia was admitted to our hospital. Because her disease was complicated by acute respiratory distress syndrome (ARDS), she was treated with intensive care, including invasive ventilation and extracorporeal membrane oxygenation (ECMO). During and after intensive care, she exhibited physical symptoms such as weakness, pain, shortness of breath, and difficulty in movement and exercise. Furthermore, during approximately 3.5 months of hospitalization, she received swallowing and speech therapies along with physical therapy. These rehabilitation therapies enabled her to get home in the United States. Her rehabilitation schedule had to be carefully planned according to her symptoms and infectiousness of COVID-19. This paper highlights few important points regarding the difficulty in rehabilitation including that of physical function, mental health, and cognitive function of patients with COVID-19. Furthermore, this report provides a problem-solving approach for long-term rehabilitation in elderly patients with COVID-19 pneumonia.
著者
三好 正堂
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.17-26, 2016-01-18 (Released:2016-02-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1 4

大腿骨近位部骨折の治療には,早期手術と早期リハビリテーションが必要である.しかし今回の143例の調査で,早期に手術した例(骨折1〜2日目)と遅く手術した例(骨折後3〜19日目)で急性期病院在院日数,回復期病院在院日数,ADL利得,膝伸筋力増加値に差がなかった.このことは手術を遅くしてよいことを意味するのではない.骨折前に「歩行障害なし」(12例)・「屋外歩行自立」(36例)のうち,骨折後の歩行レベルで「自立歩行」になった40例の骨折-手術日数が3.7日で,「自立歩行」を回復しなかった8例の骨折-手術日数が6.8日で,差は有意であった. 一方,急性期病院におけるリハビリテーション(以下,リハ)は著しく不足しており,骨折前に「歩行障害なし」と「屋外歩行自立」の計48例が,急性期病院に平均19日間入院して回復期病院へ転院したとき,非骨折側膝伸筋力は健常者の平均56%(10〜112%)に低下し,しかも急性期病院への入院が長くなるほど膝伸筋力は低下していた. このことから,本症の治療成績を上げるためには,早期手術だけでなく,骨折後早期の強力なリハの実践が必要であることが示唆された.
著者
栗原 まな
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.311-315, 2016-04-18 (Released:2016-05-20)
参考文献数
5

当院で入院リハビリテーションを行った16歳未満で発症した低酸素性脳症例35例(発症年齢平均5歳8カ月)の,急性期の状況と後遺症の状況を調査し,高次脳機能障害に焦点をあてて検討した.発症原因は溺水12例,窒息6例,心疾患10例などで,原因により年齢分布が異なっていた.後遺症は身体障害28例,知的障害30例,てんかん16例,高次脳機能障害12例であった.高次脳機能障害の内訳では視覚認知障害・注意障害が多かったが,小児では評価バッテリーに頼りきらず生活の中での把握が大切であった.それらへの対応についても述べた.
著者
小野 高裕 堀 一浩 藤原 茂弘 皆木 祥伴 村上 和裕
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.666-671, 2017-09-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
17

極薄型の舌圧センサシートを口腔内に貼付することにより,自然な嚥下時の舌圧を多点で測定することができる.舌圧の持続時間,最大値,順序性,左右バランスなどのパラメータの変化は,脳卒中,神経筋疾患,口腔中咽頭がんなど各疾患特有の舌のmotor controlの異常と関連しており,不顕性の嚥下機能低下を捉えるうえで有用である.また,嚥下時舌圧データは,嚥下手技の舌に対する効果検証や,患者個々の舌機能に応じた食品性状の設定に応用することによって,摂食嚥下リハビリテーションにおけるさまざまなアプローチの合理化や効率化に貢献する可能性をもつと考えられる.
著者
大畑 光司
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.735-739, 2018-09-18 (Released:2018-10-29)
参考文献数
16

脳卒中後片麻痺に伴う歩行障害は日常生活に影響を与える重要な因子の1つである.リハビリテーション治療によって歩行能力を改善させるために,適切な下肢装具の選定とその使用は必要不可欠な因子であるといえる.短下肢装具の一般特性としては,足関節運動(立脚期の最大背屈角度と遊脚期の下垂足の改善)および立脚期の膝関節運動(荷重応答期の膝屈曲角度の増加)の変化による歩行機能の改善が指摘されているが,その変化の程度は継手や装具の形状に影響を受ける.また,現時点では長期的な使用による効果は明確ではなく,治療効果を確立するためにはさらなる検討が必要である.
著者
木藤 伸宏 金口 瑛典 小澤 純也
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.746-751, 2017-10-18 (Released:2017-12-04)
参考文献数
7
被引用文献数
4 4

筋力維持と増強のための治療法は,関節可動域運動とともに身体機能障害に対する理学療法の2大治療手技として,現在に至るまで臨床で用いられている.本稿では以下の内容に沿って,筋力増強運動の基礎と具体的処方について示した.すなわち,筋力の検査,筋力増強運動の基礎理論,筋力増強運動の処方である.なお,筋力増強運動の処方については,負荷と回数設定,方法について具体的に述べた.筋力増強運動は方法論ありきではなく,必ず治療者による評価と再評価によって,処方する運動の選択と負荷量と回数の設定を行いながら進めるべきである.また,高齢者や筋骨格系に病態を有する者は,あらかじめ負荷を低く,少ない回数で安全性を重視したうえで行う.
著者
大門 恭平 濱嶋 真弘 緒方 練人 大川 愛美 室井 明日香 石川 秀雄
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.360-365, 2022-04-18 (Released:2022-06-27)
参考文献数
19

近年,リハビリテーション医療分野においてVR技術を応用した治療や研究が進んでいる.国内の医療分野で使われるVR・AR・MRの市場規模はますます大きくなると予測されており,成長が期待される領域である.本稿では,回復期リハビリテーション病棟の患者を対象に,われわれのチームのVR介入の試みで得た知見の一部を述べるとともに,今後のリハビリテーション医療分野におけるVRの可能性について述べたい.
著者
川村 博文 西上 智彦 伊藤 健一 大矢 暢久 辻下 守弘
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.604-609, 2016-08-18 (Released:2016-09-16)
参考文献数
37
被引用文献数
1

本稿では,疼痛に対する治療としての物理療法,運動療法について,有効性に関わる理論的な裏付けから臨床のエビデンスを交えて解説した.急性痛と慢性痛とでは,対応が異なり,急性痛には,過度な不活動は避け,原因となる組織損傷の治療を可及的早期に進めることと,可能な限り疼痛を抑制し長期化を阻止する目的で物理療法,運動療法などを実施することとなる.慢性痛には,感覚面に着目する以外に,情動面や認知面などの多面的・複合的な側面での特性の認識理解が不可欠であり,ADLやQOL向上を目的として,TENSなどの物理療法,運動療法,認知行動療法,ニューロリハビリテーション,学際(集学)的治療を導入することが重要である.